総合小売店「ジャスコ」などを運営するイオン株式会社の低価格デジタルカメラ第2弾が登場した。 今回は14,800円ながら、有効314万画素で、液晶もTFT、メディアもSDになった。デザインも前モデルよりは洗練されている。 発売日に入手できたので、さっそくレポートしてみよう。
なお、残念ながら、東京地方はこの週末は雨または曇りで、薄日がさしている午後にようやく試写ができた状態で、晴天下では撮影できなかったのでご了承いただきたい。
●314万画素CMOS、単焦点、単三電池駆動 まず、簡単に仕様をおさらいしておこう。 製品名は「D'zign DZ-338」という。ブランドは違うが、前回の9,980円カメラと同じ、NHJ JAPANが発売元だ。 撮像素子は1/2インチのCMOSイメージセンサーで、有効画素数は314万画素。 静止画は2,976×2,232/2,048×1,536/1,024×768/512×384ピクセルの4種類。2,976×2,232ピクセルはカメラ内での補間による。動画は320×240ピクセル15fpsのAVI形式で、音声はなし。 記録メディアはSDメモリーカードで、512MBまで対応。内蔵メモリ8MBも用意されている。 液晶ディスプレイは1.5インチのTFT液晶で、光学ファインダーは用意されない。 レンズはガラスとプラスチックの5枚レンズで、35mmカメラ換算で44mm相当の単焦点。デジタルズームは4倍。最短撮影距離は通常時が1.3m、マクロモード時が約0.6m。 インターフェイスはUSB 1.1/ビデオ出力。電源は単三アルカリ電池2本。本体サイズは110×27.8×50mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約95g(電池等除く)。 単焦点で、電源も単三電池のお手軽なデジカメという仕様だ。ちょっと遠めとはいえマクロモードがあるのはありがたい。ボディの大きさはいわゆるトイカメラ的なミニサイズではなく、やや小振りながら普通のカメラのサイズだ。 ●デザイン重視の製品 パッケージは、きちんとデザインされた化粧箱で、安物感はない。 「D'zign」というのは、NHJのもつブランドの1つで、同社のラインナップの中では上級に位置する。その名のとおり、外観デザインに注力されているのが特徴だ。 今回のDZ-338も、デザイン自体は高級感があるのだが、実機を手にすると、さすがに素材の質感が貧弱で、ちょっと見劣りする。具体的には天板と底板がツルツルで指紋がすぐについてしまうところや、十字キーのプラスチックが安っぽいところだ。しかし、14,800円という価格を考えれば、ぜいたくを言っていけない。
付属のハードケースも凝っていて、普通にかぶせれば液晶とレンズをカバーし、裏表を入れ替えてかぶせることで、そのまま撮影もできる。ただし、素材は安っぽいし、付属のネックストラップで下げているときに急に撮影をしようとすると逆に手間取ってしまう。ちょっとアイデア倒れの感がある。 もう1つデザインに凝りすぎて使いにくくなっているのが、単三乾電池とSDメモリーカードのスロット部分で、曲線部を無理に開くようにしたため、蓋を開けるときの力の入れ方が難しく開けにくい。何人かに試してもらっても、皆がとまどった。また、閉めるときも蓋の爪を折りそうになる。最初に壊れるとすればここだろう。
●動作も速く、楽しい撮影 電源を入れてから撮影可能になるまでは約4秒だった。現在の水準では早いとは言えないが、前モデルに比べればずっと良くなっている。しかも256MBのSDメモリーカードを入れてもほぼ速度が落ちない。毎回表示されるロゴのアニメーションがなければもっといいのにと思う。 出荷時の設定では、静止画の解像度が1,024×768ピクセルになっているので、まずこれを変更。試しに2,976×2,232ピクセルにすると、補間のために次の撮影ができるまで約14秒かかる。これではとても実用にならないので、2,048×1,536ピクセルに設定する。この状態では2秒強ぐらいで撮影でき、充分に実用になる。 デフォルトの設定でもう一つ気になるのはフラッシュの発光が停止になっていることだ。電池寿命に配慮してのことかもしれないが、これは珍しい。
TFTの液晶ディスプレイは充分に明るく、ファインダーとしてまったく問題なく使用できる。 電源は3時間で200枚ほどの撮影をしても、ファインダーの目盛りが減らなかった。フラッシュをまったく使っていないとはいえ、持ちはいいようだ。 低価格のトイカメラを使っているときには、撮影間隔とか、液晶の表示品質とかで、なにかしらガマンしているところがあるのだが、本機の場合はそれが少ない。撮影している感覚は、2年ぐらい前の3万円代のコンパクトデジカメと変わらない。 ちょっと、とまどうのが十字キーの操作だ。撮影時は上がデジタルズームの望遠、下が広角、左右が露出補正となっている。90度方向を変えて、ズームが左右で露出補正が上下の方がわかりやすいと思う。 メニューの操作もちょっと変わっていて、右が決定になっている。これも別のキーに割り当てるか、松下流に下が決定の方が分かりやすいと思う。メニューは、選択されている項目が引っ込んでいるように表示される。メニューの表示自体は日本語化されており、分かりやすい。 ●感度が低く手ぶれしやすい 撮影した画像をチェックしてみると、手ぶれをした写真が多い。もとより腕に自信があるわけではないが、ここまで下手だったかとあきれるほどだ。 撮影中にも液晶のプレビューで手ぶれしているのが分かって、取り直した写真が何点かあったのだが、PCで表示してみると思っていたよりもずっと多い。 レンズが左に寄っているデザインで、つい片手撮りをしてしまいやすいが、原因はそれだけではなかった。Exif情報を調べて見ると、ISO感度が40なのだ。しかも撮影した画像すべてがそうなので、固定になっているらしい。多くのデジタルカメラがISO 100から200程度を標準として、暗い場所ではさらに感度を高めているのに比べるとずっと低い。 したがって、曇天下では、一番明るい場所で撮った写真では1/197秒だが、1/25秒以下も少なくないし、暗いところだと屋外でも1/6秒になっている。これでは、手ぶれが増えるわけだ。 通常、レンズの焦点距離分の1より遅いシャッタースピードのときは手ぶれに注意と言われるので、本機の場合1/44秒より遅いと注意すべき範囲となる。撮影時が、晩秋の曇天下という悪条件だったとはいえ、そこに簡単に入ってしまうのはどうかと思う。 ISOが40固定という仕様は一般ユーザー向けとしては低すぎると思うし、ISO感度について、48ページもある取扱説明書にまったく記述がないのもどうかと思う。 こういう仕様であれば、フラッシュのデフォルト設定は「自動」に設定するべきで、現状のように「停止」にするべきではないだろう。現状では晴天の屋外以外では、手ぶれを起こしてしまうユーザーが多いのではないだろか。 また、発色について言えば、かなり地味な印象だ。黄色系統が特に弱く、黄色の看板や紅葉などが色が抜けた感じに撮れてしまう。赤も弱く、ピンク色に近い感じだ。NHJのCMOSカメラの色表現は機種間の差が激しいが、今回は弱めに振れている。 撮っている間が快適だっただけに、できあがった画像にはがっかりしてしまった。 ●やはり価格相応 全体的にいえば14,800円の価格は割安だと思う。9,980円の前モデルに比べればずっと使いやすい。ただし、低い感度の問題と地味な発色を考えると、やはり価格相応という評価に落ち着く。 仮に、誰かに本機を買ってあげるのであれば、「フラッシュ」と「解像度」の設定は必ずデフォルトから変えて渡してあげよう。せっかく撮った写真に失敗が多くて、デジカメが嫌いになってしまってはかわいそうだ。 また、もう少し予算を投じて、2万円台の200万画素機を購入することを考えてもいいと思う。写真を楽しむためには、画素数よりも手ぶれのしにくさや発色の方が重要な要素だからだ。
●実写画像
□イオンのホームページ (2003年12月1日) [Reported by date@impress.co.jp]
【PC Watchホームページ】
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