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エプソン、来年には過半数を顔料系インク機へ
~初の四半期決算発表は大幅な増収増益

木村登志男副社長

8月6日 発表



●顔料インクのプリンタを秋にも大幅強化

 セイコーエプソン株式会社は6日、2003年度第1四半期連結決算を発表。その席上、木村登志男副社長は、「少なくとも来年には半数以上が顔料インクになる」と述べ、今後プリンタ事業において急速な勢いで顔料系インクによる製品展開を強化していく考えを示した。

 木村副社長は、「現段階では詳細は言えないが、秋以降には顔料インクによる製品ラインアップを一気に強化する。顔料インクの特徴である耐水性や100年プリントといったような長期保存性の高さを訴えていく」とした。

 顔料インクの拡大は、同社の収益性向上にも寄与するのは間違いない。「欧州やアジアではインクカートリッジのコンパチ製品や模造品が出回っているが、顔料インクになれば、当社の特許技術もあり、模造品も減ることになるだろう。結果として収益性の向上にもつながる」(木村副社長)ためだ。

 5月に国内のプリンタ市場において、キヤノンに一時的にトップシェアを奪われたことについては、「新製品への入れ替え時期であり、瞬間的なもの。現在では、1位だと認識している。秋以降の新製品でシェアを広げたい」と強気の姿勢を見せた。

●米HPの低価格攻勢の影響受ける

 同社は6月24日に東京証券取引所第一部に上場しており、今回発表した四半期決算の発表は創業以来初めてのこと。

 発表によると連結売上高は、前年同期比7.8%増の3,151億9,300万円、営業利益は227.8%増の142億1,700万円、経常利益は1,084%増の128億6,500万円、当期純利益は59億6,600万円と、高値安定している株価を裏付けるように好調な決算内容となった。

 だが、分野別にみると明暗が分かれている。プリンタを中心とする情報関連機器は、売上高が前年同期比0.3%増の2,051億3,900万円とわずかなプラスとなったものの、営業利益は155億7,900万円で同16.2%減と当初見通しを下回る結果となった。

 最大の理由は米国市場における価格競争の激化。「プリンタ複合機の分野において、米Hewlett-Packardが、149ドルの製品を99ドルに引き下げるなど低価格路線を徹底してきたのは予想外の出来事。これが複合機の売れ行きのみならず、シングル機能プリンタの売れ行きにも影響し、収益が悪化した」と説明する。

 だが、全体的なプリンタ稼働台数の増加傾向やデジタルカメラの普及に伴い、デジタルフォト、グラフィックスなどの印刷機会が増加。これらよって、インクカートリッジの数量が増加したことで、消耗品数量は増加傾向にあるという。

 また、情報関連機器では映像機器事業がモニタ・モジュールの主力分野であるアミューズメントユニットの受注減、モニタ完成品の売上減によって大幅な減収。今後、成長が期待される液晶プロジェクタも低価格化の影響を受けた。液晶プロジェクタに関しては、昨年度は30万台弱の実績だったが、今年はホーム市場向けの強化などによって、前年比50%増の計画だという。

 PC事業に関しては、ブロードバンドの普及や、個人ユーザーがテレビ機能付きPCに買い換えるといった需要を獲得したことで増収となったという。

 電子デバイスに関しては、売上高は前年同期比33.2%増の976億3,300万円。営業利益も前年同期のマイナス142億7,600万円の損失から、7億9,200万円へと黒字化した。営業利益については、電子デバイス関連各事業で売上高が増加したこと、減価償却費などの固定費や研究開発費、販売費、一般管理費が減少したことにより回復した。

 しかし、液晶ディスプレイ、水晶振動子などが黒字化したのに対して、半導体が赤字のまま。「第2四半期以降は半導体事業も黒字化し、通期での黒字転換を予定している」という。

 ウォッチ事業などの精密機器は、売上高が前年同期比9.8%減の180億2,400万円、営業利益は1億9,600万円と増収増益となった。

●通期見通しも強気の姿勢崩さず

 同社では、通期の業績予想として、売上高は前年比6.6%増の1兆4,100億円、営業利益は27.6%増の630億円、経常利益は32.1%増の550億円、当期純利益が87.1%増の234億円とした。

 「予想売上高は、情報関連機器の価格低下の影響などで当初予測を下回ることになりそうだ。また、営業利益に関しては、ユーロ高の前提条件の変更、コストダウン効果などがあるものの、低価格化の進展や下期の経済環境が厳しいことなどから前回通りの予想値とした」という。

 分野別の通期予測は、情報関連機器が売上高で前年比4%増の9,480億円、営業利益は27.9%減の580億円、電子デバイス事業が売上高が15.4%増の3,790億円、営業利益が160億円、精密機器が売上高で0.2%減の770億円、営業利益で210.4%増の20億円とした。

 初の四半期決算は、セイコーエプソンの好調ぶりを裏づけるものとなった。だが、主力としているプリンタ事業において、欧米市場を中心とした低価格化競争が今後もさらに激化すること。それが国内市場にも波及する可能性があることは懸念材料のひとつ。同社独自の「顔料インク」という付加価値で、この低価格化の波をどう乗り切れるかがポイントだといえる。

□セイコーエプソンのホームページ
(8月7日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://www.epson.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.epson.co.jp/osirase/2003/030806.htm

(2003年8月7日)

[Reported by 大河原克行]


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