[an error occurred while processing the directive]

ウェアラブル普及を目指すNPO「チームつかもと」始動!
~ウェアラブルPCとHMDでモータースポーツ・レースを支援

「チームつかもと」の面々

6月22日発表



 大阪・九条にて「鈴鹿八時間耐久ロードレース ウェアラブルサポート」プロジェクト発表会が開催された。

 今年7月31日(木)~8月3日(日)、鈴鹿サーキットにて「FIM 2003 世界耐久選手権シリーズ第6戦 "コカ・コーラ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース第26回大会」が開催される。今回の発表は、鈴鹿8耐に出場する「ヤマモトレーシング」のチームを、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)とウェアラブルPCを利用したシステムでサポートするというもの。ピットの中のクルーがHMDとPCを身につけ、時々刻々と変化するコース情報を把握できるよう支援する。

左から塚本 阪大助教授とヤマモトレーシングの山本英人監督

 この支援システムを実施するのは“ウェアラブルの伝道師”こと大阪大学の塚本昌彦助教授を中心とする「チームつかもと」。ウェアラブルPCによるレース支援は、昨年、Xybernaut(ザイブナー)による「モバイル・アシスタント」が「アメリカン・ル・マン・シリーズ」でアレックス・ジョブ・レーシングのポルシェ・チームに採用された例があるが、他には世界でもあまり例がないという。

 「チームつかもと」とはHMDやウェアラブルPCの普及を目標とした団体で、現在、研究開発型NPOとして立ち上げ準備中。今回の「ピット内情報化支援」が初の実施プロジェクトとなる。参加しているのは大阪の中小企業他40社程度。事務局は株式会社ソリューション・クルーの橋本昌隆氏が務めている。今後、ウェアラブルやユビキタスなどの分野で幅広く大学からの技術移転、事業化、また独自の技術開発やアプリ開発、普及活動などを行なっていくという。

 今回、レース支援システムの開発で中心となった企業は、もともと電子マニュアルやウェアラブルPCのアプリケーション開発等の業務を行なっていて、ソフトウェア開発とまとめ役を務めたウエストユニティスのほか、ソリューション・クルートイメディアデザインソフトウェア工房ソーホーエード、そしてNTT未来ねっと研究所。HMD等のハード機材提供は株式会社島津製作所が行なった。島津製作所は一般顧客向けの製品はほとんど作っていない。「『チームつかもと』に参加することで、ウェアラブルPCの可能性を探っていきたい」(島津製作所 谷垣哲也 広報・IRグループ課長)という。

島津製作所による新型HMD。アナログ・インタフェース・ユニットが薄型になり、ステイタスを示すインジケータもついた(右が新型。左はこれまでのもの)。これまでのものより輝度が高くなり、よりはっきりと見えるようになった。水曜日から開催される産業用バーチャルリアリティ展でも披露されるそうだ。なお、本番時、本体にVAIOを使うかどうかは未定

 サーバーから無線LANなどを使って(無線LANを使うかどうかは確定ではないそうだ)、ピットクルーが装着するウェアラブル機器にXMLデータを配信する。具体的にはラップタイム、給油スケジュール、燃費情報、トラブル情報、路面状況、気象情報、ライダーの位置情報などがHMDに表示される。システム操作画面は本誌で既報のとおり、マクロメディアのFlash技術を使ったものだ。

HMDに表示される操作画面。二人のライダーが交互に乗車するので、それぞれのラップタイムとピットでの所要時間が表示されている。コース画面上にはフラグを立てて、“オイル注意”といった情報を書き込める。ライダーの位置情報をどうやって取るかについては現在検討中 システム構成図(概略)

 ポインティング・デバイスに何を使うかは決まっていないが、「ワンボタンでオペレーションできるようなデバイスを使うことになるだろう」(ウエストユニティス・福田登仁氏)とのこと。なお、この画面も暫定的なものであり、決定ではないそうだ。将来的にはエンジンの状態や燃費など、絶えず変化していくバイクの状態に随時対応できるようなものにしていきたいという。バイクそのものから情報を取ることはルール上禁止だが、それ以外の情報からバイクの状態を類推してピットクルーやライダーをサポートできるようなシステムにしていきたいという。

ウエストユニティス・福田登仁 代表取締役

 レース現場でHMDを使うメリットについて、ウエストユニティスの福田登仁 代表取締役は「これまではヘッドフォンやインカムを使って伝えていたが騒音で聞こえないこともある。文字や画像で伝えることで情報の伝達がより確かなものになる」と述べた。

 また鈴鹿8耐に関わりはじめて20年以上というヤマモトレーシングの山本英人監督も「現場だとコース全体が見えないんですよね。だから情報がどうしても遅れる。こういうもので少しでも情報が早く伝わるようになれば」と、期待をのぞかせた。

 いっぽう、もともと自身もバイクに乗り、8耐も何度も見にいっていたという塚本助教授は「今回は初めてのことで、何よりもまずウェアラブル機器が逆に邪魔なものにならないかどうか心配」と現実的な意見。8時間という長丁場だと、熱対策も重要になってくるかもしれない。機器にとっても8耐は耐久レースなのだ。

 いずれにせよ、成熟期を迎えようとしているPCが、ウェアラブル化によって新たな活躍の場を求めていることは間違いない。今後も、モータースポーツ以外にも、新たな用途が探索されていくだろう。

レースクイーン審査会の様子 ヤマモトレーシングのレースクイーンが身につける予定のHMD 有機ELを使ったメディアユニフォーム

 発表会はシステムデモのほか、レースクイーン審査会も兼ねており、一風変わった雰囲気のものとなった。塚本昌彦助教授はレースクイーン審査会の審査委員長も務めたが、審査基準は「秘密」とのこと。ヤマモトレーシングではオーディションの結果、二人を選び出す予定。当日はレースクイーンを務める彼女らにもHMDのほか、制服メーカーであるチクマによる有機EL付き「メディアユニフォーム」他を身につけさせるかもしれないそうだ。

□塚本昌彦助教授のホームページ
http://www-nishio.ise.eng.osaka-u.ac.jp/~tuka/index-jp.html
□ウエストユニティスのホームページ
http://www.westunitis.co.jp/
□マクロメディアのホームページ
http://www.macromedia.com/jp/
□ニュースリリース
http://www.macromedia.com/jp/macromedia/proom/pr/2003/mm_westunitis.html
□"コカ・コーラ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース
http://www.suzukacircuit.co.jp/8tai/
□関連記事
【6月20日】マクロメディア、FlashとウェアラブルPCによる情報配信システム
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0620/macro.htm
【2001年9月18日】レース現場でも使われるThinkPad
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010918/ibm.htm

(2003年6月23日)

[Reported by 森山和道]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.