会場:Las Vegas Convention Centerほか 会期:1月8~11日(現地時間) Microsoftのビル・ゲイツ会長は、基調講演の中で、TCP/IPによる家電とPCの接続を実現する技術としてWindows Media Center eXtender(MCX)、Windows Media Connectテクノロジーなど、Microsoftが主導するデジタル家電のイニチアシブについて語った。 こうした動向を受けて、家電メーカーやPC関連のベンダは、TCP/IPネットワーク経由でPCに接続し、PCの内部に蓄積している動画、静止画、音楽ファイルなどを再生できるネットワークメディアプレイヤーを展示している。
●DTCP/IPの技術も含め、総合的なデモを行なった東芝 今回の展示でPCユーザーにとって最も注目されるのが、東芝のデモだ。会場レポートでも触れているように、同社が開発中のホームメディアサーバーを核としたホームネットワークの技術デモが行なわれた。内容は、IEEE 802.11aないしは11gに準拠した無線LANを経由してPCからホームサーバーへとアクセスや、UWBによる映像配信などだ。
東芝の説明員によれば、このホームサーバーは、DHWG(Digital Home Working Group)が策定した仕様に準拠したものとなっているという。物理ネットワークにはEthernetないしは無線LAN、ネットワークプロトコルにはTCP/IP、デバイス認識などにはUniversal Plug and Play(UPnP)という構成になっている。 メディアトランスポート層はHTTPとRTPの2つに対応している。このうちHTTPに関しては、MicrosoftのWindows Media Connectの仕様にも準拠しており、パーソナルサーバーに用意されているクライアント機能を利用して、Windows Media Connectサーバーへアクセスすることが可能になっている。つまり、今回公開された開発中のホームサーバーはそれ自体がPCのメディアサーバーとしても動作するし、逆にPCに保存された動画、静止画、音楽ファイルなどを再生するクライアントとしても動作することになる。 なお、このホームサーバーにPCから接続するためには、専用のクライアントソフトウェアを利用して行なう。今回公開されたデモで利用されていたPCクライアントソフトウェアでは、メディアトランスポート層としてRTP(Realtime Transport Protocol)を利用する。RTPはオーディオやビデオをリアルタイムでデータ転送するためのプロトコルで、HTTPでは実現できないプッシュ型の配信などが行なえるという。現在のDHWGの仕様ではメディアトランスポート層としてHTTPのみが規定されているが、将来の仕様ではRTPのサポートも予定されており、今回のデモはそれを先取りしたもののようだ。 また、PCクライアントとホームサーバーの双方にはDTCP over IP(Digital Transmission Content Protection over IP)の機能が実装されている。DTCP over IPでは機器を相互に認証することで、家庭内のネットワークであればデータの転送を可能にする技術で、ユーザーはダウンロードしたプレミアムコンテンツをホームネットワークに接続された機器では再生できるようになるが、家の外にある機器にコピーして持ち歩くことはできなくなるという技術だ。 DTCP over IPにより、家庭内では、ある程度の自由度を確保しながら、同時にデジタル著作権保護を実現することができる。このため、コンテンツプロバイダーも違法コピーを心配の不安なくコンテンツ配信を実現するプラットフォームが実現可能で、ユーザーにとっても、コンテンツ所有者にとっても意味があることだろう。 今回東芝が公開したデジタルホームのデモは、デジタルホームのあるべき姿を示していると言える。日本の家電ベンダのデジタルホーム構想では、PCが無視されていたり、PCがつながらないという未来像を示しているものが多い。しかし、家庭におけるPCの普及率が70%を超える今、PCを無視したデジタルホーム構想は歪んでいる。PCとデジタル家電が相互に接続でき、コンテンツ保護も実現された形でメディアデータのやりとりができるという今回の東芝のデモは、誰にとっても受け入れやすいものではないだろうか。
□関連記事
●Windows Media Center eXtenderに対応した端末をデモしたGateway GatewayはWindows Media Center eXtender(MCX)に対応したネットワークメディアプレイヤーを展示した。MCXに関しては別途Microsoftのビル・ゲイツ会長兼CSAの基調講演レポートでお伝えしたとおり、RDP(Remote Desktop Protocol)を利用してWindows XP Media Center Editionが動作するPCにリモートデスクトップ接続する。ユーザーインターフェイスは、Windows XP Media Center Editionのものをそのまま利用し、動画や音声などはストリーミングで送信され、MCXに流し込まれテレビに表示できるようになる。MCXとWindows Media Conncetに対応したネットワークメディアプレイヤーの最も大きな違いは、このRDPの利用という点にある。前者がRDPでWindows XP Media Center Editionに接続するため、Windows XP Media Center Editionの機能であるライブテレビを表示する機能、iEPGの機能などを利用可能であるのに対して、後者はWindows Media ConncetにはそうしたライブテレビやiEPGなどの機能を持っていないので、機器ベンダが独自に拡張しなければならないという違いがある(機器ベンダが独自に拡張すれば、そうした機能を持たせることも不可能ではない)。 実際、デモでは、Windows XP Media Center Editionが動作するPCに接続して、ライブテレビを表示する様子やビデオなどを再生する様子が公開された。
【1月9日】【CES】ビル・ゲイツ基調講演レポート ●Philips、“Connecting Planet”ビジョンに対応したプレーヤー PhilipsはMX600i、SL400i、SL300iという3つのネットワークメディアプレイヤーを発表し、第1四半期中に製品として投入することを明らかにした。MX600iはホームシアターシステムのセンターとなる機器で、Ethernetポート、あるいは添付されるIEEE 802.11gに準拠したUSB無線LANモジュールを利用して、TCP/IPネットワークに接続して利用できる。Philipsが発売しているホームサーバーのMC-i250に接続できるほか、PCにPC-Linkというサーバーソフトウェアをインストールすることで、PCをホームサーバーとして利用できる。PCに保存しているMP3、JPEG、MPEG-1/2/4などのメディアファイルが再生できるのだ。 また、DVDビデオの再生やCDの再生も可能だ。オーディオ関連の機能としては、6つの75Wアンプを内蔵しており、5.1chで迫力のあるオーディオ再生が可能だという。 SL400iはドライブや5.1ch出力対応アンプなどを省略したローコスト版で、MX600iと同じようにPC用のPC-LinkというソフトウェアをインストールすることでPCをホームサーバーとして活用できる。SL400iにはステータスを示すLCDが用意されており、状態などを確認できる。やはり、Ethernetと無線LANの機能を備えており、ワイヤレスでもPCに接続することも可能だ。 SL300iはローエンド機で、LCDなども省略されている。 市場想定価格はMX600iが799ドル、SL400iが499ドル、SL300iが349ドルとなっており、いずれも第1四半期中に米国市場向けに投入される予定だ。
●Samsung、PCのデータを再生可能なホームネットワークシステムを展示 韓国のSamsungは、東芝と同じようにPCをサーバーとしても利用可能なホームネットワークシステムの技術デモを行なった。Samsungが展示したホームネットワークは、サーバーとなる“AV Center”と呼ばれるホームサーバーと、IP over coaxialと呼ばれる同軸ケーブルによるIPネットワークで構成される“AV Client”と呼ばれる子機などから構成されている。AV Centerは、VIAのEden 667MHz、256MBのメモリ、GPUにはATIのXilleonというPCベースの構成になっており、光学ドライブも内蔵し、DVDの再生も可能。2つのEthernetポート、同軸ケーブルなどの通信機能を備えている。 OSはLinuxが採用で、UPnPで他のデバイスと接続する。Samsungの説明によれば、PCも接続可能になっており、PCの内部に保存してあるMPEG-2やMP3、JPEGなどのメディアファイルを再生することが可能であるという。 なお、今回の展示はあくまで技術デモであり、具体的な製品投入の時期などは未定であるということだ。
●MSIやPinnacle Systemsもネットワークメディアプレイヤーを展示 このほか、MSIやPinnacle Systemsなどもネットワークメディアプレイヤーを展示した。MSIはCeleronとIntel815から構成されるネットワークメディアプレイヤーなどを展示している。OSはLinuxベースで、Universal Plug and Playに対応しており、他のUPnPデバイスなどと接続して利用できるという。 展示されていたのは、純粋にネットワークメディアプレイヤーとして動作する製品(MS-3288)と、ネットワークメディアプレイヤーにサーバー機能と記録型DVDドライブを追加し、それ自体がサーバーとして動作する製品(MS-3287)などで、実際に動作している様子もデモされていた。両製品とも今年中の製品化を予定しているという。 また、IntelブースではPinnacle SystemsとLinksysがネットワークメディアプレイヤーが展示されていた。どちらの製品もすでに製品として米国市場に投入されており、Pinnacle SystemsのShowcenterは動画、静止画、音楽ファイルを扱うことができ、LinksysのWMA11Bは動画は扱えず、静止画、音楽ファイルのみをサポートするという仕様となっている。
http://www.pinnaclesys.com/ProductPage_n.asp?Product_ID=1481&Langue_ID=10 □Linksys WMA11B製品情報(英文) http://www.linksys.com/products/product.asp?grid=33&scid=38&prid=554
(2004年1月11日) [Reported by 笠原一輝]
【PC Watchホームページ】
|
|