元麻布春男の週刊PCホットライン

ロータス「SuperOffice 2001」を試す



●Microsoft Officeとの互換性に不安のあるStarSuite

SuperOffice 2001

 しばらく前のマシン更新の際、それまでインストールし続けてきたMicrosoft Officeをやめ、その代わりにStarSuite 6.0をインストールしたという話をした。表計算ソフトのCalc、プレゼンテーションソフトのImpressについては、少なくとも筆者個人にとって十分なMicrosoft Officeとの互換性が得られたが、Wordについてはヘッダおよびフッタの処理を中心に、互換性は必ずしも十分ではなかった。

 互換性の向上については、すでにベータ2の配布が始まっているStarSuite 6.1に期待したいところだ(このバージョンではPDFフォーマットでの出力のサポートに加え、PDAのサポートも向上するという)。また将来的には、Outlookに相当するアプリケーションの提供も期待したい。

 さて、とりあえずMicrosoft OfficeからStarSuite 6.0 + Shuriken Pro 3 + PalmDesktopに移行した筆者だが、すべてに満足しているわけではない。そこで、別のOffice Suiteを試してみることにした。調べてみると、2年以上前に発売されたロータスのSuperOffice 2001がまだ生きていたのだ。

 発売から年月が経っているせいか、店頭で見る機会が少なくなってしまったが、ヨドバシドットコムによると、今でも取り寄せ可能。しかも価格はマニュアルなしの「バージョンアップ/優待/アカデミック/乗換版」だと4,980円で買える(標準価格でも5,800円)。手元を調べてみると、SuperOffice 98があったので、このバージョンを購入する資格もある。

 アプリケーションとしてOffice XPよりは古いが、Office 2000よりは新しいハズ。Office 2000と十分な互換性があれば、特に問題はない。早速、オーダーしたが、取り寄せといっても、中3日くらいで手元に届いた。

●SuperOffice 2001をインストール。互換性には難点も

 すでに仕事マシンにはStarSuiteをインストールしてあるので、とりあえず安全を期してSuperOfficeは実験マシンにインストールしてみた。今更ながら気づいたのは、SuperOfficeは必ずしもMicrosoft Officeの置き換えを目指していない、ということだ。Microsoft Officeとデータ互換性を持つ、別のオフィススイート、という位置づけのようだ。

 そう思う理由は、StarSuiteをインストールすると、拡張子が.DOC、.PPT、.XLSといったMicrosoft OfficeのファイルをStarSuiteに関連付けするのに対し、SuperOfficeはこれらのファイルをそのままにするからである(デフォルトインストール)。ユーザーが自ら関連付けを設定しない限り、ハードディスク内にあるこれらのファイルを開くには1-2-3 2001(表計算)、ワードプロ 2001(ワープロ)、フリーランス 2001(プレゼンテーション)のそれぞれのアプリケーションから指定して開かねばならない(あるいはファイルを右クリックしてプロパティメニューから開くアプリケーションを指定するか、だが)。

 インストールするだけで、ダブルクリックでMicrosoft Officeのファイルが開けるStarSuiteとは、ちょっとアプローチが異なるようだ。

 気になる互換性だが、1-2-3 2001の互換性はかなり高いようだ。StarSuiteの表計算ソフトであるCalcでは、日付タイプについて書式設定をしなおさなくてはならなかったが、1-2-3 2001ではその問題もない。

 しかし、フリーランスの互換性はもうひとつだ。図1は、MicrosoftがWinHEC 2001で配布したPowerPointプレゼンテーションを、StarSuiteのプレゼンテーションソフトであるImpressで開いたところだが、これは本家PowerPointで開いた時とほぼ同じイメージが再現されている。同じシートをフリーランスで開いたのが図2だが、シート中央部下の矢印の太さ、右上のLonghornの文字の位置など、明らかに問題がある。

【図1】PowerPointのプレゼンテーション資料をImpressで開いたもの 【図2】同じ資料をフリーランスで開いたもの

 さらに問題なのがワードプロ 2001で、前々回用いたサンプル(新製品説明会の案内状)を開こうとすると、アプリケーションの応答がなくなってしまう。.DOCという拡張子が自動的にワードプロに関連付けされるわけではないから、電子メールソフトの中から添付のWord文書を開こうとしたら、メールソフトごと反応しなくなった、というトラブルが自動的に発生することはないのがまだ救いだ。

 ちなみに図3は、Windows XPに付属するWordpadでサンプル文書を開いたところで、やはりヘッダの情報がそっくりなくなっている。Wordとの完璧な互換性はかなり難しいようだ。

【図3】Wordpadでサンプル文書を開いたところ

 SuperOfficeに含まれるPIMソフトのオーガナイザー2001だが、Outlook Expressの住所録との連携がうたわれているものの、Outlookの代わりがつとまるかというと難しい。というか、Outlook/Exchangeの代わりとなるのは、Lotus Notes/Domino 6という位置づけのハズ。ただ、Notes/Domino 6は筆者のような個人には荷が重過ぎる。と同時に、Notes/Domino 6の存在が、オーガナイザー2001の機能を制限しているようにも思われる。

 システム手帳のメタファに忠実なオーガナイザー2001には、ある種の分かりやすさがあることは認めるが、システム手帳のメタファそのものが制約となって、十分なデータ連携を難しくしているのではないかという気もする。

●単体アプリケーションとしては文句なしに優秀

 ロータスSuperOfficeを単独のアプリケーションとして評価すれば、ハッキリいって文句のつけようがないと思う。少なくとも5,000円を切るソフトでここまでできるものなど、到底存在するなどとは考えられない。

 もちろん、この価格で購入可能なのは、ロータスSuperOfficeの既存ユーザー(バージョンアップ)、学校関係者(アカデミック)、他社のオフィススイートユーザー(乗換)、既存のロータス製品ユーザー(優待)に限られるが、たとえばオーガナイザー2001標準価格版(マニュアルなし)が3,300円で売られている。これを買えば、優待として購入できるハズだから、8,000円強で誰でも合法的に購入可能だ。この価格で、見積書や請求書など、よく使われるフォームのテンプレート集(ひな型ガイド、StarSuiteにも付属)までついてくるのだから、文句を言うとバチがあたるというものである。

 ただ、Microsoft Officeとの完全なデータ互換性を求められると辛い部分が出てくる。特に、メールで添付されてくるMicrosoft Officeのデータのビューワーに使おうとか、必要に応じてそのデータを編集したいと考えると難しい。完璧ではないとはいえ、こうした用途にはStarSuiteの方がまだベターなのではないかと思われる。

●Visioの代替として花子13を導入

 さて、StarSuite、SuperOfficeでカバーしきれないのが、ビジネスグラフィックスと呼ばれるアプリケーションの分野だ。平たくいってしまえば、Microsoft Officeファミリに含まれるVisioの代替アプリケーションをどうするか、ということである。

 もちろん、StarSuiteに付属する図形描画ソフトであるDrawで簡単な図が描けないわけではないが、筆者には敷居が高い。Visioのように、もっと簡単にラフな図が描けるアプリケーションを筆者は求めている(思えば、VisioはMicrosoftに買収される前からのユーザーだったのだが)。

 そこでVisioの代わりにインストールしたのがジャストシステムの「花子13」だ。以前はDrawのようなフリーハンドな描画ソフトという印象が強かったが、最近のバージョンはグリッドに図形をスナップしたり、図形と図形をコネクタで結んだりと、Visioのような作図ができるようになっている。機能が多すぎて、若干見通しが悪いところがあるように思われるものの、筆者のニーズを十分満たせることが分かった。とりあえずはMicrosoft Office + Visioの代わりに、StarSuite + 花子でやっていくことにしよう。

 Outlookに代わるアプリケーションの欠如(Linux/Unix上で動くEvolutionは試したことがないが)、サーバー上で稼動するバックエンドアプリケーションとの連携、開発者サポートや蓄積されたノウハウ、そして何よりデファクトスタンダードであるという事実を踏まえれば、Microsoft Officeは極めて強力なツールであり、ある程度以上の規模の企業でこれを使わないわけにはいかないということは容易に理解できる。だが、最近のバージョンアップのたびにMicrosoft Officeに付加されていく機能は、どう考えても筆者には使い道がない。

 にもかかわらずバージョンアップのたびに筆者はOfficeを買い続けてきた。これは単に無駄であるばかりでなく、Microsoft Officeの今の開発方針を支持する行為にほかならない。

 Microsoft Officeがデファクトスタンダードであるという事実が、最新版を購入しなければならないような強迫観念を生んでいたのかもしれないが、それももう終わりにしたいと考えたから、筆者はMicrosoft Officeを止めることにした。筆者はOffice XPもつい買ってしまったため、その気になればいつでもインストールはできるのだが、何か致命的な理由でもない限り、封印しておこうと思っている(すでにノートPCにはMicrosoft Officeを入れてしまっているため、最悪ノートPCを使えば何とかなるだろう)。

 もちろん、Microsoft Officeの開発方針が変わり、筆者にとって真に魅力的なものになったら、その時はまた話は別であるが、どうも期待薄に思われる。

□関連記事
【2001年6月7日】ロータス、統合型ビジネスソフト「ロータス スーパーオフィス2001」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010607/lotus.htm

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(2003年7月9日)

[Text by 元麻布春男]


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