CeBIT 2004レポート

第2四半期を目指して急速に立ち上がるPCI Express
~対応チップセットとマザーボードが大量展示


会場:独ハノーバー市ハノーバーメッセ(Hannover Messe)
会期:3月18日~24日(現地時間)


 独ハノーバーで開催されているCeBITは、実に40近いホールから構成されている巨大イベントだが、その一角を占めるホール20~24はIT系のコンポーネントベンダの展示会場となっている。今回、ベンダが最も力を入れて展示しているのがPCI Express関連の製品だ。

 初日に記者会見を開いたIntelは、PCI Expressに対応したチップセットAlderwood(オルダウッド)とGrantsdale(グランツデール)に関してデモを行なった。ベンダの展示も許可されたため、各社が関連製品を一斉に展示している。さらにVIA、SiSもPCI Expressに対応したチップセットを展示したことで、各ブースはPCI Express対応製品であふれている。

●記者会見でドルビープロロジックII再生をデモ

 AlderwoodとGrantsdaleは、Intel 875P/865の後継チップセットで第2四半期にリリースを予定している。これまでのAGPに代わりPCI Expressに対応していることが最大の特徴だ。なお、AlderwoodとGrantsdaleの関係は、Intel 875PとIntel 865と同じで、Grantsdaleのハイエンド版がAlderwoodとなる。Grantsdaleには内蔵GPUなし版のGratsdale-P、内蔵GPU版のGrantsdale-G、内蔵GPUのみのGrantsdaleーGVが用意されている。

Alderwood/Grantsdaleチップセット LGA775はソケット側にピンが用意されており、剣山のようになっている

 CPUソケットも従来のmPGA478に換えてLGA775を採用しており、メモリも従来のDDR1に加えてDDR2をサポートしている(ただし、両方同時には利用できない)。

 GPU用のバスはシリアルバスのPCI Express x16になり、双方向で8GB/secの帯域幅を実現している。また、Grantsdale-Gに内蔵されているグラフィックスは、従来のDirectX 6/7世代の機能から大幅に拡張され、4ピクセルパイプラインを備えるDirect X9世代となった。ICHへの接続も、DMI(Direct Media Interface)となり最大2GB/secへ強化された。

 ICHもICH6へと強化された。ICH6ではSerial ATAのポート数が4ポートに強化され、周辺機器を接続するためのPCI Express x1(双方向250MB/sec)が4ポート実装される。

GIGA-BYTEのAlderwood搭載マザーGA-8ANXP-D ASUSTeK ComputerのAlderwood搭載マザーボードP5AD2

 ICH6では、オーディオ関連の強化も重要なポイントで、これまでコードネームAzalia(アゼリア)で呼ばれてきたHD Audio(High Definition Audio)と呼ばれる、より高品質なオーディオ機能が実装されている。HD Audioでは最高で24bit/192kHzのオーディオを再生可能で、8スピーカーに出力できるので、7.1ch構成でよりリアルなサウンドを再生することができる。

 ドルビーのソフトウェアデコーダが提供されることも特徴となっており、CPUによりデコードすることで、高価なAVアンプを買わなくてもドルビー5.1chオーディオなどを楽しむことができる。

 初日に行なわれたIntelのデジタルホームに関する発表会では、Grantsdaleにより、ドルビープロロジックIIのソフトウェアデコーダを利用し2chのCDを5.1ch再生するデモが行われた。なお、PCベンダはこうしたドルビーのソフトウェアデコードを自社の製品にバンドルすることができるほか、マザーボード単品に対してもバンドルすることが可能になる。

【お詫びと訂正】記事初出時、ICH6が再生可能なオーディオを192Hzと記述しましたが、正しくは192kHzでした。お詫びして訂正させていただきます。

HDオーディオを利用したドルビープロロジックIIのデモ

 Intel自身のブースをはじめ、各社のブースでは実に多くのAlderwood、Grantsdale対応マザーボードが展示された。ただし、許可されたのは、マザーボードの展示と、Alderwood、Grantsdale-Pのライブデモだけで、Alderwoodの型番である「Intel 925X」やGrantsdaleの型番である「Intel 915」などは出してはいけないというものだったという。マザーボードベンダの中には、「**915**」という製品名をマザーボードにつけて展示してしまうので、そんな状況で型番を隠すしてもあまり意味はないと思う。

 なお、マザーボードメーカーによれば、GPUを内蔵したGrantsdale-Gの動作デモは許可されなかったという。このため、各社はGPUを内蔵していないAlderwoodとGrantsdale-Pの動作デモのみ行ない、Grantsdale-Gに関してはデモをしなかった。ある情報筋はこの理由を「内蔵GPUのドライバはまだ完成していない。3月上旬の時点でも我々はあるドライバを受け取っておらずまだテストできていない」と説明しており、どうやらこれが原因で、デモが許可されなかったようだ。このあたりは、昨年のSpringdale-Gでも同じような状況であったので、6月と言われる出荷には間に合うかもしれないが、気になる状況とは言えるだろう。

●VIA PT890登場、PCI ExpressとAGPが共存

 VIA Technologiesは、同社のPentium 4用最新チップセットであるPT890を展示した。PT890は、VIAが昨年の秋にリリースしたPT880の後継となるチップセットで、PCI Expressに対応している。VIAによれば、PT890は第2四半期の出荷が予定されているが、現時点では動作するデモはVIAでのみ展示されていた。

 PT890の最大の特徴はノースブリッジにPCI Express x16とAGPの両方のコントローラを内蔵していることだ。このため、ユーザーはPCI Express x16のビデオカードが出そろうまではAGPビデオカードを利用し、PCI Expressのビデオカードが出そろってきて段階でPCI Expressへ移行するということが可能になる。

 PT890のもう1つの特徴はノースブリッジにPCI Express x1が4ポート用意されていることだ。また、必要に応じてX2が2ポート、X4を4ポートという構成でも利用することが可能となっている。ただし、X2やX4の拡張カードというのは今のところほとんどない状況なので、x1を4ポートという実装にすることが多そうだ。

 なお、サウスブリッジだが、今回展示されたPT890には従来製品にも使われていたVT8237が採用されていた。VIAの場合、ノースブリッジにPCI Express x1が4ポート搭載されているので、サウスブリッジに関しては手を入れる必要がないからだ。ただ、VIAはVT8237の後継となるチップセットを計画しており、VT8251の型番で登場することになる。

 VT8251ではSerial ATAが4ポートに拡張されるほか、PCI Express x1が2ポート実装されることになるほか、HD Audioにも対応する。VIAによれば、VT8251はPT890にやや遅れて7月の出荷が予定されているが、サンプルは第2四半期に入ってからとなるので、予定に関しては今後変更される可能性もあると言えるだろう。

PCI Express x16に対応したVIA PT890 FICのPT890搭載マザーP4-890T。AGPとPCI Express x16の両方を装備。CPUソケットはmPGA478 ASUSのPT890搭載マザーボードはLGA775に対応

●SiSはPCI Express対応でDDR1/DDR2が共存

 SiS(Silicon Integrated Systems)もPCI Expressを対応するチップセットを展示している。展示されていたのは、サウスブリッジのSiS965と、Pentium 4用ノースブリッジのSiS656、Athlon 64/64 FX用ノースブリッジのSiS756の3製品だ。

 SiS965は、現在のSiSチップセットで採用されているサウスブリッジのSiS964の後継となる製品で、PCI Express x1を2ポート利用することができる。そのほか、Serial ATAが4ポートになり、Gigabit EthernetのMACが内蔵されるなどが特徴となっている。

 ノースブリッジのSiS656、SiS756はPCI Express x16とx1が4ポート実装されており、それぞれPentium 4、939ピンAthlon 64をサポートする。SiS656はデュアルチャネルのDDR1、DDR2の両方に対応しており、DDR2に関しては677MHzで動作するDDR2-667にまで対応するという。ただし、現時点ではJEDECにおいてDDR2-667の規格策定は完了しておらず、あくまで技術的にサポート可能という形での対応になるという。

 また、SiSのリファレンスボードは、DDR2とDDR1の混合デザインがされており、とりあえずはDDR1で利用し、DDR2の普及後にはDDR2へ移行するという使い方が可能になっている。

PCI Expressに対応したSiS656 SiS656を搭載したマザーボード。DDR1とDDR2の両方のスロットが搭載されている SiS756を搭載したマザーボード、1GHzのHyper Transportに対応している

ULiのPCI Express対応サウスブリッジを搭載したリファレンスマザーボード
 ULiはM1566というPCI Expressに対応したサウスブリッジを展示した。M1566はPCI Express x1を4ポートないしはX2を1ポートサポートし、すでにULiが発売しているHyper Transportベースのノースブリッジに接続して利用することができるという。

●各社がSocket939マザーボードを展示

 初日のレポートでもお伝えしたように、AMDはAthlon 64 FX-53をCeBITの会場で発表した。同時に各OEMメーカーはSocket939と呼ばれるUnbuffered DIMMを利用することができる新しいCPUソケットを採用したマザーボードの展示を行なった。

 ブースでもSocket939に対応したVIAのK8T800Pro、NVIDIAのnForce3 Ultra、SiSのSiS755FXなどを搭載したマザーボードが展示されている。

 なお、Athlon 64用のPCI Express対応チップセットは、Intelに比べて早くても1四半期程度は遅くなりそうだ。AMDヨーロッパ担当ストラテジックマーケティングマネージャ デーブ・エベリット氏は「Athlon 64のインフラストラクチャがPCI Expressに移行するのは今年の後半になるだろう」と話している。

 チップセットベンダのスケジュールもまずはIntel向けのチップセットを発表したあとで、1~2四半期遅れてAMD向けのチップセットをリリースするというものとなっている。

 また、一部のブースでは、ATI Technologiesの未発表チップセットであるRS350を展示しているところもあった。RS350は、昨年RS300として発表されたRADEON 9100 IGPの改良版となる製品で、メモリコントローラ周りが改良されて性能が向上するほか、サウスブリッジがIXP300という最新版に切り替わる。

GIGA-BYTE「K8NSNXP-939」。NVIDIA nForce3 Ultraを搭載したSocket939マザー SiS755FXを搭載したSiSによるSocket939ピン対応リファレンスマザーボード

ATI RS350を搭載したサンプルマザーボード


□CeBIT 2004ホームページ(英文)
http://www.cebit.de/homepage_e
□関連記事
【3月19日】【CeBit】AMD、2.4GHz駆動のAthlon 64 FX-53など最新CPUを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0319/cebit03.htm

(2004年3月20日)

[Reported by 笠原一輝]


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