エプソンダイレクトから3月1日に発表された「Endeavor NT9000Pro」(以下、NT9000Pro)は、Intelの最新チップセット「Intel 915PM Express」やPCI Express対応ビデオチップ「GeForce Go6600」を搭載したハイエンドノートPCだ。 いわゆるSonoma世代のノートPCは他社からも登場しているが、NT9000Proは、いち早くExpressカードスロットを装備するなど、最新技術を採用していることが特徴だ。 今回、NT9000Proの試作機を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。 ●BTOでCPUやメモリ容量を自由に選べる NT9000Proは、NT7200Proの上位となるフラッグシップモデルで、ボディのデザインも一新されている。デザインはオーソドックスなもので、万人受けしそうである。ボディカラーはブラックとシルバーを基調としており、落ち着いた印象を受ける。フレーム構造を採用し、十分な剛性を確保しており、質感もなかなかいい。ボディサイズは357×276×35mmと大きく、重量も約3.1kgと重量級だ。もちろん、携帯性を重視した製品ではないので、サイズや重量が大きいことが弱点となるわけではない。 NT9000Proは、エプソンダイレクトの他の製品と同様に、BTOメニューが充実しているので、予算や用途に応じて最適な構成のマシンを購入できることが魅力だ。CPUは、FSB533MHzのPentium M 730~Penitum M 770の中から選択可能。 今回試用した製品では、最上位から2番目となるPentium M 760(実クロック2GHz)が搭載されていた。チップセットとしては、Intelの最新チップセット「Intel 915PM Express」を採用。PCI Expressをサポートする。 メモリは、PC2-4200 DDR2 SDRAMを採用。メモリスロットは、キーボードの下側に1つと本体裏側に1つ用意されており、同容量のSO-DIMMを2枚同時に装着することで、デュアルチャネルアクセスが可能になる。BTOでは、512MB~2GBの中から選べる。試用機では256MB DDR2 SO-DIMMが2枚で、合計512MBのメモリが実装されていた。
液晶ディスプレイは、WUXGA対応の15.4型ワイド液晶パネル(1,920×1,200ドット)またはSXGA+対応の15型液晶パネル(1,400×1,050ドット)の2種類から選択できる。試用機では15.4型ワイド液晶パネルが搭載されていた。1,920×1,200ドット表示は、UXGA(1,600×1,200ドット)がさらに横に320ドット分広がったもので、解像度の高さは圧巻である。 エントリークラスやメインストリームクラスのノートPCでは、依然としてXGA(1,024×768ドット)が主流だが、NT9000ProのWUXGA対応液晶なら、一度に画面に表示できる情報量は約2.9倍にもなる。解像度が高いので複数のウィンドウを同時に開いても、快適に作業可能だ。 精細度が高い分、ドットピッチは小さくなるが、文字が小さくて見にくいというのなら、フォントサイズを大きくすればよい。アイコンのサイズやフォントサイズをワンタッチで変更可能なユーティリティソフト「Liquid View」もプリインストールされている。 バックライトの輝度は手動で16段階に変更できるほか、ディスプレイ上部にライトセンサが用意されており、周囲の明るさに応じて自動的に輝度を変更する機能も装備している(自動輝度調整時のベース輝度は8段階に変更可能)。 HDD容量は40GB/60GB/80GBから選択可能だ。HDDインターフェイスは、Serial ATAを採用しており、試用機では富士通製の「MHT2080BH」(80GB)が搭載されていた。裏蓋のネジを2本外すだけで、HDDへアクセスが可能なので、交換も比較的容易であろう(もちろん、ユーザーによるHDDの交換はメーカー保証外の行為となるが)。MHT20BHシリーズの回転数は5,400rpmで、8MBキャッシュを装備しているため、パフォーマンスも高い。 光学ドライブは、CD-RW/DVD-ROMコンボドライブまたはDVD+R DL対応のDVDスーパーマルチドライブを選択できる。試用機では、DVDスーパーマルチドライブ(松下製:UJ-840)が搭載されていた。DVD±Rメディアには最大8倍速記録が可能であり、性能的にも不満はない。光学ドライブは着脱可能なモジュラーベイに装着されており、代わりにセカンドバッテリモジュールやセカンドHDDモジュール(40GB/60GB/80GB/100GB、インターフェイスはUltra ATA/100)を装着することもできる。
●最新のGeForce Go6600を搭載し、高い3D描画性能を実現 ビデオチップとして、GeForce Go6600を搭載していることも特筆できる。GeForce Go6600は、Shader Model 3.0をサポートした最新のビデオチップで、高い3D描画性能を誇る。ビデオメモリは64MBまたは128MBから選択可能だ(試用機のビデオメモリは128MB)。 なお、ForceWareの隠し機能を利用してGeForce Go6600のコアクロックとメモリクロックを調べてみたところ、2D表示時のコアクロックは100MHz、3D表示時のコアクロックは250MHz、メモリクロックは2D表示時、3D表示時ともに400MHzであった。デスクトップ用のGeForce 6600に比べると、コアクロック、メモリクロックともに低く設定されているようだ。 ●16:9のワイドタッチパッドを採用本体のサイズが大きいので、キーボードもゆったりしている。キーピッチは19mm、キーストロークは3mmと十分で、キー配列も標準的だ。キーボード中央部分を強く押しても、たわむようなこともない。 キーボードの右上には、5つのインスタントキーが用意されており、よく使う機能をワンタッチで呼び出すことができる。内蔵無線LAN機能やタッチパッドのON/OFFも、このインスタントキーで可能だ。無線LANインジケータや電源関係のインジケータ類は、キーボード上部と、本体上面の2カ所に用意されている。 ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されているが、アスペクト比が16:9のワイドタイプになっていることが特徴だ。パッドの面積が広いので、使いやすい。また、本体前面に用意されている音楽CD再生キーを使うことで、本体の電源を入れずに音楽CDの再生が可能だが、曲数や曲番号などは表示されない。
NT9000Proは、インターフェイス類も非常に充実している。ポート類としては、USB 2.0×5、IEEE 1394(4ピン)、外部ディスプレイ出力、ヘッドホン出力/光デジタル出力、Sビデオ出力などを装備している。USB 2.0ポートは、背面に4ポートと左側面に1ポートが用意されており、合計5ポートとなっている。USBハブを使わずに多くの周辺機器を接続できるのは嬉しい。通信機能としては、1000BASE-T対応LANと56kbpsモデムに加えて、IEEE 802.11a/b/g対応の無線LAN機能もBTOとして選択可能だ。 カードスロットとして、PCカードスロット(Type2×1)とSDメモリーカード/MMC/メモリースティックに対応した3in1スロットに加えて、Expressカードスロットを装備していることも特筆できる。 Expressカードは、PCカードの後継として考案された規格で、USB 2.0またはPCI Express経由で接続されるため、PCカードに比べて転送速度が高速なことがメリットだ。カードのサイズは、横幅34mmのExpress Card/34と、横幅54mmのExpress Card/54の2種類が規定されている。Express Card/54もスロット部分の幅は34mmなので、階段状に幅が太くなっているユニークなデザインを採用している。 国内で発表されたノートPCとして、Expressカードスロットを装備した製品は、NT9000Proが初となる。しかし、Expressカードはまだ市場に登場しておらず、スロットだけあってもまだ利用できないわけだが、今後登場するであろうExpressカードにいち早く対応したことは評価できる。ただし、PCカードスロット、3in1スロット、Expressカードスロットともに、フタがダミーカード方式になっているのは少々残念だ。 オーディオ機能としては、IntelHDオーディオを搭載。本体前面に、ステレオスピーカーを内蔵しており、高品位なサウンドを楽しめる。 バッテリは14.8V、4,800mAhという仕様で、公称約4時間の駆動が可能である。ACアダプタは、このクラスの製品としてはかなりコンパクトだ。 NT9000Proは、冷却用にファンを2基装備しているが、ファンの騒音も比較的静かだ。底面のカバーを外すことで、CPUやHDD、無線LANカードなどにアクセスできるようになっている。このあたりも、BTOによるカスタマイズを前提に設計されているのであろう。
参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのMobileMark 2002、SYSmark 2002、Futuremarkの3DMark2001 SEおよび3DMark03、id softwareのQuake III Arenaを利用した。 MobileMark 2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark 2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。また、3DMark2001 SEやQuake III Arenaは、3D描画性能を計測するベンチマークだ。MobileMark 2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、電源プロパティの設定を「常にオン」で計測した。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較対照用にPentium M 740を搭載したVAIO type F VGN-FS70B、Pentium M 1.50GHzを搭載したVAIO type S VGN-S70B、Pentium M 715を搭載したQosmio E10/1KLDEWの結果も掲載してある。 【Endeavor NT9000Proのベンチマーク結果】
NT9000ProのMoblieMark 2002のPerformance ratingは214で、VAIO type Fとほぼ同等だが、それ以外の2機種に比べると格段に高い。バッテリ駆動時間を示すBattery life ratingの値は168(2時間48分)であり、携帯性よりも性能を重視したフルサイズノートPCとしては長い部類に入る。 SYSmark 2002についてだが、今回の試用機では、Internet Content Creationが途中でエラーになってしまったので、スコアはOffice Productivityのみとなっている。NT9000ProのOffice Productivityのスコアは218と非常に高い。5,400rpmの高速HDDを採用していることが効いているのであろう。 3DMark2001 SEや3DMark03、Quake III Arenaといった3D系ベンチマークの結果も、期待通りのスコアを叩き出している。特に3DMark03のスコアは高く、GeForce Go 6200 with TCを搭載したVAIO type Fの約2倍のスコアを記録している。これだけのパフォーマンスがあれば、最新ゲームも十分遊べるであろう。 NT9000Proは、高解像度液晶や高性能ビデオチップ、DDR2メモリといった最新技術を惜しげもなく採用し、デスクトップPCに匹敵する性能を実現していることが魅力だ。コストパフォーマンスも高いので、初めてパソコンを買う人にもお勧めできる。 □関連記事 (2005年3月7日)
[Reported by 石井英男]
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