会場:独ハノーバー市ハノーバーメッセ(Hannover Messe) VIA TechnologiesはCeBITの会場において記者会見を開催し、新製品や同社の2004年の戦略などについて解説した。 この中で同社は、チップセット、GPUの新製品、Nano ITXと呼ばれる超小型フォームファクタで製造されたEPIA Nマザーボードなどのほか、現在C3に利用されている「Nehemiah」(ニアマイ)の次次世代コアとして「Isaiah」(アイゼア)と呼ばれるコアを計画していることなども明らかにした。 ●新たにNano ITXに対応したEPIA Nシリーズをラインナップ VIA Technologiesは新たにEPIA Nシリーズと呼ばれる新しいEdenプラットフォームのマザーボードを追加した。 EPIA Nシリーズは、昨年のCOMPUTEX TAIPEIで発表されたNano-ITXフォームファクタと呼ばれる12×12cmの超小型フォームファクタのマザーボードで、CPUのパッケージも同じく昨年9月に発表された超小型CPUパッケージ「Nano BGA」が採用され、CPUコアにはVIAの最新コアである、130nmプロセスで製造されるNehemiah(ニアマイ)が採用されるという。 VIA Technologiesのエンベデッドプラットフォームディビジョンのトップであるスティーブン・リー氏は、「EPIA Nはもともとかなり小さかった従来のMini ITXに比べても半分程度の底面積で、これまでPCコンポーネントを組み込むのが難しかったような機器にもPCの機能を組み込むことができる」と説明し、マザーボードのためのスペースが限られている機器にPCの機能を追加するという用途に有効であるとアピールした。 CeBITでは、IT技術、通信技術、エンターテイメント技術の融合をテーマとして掲げるメーカーが多く、いわゆるデジタル家電の流れがより加速していることを示している。そのため、これまでPCコンポーネントが入ることができなかったエリアにもPCが使われる例が増えてきている。 たとえば、今後は液晶テレビやプラズマテレビにPCの機能(Windowsではないとしても)を持たせるというような用途には、より小さなフォームファクタで、かつ低コストであることが求められている。よく知られたことだが、NECのHDDレコーダであるAXシリーズにはVIAのC3が採用されており、実際にそうした使われ方は始まっている。 リー氏は、「弊社は組み込み向けにもx86が最適だと考えている。EPIA Nに採用されているEden-Nプロセッサは1GHzでも7Wとファンレスを実現可能であり、熱設計の観点からもアドバンテージがあると考えている」と述べ、今後デジタル家電などに採用される例が増えるという見通しを明らかにした。 なお、VIAによれば、EPIA Nマザーボードは、第2四半期に市場に投入される見通しということだ。
●Estherの後継としてIsaiahを開発中 今回発表されたEPIA Nマザーボードには、C3にも採用されているNehemiahコアを搭載したEden Nプロセッサが採用されている。 Eden NプロセッサはNano BGAと呼ばれる超小型パッケージを採用しており、Nano ITXの12×12cmという小型フォームファクタを採用するCPUで、C3と同じく低消費電力であることが特徴だ。 1GHzで7W、533MHzでは2.5Wの熱設計消費電力になっており、PowerSaver 3.0と呼ばれる省電力技術を利用して平均消費電力を下げることが可能になっている。また、VIAのセキュリティ技術「PadLock」にも対応しており、AESのハードウェアデコードなどが可能だ。 チップセットに関してはCN400が採用されている。CN400はVIAのグラフィックスコアを内蔵した統合型チップセットで、MPEG-2のハードウェアデコーダやMPEG-4アクセラレータ機能、デュアルディスプレイ機能のDuoViewなどが内蔵され、デジタル家電などに適したチップセットとなっている。サウスブリッジはVT8237で、従来のIDEコネクタのほか、Serial ATAに関してもオンボードで用意されている。 なお、リー氏は同社のCPUコアロードマップに関しても言及した。現在VIAはC3やEdenに130nmプロセスルールで製造されるNehemiahコアを採用しているが、現在次世代としてEsther(エスター、VIAのCPUコアを開発するCentaurの呼び方ではC5J)を開発している。 Estherは90nmプロセスルールで製造される予定で、今年の終わりまでには投入される予定。2GHzの動作クロックを実現する予定であり、ダイサイズは30平方mmで、現在のNehemiahに比べてさらに小さいダイサイズを実現することを計画しているという。 さらに、2005年に登場する予定の次世代ではIsaiah(アイゼア、Centaurの呼び方ではCN)というコードネームの製品が開発されており、「将来の世代では同じ1GHzのクロックであれば消費電力がさがるはずだ」(リー氏)と、今後もより低消費電力を目指していくという同社の方針を確認した。
●PCI ExpressのサウスブリッジにはVT8251を投入 VIA Technologiesのプロダクトマーケティング担当のジー・ウェイ・リン副社長は、VIAのチップセットロードマップについて説明を行なった。 基本的には昨年の9月にCOMPUTEX TAIPEIで説明されたものと大きく変わっていないが、以前のレポートでもお伝えしたように、Opteron/Athlon 64用のチップセット「K8T800」のSocket939対応版として「K8T800Pro」が追加されたこと、さらにはサウスブリッジ「VT8237」の後継として計画されていた「VT8239」が無くなり、「VT8251」に変更されたことなどが明らかにされた。 VIAではV-MAPと呼ばれるチップセットアーキテクチャを採用している。これは、ノースブリッジとサウスブリッジを接続するバスをV-Linkに固定し、VIAの顧客はノースブリッジとサウスブリッジを望みの組み合わせで利用できるというものだ。 例えば、ノースブリッジは最新な必要がないが、サウスブリッジのSerial ATAの機能は使いたいという場合にも柔軟に対応できるようになっている。 このV-MAPはPCI Express世代でも続いており、ノースブリッジにPCI Express X16とPCI Express X1が4ポートを実装しているほか、サウスブリッジのVT8251にもPCI Express X2を2ポート実装している。これにより、例えば、PT880とVT8251の組み合わせでは、AGPビデオカードを利用することができ、かつPCI Expressの周辺機器を利用できるというマザーボードを作ることができる。 もっともこの戦略は、VIAだけでなく、SiSやULiに関しても同じで、サードパーティチップセットの特徴の1つとなるだろう。
●S3はPCI Expressに対応したGammaChromeを発表するも、展示はなし VIAの子会社であるS3 Graphicsは、DeltaChromeのPCI Express版であるGammaChromeを発表した。 GammaChromeは、ネイティブのPCI Expressコントローラを持つPCI Express対応GPUで、PCI Expressに対応している以外の機能はDeltaChromeとほぼ同等となっている。現在DeltaChromeにはハイエンド向けのF1(8パイプ、高クロック動作)、メインストリーム向けのS8(8パイプ)、バリュー向けのS4(4パイプ)が用意されているが、GammaChromeは、現行ラインナップのS8に当たるメインストリーム向けの製品が最初に登場し、続いてバリュー向け、ハイエンド向けがリリースされる予定になっているという。 なお、今回の発表会ではGammaChromeのデモが行なわれる予定だったが、ロストバゲージ(飛行機での荷物遅延トラブル)が発生したとのことで、残念ながらデモはなかった。現地時間の土曜日以降、荷物が到着し次第デモが行なわれる予定であるという。 また、同時にDeltaChromeを搭載したボードにTVチューナを統合したOmniChromeという製品も計画されていることが明らかになった。OmniChromeは、Windows XP Media Center Edition用に設計されており、OEMメーカーやチャネルなどは自社のマシンにローコストでTVチューナを追加することが可能になるという。
(2004年3月21日) [Reported by 笠原一輝]
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