元麻布春男の週刊PCホットライン

Windows Mobile FAN FestaでPocket PC 2003 SE機が披露



●VGA/横長/正方表示対応となったPocket PC 2003

 4月10日、マイクロソフト、WindowsCE FAN共催のPocket PCユーザーイベント「Windows Mobile FAN Festa 2004」が開催された。イベントの中心は、マイクロソフトの担当者による講演やパネルトーク、関連製品の展示だが、先日米国でWindows Mobile 2003 software for Pocket PC(以下、Pocket PC 2003)の最新版である同Second Edition(以下、Pocket PC 2003 SE)が発表されたばかりであることもあって、マイクロソフトWindows Mobileビジネス本部シニアマネージャの倉石英典氏による同OSの紹介に注目が集まった。

【写真1】Pocket PC 2003 SEについて紹介したマイクロソフトの倉石英典シニアマネージャ

 Pocket PC 2003の特徴は、無線ネットワーク機能の拡張や、最新版MediaPlayerの搭載によるメディア機能の強化にあるが、Second Editionはこれらの特徴を踏まえつつ、より多彩なハードウェアの開発を可能にしたものだという。

 それを端的に表すのが、柔軟になったディスプレイの構成だ。これまでPocket PCデバイスは、基本的に横240ドット/縦320ドットのディスプレイを採用していた。Pocket PC 2003 SEでは、この2:3の縦長表示に加え、横長表示(320×240ドット)、正方表示(240×240ドット)がサポートされる(写真2)。縦長と横長はソフトウェア的にワンタッチで切り替え可能となっており、アプリケーションの特性に合わせて選ぶことができる(写真3)。

 さらにPocket PC 2003 SEでは、正式に高解像度(480×480ドット、および640×480ドット)がサポートされる(写真4)。もちろんフォントサイズの切り替えも可能だから、Pocket Excelでシートを表示する場合は、高解像度の横表示で、フォントサイズを小さくするといった使い方が実現する。

 すでに米国ではPocket PC 2003 SEのリリースを待たず、東芝がe800シリーズでVGA表示を実現していたが、Microsoftによる公式サポートでないため、対応アプリケーションに制約があった。Pocket PC 2003 SEで高解像度と縦横切り替え表示が公式サポートされたことで、今後高解像度に対応したアプリケーションも増加するものと思われる。

【写真2】縦長、横長、正方形をサポートするPocket PC 2003 SE 【写真3】Pocket PC 2003 SEはVGA解像度を正式サポートする 【写真4】縦長表示と横長表示の切り替えは、ソフトウェアでワンタッチ

●店頭販売のリスクを負えなくなっているPocket PC

 なお、今回のイベントでデモされたのは英語版のPocket PC 2003 SEで、日本語版の発表とリリースは今年後半を予定している。しかし、このリリースにおいても、現時点で英語版と日本語版の間に存在する機能差(主に手書き入力に関するもの。同様の機能差は程度の差こそあれ、Tablet PCにも存在する)は解消されない。わが国における販売実績がネックとなって、なかなか差が詰まらないようだ。

 こうした問題でも明らかなように、現時点でのわが国におけるPocket PCには、あまり華々しいイメージがない。その大きな理由として、PDAというジャンル自体が携帯電話やiPodのような携帯デジタルオーディオ機器に押されがちである、ということから目をそらすことはできない。が、PDAというジャンルの中だけで見ても、OSをLinuxに変え独自の進化を続けるシャープのザウルスや、PEG-TH55が大ヒットとなり、入手難が続くソニーのクリエ等に比べ、どうしても地味な印象が否めない。それを一言で表すと、店頭での存在感の低さ、ということになる。

 上述のザウルスやクリエが、店頭販売で健闘しているのに対し、Pocket PC搭載のPDAは、直販やオンライン販売に絞っているベンダ(日本HP、デル、Mitac等)が多く、事実上、GENIOシリーズの東芝のみが孤軍奮闘しているといっていい状態だ。

 多くのベンダは、OSとしての機能性や充実した開発環境というPocket PCの利点を、企業向けのシステム販売に生かしている、というのが実情だろう。そう言えば聞こえがいいが、実際は店頭販売のリスクを負えなくなっているのがPocket PC陣営の現状だと思われる。

 コンシューマ相手にビジネスを展開するには、流通在庫のリスクを承知で店頭販売しなければならない。特にPDAのような製品は、購入時に実際に手にとってみられることが重要だ。どんなに優れた製品であっても、実物を見る機会がないのでは、なかなか販売に結びつかない。だからこそ、こうしたイベントを開くのかもしれないが、イベントの性格上、対象がどうしてもマニア向けになり、広く一般の消費者が体験するイベントにすることは難しい。

 また、コンシューマの気を引き続けるためには、さまざまなバリエーションモデルの発売や、カラーバリエーションの展開を図る必要がある(これがさらに流通在庫のリスクを増すわけだが)。たとえばクリエシリーズだけでも、キーボードの有無、縦長と横長、クラムシェルとスレートタイプなど、さまざまなバリエーションを揃え、モデルによっては6色のカラーバリエーションまで展開している。

 それに対し、Pocket PC機のバリエーションはというと極端に少なく、似たり寄ったりの製品が目立つ。とはいえ、コンシューマ向けに成功しているソニーでさえ、供給さえあればもっと売れるであろうPEG-TH55が在庫切れになっていたり、赤を限定色として発売するあたり、在庫リスクに相当神経質になっていることがうかがえる。

 日本語版と英語版の機能が完全に同一でないことなど、マイクロソフトにも努力をすべき余地が残っているのは確かだが、さまざまなディスプレイ解像度をサポート可能にするなど努力は行なっている。やはりPocket PC搭載PDAの売り上げの鍵を握っているのは、実際の製品を販売するハードウェアベンダだ。

 現時点でのヒット作となっているPEG-TH55にしても、この機種が売れるようにOS供給元であるPalm Sourceが特別なことをした、ということはおそらくない。その功績はハードウェアの開発と、PalmOS上で動く新しいPIMアプリケーション(クリエオーガナイザ)を作りこんだソニーのものだ。Pocket PC陣営にも、より大きなリスクを負って開発と店頭販売を行なうベンダが望まれるところだろう。

【写真5】会場では、海外で使われるWindows Mobileベースのスマートフォンなど、普段国内で見かける機会の少ないデバイスも展示された 【写真6】国内販売が始まったばかりのMitac Mio168は、折りたたみ式のアンテナを備えたGPS機能内蔵モデル。こうした特色あるモデルの拡充と、店頭での露出が望まれる

●IDFJ会場で展示された補助電源付きマザーボード

 話は大きく変わるが、4月7日と8日の両日、舞浜のヒルトン東京ベイで開催された、IDF 2004 Japanの展示会で、ちょっと興味深いものを見かけたので、紹介しておきたい。それは、Grantsdale-G搭載のマザーボードだ。Grantsdale-Gのマザーボードそのものは、米国のIDFでも見たことがあるし、何も初めて見たわけではない。が、これまで不覚にも気づかなかったことがある。それはATXマザーボードに追加された1つのコネクタだ。

 まずそれについて述べる前に、写真7を見てもらおう。これはGrantsdale-Gチップセットを搭載したMicroBTXフォームファクタのマザーボードだ。同じデザインをベースにしたPicoBTXフォームファクタのマザーボード(写真8)もあった。新しいLGA775ソケットが隠されているのはご愛嬌というところ。PicoBTXのマザーボードでは、PCIスロットやPCI Expressスロットもろともフロッピーディスクコネクタも省略されている。

【写真7】Grantsdale-G搭載MicroBTXマザーボード 【写真8】Grantsdale-G搭載PicoBTXマザーボード

 これらのマザーボードのもう1つの特徴は、メイン電源コネクタが、現行の20ピンから24ピンに増えていることだ。これは、PCI Express x16スロットで利用することが想定されているグラフィックスカードの最大消費電力が75Wと大きく、それをサポートするために電源を強化する必要があるからだと説明されている。いずれにしても、現行の電源ユニットをそのままPCI Express対応マザーボードと組み合わせて使うことは難しい。

【写真9】補助電源コネクタのついたGrantsdale-G搭載MicroATXマザーボード

 ここまでは公開されているスペックで分かっていたことだが、驚いたのは写真9に示したMicroATXフォームファクタのGrantsdale-Gマザーボードだ。オーディオコネクタの後、プロセッサ用の12V補助電源コネクタの横に、CD-ROMドライブ等で用いるのと同じ電源コネクタが設けられている。このコネクタはBTX系のフォームファクタを採用したマザーボードでは見られなかった。

 一体このコネクタは何なのか。場所から考えて、おそらくPCI Express x16スロット用の補助電源コネクタではないかと思われる。写真7や写真8のBTX系マザーボードでは、メイン電源コネクタとスロットの距離が短いが、この写真9のマザーボードでは相当距離が長い。おそらくIntelのマザーボードエンジニアは、ATX系のフォームファクタの場合、メイン電源コネクタだけでは75Wの供給が確実ではない、と判断したのだろう。

 逆に言えば、BTXというフォームファクタは、冷却やPCの小型化だけでなく、Intelがこのような問題まで踏まえてデザインしたものである、ということだ。BTXがBig Waterというコード名でお目見えしたのはずいぶん前のことだが、だてに長い開発期間をかけたわけではない、ということらしい。

 とはいえ、このx16スロット用と思われる補助電源コネクタは、動作の確実を期すため、あるいは動作保証の問題によるもの、と思われるため、すべてのマザーボード(サードパーティ製マザーボード)に採用されるとは限らない。中には、レイアウトを工夫することで、ATX系のフォームファクタであっても、こうしたコネクタなしで確実な動作が可能だとするマザーボードベンダも出てくることだろう。逆に、こうしたコネクタを設けるのを前提に、メイン電源コネクタを既存の電源ユニットが流用できるよう、20ピンのままに据え置くベンダも出るかもしれない。Grantsdale/Alderwoodのデビュー時には、電源コネクタにも注目してみたい。

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(2004年4月12日)

[Text by 元麻布春男]


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