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エプソン、第1四半期は大幅な増益
~インクジェットプリンタ事業の方針を転換

木村登志男副社長

7月28日 発表



 セイコーエプソン株式会社は、2004年度第1四半期(4~6月)連結決算を発表した。

 これによると、売上高は前年同期比5.6%増の3,329億2,600万円、営業利益は130.2%増の327億3,300万円、経常利益は145.9%増の316億3,900万円、当期純利益は195.1%増の176億700万円と増収増益の好決算。なかでも、大幅な増益が目立つ決算となった。

 増益に貢献したのは、電子デバイス事業。売上高は前年同期比9.7%増の1,070億9,800万円、営業利益は191億5,500万円となり、前年同期の7億円に比べて2,316.9%増となった。

 携帯電話向けのSTN液晶が、モノクロの生産縮小とカラーの競争激化で大幅な減収となったものの、米国市場を中心とするプロジェクター需要に支えられた液晶プロジェクター用高温ポリシリコンTFT液晶パネルや、中国や欧州における携帯電話のアクティブカラー化によって需要が増大したMD-TFT液晶ディスプレイが大幅な増収となった。

 さらに、携帯電話向けのシステムLSIの出荷数量の急増、および半導体の製造委託ビジネスであるシリコンファンドリ事業が好調であったことが貢献。また、携帯電話およびデジタルカメラ向けの音叉型水晶振動子、クロック用水晶発振器の数量が伸びたことが大幅な増収につながった。

 一方、情報関連機器事業は、売上高は前年同期比3.6%増の2,124億5,400万円。営業利益は4%減の149億5,000万円と増収減益となった。

 増収の要因は、インクジェットプリンタやレーザープリンタの好調ぶり。また、液晶プロジェクターが「国内においても、3種類のラインアップを揃え、松下と三洋を抑えトップを維持している」(セイコーエプソン 木村登志男副社長)として、増収に貢献。マルチファンクションプリンタの数量増加も増収に貢献した。

 だが、マルチファンクションプリンタは他社よりも導入が遅れたこともあって販促関連の投資が拡大。結果として減益の要因となった。

 また、インクジェットプリンタ事業については、今年度から事業方針を大きく転換したことを示した。

 木村登志男副社長は、次のように語った。

 「いままでは、すべての製品ラインアップをまんべんなく販売してきたが、これを採算性の高い製品に絞り込んで販売促進を行なうという手法に転換した。具体的には、当社の優位性が発揮できる顔料系インクのプリンタを積極的に販売するという手法だ。

 欧米においても、シングルファンクションのフォトプリンタにフォーカスし、顔料系インクの強みを発揮する戦略とした。さらに、米国での急激な価格低下に関しても、従来はシェアを落とさないために価格ダウンに追随していたが、これを見直し、すぐに追随せずに、じっと我慢することで、総合的に見て収益を確保する戦略とした。

 また、製造コストのダウンへの取り組み、生産および開発工程の見直し、販売管理費の削減などにも取り組んだ。これらの目標を今年4月以降、月単位で設定したところ、4~6月は、毎月目標の倍以上の数値を達成した。それがインクジェットプリンタ事業の大幅な増収につながっている。7月以降もこの効果が見込める」と自信を見せる。

 一方、米国では今年3月、日本では今年5月に投入したリアプロジェクションテレビ「LIVING STATION」については、「まだ助走段階。立ち上げ切れていないのが正直なところ」として、オリンピック需要をキャッチアップしきれていないことを示した。

 「具体的な数字はいえないが、何百台かは、私どもの手を離れている」としたものの、「当初の予想よりも若干立ち上げに手間がかかっている。直販に限定しているため、実際に商品を見る場所が限られており、認知度が低いのも原因だろう。今後は広告展開を強化し、展示場所も増やす必要がある」とし、テコ入れが必要であることを示した。

 新たな展示場所の候補には、当然量販店も含まれるが、「将来的には間接販売ルートの検討も必要だろう。しかし、当面は直販体制を維持する」と、間接販売ルートへの展開はすぐには行なわない姿勢を改めて強調した。

 情報関連機器分野の内訳は、情報画像機器の売上高は前年同期比77億円増の1,860億円。売り上げ比率は、インクジェットプリンタが63%、レーザープリンタが14%、POS用プリンタなどのビジネスシステムが17%、スキャナーその他が6%。映像機器は、前年同期比12億円増の183億円。プロジェクターが79%、プロジェクションテレビが2%、その他が19%。また、PCその他の機器では、前年同期比20億円減の109億円となった。

 なお、精密機器事業は、売上高が前年同期比16.1%増の209億2,100万円、営業利益は472.8%増の11億2,400万円となった。

 また、同社では、三洋電機との液晶事業の統合により設立した三洋エプソンイメージングデバイスの連結子会社によって、今年度通期の連結業績予想を上方修正した。

 7月5日に発表した修正値に比べて、売上高は650億円増の1兆5,570億円、経常利益は130億円増の1,130億円、当期純利益は70億円増の650億円とした。

□セイコーエプソンのホームページ
http://www.epson.co.jp/
□決算短信
http://www.epson.co.jp/osirase/2004/040727.htm
□関連記事
【2003年8月7日】エプソン、来年には過半数を顔料系インク機へ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0807/epson.htm

(2004年7月27日)

[Reported by 大河原克行]


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