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IDF Spring 2005レポート

モビリティ、デジタルホームのコンセプトPCが登場

3月2日(現地時間) 開催

 IDF2日目の基調講演は、主席副社長兼モビリティ共同事業本部長のショーン・マローニ氏による「The Mobile Era」と名付けられたモビリティに関する講演と、デジタルホーム事業本部副社長兼本部長のドン・マクドナルド氏による「Leave No Home Behind」と名付けられたデジタルホームに関する講演が行なわれた。

●「Coverage is King」を合言葉にWiMAXを促進

Intel主席副社長兼モビリティ共同事業本部長のショーン・マローニ氏

 同社が先日行なった組織変更により、ノートPCからPDA、携帯電話などのモバイルデバイス全般と、無線LAN、WiMAXといった通信機器を扱うモビリティ事業本部の事業本部長に就任したショーン・マローニ氏。事業部で扱うソリューションから予想されたとおり非常に広範な内容の講演となったが、まずは「モバイルデバイスの爆発的な技術革新と普及=イノベーションが進んでいる」の言葉でスタート。

 半導体の売り上げの過去10年を見ると、モバイルデバイスの比率は全体の市場の中で、'95年では12%、今は3分の1ぐらいの半導体が低消費電力のモバイルデバイス向けに作られている。このモビリティ時代と表現できる時代の主役の1つとして、まずは携帯電話の例を挙げている。

 コミュニケーションデバイスの基本である電話は、1876年に登場し、回線数を増やしてきた。そして'73年。Motorolaのマーティン・ クーパー氏によって携帯電話のデモンストレーションが行なわれ、そこからワイヤレスでコミュニケーションを行なえる携帯電話の利用が爆発的に伸びてきた。

 携帯電話のネックとして帯域幅の問題点があるが、最近になってCDMA2000やW-CDMAといった高速データ通信が行なえる規格が登場。帯域幅が広がればアプリケーションへの要求も高まり、さらなる高性能が要求されるようになる。また、こうしたハンドヘルドデバイスはもっとメインストリームへ食い込んでくるであろうとしている。こうした点に対し同社では、ハイエンドからローエンドまで、すべてのセグメントに渡って、ハンドヘルドデバイス向けのプロセッサをラインナップしていくことで応えていくと述べた。

 また、携帯電話などで利用されるフラッシュメモリの発表も行なわれ、「Sibley」と呼ばれる、90nmプロセスで製造されるMLC(Multi-Level Cell:多値セル)型のフラッシュメモリを公開している。

 さらに、組み込み機器など携帯電話以外での運用を想定した低価格ソリューションの「Sixmile」や、同社が提唱するマルチメディア向けファイルシステムのFlash Data Integratorをサポートする「Naubinway」、65nmプロセスのフラッシュメモリといった製品も合わせてアナウンスした。

携帯電話などのハンドヘルド機器向けプロセッサを、ハイエンドからローエンドに渡ってリリースする。このプラットフォームは「Hermon」と名付けられている MCL型のフラッシュメモリ「Sibley」や、組み込み機器向けフラッシュ「Sixmile」、マルチメディア向けファイルシステムに対応する「Naubinway」を紹介 90nmプロセスで製造されるSibleyのウェハ

 同氏は、2~3年後には携帯電話はカメラ対応、動画再生可能、ローカルストレージ搭載、ハイスピードネットワークに接続可能なデバイスとなるので、シームレスにノートPCと統合できる点が重要であると述べた。このための機能として「One Button Connect」と呼ばれる技術がデモンストレーションされた。これは、ノートPCと携帯電話を、ワイヤレスで相互に検出させる機能で、携帯電話のストレージとしてノートPCを利用したり、ノートPCのワイヤレス通信用デバイスとして携帯電話を利用するといった機能が想定されている。この技術は2006年にイネーブルになる予定で、次回のIDFで詳しく解説される予定だ。


 このほかノートPCの分野では、新しいプラットフォームとして、Napaプラットフォームがすでに公開されているが、このプラットフォームの機能として、SSEや浮動小数点ユニットを強化した「Intel Digital Media Boost」、温度管理機能の「Intel Advanced Thermal Manager」、無線LANの接続性を向上させる「Smart Wireless Solutions」、アプリケーションに基づき2つのコアの処理性能と消費電力の調整を行なう「Dynamic Power Manager」といった機能が組み込まれることが公表された。さらに、初代CentrinoのCarmelプラットフォームに対し、Napaでは3分の1にまでサイズをシュリンクできるという。

ノートPCプラットフォームは、今年登場したSonomaに続き、来年にはNapaが登場する。デュアルコアCPUのYonah、チップセットのCalistoga、無線LANモジュールのGolanで構成される Napaプラットフォームでサイズがシュリンクされることをアピールするスライドで、Golanを例にとり、シリコンの集積度や高速シリアルインタフェースなどの採用により面積が小さくなることをアピールしている

 また、今回の講演では、NapaプラットフォームのデュアルコアCPUであるYonahを使ったデモも行なわれた。シングルコアのDothanを使ったPCでは、Windows Media PlayerでMP3を再生しながらレンダリングなどの別タスクを動作させると再生中の音楽がカットアウトされてしまうが、デュアルコアなら、音楽がカットアウトされず、音楽再生とレンダリングが同時に実行されることを示している。

Yonahのデモ。右下のパフォーマンスモニタに2個のコアが出ているのが分かる。バックグラウンドで音楽を再生しながら動画のレンダリングを行なうデモが行なわれている デモで利用されたYonahを搭載するノートPC

 さて、ここまでの話は主にモバイル関連製品のプラットフォームに関する内容だが、コミュニケーションに関する内容も語られている。ここでは、セルラー業界で「Coverage is King」という言葉で表される、帯域幅よりも無線の信号範囲を拡大することの重要性が真っ先に強調された。現在、日本ではブロードバンドは広く普及しているが、世界の世帯数で見るとブロードバンド利用率は3%に留まっており、無線によるブロードバンドが導入しやすい国、ヘルスケアや教育などブロードバンドが採用されやすい施設、ブロードバンドのほうがカッコイイといった認識などに応えていくことで、ビジネスチャンスが広がるとしている。

 このCoverageの極限を示すデモとして、「Connexion by Boeing」のデモが行なわれている。ボーイング社の航空機に組み込まれた無線LAN機能を使って、大西洋上空を飛ぶ飛行機と講演会場とを接続。128Kbitほどの帯域幅が出ているという状況で、ビデオチャットが行なわれた。ただし、講演中は接続ができず、数時間前に接続したというビデオが上映されたに留まった。

 また、Intelのコミュニケーションに関する講演ではおなじみの言葉となっているWiMAXについても触れられた。同社では、Wi-Fiはワイヤレスソリューションのグローバルスタンダードとなり、そのために対応製品が大量生産され、ローコストに導入できるになっていたが、Intelは、このWi-Fiが辿った流れと同じ状況をWiMAXでも実現しようとしている。

 現在の状況だが、WiMAX Forumへの参加企業は昨年春のIDFでは46社だったのが244社へ増加。WiMAXに関わるエンジニアはコンポーネントやシステム開発に関わる500名程度だったものが、ネットワークエンジニアやサービスエンジニアを含めて5,000名近くに上り、WiMAX通信のトライアルは2カ所から15カ所に増え、来年には75カ所となる。さらに、来年の段階でIEEE 802.11eの検証も開始するとして、WiMAXの普及を進めていることをアピールしている。

 このほか、同氏の講演では、「On The Go Entertainment Concept PC」というコンセプトモデルが紹介され、米国で普及しているデジタルビデオレコーダのTivoで録画したものをノートPCへ転送するデモが行なわれた。このコンセプトモデルは8.9型液晶を搭載したモバイルPCで、裏面には光学ドライブが搭載されている。このコンセプトPCをLand Roverに埋め込み、車内で動画などを視聴するといったユーセージモデルも示されている。

2005年のコンセプトモデルである「On The Go Entertainment Concept PC」 「On The Go Entertainment Concept PC」を組み込んだ、Land Roverの車内

●デジタルホームへはプラットフォームを問わずに導入

デジタルホーム事業本部副社長兼本部長のドン・マクドナルド氏

 ショーン・マローニ氏の講演に続いては、こちらも組織変更によって再編されたデジタルホーム事業本部の事業本部長ドン・マクドナルド氏が登場。マクドナルド氏は、Intelに18年勤め、3つの国を渡り歩いたという。家の外観は違っても、家の中で家族が分かち合うものは同じだということを経験として得ている。ここにデジタルホームを導入して、人々の生活を豊かにしたいという。

 そこで、同氏はデジタルホームの定義を広げようと考えていると表明した。セットトップボックスを持っている人や、複数のPCを持っていてブロードバンド接続しているだけの人でも、MP3プレーヤーを持っているだけの人でもいいというのだ。

 これはビジネスチャンスを拡大することにつながる。現在全世界には16億世帯の家庭があると推測されているが、国が違えばニーズも習慣も異なってくる。世界中の優れた開発コミュニティが、この16億世帯を対象としたグローバルな市場を利用できることは、大きなビジネスチャンスとなるわけだ。

 このデジタルホーム普及に対する1つの問題点として、人によってデジタルホームのエントリーポイントが異なるという点を挙げた。ただ、デジタルホームに関連する機器のすべてがネットワーク機能を有し、ブロードバンドへ接続できる。そして新しいデバイスを追加することで、「ネットワークの価値はノード数の2乗に比例する」という、メトカーフの法則に則ったネットワークの価値の高まりを見せているというのだ。

 このメトカーフの法則こそ、デジタルホームの柱となるものと同氏は言う。インターネットはビジネスを中心に広がりを見せたが、デジタルホームも同様の道を辿りたいとしている。ただし、策定された共通の仕様があり、それに基づいて機能が実装されていったからこそインターネットは普及したのであり、デジタルホームでも同様に共通スペックに基づく成長を行なわなければならないとも述べた。

 その共通スペックの1つがコンテンツ保護機能のDTCP/IPで、現在120社以上がライセンス提供を受け、サンプルインプリメンテーションキットを入手しているという。また、壇上にMicrosoftのWindows eHome Division General ManagerであるJoe Belfiore氏が登場。MicrosoftとIntelがデジタルホームに対して同じビジョンを持って取り組んでおり、デジタルホームのことをコンシューマにも理解してほしい、と訴えた。

 また、プロテクションがかけられたコンテンツを家庭内で自由に移動できることがコンテンツの価値を高めるとし、デバイスの相互運用性を定めたDLNAの推進でも協力しているという。ちなみに、DLNAは現在、14カ国、210社を超える企業が参加しているそうだ。

 さて、ここまではデジタルホームに対する取り組みを述べてきているが、デジタルホームのプラットフォームのロードマップについても言及があった。ここで同氏は消費者にスポットを当てたプラットフォーム作りをしていきたいとしており、Intelの技術で足りない点は、他社とのコラボレーションで解決していきたいと述べている。

 このプラットフォームは3つが用意されているが、1つは先のショーン・マローニ氏の講演にあったハンドヘルドデバイスのプラットフォームである。

 次がセットトップボックスなどで利用される、コンシューマ・エレクロトニクスプラットフォームである。このプラットフォームはIntel 815/830を使ったPentiumベースの環境だが、そのビデオプロセッサに先月末に買収したOplus Technologiesの製品を採用することを決めている。

コンシューマ・エレクトロニクスプラットフォームでは、ビデオプロセッシングに先月買収を発表したOplusの「Rembrandt」「Matisse」「Monet」などの技術を導入 デスクトッププラットフォームは、2005年はPentium D/XE+Intel 955X/945を中心とした「Anchor Creek」、2006年には65nmプロセスで製造されるPresler+Broadwaterを中心とした「Bridge Creek」へと移行する

 最後がPCのプラットフォームである。今年は「Smithfield」のコードネームで知られるデュアルコアのCPU「Pentium D」「Pentium Extreme Edition」と、Intel 955X/945シリーズを組み合わせた「Anchor Creek」プラットフォームを展開していき、来年には65nmのデュアルコアCPU「Presler」と、「Broadwater」のコードネームを持つチップセットを中心とした「Bridge Creek」プラットフォームを展開していくという。また、モバイルPCについても、先のマローニ氏の講演にあったとおり、来年以降にNapaが投入される。

 ここで、マルチコア製品を使ったデジタルホームの一例として、HDコンテンツを視聴しながら、デジタルメディアアダプタを介してゲームを配信するデモが実施された。また、PCを保護する技術として、VM Wareを使ったVirturelization Technologyのデモも行なわれている。

左側の液晶TVに接続されたデュアルコアのPentium XE搭載PCでHDコンテンツを再生しつつ、デジタルメディアアダプタを介して、右側の人へゲームを配信しているデモ HDコンテンツ再生とゲーム配信を同時に行なっているPentium XEマシン。パフォーマンスモニタで4つのコアが動作していることを確認できる VM Wareを使ったVirtualization Technologyのデモ。ここではPentium XEのリソースを5つに分け、別々のホストOSを走らせているが、トラブルが起こったパーティションのみをリスタートさせている

 このプラットフォームに関する講演中、プラットフォーム、プロセッサを問わずにデジタルホーム機器へ採用していくと同氏は述べた。これは、例えばデスクトップのようなPCにモバイルプラットフォームを採用するといったことを表している。マルチコアのCentrinoを利用すれば、1W当たりのパフォーマンスが高い高性能なスモールフォームファクタを作ることができるからだ。

 その例として、Mac miniを彷彿させる小型のコンセプトモデル「Sleek Concept Entertainment PC」や、「Slender Form Factor PC」という極めてスリムなコンセプトモデルを紹介している。これらはいずれもNapaプラットフォームをベースとしたものである。Centrinoを成功に導いた立役者の一人であるマクドナルド氏らしい動きでもあり、今後のデジタルホーム機器への期待を抱かせる内容となった今回の基調講演だった。

Yonahを採用した小型PCのコンセプトモデル「Sleek Concept Entertainment PC」 Napaプラットフォームを採用したスリムなコンセプトモデル「Slender Form Factor PC」

□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□IDFのホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/spring2005/systems/

(2005年3月4日)

[Reported by 多和田新也]

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