これまで約1年間、キヤノンの「IXY DV3」という小型軽量なDVカメラを使ってきた。デジタルカメラは仕事で使うが、DVカメラは仕事で使うことがないワシ。DVカメラは家庭での使用がほとんど。したがって、どちらかというと性能よりもサイズや重さなどで選んだ。性能がよくても重いとか、大きいとかはダメ。だって子どもがいるから荷物が多いんやもんね。「IXY DV 3」も単に持ちやすいからという理由で購入したDVカメラなのである。 そんなIXY DV 3が故障した。それも夏の家族旅行の5日前にだ。テープを入れても蓋が閉まらなくなってしまったのだ。テープを入れてない状態でも閉まらない。そう、撮影ができないのである……ていうか、どうしようもない状態ということである。 旅行は5日後、どうしようということで考えたのだが、修理に出しても5日じゃ絶対に戻ってこない。1年以上使ったんやし、元はとれてるよね、ということで新しいDVカメラを購入することにした。 しかし、これは不本意というか不可抗力というか、納得し切れない決断だったのだ。何故かというと、9月に入ってからソニーから331万画素CCDを搭載したDVカメラ「DCR-PC300K」が発売されるのを知っていて、今回の旅行の後、子どもの運動会の前にそれを買おうと思っていたのである。だが、店舗に行ってももちろん「DCR-PC300K」は置いていない。 そこで購入したのがキヤノンの「IXY DV M2」だった。このDVカメラは原色フィルターを使っていて「かなりキレイらしいですよ~」という話をいろいろな編集者から聞いていたし、220万画素のCCDを搭載しているからデジカメとしてもいけそうだ。売価も10万円ちょっと。ソニーのDCR-PC300Kは定価198,000円と聞いていたから、約半分やん……と自分で自分に言い訳をして、なかばムリヤリ納得して購入したのである。 このIXY DV M2はいい。すごくリーズナブルだ。だってアクセサリーキットが同梱されていて109,800円だよ。前のIXY DV3はアクセサリーキットが別売で同じぐらいだった。でアクセサリーキットが2万円近くしたから、かなりお得感を味わったのである。 ●IXY DV M2を使ってみて
早速IXY DV M2を使ってみた。まず最初に感じるのはその大きさというか、小ささだろう。以前使っていたIXY DV 3に比べると少し大きくなっているものの(サイズは52×102×118(幅×奥行き×高さ)mm、重さが450g)、それほど気にするほどではない。十分に小さく、持ち運んで使うには申し分のないサイズだ。 実際に操作してみて思ったことを書いていこう。IXY DV M2は、設定などの操作のほとんどを本体のビューファインダーの下のボタンで行なう。撮影中に右手のみでぱっと設定が変更できたりするのが大変便利だ。操作性も悪くない。 ちょっと気になったところは、レンズの右側のスイッチでテープとSDカードとの記録先の変更をするのだが、これが移動時にずれやすいこと。ウエストポーチに入れて持ち歩いたのだが、出し入れの際に触れるのか、どうも変わってしまうようなのである。したがって、テープの録画しようと思って録画ボタンを押したら、SDカードに記録されてしまった、ということがよくあった。撮影を開始するとモニターに記録先が表示されるのですぐに気づくのだが、急いで撮影したいっていう場合などはちょっとツライと思わされた。
DVカメラは、見たままに写っていないことが多いのは誰もがご存じのとおり。その中で、ワシがいちばん問題に思っているのが、曇っているのに晴れているように写ってしまう機種と、晴れているのに曇った感じに写ってしまう機種があること。明るくキレイに撮れて欲しいのだが、やっぱり記録なんやからその時の天候とかがそのままわかるように撮れてほしいよね。 IXY DV M2では、かなり忠実に撮影されているように思う。曇りなら曇りっぽく、天気なら天気っぽく撮影できるのにはちょっと感激。また、赤や黄色などの色がかなり鮮やかに出るのも○。特に赤色。これまでの機種だと曇った時に撮影すると赤がくすんだようになりがちだったのだが、かなり鮮やかに出る。いやいやいや、ムリヤリ納得して購入したのだが、満足なのである。 実際に撮影していて気になったことは、暗い場所での撮影だ。明かりが足らないときは、自動的にシャッタースピードを落として撮影するようで、コマ送り、もしくはスローモーションのような感じになることがある。ナイトモードとかスーパーナイトモードに変更してそうなるのならわかるが、オートでなるのはちょっとね。どちらかというと見づらいんだよなぁ。また、オレンジの水銀灯下で撮影する場合、もう絶対といっていいほどフォーカスが定まらない。100%ピンぼけになってしまうのである。
IXY DV M2のサイズ、使い勝手、画質などにかなり満足していたある日、忘れもしない9月6日の日のこと。大阪の日本橋のとあるショップから「木地本さん、ソニーの3MピクセルのDVカメラが入ってきたで~」という電話。えっ。 以前そのお店の人と「ソニーの3Mピクセルのやつってよさそうやなぁ。買おうかなぁ」っていうような話をしていたのを思い出した。お店の人はそれを覚えていて、予約などしていなかったのにわざわざ電話してくれたのである。「取りに行くわっ」0.2秒後に答えていて、38秒後には着替え終わっていた。その2分10秒後には玄関の鍵を掛けていたのである。 1時間後にはDCR-PC300Kを事務所に持ち帰ってきていた。実はワシ、このDCR-PC300Kをカタログでしか見たことがなかった。実際に箱から出してみて感じたのは“でかっ”てこと。そう、かなり大きいのである。特にIXYが小さいだけに大きく感じてしまう。数値的には(サイズは59×113×119(幅×奥行き×高さ)mm、重さが540g)それほどの差はないのだが、レンズが大きいのでよけいにそう感じるのであろう。
さて実際に使ってみての感想を。まず各設定などの操作に関してなのだが、これは液晶にタッチして行なうタイプだ。これはちょっと面倒だ。ワシはどちらかというと液晶を開かずにビューファインダーを覗いて撮影することが多い。初期設定時など、まとめて設定する時はいいのだが、撮影時にちょっと設定を変えたい場合にも、いちいち液晶を開かないといけないのが不便だ。右手で持っているので左手でタッチしていかないとならないのも不便。設定を変更するのに両手を使わなくっちゃいけないのはめんどうなのである。 また、タッチするためにスタイラスがついているのだが、右利きのワシにとってスタイラスを左手で使うのは大変違和感がある。さらに、スタイラスは右手側のグリップにしまうようになっているので、左手で出すのもちょっと不便なのである。しかもこのスタイラス、グリップ部に挿すだけなので、いつかなくなるんちゃうか、って感じなのである。っていうか、撮影2日目にしてもうなくしてしまったのである。エヘヘ。 さて、撮影に関してだが、やっぱりでかいので持ちづらい。大きめの手のワシでそう思えるんやから、女性などはけっこうツライだろうなって感じだ。 あと、デジカメ機能で写真を撮る時なのだが、シャッターボタンの位置が絶対に悪い。通常、右手の人差し指でシャッターボタンを押すと思うのだが、人差し指の位置にボタンがないのだ。ちょっと指を立てた感じにしないと押せないのである。IXYは指の位置にちょうどボタンがあるからよけいにそう感じるのかもしれないが……。
撮影しての感想だが、第一印象のみで書きたかったのだが、IXYを使っているだけにそれがムリ。どうしてもIXYと比べてしまうんだな。なのでIXYとの違いを挙げてみようと思う。 撮影した画質に関しては、ぱっと見た目はどちらもキレイ。ちょっと古い機種を使っていたっていう人なら絶対に「おぉぉ」って思うこと間違いなしだ。どちらかというとIXYの方が明るめ。色の出方がはっきりして鮮やかいう感じである。肌色が肌色として……ピンクがまざった肌色で、健康的な肌色が出ている。 一方、DCR-PC300Kの方はもう少し落ち着いた色合いで、悪く言えば暗い。暗いと言っても肌が暗めに写る、というのではなく、白い肌になるっていう感じである。ただし、あくまで比較して、じっくり悪いところを見るぞという目で見て、しかも大袈裟に言っての話なので、あまり悪く感じないでいただきたい。ホンマにじっくり比較してはじめてわかるっていう程度なのである。 友人に見せてみたが、友人はDCR-PC300Kの方が落ち着いていて好きとのこと。ワシはIXYの方が色の出方は好きである。この辺は好みの違いなんやろうな。 次に気づいたのが細部のシャープさに関して。これは、DCR-PC300Kの方がはっきりしている。IXYの方が悪く言えばぼけた感じである。これも比較してみてはじめて気づいたって程度なので、IXYだけ使ってみても気づかないであろう。 液晶だが、天気の良い日で直接日差しが当たるような場所では、DCR-PC300Kの方が見やすいようだ。さすが透過型と反射型の双方の特性を持っているというハイブリットタイプの液晶だ。しかし、液晶画面がよく見える場所での撮影の場合にはIXYの方が映像がシャープだ。これも見比べてはじめてわかる程度なのだが、IXYのシャープさに比べると、DCR-PC300Kはちょっとぼけた感じなのである。 あと、暗い場所での撮影に関してなのだが、これはDCR-PC300Kの方が使いやすい。このDCR-PC300Kには、薄暗い場所でのオートフォーカス精度を高める「ホログラフィックAF」機能が付いているということ。ナイトショット、スーパーナイトショット機能が付いているが、その機能を使うことなくきちんとオートフォーカスが効くところがいい。前述したが、IXYはどうも暗いところでの撮影が弱いので、暗いところで撮ることが多いのならDCR-PC300Kの方を選ぶべきだろう。 さて、2台を持ち歩いて実際に撮影してみた。言葉で言っていてもなんとなくしか通じないと思うので、画像を見て判断してほしい。動画に関しては、パソコンの画面に映し出したのをキャプチャーしたもの、静止画に関してはすべて640×480ピクセルに縮小してあるので、実際とはちょっと違うのだが、色合いなどは見てもらえると思う。
うーん、これがいちばんの問題。それぞれ良さがあるからどちらっていうのはなかなか難しいんだよなぁ。ワシも同じタイプのカメラを2つ持っていてもしかたがないから、どちらかを手放そうって思って、現在どちらにするのか考えているところなのだ。 両方使ってみて今ワシが思っていることを書いておこう。 まず、持ち歩きに関してだが、これは絶対にIXYの方が上。だってホンマに小さいもん。これから冬を迎えるわけであるが、コートのポケットなどにも入るからかなり便利なのである。 次に操作性。これもIXYの方が上かな。これに関しては、液晶へのタッチがイヤっていうワシ的な感覚での判断である。 そして次に画質などの面。色合いではIXYの方が好きだ。しかし、画像のシャープさではDCR-PC300Kの方がいい感じ。選べねー。次がデジカメとしての機能。こちらはやっぱりDCR-PC300Kかな。機能とかよりも記録される画素数が大きいだけに、撮ったものをトリミングして加工して……ということを考えると300万画素の方がいろいろできそうなんだもんね。 そして最後にバッテリー。これは文句なくDCR-PC300Kの方が上。小さなサイズでもちがいい。この手の端末にでかいバッテリーは似合わないってワシは思っているので、なるべく小さなサイズのものを使いたいのである。となると、「スタミナハンディカム」っていうだけあるDCR-PC300Kの方が上なのである。 あ~考えをまとめてみても選べねー。となると、浮かぶのが値段のこと。IXYとDCR-PC300Kでは、約5万円の違いがあるので、そりゃ5万円高いだけDCR-PC300Kの方が上なのは当たり前だよな。 ということで、結局選べないのである。どちらもいいのだ。まっ、今回は選べねーってことで結論づけさせていただこうかな。 □関連記事 (2003年10月14日) [Text by 木地本昌弥]
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