■後藤弘茂のWeekly海外ニュース■IntelのCPU&プラットフォームロードマップ |
先週のIDFでのアップデートを踏まえて、IntelのCPU&プラットフォームロードマップを整理してみよう。
まず、デスクトップCPUロードマップでは、すでにお伝えたした通り、デュアルコアの「Smithfield(スミスフィールド)」がPentium Dとなった。Smithfieldはブランド名以外は大きな変更はなさそうだ。
また、これまで不鮮明だったハイエンドのPentium Processor Extreme Edition系のロードマップが明確になった。Smithfieldが「Pentium Extreme Edition」ブランドで登場する。この世代からProcessor Numberが付き、初代のPentium Extreme Editionは840(3.20GHz)となる。周波数とモデルナンバは、デュアルコアのPentium Dと同じだが、Pentium Extreme Editionはデュアルコアに加えてHyper-Threadingがイネーブルとなっている。つまり、4スレッド/クロックのTLP(Thread-Level Parallelism:スレッドレベル並列性)となる。
これによって、Intelのロードマップでは、最高価格帯からミッドレンジまででデュアルコアが提供されることになった。Pentium Extreme Editionの価格はまだわからないが、ブランドから考えて最高価格帯になると推定される。これまでは、600ドル以上の価格帯ではデュアルコアは提供されない予定だった。つまり、Intelはデュアルコアの付加価値をより高く据えたことになる。Pentium Dは5月下旬から6月上旬までの間に、Pentium Extreme Edition 840は2005年Q2中に登場することになっている。
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●より鮮明になったIntel CPU移行図
CPUの移行図全体は次のようになる。
デスクトップCPUの移行は先週レポートした通り。65nm世代では、実際にはシングルコアの「CedarMill(シーダーミル)」と“デュアル”コアの「Presler(プレスラ)」「Dempsey(デンプシ)」は、同じダイ(半導体本体)を使う。ダイが1個の構成がCedarMillで、2個の構成で1P用がPresler、2個構成でDP用がDempseyだ。それぞれ、2006年末から2007年にかけて、真のデュアルコアの次世代CPUに置き換えられると推定される。この世代では、デスクトップCPUとモバイルCPUは“ユニファイドアーキテクチャ”となり、モバイルCPU「Merom(メロン)」ベースのCPUがデスクトップにも採用されると見られる。このあたりは、大きな変更はなさそうだ。
Xeon系では、MPサーバー向けデュアルコアの「Paxville(パークスビル)」が90nmであることが判明した。これは、Paxvilleだけは共有FSB(フロントサイドバス)型のアーキテクチャを取っているからで、単に2つのCPUコアを1個のダイ上に並べたSmithfieldより開発期間がかかるためだ。となると、Paxvilleに続く「Tulsa(タルサ)」は必然的にPaxvilleの65nm版ということになる。
さらに、2007年にはIA-32系マルチコアの「Whitefield(ホワイトフィールド)」が続く。WhitefieldがMeromコアベースのマルチコアだとすると、2006年末リリースと推定されるMeromよりある程度のずれがあるはずだ。
IA-64サーバーでは、2007年のマルチコアCPU「Tukwila(タックウイラ)」のプロジェクトがまだ健在であることが明確になった。Tukwilaは新アーキテクチャのCPUコアになる。Tukwilaはキャンセルになったというウワサがあったが、とりあえず、それは否定された。また、今回は、Tukwilaの後に「Poulson」が続くことも明らかにされた。時期を考えると、PoulsonはTukwilaの45nm版だと推定される。
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●重要になり始めたプラットフォームロードマップ
複雑になったIntelのCPUロードマップだが、これに輪をかけているのは、各プラットフォームにもコードネームが付き始めたことだ。IDFで公開されたプラットフォームをまとめると、下のようになる。今のところ、合計9プラットフォームが存在する。IDFではこのうち8プラットフォームまで公開されたが、加えて1プロセッサワークステーションのプラットフォーム「Gallaway(ギャラウェイ)」があると言われている。
今は、モバイル以外はプラットフォームに公式名称はついていないが、この多くに、最終的にはプラットフォームブランドがついて行くと推定される。プラットフォームは、CPUだけでなく、チップセット群を含む。目的はマーケティングで、Intelが提供する製品や技術に対するユーザーの認知を容易にするためだ。
IntelのPat Gelsinger氏(Senior Vice President and General Manager, Digital Enterprise Group)は次のように説明する。
「製品の提供方法では、我々はプラットフォームに、よりフォーカスしつつある。CPUやチップセットなどを強調するのではなく、プラットフォームを強調する。例えば、Dempseyという名前はほとんど忘れてしまって『Dempsey? ……それなんだっけ、ああ、Bensleyプラットフォームのことか』といった風になるように。顧客がもっとプラットフォームに関心を持つようにフォーカスする。
将来的には、年単位のリズム(cadence)で、あるいはMP市場の場合は2年のリズムで、顧客が考えるように導く。そのために、我々はバリューと(1年または2年の)リズムをプラットフォームレベルで提供して行きたい。
それがなぜ理にかなっているのか。それは、我々が提供しようとしているテクノロジのいくつかは、CPUだけでなく、全てのフィーチャが連携することが必要だからだ。I/O ATはその好例だ。I/O ATでは、チップセットとCPUが連携しなければ働かない。LTも同様だ。それらは、CPUであるDempseyだけで語ることはできない。そのため、常に全てのコンポーネントを一緒に提供するようになる。顧客は、個別のコンポーネントレベルで(フィーチャの)違いを識別するのではなく、プラットフォームで識別するようになるだろう」
つまり、IntelはCPUやチップセットといった各コンポーネントのレベルではなく、今後は、それらの要素が揃った“プラットフォーム”を単位としてプロモートして行くわけだ。実際には、CPUとチップセットでは提供時期のずれがあるかもしれないが、その場合には、揃った段階でプラットフォームが成り立つという考え方になると推定される。
例えば、Presler/Cedarmillが2006年Q1に登場しても、チップセットの「Broadwater(ブロードウォータ)」は2006年Q2まで登場しないといった場合は、「Averill」と「Bridge Creek」プラットフォームが成立するのは2006年Q2ということになる。そうしたケースでは、顧客がCPUの移行はあまり意識せず、プラットフォームの移行だけを認知するようにして行くというわけだろう。それによって、クライアントやDPでは1年毎にフィーチャが更新されるリズムを、MPでは2年毎に更新されるリズムを作り出すというわけだ。
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●オーバーラップするプラットフォーム
Intelは、最近、下のような組織変更を行なった。
◎以前
Desktop Platform Group (デスクトップPC)
Mobile Platform Group (ノートPC)
Enterprise Platform Group (サーバー&ワークステーション)
Intel Communications Group (通信機器)
◎現在
Mobility Group (ノートPC、ハンドヘルド、通信機器)
Digital Enterprise Group (ビジネス向けコンピュータ&通信機器)
Digital Home Group (ディジタルホーム、家電)
Digital Health Group (医療分野)
Channel Products Group (チャネルマーケット)
Sales and Marketing Group (セールス&マーケティング)
これによって、各プラットフォームの事業部間の切り分けも変わった。推定される各事業部のプラットフォーム区分は上の図のようになる。最多数のプラットフォームを抱えるのはDigital Enterprise Groupだ。これは、旧Desktop Platform Groupの大半とEnterprise Platform Groupが合流したからだ。それに対して、Mobility Groupは1プラットフォームだけと推定される。
オーバーラップするのはDigital Home Groupだ。Digital Home Groupのプラットフォームにも、モバイルプラットフォームが含まれる。また、Digital Home Groupのデスクトップのパーソナルコンピューティングのプラットフォームは、構成ハード自体はエンタープライズのクライアントのLyndonとオーバーラップする。Digital Home Groupはデュアルコアにフォーカスしているという違いはあるものの、基本的には並列する。
これは、Digital Home Groupが現状では自前のハードを開発しておらず、他グループの開発したコンポーネントを使っているからだ。ただし、Digital Home Groupは自前のハード開発も視野に入れており、将来的にはこれも変わる可能性が高い。また、Digital Home Groupはプラットフォームのソフトウェアは自前で開発をしている。つまり、Anchor CreekとLyndonの違いには、ソフトウェアも含まれることになる。このあたりは、Intelのデジタルホームブランディングプロジェクト「East Folk」の一部だ。
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【3月4日】【IDF】モビリティ、デジタルホームのコンセプトPCが登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0304/idf07.htm
【3月3日】【海外】間に合わせ的なIntelのデュアルコアCPU
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0303/kaigai161.htm
(2005年3月9日)
[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]