会期:10月26~30日(現地時間)
●UIとUX 今回のPDCだけでなく、以前からMicrosoftは名称を略す傾向がある。UI=User Interfaceならわかるが、UXが何の略か簡単にわかる人は少ないだろう。MicrosoftのUXとはUser Experience。Windows XP以来、ExperienceはMicrosoftの流行語である。余談だが、これまでのMicrosoftの略称は多くても4文字までだった。ところがNext-Generation Secure Computing Base(Palladium)に関しては「NGSCB」と5文字で、長い。ビル・ゲイツも基調講演では言いにくそうだった。 UXとは、ユーザーが経験するPCの操作やその反応などをぜんぶひっくるめた総称だ。ユーザーが見たり、聞いたりするものすべてがUXなのである。Look & Feelにも似ているが、Lookだけではない。 Longhornでは、「Aero」と呼ばれるデザインが採用されている。たとえば、画面右に出るSide Barは、このAeroに属する機能である。Windows XPのLuna/Therma Serviceに相当するものと考えればいいかもしれない。WinFXには、Avalonと呼ばれるPresentationのためのオブジェクトとその実現モジュールが採用されているが、その上にAeroというUXが乗っているわけだ。 Side Barだけでなく、たとえば、Longhornが管理するアドレス情報から特定のユーザーや宛先を選択するときには、専用のContact Picker Text Boxが提供され、インクリメンタル検索を行ないながら、候補を表示するといったことが可能になる。 UXという名称が使われるのは、UIよりももっときめ細かい対応をするためでもある。前述のContact Picker Text Boxは、簡単にいえばアドレス帳から特定のユーザーを選択するためのもの。Longhornでは、いままでOutlookやOutlook Express、Messengerなどが個別に管理してきたコンタクト情報をOS側でまとめて管理するようになった。このため、メールの宛先やチャットの相手を選択する際には、統一したインターフェイスを提供可能になった。ユーザーの使い勝手を考えるとやり方が統一されているほうが望ましい。 現在、ファイルの選択や色の指定などは、Common Dialog Boxが用意されているが、同じような統一操作感を提供するコントロールがコンタクト情報用に作られたわけだ。さらに、Longhornで採用されたUXは、.NET Frameworkと同様にPocket PCや携帯電話にまで拡張され、PCと同じ使い勝手(Experience)が提供されることになる。 ただし、このAeroについては、まだ開発途上であり、製品化までに大きく変わる可能性もある。また、構造的にはAvalonは、UXを差し替えることが可能とも言われており、製品化されたのちも、違うUXをユーザーが選択することができるかもしれない。
●Aeroは試行錯誤中? Lonhornベータ版に搭載されているAeroは、開発途上のものとされている。展示会場の説明員も、このデザインや仕様は最終ではないと言っているし、デザインやコンセプトの盗用を避けるため最新版でない、暫定仕様のAeroがβ版に搭載されているというウワサもある。 β版では、画面デザイン以外に、操作面での違いもある。たとえば従来のWindowsでのファイルやオブジェクトの選択方法には、マウスのクリック、ShiftキーやCtrlキーを併用する複数選択、ドラッグによる範囲指定などがあったが、Longhorn β版では、アイコンの左側にチェックボックスを付けることが可能になった。つまり、選択したいアイコンに付いているチェックボックスをオンにするだけで簡単に複数選択が行なえる。作業はマウス操作と右クリックのみでよく、手に負担をかけるドラッグも必要ないし、両手での操作も不要である。 万人にやさしいと思われる選択方法だが、1つしかアイテムが選択できようになっていて、しかも1クリックで選択可能な場面でも、チェックボックスが表示されてしまう。一見、複数選択が可能なように見えてしまい、かえって混乱する。細かなブラッシュアップは、まだまだこれからという印象を受ける。 ●これからのスケジュール さて、いままでに公開された情報からLonghornに至る道のりを整理してみる。 製品としては、LonghornはClient版(Windows XPの後継)とServer版(Windows Server 2003の後継)、およびOffice Longhornが予定されている。これはGates氏の基調講演で使われたスライドでこう表示されていた。ここで、わざわざOSではないOffice Longhornが登場しているのは、ちょっと興味を引くところだ。Officeのリリースは、おそらくClient版のLonghornとほぼ同時期となるだろう。 Server版Longhornは、Client版と同時に開発が進行するものの、実際のリリースはClient版登場以後となるはず。Allchin氏も基調講演で「サーバーには別のスケジュールがある」といった発言している。 Office Longhornは、WinFX対応となることが当然予想される。ExcelがWindows 2.1用として登場して以来Officeは、Microsoftの最新OSに完全に対応した、もっとも効率よく動作するアプリケーションとして、OSがアップデートされるときには時を同じくしてバージョンアップされてきた。 そしてWinFX対応ということは、Office Longhornは、CLRによって動作するマネージドコード、つまり、もはやx86バイナリでなくなる可能性を示している。実は、初期のExcelやその前身であるMultiplanは、仮想コードで書かれていた。Officeがx86バイナリであることをやめ、また仮想コードとなることは原点への回帰ともいえる。 Longhornに至る道のりで重要なポイントがもう1つある。それは、来年に登場する次期Visual Studio“Whidbey”とSQL Server“Yukon”である。 Whidbeyは、WinFXに対応したコードを生成することができ、Yukonのデータベースエンジン技術は、Longhornに取り込まれる予定だという。 もう1つ、Microsoftは、Visual Studioのロードマップとして、Whidbeyの次にOrcasを2005年に登場させる予定である。このOrcasは、XAMLによるプログラミングなどに対応し、WinFXをフルサポートするものになるはずである。ただし、その登場時期については、Longhornの計画に左右されることになるだろう。また、このOrcas自体がマネージドコードで作られる可能性もあるだろう。
●コードネームが表す、Longhornの立場 カナダのBritish ColumbiaにあるWhistler(Windows XPのコードネーム)山のとなりに、Blackcomb(かつてMicrosoftがWindows XPの次のOSとしたコードネーム)という山があり、その間にLonghornという地名がある。つまりLonghornとは、WhislerからBlackcombへ至る途中地点なのである。ただし、LonghornがあるのはWhistler側。BlackcombよりもWhisterに近い。 一時、Microsoftは、Whistler Server(つまりWindows Server 2003)の後継をBlackcombとしていたが、今回のロードマップから見るに、次期Serverは、Longhorn Serverである。Blackcombは「遠くになりにけり」というわけか。 □PDC 2003のホームページ(英文) (2003年10月31日) [Reported by 塩田紳二]
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