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ソニー、2004年度経営方針を発表
~VAIOの黒字化に評価

出井伸之会長兼CEO

5月19日 開催



 ソニーは、5月19日、2004年度の経営方針説明を行なった。

 冒頭、出井伸之会長兼CEOは、今年度の経営方針に触れる前に前年度を振り返り、「2003年度は、大胆に、やるべきことをやった1年だった」と自己評価をし、「構造改革が予定以上に進んでいること、強い商品が出ていること」の2つを成果として掲げた。

 強い商品としては、エレクトロニクス事業の主力の一角を占めるTV事業において、LCD、プラズマ、リアプロジェクションの3つのTVを商品化し、「国内ではトップシェアのポジションを維持するなど、商品力の回復が見られた」と説明。「DVDおよびHDDレコーダーでは年末から今年春にかけて大きなシェアを獲得し、出足の良さを見せたほか、デジタルカメラやカムコーダーでも世界ナンバーワンとして、収益にも大きく貢献した。また、携帯電話事業も、エリクソンとのジョイントベンチャーが予想以上の成果を収めている」と評価した。

 一方、PCのVAIOに関しては、「いたずらにシェアを追求せず、高付加価値の製品にこだわったことで、全世界規模で黒字のオペレーションを達成することができた。先頃、新たなシリーズを発表し、さらなる飛躍を期待している」と話した。

 構造改革については、「当初は1,400億円程度としていた構造改革費用が1,600億円以上と、より積極的に展開した。グループ全体の社員数はあまり変化がないが、中国のような発展する地域へは人員を増やし、日本の本社部門などでは人員を減らすといった取り組みを行なってきた。グローバルでの人員配置は大きく変化している。2003年度の構造改革の成果によって、2004年度には880億円程度の固定費の削減が期待できるなど、着実に効果が出始めている」と評価した。

 ソニーでは、中期経営計画として、2006年度を目標とし、営業利益率10%達成などを目指すTR60を策定しているが、出井会長は、「2006年には、水が水蒸気になったり、氷になったりというような変化が、社会に起こる臨界点になるのではと考えている。企業、産業、国家に大きな変化がもたらされることになる」と改めて説明し、「個人個人が力を持つようになり、それにあわせて、社会そのものの変化とともに、広告や発表の仕方、あるいは技術、製品、企業のあり方も大きく変わってくる。その大きな変化に向けた準備を進めている」と語った。

 2004年度の経営方針として、出井会長は、「特別なこととか、なにか、すばらしいことをやるというわけでない。2006年度に向けてTR60を着実に実行する年にしたい」と切り出した。

 同社では、2004年度の重点施策として、「TR60で示した構造改革プログラムの着実な実行」、「エレクトロニクスの融合戦略の継続推進」、「エンタテインメント事業の強化」、「グループ経営のさらなる進化」の4点を掲げている。

構造改革費用における固定費削減効果 構造改革の進捗状況 2004年度の重点施策

 出井会長は、「2003年度に引き続き、商品力を強化すること、本社の見直しなどの構造改革を引き続き推進していきたい。グローバルのソニーグループとしての構造改革にも着手する年になるだろう」とした。

 商品力の強化では、「全商品の53%を日本で製造している」という強みを生かしながら、「ホーム」と「モバイル」の2つの領域に投資を集中する姿勢を強調した。

 ホームに関しては、「VAIOではシェアをコントロールすることで、利益を出せる体質とした。一方、PCに加えて、TVではフラット化という新たな進展とともに機能的な進歩が見込まれる。そして、これらを融合した情報家電が創出され、新たな産業を作るチャンスが生まれることになる」と話す。ITとAVの融合戦略をPCだけでなく、デジタル家電全体の波及させる考えだ。

久多良木健副社長

 同分野の事業を統括する久多良木健副社長は、「昔の名前に戻ったみたいだが」と前置きしながら、「今年4月にTV事業本部、ビデオ事業本部、オーディオ事業本部の3つの事業本部に再編し、これらの事業本部が、それぞれのリソースを共有できるような仕組みとした。ホーム分野に向けて最強の商品をつくりたい」と抱負を語った。

 問題として指摘されているDVDレコーダー商品群の収益性に関しては、「従来は、PSX、スゴ録、コクーンとバラバラに事業を進めていたが、コアとなるソフト部分や、検証の作業といったベース部分を共通化することでコスト削減が可能になる。また、半導体エンジンの共通化や強化といったこともできる。収益性の改善は可能」とした。

 一方、もうひとつの柱であるモバイル事業では、携帯電話やカムコーダーといったモバイル分野における強い商品の継続強化とともに、「家電」ならぬ、新たな「個電」と呼ばれる、AV機能が加わった携帯電話などが登場するとし、「ここにも大きなビジネスチャンスがある」と説明した。

 今年度、モバイル事業を担当する副社長兼COOの高篠静雄氏は、「ポケットのなかを制するものは未来を制す」として、「モバイル分野においては、競合相手に勝ち続けることを宣言したい」と語った。

 このように、ホームとモバイルの領域において、付加価値の取り込みと商品の差異化によって、新市場創出と、それらの分野における強い商品群の形成を目指したいとしている。

 その核となるのが、CELLをはじめとするコアデバイスだといえる。

 久多良木副社長は、「これまでは、ソニーはさまざまなことをやっていたが、それが集中できていなかった。これらの技術を集結して、新たな商品の創出につなげたい」と語った。とくに、戦略技術となるCELLに関しては、「CELLの応用範囲は、ゲーム開発のためのワークステーションへの搭載など、そのポテンシャルが発揮できる分野での活用に加えて、次世代ゲーム機、次世代デジタルTVなどのほか、あらゆる商品においてスーパーサブセットとして使える領域が多いと考えている。楽しく、便利に使える世界になるように、2006年以降、大きな量を出していく予定だ」と言及した。

 方針説明の最後に出井会長は、「2004年度は、統合と分極の経営モデルによるグループ経営、融合戦略などによる付加価値の取り込みと差異化による強い商品やサービスの提供、そして、トータルデマンド&サプライチェーンを実現するオペレーションの強化を引き続き推進していきたい」と語った。

ソニーの集中領域 コアデバイス開発 グループ経営のさらなる進化

 一方、今回の会見では、VAIOシリーズに対する言及が多かったのが目立った。

 前年度までは、PC事業の低迷が業績悪化の原因とするなど厳しいコメントが多かったが、今回の会見では、シェアは縮小したもののPC事業そのものが黒字化したことや、今年5月に、新コンセプトの新製品を相次ぎ投入したことなどを受けて、経営陣もVAIOに関して言及しはじめたといえる。

 出井会長は、「高付加価値の製品が、黒字化につながった」とする一方、 高篠静雄氏は、「VAIOは一気に商品力が高まったと考えている。新たなコンセプトの製品も発表したが、なかでもVAIO type Uは、新たな世界を作り出す製品になるだろう」とコメント。

 普段は、あまりPC事業には言及しない久多良木副社長も、将来のITとAVの融合に関して、「PCは非常に便利なツールであり、それを実現するツールも数多く用意されている。だが、それらのツールはまだ専門家にしか使えないという問題がある。一方で、デジタル家電はコンテンツを簡単な操作で、利用者に感動を与えることができるという強みがある。双方のいいところを集めて、瞬間的な操作で、感動を得ることができるITとAVの融合を目指したい」とした。

 また、安藤国威社長も、「ITとAVの融合に加えて、通信との融合が必然になってきた。ユビキタス環境での利用を描いた商品の投入を考えている」などとした。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□説明資料
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/info/presen/mr_keiho/20040519/index.html
□関連記事
【2003年10月28日】ソニー、デジタル家電を核とする改革プランを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1028/sony.htm

(2004年5月19日)

[Reported by 大河原克行]


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