どちらかというとビジネス向けのイメージが強いリコーCaplioシリーズだが、昨年発売されたCaplio G4 wide(以下G4 wide)は普及価格帯のデジカメとしては貴重な広角28mm(35mm判換算値。以下、本文中は注釈がないかぎりレンズの焦点表示はすべて35mm判換算値)ズーム搭載機として、アドバンスアマチュアを含む写真好きの間でちょっとしたスマッシュヒットになったのは記憶に新しいところ。そのG4 wideの正常進化形モデルともいえるCaplio RX(以下RX)を今回は研究してみたい。 その前にRXのアウトラインを簡単におさらいしておくと、CCDは有効324万画素の1/2.7型で、レンズは28~100mmの3.6倍ズームを搭載。記録メディアはSDメモリーカードである。 G4 wideに比べると、センサーサイズや画素数は同一ながらレンズが高倍率化されているのがミソ。ちなみにG4では28~85mmレンズを搭載するG4 wideと35~105mmレンズを搭載するノーマルG4の2機種が発売されていたが、RXでは1機種でG4両機の画角をほぼカバーすることになる。 ●適度にシェイプアップされたボディ
いつものようにボディデザインから見ていこう。今回試用させてもらったRXはシルバーカラーだったが、他にブラックボディも用意されている。ブラックバージョンもボディ前面のグリップとレンズ鏡胴はシルバー処理されているが、これが適度なコントラストになっていて結構渋い。 ボディ右手側の側面だけアールを付け、他の面はスクエアに処理された外観はこれまでのG3やG4に共通したものだが、RXではかなりボディが薄型化され、相当スマートになった。 たまたま手元にG4 wideがあったので、大きさを比べてみたところ、厚さ以外の面でも小型化されているのがわかった。もちろん、カシオのエクシリムほどは薄くないけれど、ズーム倍率や後述する余裕のある電池システムを備えていることを考えると十分に薄いボディである。 レンズと液晶モニタは目一杯左手側に寄っているので右手のつかみ面積が大きく、ホールディングも非常に余裕がある。フロント部に配された突起状グリップの位置も適切で、数ある横長デジカメの中でもホールディングは良好な部類といえるだろう。 ●ブラッシュアップされた操作系 今度は操作面を見てみよう。デザインと同様、操作系も基本的にはG4 wideのそれを踏襲しているが、操作してみるとかなり改良されていることがひしひしと伝わってきた。例えば電源スイッチ。G4のときはボディ上面にあるモードダイヤルの中央に電源ボタンがあったのだが、シャッターボタンと間違えて電源スイッチを押してしまうユーザーが続出したことから、RXではボディ背面に移動している。これにより、右手の人差し指はシャッター専用に使えることになった。 また、G4ではメニューボタンと同列に配された「OK」ボタンが、RXでは十字キーの中央に移動している。もちろん、これは十字キー中央にあったほうが使いやすい。 操作系の見た目の変更はこの2点だが、それ以上に違うのが操作感触である。G4 wideでは十字キーを含む各押しボタンのバックラッシュというか遊びが大きく、操作していてもカチャカチャと非常に安っぽい印象だったのが、RXではかなりソリッドな操作感に改善されたのだ。実際に触ってみればすぐに分かるが、この違いは大きい。
●迷わず操作できるメニュー デジカメを使っていて最も頻繁に設定を変えるのは露出補正とホワイトバランス、そしてISO感度の3つだろう。RXでは「ADJ.」ボタンを1回押すと露出補正、2回押すとホワイトバランス、3回押すとISO感度設定画面になる。キヤノンのコンパクトデジカメに付いているFUNC.ボタンと同じような仕組みだが、頻度の高い項目をショートカット的に呼び出せるのは使い勝手がよい。 このADJ.ボタンはセットアップメニューでカスタマイズが可能で、画質モードもしくはAF/MF切り換え、測光モード、シャープネス調整のいずれか1つをISO感度設定の次、すなわちADJ.ボタンを4回押したときに呼び出せるようにすることもできる。 一方、メニューの方は3つのタグに分かれた平凡なもので、よく言えば「ビジネスライク」なのだけど、仕事で使うならともかく、一般ユーザーには少々色気がなさすぎる。分かりやすさはこのままに、もうちょっと遊び心のあるメニュー画面にして欲しかった。
●ある意味、理想的な電池システム 液晶モニタは1.8型のアモルファスシリコンTFTで、約8.5万画素というスペック。見え方は特に悪くはないものの、コントラストが若干低く、色味も少し薄い感じがする。また、視野角もそれほど大きくなく、目線を液晶正面から徐々にずらしていくと、すぐに画像が確認できなくなる。花などをローアングル撮影したいとき、この視野角の狭さはちょっとツラいだろう。 電源は単3電池2本が標準添付されているが、別売でリチウム充電池も用意されており、それも使うことができる。単3電池の入手しやすさとリチウム充電池のパワフルさを両方実現したわけだ。万が一リチウム充電池が切れても、その辺で単3電池を2本買えばいいわけで、ある意味理想的な電源システムといえる。しかも、オプションのリチウム充電池はリコー社内で「原子力電池」と呼ばれているほど高容量で、確かによく保つ。難があるとすれば、この充電池は向きを反対にしても入ってしまうことくらいだろう。 電池ブタは一段引くとSDカードの出し入れができ、さらにもう一段引くと大きく開いて電池の交換ができる。G4のときとまったく同じ仕組みだが、「こわれるのでは?」と思うほどガタガタとやりにくく剛性感も低かったG4とは違い、RXではスムーズに開閉できるように改良されている。
●広角28mmが魅力的な3.6倍ズーム RXに搭載されているレンズは先にも書いたとおり28~100mm相当の3.6倍ズーム。G4 wideの28~85mm F2.6-4.3に比べると、開放値がF3.1-5.8と若干暗くなっているが、サイズもかなり小さくなり、収納した状態ではほぼボディと面一のフルフラットになる。 テスト撮影では28mm時の陣笠状の歪曲収差が確認できたが、この手のコンパクトな28mmレンズとしてはよく補正されている方である。ちなみに100mm時ではごくごくわずかに糸巻き型の歪曲があるが、実用上はほとんど無視できるレベルだ。
●優秀な起動速度とタイムラグ
起動速度はなかなか速い。G4 wideの場合、電源ONからスルー画が表示されて撮影スタンバイになるまで約2秒弱といったところだったが、RXでは約1.6秒ほどでスタンバイする。ここからさらにAFが作動して撮影完了まで0.4秒程度、トータルでは電源ONから撮影完了まで約2秒ほどだ。これならよほどせっかちな人でも文句ないだろう。 ●やや低い解像感 【滑り台】 いつもの公園のいつも滑り台。AWBだが、やや色味は黄色い印象だ。晴天の撮影にしてはコントラストも若干低いと思う。総体的にちょっと「軽い」感じに見えてしまう。 画角変化はさすがに前回のキヤノンPowerShot S1 ISの10倍ズームとは比べるまでもないが、3.6倍でもこれだけ変化する。
これまたいつものように逆光+レフ起こしのポートレート。ポートレートではこのくらいコントラストが低い方が柔らかくていい感じだ。 AWBと太陽光の両方で撮影したが、AWBの方が健康的な肌色で好ましい結果になった。気になるのは解像感が少し甘いこと。まつげのあたりを等倍で見ると、明らかに描写が曖昧に感じる。 【屋外ポートレート】
【屋内ポートレート】 ミックス光下で撮影したが、AWBでは少々マゼンタが強い。ポートレート的には悪くないけれど……。で、白い紙を使ったマニュアルホワイトバランスで正確な色になると思いきや、今度は明らかにシアンが強い。AWBはともかく、マニュアルホワイトバランスの精度はもうちょっと高くしてほしい。
【マニュアルホワイトバランス】 白い紙でマニュアルホワイトバランスをとって見たのだが、結果があまり思わしくないのでコダックのグレーカードで取り直してみた。が、結果は同じ。カメラの性格を考えるとマニュアルホワイトバランスを多用するとは思えないけれど、少し残念。
【高感度ノイズ】 G4 wideではISO125が最低感度だったが、RXではノイズを意識してか最低感度はISO64から。これで見るとISO64とISO100ではやはりISO64の方が低ノイズである。 ちなみにISOオートでは光量が豊富でもISO125程度にコントロールされてしまうようなので、手ぶれの心配がないときは積極的に感度を下げた方がノイズは少なくできる。
【作例】 レンズ前1cmの接写はリコーのお家芸。RXも接写は強い。これだけ寄ってもピントは高速に合焦する。
従来のG4wideに比べ、あらゆる点でリファインされたRXは、使い勝手の良さと柔軟性のある電池システムなどで、実用性は非常に高い。やや独特の色調は好みの分かれるところだが、人物写真には向いている。問題は解像感が少し甘いことだろう。ただし、ピクセル等倍でアラを見つけるような見方をしなければ気にならないレベルではある。ごく普通のA4程度までのプリントならまず問題は感じないはずだ。
□リコーのホームページ ■注意■
(2004年5月18日) [Reported by 河田一規 / モデル 岸 真弓]
【PC Watchホームページ】
|
|