会場:独ハノーバー市ハノーバーメッセ(Hannover Messe) CeBITは携帯電話、ネットワーク機器といった通信関連の展示も多く、今年も僚誌のケータイWatchで多数報道されたように、GSMや3Gに対応した携帯が多数展示された。 それ以外にもネットワーク機器の展示会場では、PC向け周辺機器として注目を集め始めているDMA(デジタルメディアアダプター)が展示された。DMAはネットワーク経由でPCなどに蓄積されたメディアファイルを再生するプレーヤーだ。 日本ではバーテックスリンク、アイ・オー・データ機器、バッファローなどから発売されているDMAだが、ここCeBITでもネットワーク機器のベンダが展示して大きな注目を集めた。 このほか、Wi-Fiの記者会見でもアナウンスされたように、次の大きな波と見られている無線LAN対応ワイヤレスハンドセット(Voice over Wi-Fi)と呼ばれる機器も多数展示され、徐々に準備が整っていることを印象づけた。 ●これまでのSyabasベースに加えて、UPnP対応製品も展示される 今回のCeBITに展示されていたDMAの特徴は、すでに日本などで販売されているDMAに採用されているSyabas Technology(サイアバステクノロジー)ベースの製品に加えて、Universal Plug and Play(UPnP)に対応した製品が多数登場し始めたことだ。 今回のCeBITでは、D-LINK、FIC、そして22日のレポートで紹介したMitacなどがUPnPに対応したDMAを展示した。LinksysもDVD-ROMドライブを搭載したDMAを展示したが、こちらは詳細が明らかにされておらず、UPnP対応製品であるかどうかはわからなかった。 その他にも、台湾のネットワーク機器ベンダなどが多数のDMAを展示しており、これらの製品が市場に投入されれば、激しい競争が展開されることになりそうだ。 なお、日本で発売されているDMAはSyabasのソフトウェアに基づいているものが多い。Syabasのソフトウェアは、他のDMA用ソフトウェアに比べて早くから完成していたので初期のDMAに多数採用されている。 Syabasのソフトウェアは、サーバーソフトとPoint to Point(P2P)で接続し、メディアファイルの転送を行なう形式をとっている。このため、Syabasのサーバーソフトウェアのみと接続可能で、他社のサーバーソフトウェアに接続するのは難しい。ただし、ソフトウェアの準備がいち早く整ったので、対応製品が多数登場した。 しかし、今後は相互接続性が鍵となり、独自形式のソフトウェアに代わって、プロトコルにUPnPを採用したものへ徐々に置き換わっていくものと考えられている。 Microsoftは、International CESでUPnPに対応したホームサーバーソフトウェア「Windows Media Connect」を今夏に配布する予定であることを明らかにしており、夏頃までにはWindows XPを搭載したPCが、UPnPのコンテンツサーバーになることができるようになる。このため、各社はUPnPに対応したDMAの準備を進めているのだ。 昨日、デジオンが同社のUPnP対応ホームネットワークソフトウェアである“DiXiM”とソニーのUPnP対応ソフトウェアの“VAIO Media”、さらにUPnP対応DMA“RoomLink”と相互に認識可能であることを発表したが、今後はこうした例が増えていくことになるだろう。
●コードレスフォンの代換として浮上しつつあるVoice over Wi-Fiハンドセット 初日に行なわれたWi-Fi Allianceの記者会見では、Voice over Wi-Fiと呼ばれるVoIP(IP電話)の無線LAN版が今年のトレンド、という説明がされたが、ネットワーク機器の展示ホールでは、多くのベンダが無線LANに対応したワイヤレスハンドセットを公開していた。中にはまもなく出荷も可能だと言うところもあり、日本も含めた各地域に出荷すると説明するベンダもあった。 ただ、いずれもNTTドコモが開発したようなFOMAと無線LANのデュアル環境をサポートする製品ではなく、無線LAN(IEEE 802.11b)のみが対象となるものが多かった。これにVoIPを組み合わせて通話するという形になっている。また、ローミングを前提にした機器などはなく、セキュリティもWEP程度のものがほとんどで、実際にはコードレスフォンの代換としての用途が期待されているようだ。 日本ではADSLやインターネット電話と呼ばれるVoIPがかなり普及してきているが、VoIPをコードレスにする用途などに採用されていくことになりそうだ。
●複数のベンダがBTXを展示するものの、普及はまだまだ先 マザーボードベンダやODMメーカーの一部は、IntelがPrescott世代の小型シャシーのために計画しているBTX(Balanced Technology Extended)に対応したケースなどを展示した。 BTX関連製品を展示したのは、ASUSTeK Computer、Mitac、FOXCONN、Intelの4社で、ASUSはケースとマザーボードを、Mitacはケースを、FOXCONNとIntelはマザーボードを展示した。
BTXは、Intelがシャシーのレイアウトなども含めて見直した新しいマザーボードとケースの仕様で、125Wと言われる次世代のTejas/CederMill世代CPUの熱設計消費電力にも耐えうるような、効率の良い熱設計を可能にするものだ。 特に、picoBTXとよばれる4~9リッター程度の体積のPCケースは、Tejas/CederMill世代でも小型PCを実現するソリューションとして期待されている。実際、BTXに取り組まないと、標準品で小型かつ静音のPCを実現するのは難しいと考えられている。 ただし、今回の展示はどちらかと言うとデモンストレーションの趣が強く、すぐにBTXが立ち上がるという種類のものではない。実際、Intel自身もOEMメーカーに対して、すぐにATXからBTXへ移行が進むとは説明していない。情報筋によれば、IntelはOEMメーカーに対して2004年中に10%程度、2005年に20%、2006年にようやく50%に達するという見通しを説明しているという。 しかし、OEMメーカー側はこれもかなり強気の見通しであると見ているようだ。あるベンダの関係者は「確かにpicoBTXに関しては、より体積の小さなPCを標準のパーツで作れるという観点で意味がある。しかし、BTXに関しては現状のATXと何も変わらないので、普及させるのはかなり難しいだろう」と指摘する。実際多くの関係者はBTXがATXを置き換えることなどあり得ないと考えている。 「これは鶏と卵だ。仮にBTXマザーボードがATXマザーボードよりも安価になれば、BTXのケースも多数登場するだろう。しかし、現時点では明らかにBTXの方が高いので、ケースメーカーもBTXには取り組みたがらない」とある台湾のマザーボードベンダの関係者は説明する。では、なぜ取り組んでいるベンダがあるかと言えば、それはIntelから強いプッシュがあったからのようだ。 筆者が取材したところ、現在BTXに取り組んでいるベンダの多くは、Intelから強い働きかけがあったことを非公式ながら認めている。 ただし、「Intelが近い将来BTXだけのデザインガイドに切り替えたりしたら、BTXへ移行せざるをえないのも事実だ」(マザーボードベンダ関係者)と、実際のところ設計の大部分をIntelに依存している台湾のベンダにとって、IntelがBTXを本気で立ち上げるのであれば、それにつきあわざるをえないのも事実で、長期的にみればBTXに置き換わっていくことになると考えられる。しかし、2006年に50%がBTXになるという見通しが実現されるのかは、依然として“?”がつきそうだ。
□CeBIT 2004のホームページ(英文) (2004年3月24日) [Reported by 笠原一輝]
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