●4年ぶりのWinHEC
強いていえば、キーノートスピーチが初日の午前中1回だけになってしまったことくらいだろうか(昨年のように、2日目のキーノートをセグウェイのCEOに任せられてもどうかと思うが)。 もちろん細かく見れば、たとえば来場者に対する無線LANサービスの提供は2000年にはなかったものだ。セッションやキーノートの実況中継を防止する目的か、単にセッション中やキーノート中は集中するようにという親心か、セッションルームやキーノートホールでは無線LANの使用ができないよう、利用範囲を制限する工夫をしているようだ。 この努力はかなり成功しており、制限の代わりに利用できる場所は、ACコンセントの提供と一体となった「スタンド」にするなど、利便性への配慮も見られるのだが、無線LANサービスの提供が局所的であるため、「つながる?」「つながらない!」といった利用者の混乱も見受けられた(かくいう筆者も当初はつながらないで焦ったクチである)。 会場のコンベンションセンターでは、イベント参加者に開放された無線LANサービス以外にも、有償のホットスポットサービス、セッション等のデモに使うサービス、近隣のオフィスのものなど、さまざまな無線LANサービスの電波が飛び交っており、それらが丸見えになっていることも混乱を増幅しているようだ。
無線のサービスはつながることも重要だが、いかにして望まないサービスとコネクトしないか/させないか、ということが、どれだけ重要かを改めて認識させられた。 ●基調講演でのLonghornの扱い さて、前回の予告編で触れたように筆者の興味は、業界のリーダーとしてのMicrosoftに現在PC業界全体を覆う沈滞を吹き払うために、率先して努力する意思があるのか、Longhornはそのための切り札になり得るのか見定めたい、ということだった。残念ながら、そのハッキリとした答えを初日のキーノートで見つけることはできなかったが、かといって悲観せねばならないほど無責任でもない、ということのようだ。 初日のキーノートの事実上のトップバッターとして、Windowsを中核としたMicrosoftの方向性について述べた同社プラットフォーム部門担当グループバイスプレジデントのJim Allchin氏は、最後までLonghornがいつ正式リリースされるのかについて言及しなかった。氏が提示したクライアント向けWindowsのロードマップでLonghornについて示されているのは、2005年にLonghornのベータ(氏はBeta Oneと言った)がリリースされるということのみ。ハッキリしているのは、当初言われていた2005年に正式版がリリースされることはない、ということだ。
通常、MicrosoftによるWindowsのリリーススケジュールは、次のようなサイクルをたどる。
1. ベータ版をリリース Longhornのベータが2005年のいつになるかは明らかにされていない。また、氏は各OSのリリース時期について、一貫して「その次は(Then)」といった相対的な表現を行ない、具体的な日付を示さなかった。が、Windows XP 64-Bit Edition for 64-Bit Extended Systemsのリリースが2004年第4四半期に予定されている(これまでの発表通り)ことから考えて、2005年に入ってすぐ、というのは考えにくい。おそらく2005年半ば近くになるのではないかと思われる。 すると、ベータ2のリリースは早くて2005年の後半、それもかなり押し迫った頃で、RC1のリリースは2006年半ばから後半というところだろう。すると、正式版のリリースは2006年末から2007年初頭あたりになる。しかし、Longhornは近年にない大幅アップデートであり、サポートを予定しているハードウェアは、現時点においても製品レベルのものがすべて揃ってはいない状況だ。通常よりテストサイクルが長くなることも十分予想される。 そもそもこうしたスケジュールは遅れるというのが半ば常識となっていることを考えると、2007年半ばから後半というのが現実的なスケジュールだろう。間もなくリリースされる見込みのWindows XP SP2ですら半年以上遅れている。Longhornが2008年のリリースとなっても、さほど驚くべきことではないかもしれない。 最初にLonghornのコード名が登場してきた当時、LonghornはWindows XPのリフレッシュとして2003年あたりにリリースされる、という触れ込みであった。それがいつの間にか次のメジャーバージョンアップ版Windowsのコード名になり、そのリリース時期も2005年、ということになった。そして今回、2005年にリリースされるのはベータ版である、と変遷してきたことになる。一部では、Longhornの機能セットを削って、2005年にリリースするとか、Longhornの機能セットは維持しWindows XPのSecond EditionならぬReloadedをリリースするとか言われてきた(これについては後述する)が、どうやら機能セットを削る方向性はなくなったようだ。 筆者は、今回正式リリース日を明らかにしなかったことについて、必ずしもネガティブな印象を持っていない。とうてい実現できないような、楽観的なスケジュールを打ち出しては、ズルズル延期する、ということを繰り返して欲しくないからだ。Microsoftは「Trustworthy Computing」を唱えているが、そもそも信頼とは、約束を守ることを積み重ねることで生まれるもの。守れない約束は信頼を損なうばかりだ。 この観点からすると、意図的なリークを行ない世論の反応を見るというやり方(上述のLonghornの機能セットを削る、削らないのウワサ話もおそらくこれに該当する)もやめるべきだと思うが、とりあえずここではこれ以上触れないことにしておこう。 ●Windows XPのサポート期間とLonghorn さて、Longhornのリリースがどんなに楽観的に見積もっても2006年末、おそらくは2007年になるとなったことで、解決しなければならない問題が発生する。それは、このコラムで何度も取り上げてきたサポート期間の問題だ。量販店の店頭に並ぶほとんどのPCにプリインストールされるWindows XP Home Editionのサポート期間(メインストリームフェーズ)は、発売から5年を迎える2006年12月をもって終了する。2006年末にLonghornが出ればギリギリ間に合うように思うかもしれないが、それは違う。こんなにギリギリになってしまうと、深刻な買い控えが懸念される。来年のクリスマス(2005年12月)、あと1年しかサポート期間の残っていないPCをあなたは買うだろうか。これでは、LonghornはPC業界の救世主になるどころか、買い控え不況をもたらす疫病神になってしまう。 この問題をクリアする1つの方法は、無償アップデートクーポンの添付だ。アップデートのインストールに伴う動作不良の問題など、アップデートは必ずしも万能ではない(特にLonghornのようなメジャーバージョンアップの場合)のだが、とりあえず消費者に受け入れられる方法である。しかし、正式リリース日が確定していない段階で、新しいOSへのアップデートクーポンを配るのは難しい。2005年末はまだベータテストの最中(ベータ2をちょうどリリースしたところか、その直前あたりか)であり、とてもクーポンなど配ってはいられないだろう。 おそらくこの問題を解決する一番いい方法は、Windows XPのSecond Edition(Reloadedでもいいが)をリリースすることだ。それを示唆しているわけではないのだろうが、Windows Serverに関しては2005年にWindows Server 2003 Updateがリリースされることになっている。 Allchin氏はこのリリースの詳細について触れなかったが、1つにまとめられていることからして、このリリースで「64-Bit Edition for 64-Bit Extended Systems」と「32-Bit Edition」が1つのパッケージにまとめられるのだと考えられる(2004年と2005年においてSBSは別扱いになっている)。その内容がどんなものになるのかは別にして、サーバ版OSでリフレッシュを行なうのなら、クライアント版で同じことを行なっても不思議はないと思う。
□WinHECのホームページ(英文) (2004年5月6日) [Text by 元麻布春男]
【PC Watchホームページ】
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