オリンパスE-1は同社が提唱し、富士写真フイルムとイーストマン・コダックが賛同した「フォーサーズシステム」の第1号機だ。フォーサーズとは4/3のことで、撮像素子の大きさが4/3インチであることからきている。この撮像素子の大きさとレンズ規格(マウントやフランジバック)を決めて、オープンシステムとして提唱された。 オリンパスのデジタル一眼レフとしてはE-10、E-20があるが、いずれもレンズ固定式。レンズ交換式のデジタル一眼レフはこのE-1が同社にとって初めてだ。実売価格でボディーのみ228,000円(12月上旬現在)と、今となってはやや高めの設定だが、それだけに各所に工夫を凝らしてある。デジタル一眼レフが抱えるいろいろな問題に真正面から取り組んだカメラである。 今回はこのE-1と、「ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5」、「ZUIKO DIGITAL 50-200mm F2.8-3.5」の2本のレンズとともにレポートする。 ●操作系はオリンパス独自のものでやや煩雑 フォーサーズシステムは撮像素子が小さいために、カメラも小型化することが期待されていた。その点で、E-1は意外と大きいのだが、そのぶん防塵防滴構造や独自のダストリダクション機構などを備え、ほかのデジタル一眼レフとは一線を画する。 約660gという重さは、ペンタックス*istDの550gやキヤノンEOS Kiss Digitalの560gと比べるとやや重い。しかし、ホールディング性は悪くない。 また、外装はマグネシウム合金製で高級感がある。革張りも金属材質にマッチしていて、手にフィットする。ブラック仕上げが独特のフォルムにぴったりだ。6面写真のように、デジタル一眼レフの中では、フィルム一眼レフからいちばん遠いデザインだ。
操作部はオリンパス独特のもので、あちらこちらに操作部材が点在している。主な機能はモードダイアルのまわりに集中している(写真B)。しかし、ホワイトバランスボタンがダイアル前方のちょっと操作しづらい位置にある。また、ストロボボタンと画質モードボタンが並んでいたり、ISO感度ボタンが液晶パネルの後方にあったり、けっしてわかりやすくはない。 ワンタッチホワイトバランスのボタンなどはボディー前面にある。「ワンタッチホワイトバランス」という用語は、他のメーカーでは「プリセットホワイトバランス」などと呼ばれている。ペンタ部に測光切り替え、ドライブモード切り替え、そして肩の部分にブラケットボタンと、ここでも操作部材が点在している。慣れるまでは、とっさには操作しにくい。 ファインダーのアイピース(接眼部)には連続視度補正機構が付いていたり、逆入光を防いで露出アンダーなどを防止するアイピースシャッターが付くなど、高級デジタル一眼レフに匹敵する装備も持つ(写真C)。 デジタル部の主な操作、たとえば再生、メニュー呼び出し、INFO、削除などは液晶モニタのまわりにある(写真D)。十字キーもあるし、この配置自体はオリンパスとしては統一性がある。ただ、ほかのデジタル一眼レフに慣れていると、かなりとまどうことはたしかだ。
液晶モニタは1.8型TFTで、視認性は悪くない。そのまわりの操作部材は一列に並べるなどの工夫は欲しかった(写真E)。とくに、OKボタンが独立しているのがとまどう原因のひとつだ。十字キーの中央に置いてくれたほうがよかった。ただ、これもオリンパス伝統の操作方式なのだ。なお、液晶モニタには透明のカバーがかけられ、それを通しても見やすいようなっている(写真F)。
メニュー自体はわかりやすいが、4系統に分かれている(写真G~J)。この中で面白いのは、写真MのRAW編集だ。カメラだけでも、あらかじめ設定されたパラメータでRAW現像ができる。もちろん、専用のソフトにはかなわないが、簡易的にできるのは面白い。
レンズマウントはフォーサーズシステムの専用バヨネット。すべて電気接点を通じて信号をやりとりする純電子制御だ(写真K)。マウント内部には小さなミラーがあるが、これがフォーサーズシステムの象徴だ(写真L)。このマウントに装着できるレンズはいまのところ、あまり多くない。今回試用した14~54mmと50~200mmの2本のズーム(写真M)は、それぞれ35mm判換算で、28~108mmと100~400mmに相当する。つまり、約2倍の換算率となる。望遠側は有利になり、受注生産の300mmF2.8では、600mm相当になるわけだ。
ミラーの後ろには電源スイッチに連動して超音波振動する透明なプロテクターがあり、付着したホコリやチリなどを落としてしまう。この「スーパーソニックウェーブフィルター」が、レンズ交換式で問題だった、画像にゴミが映ってしまう問題に対するオリンパスの回答だ。今回の試用では、何度もレンズを交換したり、場合によってはマウント部をキャップを付けずに放置したこともあったが、だいじょうぶだった。このダストリダクションと防塵防滴構造は、このカメラがよりシビアな状況での撮影を前提にしたものであることがわかる。 記録メディアはType1と2のCFカードで、独自のxDピクチャーカードではない(写真N)。このほか、IEEE 1394、USB 2.0、そしてビデオ端子がひとつにまとまっている(写真O)。これはわかりやすくていい。電池は専用の充電式リチウムイオン電池だ(写真P)。 こうして、操作してみると、だんだん慣れてはくるが、やはり操作系まで独自性を貫くことはないような気がする。
●実写画像は、階調の豊かな表現を持つ 実写は例によって、ビルをズームレンズの広角側と望遠側で撮ってみた。絞りは開放とF8まで絞り込んだ状態だ。14-54mmズームはAFまかせ(中央1点測距)だと、広角側でやや前ピンになった。絞り込むと全体にシャープになるが、絞り開放がやや甘い(写真1)。望遠側では問題なく、絞り開放からシャープな描写になっている(写真2)。 50-200mmズームは広角側でも(と言っても100mm相当だが)鮮鋭な描写をする。ただ、歪曲が少し目立つ(写真3)。望遠側ではシャープで問題はない(写真4)。
定点観測の2番目、夜景は長時間露出の場合のノイズを見るものだ。ノイズリダクションをかけないと、熱ノイズが全面に出てしまう。しかし、ノイズリダクションをメニューで選べば、まったく問題なくクリアな描写となる(写真5)。夜景は絞り込んでいるせいもあって、いい描写をしている。ただし、ノイズリダクションは露出時間と同じだけ時間がかかるため、長時間露出以外はオフにしておいたほうがいい。
3つめの定点観測は特急列車の通過を連続撮影したもの。焦点距離は54mm、AFはコンティニュアス(C)で、測距点は自動選択。ベータ版のときには自動選択が不安定だったが、製品ではきちんと直っている。思い通りに列車を追うことができた(写真6)。
次は50-200mmズームレンズを使って、肌の調子や背景のボケ味を見た。このフルフレームトランスファー型のコダック製CCDは階調が豊かだ。調子が良く出ている。また、背景のボケ味も悪くない(写真7)。背景が明るく、木陰に人物がいるというようなシーンでもオートホワイトバランスは正確に働いた(写真8)。
室内で電灯光(タングステン光)だと、オートホワイトバランスでは当然だが赤みが残る。これは朝日夕日の赤い色を出すために、色温度4,000K前後でAWBの働きをカットしているからだ。プリセットでタングステン光にしてみると、ほぼ完全に補正された(写真9)。
14-54mmズームとの組み合わせだと、このCCDは本当にダイナミックレンジの広さを感じさせる。かなり明暗の差がある被写体でもだいじょうぶだった(写真10)。また、微妙なトーンもよく出してくれる(写真11)。
50-200mmズームは望遠側では400mm相当になるため、遠い被写体をアップするには最適だ(写真12)。ボケはこの場合にはやや円が変型したが、なだらかなボケである。 ISO感度は100~800だが、メニューでセットすればISO1600および3200で撮影できる。ただ、撮像素子が小さいこともあって、ISO3200はかなり高感度ノイズが出る(写真14)。 ●使い勝手のいい「OLYMPUS Studio」 最後に、RAW現像などの機能も持つ別売りのソフト「OLYMPUS Studio」のベータ版を使ってみた。RAW現像の画面は項目としてはまずまずだが、RAW現像の画面と画像編集の画面は分かれていて、トーンカーブなどは画像編集の方に入っている。これはRAW現像の画面の方が便利だとおもう(図1)。 これでRAWデータから現像してみたのが写真15である。このように、条件の悪いときにはRAW現像がいい。なお、RAW現像はE-1に付属する「OLYMUS Viewer」でも可能だ。また、OLYMPUS Studioの体験版も付属している。 OLYMPUS Studioの大きな特長は、「ライトボックス」モードがあることだ。まるで、ポジフィルムをライトボックス上で比較するように、2枚の画像を並べることができる。また、その前後もスリーブのように表示される(図2)。 オリンパスE-1は小さな撮像素子でもかなりの階調が出せることを証明した。課題としては独特の操作系をより一般的なものにすること。そして、交換レンズのラインナップを充実させること。単焦点レンズも出して欲しいことだ。価格はいまとなってはやや高めだが、それだけの価値はあるカメラである。
□オリンパスのホームページ ■注意■
(2003年12月8日)
【PC Watchホームページ】
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