●MicrosoftがLonghornアーキテクチャを公開
このカンファレンスを、MicrosoftのBill Gates氏(Chairman and Chief Software Architect)は次のようなオープニングで始めた。 「ようこそ、Longhorn PDCへ」、「PDCは、これまでも(Microsoftにとって)重要なマイルストーンだった。例えば、'92年のPDCは言ってみれば『32bit PDC』だった。'96年のPDCは『Internet PDC』、2000年のPDCは『.NET PDC』」、「今回のPDCが何についてかは、疑いがない」、「次世代Windowsとそれを取り巻く技術が、コンピューティングを次のレベルに引き上げることを確かにするためのものだ」 Longhornがテーマとなった今回のPDCで、MicrosoftはまずLonghornのベースアーキテクチャを体系的に整理した。Microsoftが示した図では、ベースとなるOSサービスとして「Fundamentals(ファンダメンタルズ)」があり、その上にプレゼンテーションレイヤーの「Avalon(アバロン)」、データをハンドルする「WinFS」、コミュニケーションをハンドルする「Indigo(インディゴ)」が載る構造となる。 Avalonは以前のレポート「MicrosoftがLonghornの3Dユーザーインターフェイスを明らかに」で説明した通り、Direct3Dのグラフィックスパイプラインをベースとした新UI。LonghornをDirectX 9対応のグラフィックスで走らせた場合には、3Dグラフィックスハードを使ったさまざまな効果が可能になる。 今回、Microsoftは、Avalonのための新マークアップ言語「XAML(ザムル)」を発表。デベロッパが比較的容易に、Avalonのフィーチャを利用できることをアピールした。XAMLによって、DirectXを直接叩かなくても多彩なインターフェイス効果を使えるというわけだ。 WinFSは新しい統合ストレージプラットフォームで、従来のファイルシステムを超える機能を備える。「統合ストレージについてはもう10年も語ってきたのを、聞いたことがある人もいるだろう。XMLのフレキシビリティやデータベース技術をファイルシステムに入れ込むアイデアだ。そして、それは今ここにある」とMicrosoftのBill Gates氏(Chairman and Chief Software Architect)は成果を誇る。WinFSでは、単純にファイル管理を行なうだけでなく、SQLベースでの検索などが可能になる。 Indigoは、Windowsのコミュニケーション関係を一括するサービス群。基本的には.NETテクノロジで、Webサービスとのコミュニケーションを司る「今後20年間のアプリケーションを作るための基礎」(Don Box, Windows Architect, Indigo)。だが、その他にも、さまざまなサービスがIndigoの名前の元に統合されている。ちなみに、Avalonと異なり、Indigo自体はLonghornを要求しない。
そして、MicrosoftはこれらLonghornプラットフォームを利用するアプリケーション環境をWinFXと名付けた。「WinFXは、Win32を超える次のステップ」とMicrosoftのJim Allchin氏(Group Vice President, Platforms)は語る。つまり、16bit APIから、Win32 API+クラスライブラリへと移行したように、次はWin32 APIからWinFX APIベースへと移行するという道筋が示されたわけだ。 Longhornでも既存のWin32アプリケーションはそのまま動作する。さらに、「今日、.NET Frameworkで(アプリケーションを)作っているなら、あなたはWinFX APIへの道にある」とAllchin氏は説明する。Win32アプリでも.NET Frameworkアプリでも、どちらもWinFX APIのフィーチャを使い始めることができるという。「そして、最後に、Longhornの時点で新アプリケーションを書くなら、その時にはWinFX環境をフルに使うことができる」(Allchin氏) 今回のPDCでは、Amazon.comやAdobe SystemsなどがLonghorn上でのアプリケーションデモを行なった。 「(デモで)あなたがみたものの、背後のコードは全て本物だ。それを考えて欲しい。他のイベントとは違う(笑)。クラッシュもなかった。Longhornは、Microsoftにとって本当にマイルストーンなのだ」とAllchin氏は強調する。 また、5月のWinHECで予告した通り、PDCではLonghornの「Developer Preview (Pre-beta)」も配布された。これは、公式に広く配布される最初のLonghornのプレビューリリースとなる(今年3月に最初のDeveloper Previewを配布している)。 Longhornのプレビュー版には、x86版とIA-64版、AMD64版が含まれる他、SDK、Tablet PC SDK、Driver Kit、Windows Mobile SDKなどが含まれる。推奨環境は、1.6GHz以上のCPU、1GBメモリ、DirectX 7 GPU+32MBビデオメモリで、望ましい構成はDirectX 9 GPU+64MBビデオメモリとなっている。また、「(プレビュー版は)まだ性能はよくない。だから、ハイエンドマシンにだけ搭載する方がいいだろう」とAllchin氏は指摘する。
また、Allchin氏は、今後のクライアント版Windowsのロードマップも明らかにした。今秋、MicrosoftはWindows XP Media Center Editionを発表したが、2004年前半にはWindows XP Service Pack2と、Tablet PC Editionのアップデート(Lonestar)をリリースする。さらに「来夏と、来年後半には、Windows XP 64bit Edition for AMDと、そして『Longhorn Beta 1』を出す」(Allchin氏)という。ただし、製品版Longhornの出荷時期については明言しなかった。 ちなみに、Microsoftは今年5月のWinHECで、Longhornの製造開始マスターであるRTM(Release-to-Manufacturing)のリリースが2005年になることを明かしていた。つまりロードマップについては、事実上、進展はない。 また、Longhornでは32bit版と64bit版を同時並行で進めていることも明確になった。今回のDeveloper Preview版にもIA-64版とAMD64版が含まれている。そして、「(AMD64)については、“x64”と言っている」とAllchin氏は意味深なことを言う。実際に、Longhornのディスクにはx64というフォルダがあり、その中にAMD64のフォルダが含まれる構成になっている。別なx64、つまり、Intelの64bitアーキテクチャとウワサされる「Yamhill(ヤムヒル)」を予期しているように見える。 MicrosoftのPDCは、毎年開催される定期カンファレンスではなく、同社の技術の節目に行なわれる。そして、今回のPDCは、これまでのPDCと比べても参加者が多く、空前の盛り上がりを見せている。「我々は、今回が記録的なPDCになったことに驚いている。これまでのどのPDCよりも多くの登録があった」とGates氏は言う。 それだけLonghornへの期待が大きいとも言えるが、逆を言えば、Longhorn以外に次の突破口が見いだせないというPC業界の事情も反映している。
http://www.microsoft.com/ □PDCのホームページ(英文) http://www.msdn.microsoft.com/events/pdc/ □トランスクリプト(英文) http://www.microsoft.com/billgates/speeches/2003/10-27PDC2003.asp □関連記事 【5月9日】【海外】MicrosoftがLonghornの3Dユーザーインターフェイスを明らかに http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0509/kaigai01.htm (2003年10月29日) [Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]
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