Pentium MとRADEON IGP 350M搭載のモバイルノート
「HP Compaq Business Notebook nc4000」



HP Compaq Business Notebook nc4000

 Pentium Mを搭載したノートPCが続々登場しているが、そのほとんどはチップセットとしてIntel 855GM(グラフィックスコア統合)またはIntel 855PM(グラフィックスコア非統合)を採用している。しかし、日本HPから登場した「HP Compaq Business Notebook nc4000」は、チップセットとしてATI Technologiesの「RADEON IGP 350M」を採用していることが特徴だ。

 今回は、このHP Compaq Business Notebook nc4000を試用したので、早速レビューしていきたい。



●通常電圧版のPentium Mを搭載

 HP Compaq Business Notebook nc4000(以下nc4000)は、携帯性を重視したB5ファイルサイズの1スピンドルノートPCである。CPUとしては、Pentium M 1.40GHzを搭載し、このクラスのノートPCとしては高いパフォーマンスを実現している。

 標準搭載のメモリは256MB(PC2100 DDR SDRAM)だが、SO-DIMMスロットがキーボードの下側と本体底面にそれぞれ1つずつ用意されており、最大1GBまで増設が可能だ(1GBまで増設する場合は、標準で実装されている256MB SO-DIMMを外して、512MB SO-DIMMを2枚装着することになる)。

 nc4000は、ATI Technologiesの統合型チップセット「RADEON IGP 350M」を採用していることが特徴だ。RADEON IGP 350Mは、MOBILITY RADEON相当のグラフィックスコアを統合したチップセットで、ある。サウスブリッジとしては、ALiのM5229が採用されている。HDD容量は40GBだが、ノートPCで一般的に搭載されている4,200rpm HDDではなく、5,400rpmのIBM製HDD(Travelstar 40GNX)が搭載されているため、パフォーマンス面では有利だ。

 液晶ディスプレイとしては、12.1型XGA液晶パネルが採用されている。液晶の発色や視認性についても特に不満はない。

 なお、nc4000は、ハードウェアスペックは同一だが、プリインストールOSの違いによって、Windows XP Professionalを搭載したPM1.4/12X/256/40/WL/XPとWindows 2000 Professionalを搭載したPM1/4/12X/256/40/WL/W2の2モデルが用意されている。今回は、Windows XPモデルを試用した。

 本体のサイズは279.4×233.7×27.9mmで、重量は約1.58kgである。12.1型液晶を搭載したB5ファイルサイズノートPCとしては、サイズ、重量ともに標準的といえるだろう。Let'snote W2などに比べれば重いが、このくらいの重さなら十分携帯できる範囲であろう。

HP Compaq Business Notebook nc4000の上面。グレーとシルバーのツートンカラーで、落ち着いたデザインである DOS/V POWER REPORT誌とのサイズ比較。横幅はほぼ同じで、奥行きはnc4000のほうがやや大きい 本体底面に用意されているSO-DIMMスロット。キーボードの下側にもSO-DIMMスロットが1基用意されており、あらかじめ256MBのPC2100 DDR SDRAM SO-DIMMが装着されている


●ドライバのバージョンアップによりIEEE 802.11gに対応

一番左が無線LANインジケータ。中央が電源インジケータ、右は充電インジケータとなっている

 nc4000のウリは、IEEE 802.11a/b/gの3種類の無線LAN方式に対応(トリプルモード対応)していることだ。最近ではIEEE 802.11a/b両対応(デュアルモード)の無線LAN機能を搭載しているノートPCもあるが、トリプルモード対応のノートPCはまだ珍しい。

 ただし、出荷時の状態では、IEEE 802.11a/bのみ対応とされており、HP社のWebサイトで公開されている最新ドライバへバージョンアップすることで、IEEE 802.11gに正式対応する。また、無線LANの動作状況を示すLEDインジケータも、キーボード左手前に用意されている。

 さらに、有線LANも、通常の100BASE-TX/10BASE-T対応ではなく、Gigabit Ethernet(1000BASE-T)対応であることも特筆したい。最近は、1000BASE-T対応のスイッチングハブなどの低価格化が進んだことで、1000BASE-Tも一般的になりつつある。100BASE-TXでは時間がかかるようなサイズの大きなデータの転送でも、1000BASE-Tなら短時間で終了することがメリットだ。もちろん、1000BASE-Tは、100BASE-TX/10BASE-Tとの互換性もあるので、従来のLAN環境でもそのまま利用できる。



●2種類のポインティングデバイスを搭載

 キーピッチは約19mmであり、配列も標準的なので、タイピングも快適だ。キーボードの上部には、3つのクイックローンチボタンと、電源ボタン、音量調整ボタン(ミュートボタンと上下ボタン)が用意されている。右から2つ目のクイックローンチボタンは、無線LAN機能のオンオフに割り当てられており、ワンタッチで無線LAN機能のオンオフを切り替えられる。

 タッチパッドとポイントスティックの2種類のポインティングデバイスを搭載していることも評価できる。ポインティングデバイスは、ユーザーによって好みが分かれるが、nc4000なら2種類のポインティングデバイスを搭載しているので、ユーザーが使いやすい方を選ぶことができる。A4サイズのノートPCでは、2種類のポインティングデバイスを搭載している製品はいくつかあるが、B5ファイルサイズの1スピンドルノートとしては、nc4000が初採用となる。

キーピッチは約19mm、キーストロークも十分である。キー配列にも特に無理なところはない 左から、クイックローンチボタン(3つ)、電源ボタン、音量調整ボタン(ミュートボタンと上下ボタン)。右から2つ目のクイックローンチボタンで、無線LAN機能のオンオフが可能 ポインティングデバイスとして、タッチパッドとポイントスティックから構成されるデュアルポイントを装備


●SDメモリーカードスロットも装備

 インターフェースも一通り揃っている。USB 2.0×2、外部ディスプレイ、Sビデオ、IrDA、LAN、モデム、ヘッドホン、マイクの各ポートを装備しているので、プレゼンテーションなどにも向いている。また、PCカードスロット(Type2×1)だけでなく、SDメモリーカードスロットも用意されているので、SDメモリーカードを利用するデジカメなどとの連携に便利だ。

 バッテリは、10.8V、3,600mAhの6セルタイプで、公称約3.5時間のバッテリ駆動が可能だ。また、オプションのセカンダリバッテリを底面に装着することで、最大約7.5時間という長時間駆動が実現できる。バッテリに残量インジケータが設けられており、ボタンを押すことで、バッテリ残量を確認できるのも便利だ。ACアダプタのサイズも比較的小さく、携帯性は優秀である。

右側面には、ケンジントンロック用の穴とファンの排気口がある 左側面には、IrDA、PCカードスロット(Type2×1)、SDメモリーカードスロット、ヘッドホン出力、マイク入力の各ポートが用意されている 背面には、Sビデオ出力や外部ディスプレイ、USB 2.0×2、LAN、モデムの各ポートが用意されている

底面には、セカンダリバッテリ接続用コネクタやポートリプリケータ接続用拡張コネクタが用意されている バッテリは、10.8V、3,600mAhで、6セルタイプである。セカンダリバッテリも同じバッテリを用い、専用のアタッチメントを介して、底面に装着する

バッテリ残量インジケータがあり、銀色のボタンを押すことで、バッテリ残量を確認できる ACアダプタも比較的コンパクトである(左はVHSテープ)


●SYSmark2002のスコアは良好

 参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのMobileMark2002およびSYSmark 2002、Futuremarkの3DMark2001 SE、id softwareのQuake III Arena、スクウェア・エニックスのFINAL FANTASY XI Official BenchMark Ver.1.1を利用した。

 MobileMark2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark 2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。また、3DMark2001 SEやQuake III Arena、FINAL FANTASY XI Official BenchMark Ver.1.1では、3D描画性能を計測することができる。MobileMark2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、AC駆動時(電源プロパティの設定は「常にオン」)にして計測した。

 結果は下の表にまとめたとおりである。なお、比較対照用に、同じPentium M 1.40GHzを搭載したエプソンダイレクトのEDiCube S150H(以下EDiCube)のベンチマーク結果もあわせて掲載している。EDiCube S150Hでは、チップセットとしてグラフィックスコア統合型のIntel 855GMを採用しているため、Intel 855GMとRADEON IGP 350Mの性能差を知ることができるだろう。

【HP Compaq Business Notebook nc4000ベンチマーク結果】
 nc4000EDiCube S150H
MobileMark2002
Performance rating134140
Battery life rating221297
SYSmark 2002
Internet Content Creation164163
Office Productivity120113
3DMark2001 SE
1024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)1,7201,914
Quake III Arena
640×480ドット32bitカラー70.897.4
800×600ドット32bitカラー50.168.9
1,024×768ドット32bitカラー33.243.9
FINAL FANTASY XI Official BenchMark Ver.1.1
 1,874実行不可

 まず、MobileMark2002の結果だが、パフォーマンスはややEDiCubeが上回り、駆動時間もEDiCubeのほうがかなり長い。しかし、バッテリの電力量には大きな差がある。nc4000のバッテリの電力量は約38.9Whであるのに対し、EDiCubeのバッテリの電力量は約65.1Whである。そこで、1分間あたりの消費電力を計算すると、nc4000は約0.18W、EDiCubeは約0.22Wとなる。EDiCubeのほうが液晶サイズが大きいため、消費電力的にはその分不利であることも考えられるが、nc4000はPentium M搭載ノートPCの中でも、比較的低消費電力設計になっているといえる。

 SYSmark 2002では、nc4000のほうがEDiCubeに比べて高いスコアを記録している。特に、Office Productivityの差は大きい。これは、HDD性能の差によるものと考えられる。EDiCubeでは4,200rpmのHDDが搭載されているが、nc4000では5,400rpmのHDDが搭載されているため、こうしたアプリケーションベンチマークで高いスコアを記録したのであろう。

 3DMark2001 SEやQuake III Arenaのスコアは、EDiCubeのほうが高い。Intel 855GMの内蔵グラフィックスコアの3D描画性能も決して高いとはいえないのだが、RADEON IGP 350Mも3D描画性能については期待しないほうがよさそうだ。

 なお、RADEON IGP 350MのグラフィックスコアであるMOBILITY RADEONでは、本来ハードウェアT&Lエンジンが省略されているはずだが、nc4000のRADEON IGP 350Mでは、ハードウェアT&Lエンジンが搭載されているようで、Intel 855GMでは実行できないFINAL FANTASY XI Official BenchMark Ver.1.1も実行可能であった(FINAL FANTASY XI Official BenchMark Ver.1.1は、ハードウェアT&Lエンジンが必須)。それでも、スコア的には低く、FINAL FANTASY XIを快適にプレイできるレベルではない。

 RADEON IGP 350Mの内蔵グラフィックスコアの描画性能は、2D主体のビジネスユースには十分だが、3Dゲームをプレイするには力不足といえるだろう。


●コストパフォーマンスも高く、オフィスユースにも最適

 nc4000は、無線LAN、有線LANともにネットワーク機能が充実しているため、オフィスユースにも最適であろう。ライバルとしては、日本IBMのThinkPad X31の最上位モデル(2672JHJ)あたりが挙げられる。ThinkPad X31(2672JHJ)は、Pentium M 1.40GHzを搭載し、IEEE 802.11a/b両対応の無線LAN機能とBluetooth機能、1000BASE-T対応LAN機能を装備するなど、スペック的によく似ている(ただし、ThinkPad X31のHDDは4,200rpm)。

 しかし、nc4000のダイレクト価格(HP Directplus価格)は208,000円であるのに対し、ThinkPad X31(2672JHJ)のダイレクト価格(IBMダイレクト価格)は234,000円となっているため、コストパフォーマンス面では、nc4000に軍配が上がる。また、保証期間が3年間と長く、3年間にわたって引き取り修理サービスを受けられることも評価できる。

 nc4000は、携帯性とパフォーマンスを両立させたB5ファイルサイズノートPCであり、作りもしっかりしている。仕事に活用するためのモバイルノートPCを探している人には、特にお勧めしたい。

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【7月14日】日本HP、デュアルポインティングデバイスのB5ノートPC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0714/hp1.htm

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(2003年8月29日)

[Reported by 石井英男]


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