このところ全国紙の朝刊には毎日といっていいくらい、直販PCの広告が掲載されている。価格は69,800円や79,800円と、もはや10万円を切るのは当たり前。こんな直販系PCの価格攻勢を正面から受けて立っている間接販売PCの代表格がeMachinesのPCだ。 49,800円という衝撃の価格でわが国に登場したのは2002年のことだが、今も最安値で44,800円と低価格路線を維持している。1月末にはGatewayによりeMachinesが吸収合併されるというニュースも届いたが、わが国での販売はこれまで通り継続される見込みだ。 そのeMachinesのPC(当時のミドルレンジモデルであったN2040)をこのコラムで取り上げたのは昨年の1月末のこと。それから1年、eMachinesのPCもひそかに、だが確実に変わりつつあるようだ。デスクトップPCにはAthlon XP搭載モデルが追加されたし、ワイド液晶搭載のノートPCもラインナップに加わった。ここらでもう1度チェックしてみるのもいい機会だろう。 ●素性のよいパーツを搭載
今回、筆者の手元に届けられたのはeMachinesの現行ラインナップ中ではハイエンドにあたるJ4325である。ハイエンドといっても、価格は109,800円と決して高くない。前回N2040を取り上げた時、筆者は「すっぴんのPC」という言葉を用いたが、その印象はこのJ4325も同じ。国産PCベンダのハイエンドモデルは何かとソフトウェアやハードウェアが追加された満艦飾モデルとなっていることが多いが、J4325で強化されているのはPCとしての基本的な部分だけ。TVチューナカードなどは、後からユーザーが好みのものを追加する仕様となっている。 では基本的な部分がどのように強化されているのか。前回取り上げたN2040と同世代のハイエンドモデルであったN4010とスペックを比べてみたのが表だ。 【スペック比較】
価格は15,000円ほど上がってしまったが、価格以上にスペックアップした部分が多い。プロセッサの動作クロック、メモリ搭載量、ハードディスク容量などいずれも増大している。そのハードディスクのスピンドル回転数の向上、光学ドライブがコンボドライブからDVD±RWドライブへアップグレードなど、ほとんどの部分が強化されている。 マザーボード(FIC製)のチップセットもIntel 865Gにアップデートされており、これに伴いAGPスロット(出荷時は未使用)もAGP 4XからAGP 8Xへとスペックアップしている。いつの間にかIEEE 1394ポートも搭載されるようになった。
また、スペック的には変わらなくても、プロセッサがまだ単体での販売は珍しいPrescottコアのPentium 4 3.0E GHzだったり、メモリもメモリベンダ(Samsung)純正の256MB DIMM(PC3200 CL3)が2枚と、使われているパーツの選択も悪くない。だから何だということもないが、以上のような強化点を合わせれば15,000円の価値は十分あるだろう。 ちょっと感心したのは、フロッピードライブをやめて、同社がDigital Media Managerと呼ぶ、USB 2.0接続のメディアリーダを設けたことだ(カタログ的には8in1になっているが、正確には7in1のリーダ+USB 2.0ポート)。 表では「スペックダウン」と書いたものの、今時フロッピーブートなどほとんどの人が行なわないだろうし、OSのインストール時でさえ必要としなくなった。その代わりに、デジカメやMP3プレーヤー、PDAなどで用いることの多いフラッシュメディアのリーダ/ライタを標準搭載することには大賛成だ。 どうしてもフロッピーディスクの読み書きが必要なら、安価で市販されているUSB接続のフロッピードライブを用意すればいい。フロッピードライブをはずすついで? にアナログモデムもはずしてしまえ、と思わなくもないが、はずすとかえって高くなりますよ、と言われかねないので、とりあえず控えておこう。
●控えめなバンドルソフト
前回同様、筆者が好ましく思うのは、余計なソフトがバンドルされていないことだ。さすがにDVD±RWドライブの搭載に伴って、ライティングソフト(RoxioのEasy CD&DVD Creator 6)が標準インストールされるようになったが、追加されたソフトは、これとDVDプレーヤーソフト(PowerDVD 5 OEM版)くらいのものである。 日本の量販店で売られているPCの多くは、デスクトップPC、ノートPCを問わず、余計なソフトがバンドルされているものが多い。使わないソフトのバンドルはハードディスクを圧迫するだけでも迷惑な存在だが、もっと困るのは安価にバンドルする条件として、デスクトップ上に変なバナー広告(ホームページへのショートカット)等が表示される場合が多いことだ。これをいちいちアンインストールしていくだけでウンザリさせられる。しかも、リカバリディスクでリカバリした状態で、すでに組み込まれている(おそらく契約条項なのだろう)のだから余計にタチが悪い。 筆者など、デルがコンシューマー分野でもシェアを伸ばしている理由の1つはこれじゃないかと思っているクチだが、こうしたソフトウェアバンドルが目に余るPCには、別途OSを購入してクリーンインストールしたくなる。しかし、Windows XP Home Editionだって、フルバージョンを購入するとなると24,000円近くする。Windows XP Professionalとなると35,000円以上の出費を余儀なくされる。デルに限らず、eMachinesのPCもこうした余計な出費が要らないことを本当に喜ばしく思っているのだ。 ●高い拡張性を備え、安心して購入できる
Hyper-Threadingに対応した3GHzのプロセッサ、DVD±RWドライブ(4倍速/±R、2.4倍速/+RW、2倍速/-RW)、512MBのメモリ(さらに空きスロット×2あり)、250GBのHDDというスペックは、おそらく普通の人が今PCに求める以上のものだと思う。これに外付けUSB 2.0対応のMPEG-2対応TVキャプチャボックスか何かを加えれば、ほとんどの人はPCのケースを1度も開くことはないのではないだろうか。 特に、日本のユーザーはあまりPCゲームをしないし、もし万が一PCゲーム、それも3Dグラフィックスバリバリのものに目覚めてしまっても、本機にはAGPスロットが用意されているから、そこに適当なグラフィックスカードを加えればいい。ほとんどワイルドカードのようなPCだ。 確かに、大手PCベンダ製のデスクトップPCは、本機よりはるかに小さく省スペース性に優れたものが多い。静音性でも有利だろう。が、もし将来どこかに不満が生じた場合、限られた拡張性から全交換になるリスクもある。 本機のような標準的なMicro ATXのケースとマザーボードを採用していれば、どうにでもなる。その上で、内部に手をつけるかどうかは、ユーザーの判断しだいだが、筆者などはこれなら知人にすすめておいて何か問題が生じても、自分でサポートできるな(筆者の手持ちのパーツで何とでもできるな)、などと考えてしまう。 逆に、いわゆるホワイトボックス系のPCとの比較においても、eMachines製のPCは決して悪くない。キーボードやケースのデザインは、平均的なホワイトボックスPCより良いと思うし(好き嫌いはあるだろうが)、使われているパーツのグレードも良好だ。 販売店でのサポートに加え、eMachinesによるサポートがあることも、ホワイトボックスより有利な部分だろう。予算と設置場所さえ許せば、安心して使える1台だし、1年前のハイエンドモデル(N4010)に比べてもまとまりが良くなっている。 □関連記事 (2004年3月5日) [Text by 元麻布春男]
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