NVIDIAが8月12日に発表したGeForce 6600/6600 GTは、コードネームNV43で呼ばれていたミドルレンジ用ビデオチップで、NVIDIA初のネイティブPCI Express対応製品である。すでに登場しているハイエンドチップGeForce 6800シリーズの下位にあたる製品だが、Shader Model 3.0に対応するなど、機能的にはGeForce 6800シリーズをそのまま受け継いでいる。 今回は、GeForce 6600 GTのリファレンスカードを入手したので、早速その性能を検証していくことにしたい。 ●0.11μmプロセスルールで製造GeForce 6600シリーズの詳細については、日本での発表会の様子などをご覧いただくことにして、ここでは上位のGeForce 6800シリーズとの比較を表にまとめてみた。 GeForce 6600シリーズは、大まかにいって、GeForce 6800シリーズのパイプラインやバーテックスシェーダの数を半分に削減したものだと思えばよい。ATI Technologiesの製品ではまだサポートされていないShader Model 3.0に対応しているほか、NVIDIA独自の影生成高速化機能「UltraShadow II」も搭載しており、機能面ではGeFroce 6800シリーズと比べても見劣りしない。 NVIDIAのビデオチップとして初めて、0.11μmプロセスルールを採用していることも特徴だ。上位のGeForce 6600 GTのコアクロックは500MHzで、0.13μmプロセスルールを採用したGeForce 6800 Ultraよりもコアクロックは100MHzも高い。 消費電力は、GeForce 6800シリーズに比べて大幅に低減されており、GeForce 6800シリーズでは必須だった外部電源コネクタは不要となっている。 GeForce 6600シリーズは、ネイティブでPCI Expressに対応していることも特筆できる。従来のGeForce PCXシリーズやPCI Express対応版のGeForce 6800シリーズでは、ビデオチップのネイティブインターフェースはAGP 8Xで、HSIと呼ばれるAGP-PCI Express変換チップを利用して、PCI Expressへの対応を行なっていた(PCI Express対応版のGeForce 6800シリーズでは、同じサブストレート上にビデオチップ本体とHSIを集積している)。 それに対して、GeForce 6600シリーズでは、ネイティブPCI Express対応であるため、変換チップは不要だ。なお、HSIは双方向の変換チップであるため、HSIを併用することで、AGPへの対応も可能になる。 また、上位のGeForce 6600 GTのみ、SLI(Scalable Link Interface)に対応しており、2枚同時動作が可能である。 【GeForce 6800シリーズとGeForce 6600シリーズの仕様比較】
●外部電源コネクタ不要で、カード長も短い今回は、GeForce 6600 GT搭載リファレンスカードを入手したので、早速ベンチマークテストを行なってみた。テスト環境は以下に示したとおりで、比較対照用としてPCI Express対応版のGeForce 6800 GT(ビデオメモリ256MB)を用意した。ディスプレイドライバは、GeForce 6600 GT搭載リファレンスカードに付属していたForceWare v65.76を利用した。 前述したように、GeForce 6800 GTでは、PCI Express x16スロットからの給電では電力が足りず、外部電源コネクタを装備しているが、GeForce 6600 GTでは、外部電源コネクタは用意されていない。そのため、GeForce 6800 GT搭載リファレンスカードのカード長は約205mmだったのに対し、GeForce 6600 GT搭載リファレンスカードのカード長は約174mmと、3cmほど短くなっている。
ベンチマークテストとしては、DirectX 8環境でのパフォーマンスを計測する3DMark2001 SE(Build 330)とUnreal Tournament 2003のFlyby、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 2、DirectX 9環境でのパフォーマンスを計測する3DMark03(Build 340)とAquaMark3、さらにGeForce 6シリーズに最適化されているといわれる最新ゲームのDOOM 3を用いた。 3DMark2001 SEと3DMark03、AquaMark3は、1,024×768ドット/1,280×1,024ドット/1,600×1,200ドットの3種類の解像度で、それぞれFSAA無効/FSAA 4X有効/FSAA 4X有効+異方性フィルタリング8X有効(Aniso 8X)という条件で、Unreal Tournament 2003は、1,280×960ドット/1,600×1,200ドットの2種類の解像度で、それぞれFSAA無効/FSAA 4X有効/FSAA 4X有効+異方性フィルタリング8X有効(Aniso 8X)という条件で計測を行なった。 また、FINAL FANTASY Official Benchmark 2については、Lowモード(640×480ドット)とHighモード(1,024×768ドット)の2種類の解像度で、それぞれFSAA無効/FSAA 4X有効/FSAA 4X有効+異方性フィルタリング8X有効(Aniso 8X)という条件で計測を行ない、DOOM 3については、DOOM 3用プロファイルを利用して計測(DOOM 3の設定はUltraクオリティ)で、1,280×1024ドット/1,600×1,200ドットの2種類の解像度で、それぞれFSAA無効/FSAA 4X有効/FSAA 4X有効+異方性フィルタリング8X有効(Aniso 8X)という条件で計測を行なった。 【テスト環境】
●低負荷時のDirectX 8ベースのベンチマークではGeForce 6800 GTに迫る性能まず、DirectX 8ベースのベンチマーク結果から見ていきたい。3DMark2001 SE(グラフ1)のスコアをGeForce 6800 GTの結果と比較すると、負荷の低い1,024×768ドットでFSAA無効時は、GeForce 6800 GTと比べても1割程度しかスコアが低下していないが、負荷が高くなるにつれて、差が大きくなっていき、1,600×1,200ドット/FSAA 4X/Aniso 8Xモードでは約半分のスコアとなっている。 GeForce 6600 GTでは、パイプライン本数が半分の8本に削減されているだけでなく、メモリバス幅もGeForce 6800 GTの半分の128bit幅となっているため、メモリ帯域幅も半分となる。そのため、高解像度でFSAAや異方性フィルタリングを有効にすると、メモリ帯域幅に余裕がなくなり、スコアが低下するのであろう。 Unreal Tournament 2003 Flyby(グラフ2)のフレームレートも、3DMark2001 SEの結果と傾向はよく似ている。低負荷時では、上位モデルのGeForce 6800 GTにかなり近い値となっているが、1,600×1,200ドット/FSAA 4X/Aniso 8Xでは半分以下のフレームレートしか出ていない。しかし、その状態でも76.9fps出ているのであるから、ミドルレンジクラスのビデオカードとしては非常に高いパフォーマンスだといえるだろう。 FINAL FANTASY XI Official Benchmark 2(グラフ3)のスコアは、計測条件にかかわらずGeForce 6800 GTとGeForce 6600 GTとの差は大きくない。FINAL FANTASY XI Official Benchmark 2は、高解像度モードでも1,024×768ドット止まりであり、このクラスのビデオカードにとってはすでに負荷が低すぎるテストだといえる。
●DOOM 3でも快適にプレイできるパフォーマンスを実現次に、DirectX 9ベースのベンチマークテストの結果を比較してみる。3DMark03(グラフ4)のスコアは、低負荷時ではGeForce 6800 GTの約7割だが、負荷が高くなると半分近くまで差が開く。FSAA 4Xを有効にしたときのスコアの落ち込みも、GeForce 6800 GTよりGeForce 6600 GTの方が大きい。このあたりは、やはりパイプライン本数やバーテックスシェーダーが半分に削減され、メモリ帯域幅も半分になっていることが影響しているのであろう。 AquaMark3(グラフ5)のフレームレートについても、傾向は3DMark03と似ているが、3DMark03に比べるとGeForce 6600 GTとGeForce 6800 GTのスコア差は小さい。 話題のDOOM 3(グラフ6)のフレームレートは、1,280×1,024ドットのFSAAなしでは、45.9fpsを記録している。GeForce 6800 GTでのフレームレートは62.8fpsなので、フレームレートは約7割となっている。FSAA 4Xを有効にすると、さすがに26.1fpsまで落ち込むが、1,280×1,024ドット程度の解像度があれば、FSAA有効/無効の差はゲーム中にほとんど感じられないレベルである。この種のFPSを快適にプレイするには、最低30fps、できれば40fps程度のフレームレートが欲しいとされているが、GeForce 6600 GTならその条件を十分クリアできる。
●ミドルレンジのビデオカードとしては、抜群のコストパフォーマンスを誇るGeForce 6600 GTはミドルレンジながら、8パイプラインを装備し、昨年のハイエンドチップに匹敵する性能を実現している。ライバルのATI Technologiesも、コードネーム「R410」と呼ばれるミドルレンジの新製品を近日中に投入予定だが、現時点のミドルレンジビデオカードとしては、GeForce 6600 GTはダントツの性能を持っているといえる。 もちろん、絶対的なパフォーマンスは上位のGeForce 6800 GTには及ばないが、GeForce 6600 GTの実売価格は2万円台半ばになるとされており、GeForce 6800 GTの半分程度の価格である(GeForce 6800 GTについてはAGP版の価格で比較)。 今回のテスト結果で明らかになったように、GeForce 6600 GTは、低負荷時ならGeForce 6800 GTの約7割以上のパフォーマンスを実現しており、コストパフォーマンスは高い。 また、NVIDIA自らが「DOOM 3 GPU」と謳っていることからもわかるように、DOOM 3との相性は非常によい。旧世代のビデオカードを利用していて、DOOM 3の動作速度に不満があるというのなら、GeForce 6600シリーズに乗り換える価値はあるだろう。 その場合、現時点ではPCI Express版しか登場していないので、マザーボードやCPUなどのプラットフォームも一新しなくてはならず、かなり高く付いてしまうことが問題だが、11月頃にはAGP版のGeForce 6600シリーズ搭載製品が登場する予定なので、それまで待つのも手だ。 □関連記事 (2004年9月16日)
[Reported by 石井英男]
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