日本ビクターのInterLinkは、現在では珍しくなったミニノートと呼ばれるジャンルに属する製品だ。18日に発売が予定されている「InterLink MP-XP7310」は、Windows XP搭載のInterLinkとして4世代目にあたる製品であり、CPUが超低電圧版モバイルPentium III-Mから超低電圧版Pentium Mに変更されたことで、大幅なパフォーマンスアップを果たしている。 今回は、InterLink MP-XP7310を試用する機会を得たので、レビューしていきたい。
InterLink MP-XP7310は、2003年3月に発売されたInterLink MP-XP7230の後継となる製品で、ジャンルとしてはA5サイズミニノートに属する。 以前は、Libretto(正確には、サイズが大きくなったL1以前のLibretto)やLet's Note miniなど、サブノートより小さいミニノートと呼ばれるジャンルの製品が各社から登場していたが、現在ではバイオUを除いて、新製品が登場しなくなってしまった。 InterLinkは、もともとWindows CEベースのハンドヘルドPCにつけられていた製品名であったが、2002年6月に登場したInterLink MP-XP7210/MP-XP3210から、Windows XP搭載マシンとして生まれ変わった。InterLink MP-XP7210は、その後、CPUクロックの向上やUSB 2.0への対応などマイナーチェンジが2回ほど行なわれており、今回登場したInterLink MP-XP7310で4世代目となる。 InterLink MP-XP7230までのInterLinkはCPUとして超低電圧版モバイルPentium III-Mを搭載していたが、InterLink MP-XP7310では超低電圧版Pentium Mに変更されている。超低電圧版Pentium Mには、900MHz版と後から追加された1GHz版の2製品があるが、InterLink MP-XP7310は、最新の1GHz動作品が採用されている。 旧モデルのInterLink MP-XP7230の超低電圧版モバイルPentium III-M 933MHzに比べて、クロックは66MHzしか向上していないが、Pentium Mでは1MBの大容量L2キャッシュを搭載するなど、アーキテクチャが一新されているため、パフォーマンス的には大きく向上している。 なお、CPUがPentium Mに変わったことで、チップセットもSiS630STからIntel 855GMに変更されている(ともにグラフィックスコア統合型)。また、IEEE 802.11b準拠の無線LANアダプタ「インテルPRO/Wirelessネットワーク・コネクション」を内蔵しており、Centrinoロゴが付いた製品としては、世界最小最軽量を誇る。 メインメモリは標準で256MBだが、MicroDIMMスロットが1基用意されており、最大512MBまで増設が可能である。なお、今回試用した製品は、すでに512MBに増設されていたので、そのままテストを行なった。HDDには、通常の2.5インチHDDが採用されており、容量は40GBである。このあたりのスペックについても、特に不満はないレベルだ。 InterLink MP-XP7310では、本体に内蔵されるビルトインバッテリとヒンジ部分の後ろに装着するアウターバッテリによるデュアルパワーシステムを採用していることが特徴である(詳しくは後述)。アウターバッテリを装着していない状態でのサイズは、幅225×奥行き152×高さ29.5mmで、重さは約905gとなる。アウターバッテリ(添付の標準バッテリ)を装着した状態では、幅225×奥行き177×高さ29.5mmで、重さは約1,075gとなる。10.4型液晶を搭載したB5サイズサブノートに比べて一回り以上小さく、携帯性は高い。 ボディカラーは黒を基調としており、シャープで精悍な印象を受ける。写真で見ると、LOOX T90Dのようなピアノ調の塗装がされているように見えるが、実際にはそこまでの光沢感はなく、指紋なども付きにくい。
InterLinkでは、液晶ディスプレイとして、8.9型低温ポリシリコンTFT液晶パネルを採用している。解像度は1,024×600ドットなので、XGA解像度よりも縦が168ドット分狭いことになる。12.1型XGA液晶に比べると、ドットピッチも狭くなっているが、視認性は十分である。発色も鮮やかで、コントラストも高い。 このクラスのミニノートとしては、インターフェース類も充実している。左側面に、IEEE 1394(4ピン)とPCカードスロットを装備しており、右側面には、USB 2.0×2、外部ディスプレイ出力(専用端子なので、オプションの接続ケーブルが必要)、モデム、LAN、ヘッドホン出力、マイク入力の各端子を装備している。 B5ファイルサイズあるいはB5サイズのサブノートに比べると、横幅が短いため、十分なキーピッチを確保するのは困難である。InterLinkでは、アルファベットなどの主要キーについては16mmのキーピッチを実現しているが、その代わり右側の一部のキーのキーピッチがかなり狭くなっている。また、右CTRLキーや右Altキーも省略されている。 手の小さな人ならタッチタイプも可能であろうが、手の大きな人ではやや窮屈に感じるだろう。キーストロークは1.5mmで、キータッチはやや軽めだ。ポインティングデバイスとしては、今では少数派となったスティック式デバイスが採用されている。ポインティングデバイスの操作感は、ThinkPadのTrackPointによく似ており、なかなか良好だが、指で触る部分が固めなため、長時間利用していると指が痛くなることもありそうだ。
InterLink MP-XP7310は、IEEE 802.11b準拠の無線LAN機能を内蔵しているため、ホットスポットなどからのインターネットアクセスも、スマートに行なえる。内蔵アンテナの位置や感度も重要なポイントだが、InterLink MP-XP7310では、複数のアンテナを利用することで、安定した通信を実現するダイバーシティ方式のアンテナを採用している。アンテナは、液晶ディスプレイの左右に実装されており、感度も良好である。 また、無線LAN機能のオン/オフを切り替えるスイッチが本体左側面に用意されているので、病院内など無線LAN機能を無効にしたい場合などに便利だ。
InterLinkでは、本体に内蔵されるビルトインバッテリと自由に脱着が可能なアウターバッテリの併用が可能なデュアルパワーシステムを採用している。ビルトインバッテリはネジ1本で本体と固定されており、交換は可能だが、外してしまうと、キーボードの後ろの部分が空いてしまうため、基本的には装着したまま利用することになる。 ビルトインバッテリは1,250mAh、11.1Vと容量が大きくないため、駆動時間も公称最大約2時間(JEITA測定法1.0では約1.8時間)とあまり長くない。アウターバッテリとしては、付属の標準バッテリパックと、オプションの大容量バッテリパックの2種類が用意されており、ビルトインバッテリ+標準バッテリでは公称最大約5.5時間(JEITA測定法1.0では約5時間)、ビルトインバッテリ+大容量バッテリでは公称最大約9.5時間(JEITA測定法1.0では約8.5時間)の駆動が可能になる。 ただし、この駆動時間は、あくまでも公称最大駆動時間であり、バックライトの輝度をある程度上げて、HDDアクセスを頻繁に行なうような状態では、もっと駆動時間が短くなると考えられる。 付属のACアダプタはコンパクトだが、ケーブル込みの重量が330g(実測値)とやや重めである。これは、ACケーブルがやや太いためであろう。また、InterLink本体はファンレスではなく、左側面の手前部分に排気口が設けられているが、騒音や発熱は許容できる範囲におさまっていた。
プリインストールソフトとしては、DV編集ソフトの「Pinnacle Studio 8.6 SE」や音楽再生ソフトの「INTERJUKE」、高音質化フィルター「CCコンバーター」などが搭載されている。また、ビクター独自のネットワーク切り替えソフト「Easy Network Changer」もプリインストールされており、会社、自宅、ホットスポットサービスなど複数のLAN/ダイヤルアップのネットワーク設定を簡単に切り替えることができる。
参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのMobileMark2002、SYSmark2002、Futuremarkの3DMark2001 SE build330、id softwareのQuake III Arenaを利用した。 MobileMark2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。また、3DMark2001 SEやQuake III Arenaでは、3D描画性能を計測する。MobileMark2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、AC駆動時(電源プロパティの設定は「常にオン」)にして計測した。なお、MobileMark2002は、ビルトインバッテリに加えて、標準バッテリを装着した状態で計測を行なった。 結果は下の表にまとめたとおりであり、Let'snote CF-W2での結果と比べてみればわかるように、超低電圧版Pentium M 900MHzを搭載した製品に比べて、やはりパフォーマンスは高い。このクラスのミニノートとしては、十分なパフォーマンスを持っているといえるだろう。 ただし、気になったのは駆動時間である。MobileMark2002のBattery life ratingのスコアは3時間40分(220分)で、公称最長駆動時間の約5.5時間に比べるとかなり短い。ビルトインバッテリ(1,250mAh)+標準バッテリ(2,200mAh)の合計容量は3,450mAhなので、ビルトインバッテリだけで駆動した場合は、220÷3450×1250=80分程度しか持たない計算になる。ビルトインバッテリだけでは、AC電源のない場所での運用には心許ない。AC電源のない場所で利用することが多いのなら、最低でも標準バッテリの装着は必須であろう。 【InterLink MP-XP7310ベンチマーク結果】
InterLink MP-XP7310は、A5サイズにCentrinoモバイル・テクノロジを詰め込むことによって、下手なサブノートを上回るほどのパフォーマンスを実現している。バッテリ駆動時間については、もう一歩努力してもらいたい気もするが、こうしたミニノートが絶滅寸前な状況においては、貴重なマシンであることには違いはない。 キーボードの使い勝手については、12.1型液晶を搭載するサブノートのほうが有利だが、フットプリントの小ささでは、やはりInterLinkに軍配が上がる。B5サイズのサブノートよりも小さくて、しかも十分なパフォーマンスを持つマシンを探しているのなら、現時点では本製品がほぼ唯一の選択肢となるだろう。 □日本ビクターのホームページ (2003年7月15日)
[Reported by 石井英男]
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