リコーは歴史の長い光学機器メーカーだが、最近ではOA製品のほうが有名で、フィルムカメラの生産も中止し、デジタルカメラ一本に絞ってきた。同社のデジカメはコストパフォーマンスが高く、また独自性が強いものが多い。 そんな中で、このCaplio GXは広角28mmからの3倍ズームを搭載した標準的なコンパクトデジカメだ。価格も73,500円(税込)と有効513万画素機にしてはリーズナブルな設定だ。広角が28mmからというのが最大の特徴だろう。 ●コンパクトで薄型のボディ Caplio GXは手に取ってみると、軽いし(電池、記録メディア別で約205g)、コンパクトである。薄型のデザインになっていて、フィルムカメラのRicoh GRシリーズを思い出させる。このデジカメの開発の狙いもおそらくそういうところにあるのだろう。 操作部は少なく、シンプルではある。各部は6面写真(写真A)を見ていただきたい。
本体上面にはモードダイヤルでは、撮影・再生のほかに、絞り優先AEやマニュアル露出、シーンセレクター(ポートレート、スポーツ、遠景、夜景、文字、高感度)、動画(320×240ピクセル、160×120ピクセル)、音声録音、SETUPを操作できる(写真B)。 グリップ上には「アップダウンダイヤル」と呼ばれる電子ダイヤルが新設された。絞り優先/マニュアル露出モードでは絞りやシャッタースピードを設定するほか、メニュー内などの操作にも使える。 また、背面は液晶モニタの右側に上から電源スイッチ、ADJボタン、MENUボタン、削除/セルフタイマーボタン、DISPボタンがある。さらにその右には十字キーがあり、フラッシュモードとマクロが割り付けられている(写真C)。 SETUPは上面のダイアルで行なう。たとえば、フォーマットや日時の設定はSETUPで行なうようになっている。これはMENUに統一したほうがよかったのではないだろうか。DISPボタンはほかのカメラのINFOボタンと同じで、ヒストグラムや撮影情報を表示する。 このデジカメのユニークなところは外部ストロボが使えるように、ホットシューが上面に付いている点だ(写真D)。これは内蔵ストロボではとうてい足りないような撮影には非常に便利である。しかし、ひとつ欠点があるのは、内蔵ストロボのモードによって、外部ストロボも左右されるということだ。つまり、ストロボモードがオンになっていないと、外部ストロボも発光しない。そこで、ストロボモードをオンにすると、外部ストロボと同時に内蔵ストロボも発光してしまう。内蔵ストロボのモードと関係なく、外部ストロボを発光可能にして欲しかった。
記録メディアはSDカードで、ボディー右側面の収納部に入れる(写真E)。ただ、SDカード使用にしては書き込みが遅いようである。 電源は単3型乾電池2本が基本である。カードスロットのカバーをもう一段開くと、電池室が現れる(写真F)。別売りの充電池も使えるようになっている。
ファインダーは光学式だが、視野率が低いこともあって、液晶モニタを使う機会が多くなる。この液晶モニタはやや色再現性が良くない。それと、逆光時や強い光が入ると、ブルーミングのような現象が起きてしまう。このため、被写体が見えづらいことがあった。また、液晶モニタのダイナミックレンジはあまり広くなく、白飛びが起きやすい。実際に撮ってみると問題ない場合でも、液晶モニタでは白飛びをしているように見える。撮影時のハイライト表示などがあったほうがよかっただろう。 液晶モニタの再生画面では前述のようにDISPボタンでヒストグラムと露出値などを表示できる(写真G)。ただ、このヒストグラムは少し小さすぎるように感じた。 SETUPでは最初に行なう設定項目が出てくるが、初期化なども含まれている(写真I)。やはりMENUと統合して欲しかった。
●ややノイズが目立つ画像だが…… いつものとおり、実写はまずビルの撮影からだ。今回はあいにくと晴れの日に撮影ができずに、曇り日になってしまった。このため、ほかのカメラと比較する場合には、コントラストがやや低めになっていること、ダイナミックレンジは広く感じることなどを注意しておこう。また、絞り優先AEで撮影しているが、Exif情報には「プログラムAE」と表示されている。 35mm判換算で28~85mm相当の3倍ズームレンズだが、広角側での画質はあまり良くない。天気が悪く、コントラストが低いためではなく、ピントが悪いのだ。よく見ると、前ピンである。最小絞りまで絞り込めば、シャープになるが、こんどはノイズがやや目立ってきた(写真1A、1B)。 望遠側ではわずかに前ピンだが、ほぼ狙った位置にピントが来ていて、絞り開放からまずまずの画質である。絞り込むと全画面シャープになるが、ややノイズっぽい傾向はある(写真2A、2B)。
夜景(レインボーブリッジ)も曇り空だったが、15秒の長時間露出でもノイズはほとんどない。これは自動的にノイズリダクションが入るようになっているからだ(写真3A、3B)。ただ、不思議なのは、オートホワイトバランスでは偏った発色になった。原因は不明であるが、写真3Aのほうもグリーンが強すぎる。このシーンにはどうも首をかしげてしまった。というのは、人物撮影などでは、オートホワイトバランスが非常に正確だったからだ。
特急列車を撮ろうと連写モードにしたら、ただ連続して撮影できるというだけで、インターバルが非常に長い。しかも、3コマまでしか連続的に撮影できない。このため、特急列車の通過をなんども撮影したが、結局は1コマ撮るのがやっとだった(写真4)。ほかにストリーム連写とかメモリー逆戻り連写という機能があるが、どちらも16コマの静止画を1組にして、ひとつの画像ファイルになってしまうという、特殊なものだ。通常の連写はもっとなんとかして欲しいところである。 人物撮影も曇り日になってしまった。このため、いつもの写真と比較する場合には、コントラストが低め、色が冴えないなどの点に留意していただきたい。オートホワイトバランスでは曇り日でもまずまずの色となった。曇りモードで撮影すると黄色すぎる(写真5A、5B)。AFは近距離では精度が高く、シャープに写すことができた。このあたりはCCDと外部センサーのハイブリッドAFの効果が出ているようである。
場所を変えて、やはりオートホワイトバランスと曇りモードを撮りわけてみたが、結果は同じだった(写真6A、6B)。ただ、このように被写体が遠いほうが曇りモードがまだ自然である。このカメラはオートホワイトバランスまかせがいいようである。
白熱電球(タングステン光)での撮影でも、オートホワイトバランスと白熱電球モードの差が少ない。つまり、オートホワイトバランスがかなり低い色温度まで追尾しているのだ(写真7A、7B)。とは言っても、夕焼けなどを出す色温度にはかなり対応しているのが後でわかる。
蛍光灯でもオートホワイトバランスと蛍光灯モードの差がほとんどない(写真8)。そして、色かぶりも少ないのはいい。人工照明に対してはこのオートホワイトバランスはなかなかいいようだ。
このGXのISO感度はISO64~1600と広い。そのうち、ISO64とISO400とを比べてみた。そうすると、ISO400でもやや高感度ノイズが出てくる(写真9)。ISO400というのはかなり使う感度なので、ちょっと気になる。
ISO1600にして、いつもの超高感度撮影の場所を写してみたら、中間部にかなりのノイズが出た。1/1.8型のCCDにしてはノイズが多めという感じだ(写真10)。 晴天の日の撮影では非常にシャープで、露出もぴったり。非常にいい描写になった(写真11)。
夕暮れはオートホワイトバランスのまま撮影してみたが、かなり赤みを出してくれた。晴天モードに近い感じである(写真12)。 明るい部分と暗い部分が混在する明暗比の大きな被写体ではやはりハイライトが飛んでしまう。しかし、こういう被写体ではしかたのないところだ。ダイナミックレンジは広いほうだと言えるだろう(写真13)。
Ricoh Caplio GXは写りのいいときと、悪いときの差がかなりはっきりしている。オートホワイトバランスは概して正確だったし、5Mの3倍ズームカメラとしてはかなりコストパフォーマンスのいいカメラだと言える。 □リコーのホームページ ■注意■
(2004年5月25日)
【PC Watchホームページ】
|
|