三浦優子のIT業界通信

ソフマップ=ビックカメラ提携で何が変わるか




 ビックカメラのソフマップへの資本参加と業務提携が発表された。現在のところ、ビックカメラでは、「提携後の業態変更などについては、設置される委員会で決定するため、まだ何も決まっていない」とコメントするにとどまっている。

 この提携がPC業界に何をもたらすのか、業界関係者の意見から探ってみよう。


●PC関連事業の売却を進める丸紅

 2社の資本提携が発表となった1月24日の夕刻、ソフマップも加盟する、社団法人日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)が新春セミナーと懇親会を開催中であった。

 JCSSAは、コンピュータを販売する量販店、専門店、システムインテグレーター、ディストリビューターなどが加盟する社団法人。24日のセミナーでは主要PCメーカー7社の首脳陣が2005年の製品販売施策の発表を行なったこともあって、セミナー、懇親会ともに会場は満員となった。

 両社の提携のニュースを携帯電話などで受けた参加者も多かったようで、この件についてヒソヒソと話し合う姿があちこちで見受けられた。

 実は当日セミナーの前に開催されたJCSSAの理事会には、理事であるソフマップの山科光男社長は姿を見せなかった。理事の一人は、「山科社長が欠席する場合でも、代理の人が参加するはずなのにおかしいなとは思っていたが、ニュースを聞いて納得した」と話している。

 もっともこのニュースを聞いて、「突然の発表」と受け止めた人は少なかったようだ。

 「以前から、そういう話があることは聞いていた。ついに正式に発表になったのか」、「ビックカメラに決まったの? 丸紅さんから、色々なところに打診があったようだが」などの感想が会場では聞かれた。

 ビックカメラ以外にも丸紅が保有していたソフマップの株式を売却したいという話が、複数の企業に対して持ちかけられていたようだ。

 ここのところ、丸紅では保有していたPC関連企業の株式売却を積極的に進めている。2004年11月には、エレコムによるロジテックの買収が発表になったが、ロジテックの主要株主も丸紅であった。

 これは、「当初はメーカー、流通などPC関連企業の株式を総合的に保有することで、商社である丸紅としても高いシナジーを出すことができるのではないかと考えていたが、思うようにシナジーが出せなかった」(関係者)という背景があるようだ。

 丸紅としてはソフマップ株を今年度中に売却し、連結決算の対象からはずすという狙いもあり、この時期に発表となったようだ。ついでにいえば、ビックカメラが出資比率を20%以下に抑えたのも持ち分法適用対象会社になることを避けるためと思われる。

●大型店による中古品販売競争の始まり

 それでは肝心のPC販売において、ビックカメラ・ソフマップ連合の誕生によって何が起こるのだろう。

 まず、PCメーカーの首脳陣だが、プラス効果が出てくると前向きに受け止める見方が多い。

 NECの片山徹執行役員常務は、「マイナス影響はないだろう。決して悪い話ではない」と話す。

 アップルコンピュータの山元賢司代表取締役は、「ビックカメラさんにPC専門店のノウハウが加わるのは、当社にとっても歓迎すべきこと」と指摘する。

 一方、ソフマップの本社があり、多くの店舗がある秋葉原地区はどう受け止めるのか。ヨドバシカメラの出店など、秋葉原地区へのカメラ量販店の進出にはナーバスになっているのだが、秋葉原のPC専門店幹部は、「影響はあまりないのではないか」と話す。

 そしてその理由として、「秋葉原地区のソフマップは小規模店舗が多く、大規模店舗を指向するビックカメラが即、ソフマップの現店舗を利用するとは考えにくい」ことをあげる。

 むしろ、「影響が起こるのは、ビックカメラがソフマップの中古品販売ノウハウをどう活用していくのかという点にある」と複数の販売店幹部が指摘する。

 中古販売は販売店にとって利益率が高いビジネスとなるものの、商品の買い取り、販売などにはノウハウが必要となる。中古品の買い取り、販売を事業とする店舗が限られているのはここに理由がある。

 また、別な販売店幹部は、「中古品販売を事業とする時、一番大変なのは商品を集めること。買い取りを新たに始めても、中古販売で実績ある店舗に商品が集中する傾向がある」と販売店にとっては中古品販売事業が思うように拡大できない難しい事業だという。

 それだけにビックカメラ・ソフマップ連合が誕生したことで、「中古PCの買い取りと販売には、大きな影響が出てくることは間違いない」と複数の関係者が一致した見方をしている。

 実は昨年後半から、これまでは中古品の買い取り、販売をほとんど展開してこなかった大手家電量販店が、中古事業の拡大のための準備を進めているのだという。

 「今回、ビックカメラがソフマップと資本提携した最大の要因は、こうした動きに対抗することではないか」というのだ。

●小規模専門店にはさらに厳しい戦い

 「2005年はPCショップにとって、大きな転機の幕開けとなる年になるのではないか」と見る業界関係者は多い。

 ヨドバシカメラの秋葉原店、ヤマダ電機の大阪日本橋の大規模店舗など、現在建設中の大規模店舗の登場により、小規模専門店には厳しい時代となると言われている。

 これまでは小規模店舗には、大型店にはない専門知識やノウハウがあり、それがセールスポイントとされてきた。中古品の買い取り、販売もそのひとつだった。しかし、今回の資本提携のようにカメラ量販店が中古品販売のノウハウを獲得することも十分に可能となる。

 中小規模の専門店にとっては、さらに厳しい戦いが強いられることになりそうだ。

□JCSSAのホームページ
http://www.jcssa.or.jp/
□関連記事
【1月24日】ソフマップにビックカメラが出資
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0124/sofmap.htm

バックナンバー

(2005年1月25日)

[Reported by 三浦優子]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.