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Kodak、1年後をめどに国内市場再参入
6月12日発表 米Eastman Kodak(Kodak)は12日、都内のホテルに400人を超える招待客を集め、近況報告会を行なった。このイベントは毎年開催されるもので、米本社からCEOを呼び、会社の近況と今後の指針を表明するものだ。 今年も例年通り、同社CEOであるダニエル・D・カープ氏を招き、コダック株式会社社長である堀義和氏とともに、同社の近況報告が行なわれた。だた1つ違っていたのは、新たに米本社のバイスプレジデント(副社長)となった、元オリンパス光学工業の小島佑介氏が、ダニエル・カープ氏に先駆けて、今後のデジタルイメージング市場の展開についてのスピーチを行なった点だ。 その中で小島氏は「1年先をめどに、Kodakが日本のデジタルカメラ市場に“再参入”する」ことを表明。「デジタルカメラ事業をKodakのコアビジネス、大黒柱にする」と明言した。 もともとKodakはデジタルカメラの黎明期から、プロ用機からコンシューマー機までを積極的に展開していたメーカーである。また事実上、世界初のコンシューマー向けモデルとなったApple Computerの「QuickTake 100」もKodakの手によるものだった。 だが、同社のメイン市場はあくまでも米国や欧州であり、その市場をターゲットにした製品開発をしていたこともあって、一時的ではあるが、日本市場からKodakのデジタルカメラは姿を消し、事実上、撤退していたわけだ。 そして今回、デジタルカメラ市場の中心的存在であり、世界最高の激戦区である日本市場に再参入し、そのポジションを確立することは、Kodakにとっての長年の悲願であり、世界最大のフィルムメーカーの意地をかけた市場奪還といえる。 小島氏に続きステージに立ったカープ氏は、「小島氏の就任によって、Kodakのデジタルカメラにとって日本が中心になり、デジタルイメージングによる劇的な進展は日本を中心に行なわれている」と、小島氏の就任と日本市場の重要性をアピール。 なにしろKodakにとって、日本以外の諸外国でのデジタルカメラのシェアに比べ、日本国内でのシェアの低さは、屈辱的なものがあり、その市場で明確なポジションを獲得したいという、強い意識がある。その強力なてこ入れ策として抜擢されたのが、この小島氏というわけだ。 ●小島氏の参画が意味すること さて、今回の近況報告会は、事実上、バイスプレジデントに就任した小島氏のお披露目会的なものとなったわけだが、そこまで同社がその手腕を高く買っている小島祐介氏とは、どんな人物なのだろうか? 同氏は今春までオリンパスに在籍し、執行役員兼映像システムカンパニー副カンパニー長を務め、同社のCAMEDIAシリーズ当初からデジタルカメラ事業を牽引し、同社の大黒柱にまで育て上げた人物である。 具体的には、「C-800L」、「C-1400L」といったCCDの高画素化や、「C-1」「C-300」などの低価格路線、「C-2100UZ」、「C-700UZ」の高倍率路線のほかにも、レンズ一体型一眼レフ「E-10」、「E-20」、通信対応の「C-21T.commu」、超高速連写の「E-100RS」といった、さまざまな展開を仕掛けてきた人物だ。 さらに、他社と連携した展開として、xD-Picture Cardや、今月オリンパスが発表を予定している4/3型デジタル一眼レフシステム「フォーサーズ」も同氏がオリンパス在籍中に為し得た実績といえる。 もちろん、一個人だけの動きでオリンパスが、現在のようにデジタルカメラ市場で高いブランドイメージとシェアを獲得したとはいわないが、少なくともオリンパスにとって小島氏は、かけがえないキーマン的な存在だったわけだ。 その小島氏が、Kodakに移り、米Kodakの副社長兼ワールドワイドのデジタルカメラ事業の総責任者となったことが、「デジタルイメージングの中心であり、もっとも先進的な市場」とKodakが認識している、日本市場に再参入する、直接的な動機になったのはいうまでもない。 ●有機EL搭載機や4/3型デジタル一眼レフ登場の可能性も とはいえ、今回の小島氏のスピーチでは、具体的な製品構成などについては、いっさい言及していない。懇親会での話では、「1年後から順次製品を投入し、ラインナップとして展開してゆく」という趣旨の発言していたが、その詳細については語れることはなかった。 だが、前記の通り、オリンパスが今月発表する予定の「フォーサーズ」(4/3型撮像素子搭載レンズ交換式デジタル一眼レフ)は、同氏が中心となって企画したものであり、同氏の働きかけによりKodakが賛同メーカーとして名を連ねたことを考えると、Kodakブランドの製品としてフォーサーズがラインナップされる可能性はきわめて高い。 また、同社は今春のPMAで、世界に先駆けて有機ELディスプレイを搭載したデジタルカメラを発表し、すでに一部の国では市場投入していることを考えると、有機EL搭載機をラインナップに加える可能性もきわめて高い。 このほかにも、いち早くクレードル方式を採用し、海外で高い人気を博している「EasyShare」システム搭載機の国内本格導入はもちろん、今春のPMAで発表されたカメラを置くだけでプリントができる「プリンタードック」といった、独自の展開をしてくる可能性は十分にある。
ただ、カメラの開発にはそれなりの期間がかかるため、この時期に就任した小島氏が来年の再参入第一弾の製品に直接携わっている可能性は低く、その真価が発揮されるのは、早くても来年後半に発売される製品からだろう。 日本国内でのデジタルカメラ市場は、すでに画質や画素数競争の時代から、デザインや機能などが重視される市場に移行している。そのため、このような日本市場の独自性を考慮した製品が早期に登場しないと、世界屈指の激戦区であるこの国で、その存在をアピールするのはなかなか難しい。もっとも、いい製品が認められる市場でもあるので、その点、製品の出来次第では、まだまだKodakが市場に再参入する余地は十分に残されているだろう。 ●カメラ付き携帯についても言及 カメラ付き携帯との棲み分けについては「飽和に近い携帯市場だけに、買い換え市場に対する取り組みは凄まじいが、デジタルカメラブームの仕掛け人の1人として、デジタルカメラ市場への影響は、まったく問題ないと思っている」と語った。 また「携帯電話のカメラ機能は、シングルユースカメラ(レンズ付きフィルム)とバッティングする部分はある」としたうえで「所詮はおまけ機能であり、デジタルカメラには決して追いつけないと決意表明したい」と、デジタルカメラの優位性をアピールしていた。 その一方、メガピクセル級カメラ付き携帯電話は現在、通信環境の関係でプリント用途しか訴求することができないが、それがKodakの核とする事業であるプリントにつながる可能性も示唆していた。 ●さらなるイメージングビジネスへの取り組みを明言 今回の近況報告会のメインとなる、米Kodak CEO ダニエル・カープ氏のスピーチでは、Kodakの日本での事業展開について触れた。 同社は9億4,800万ドルの営業キャッシュフローと、2002年度末で5億6,900万ドルものキャッシュポジション(現金持高)を背景に、今後もイメージング分野を中心とした積極的な事業展開を行なっていくことをあらためて表明。 具体的な事業戦略として「あらゆる映像出力の推進」「デジタル画像の使いやすさの追求」「フィルムのもたらす利益の更なる追求」「新市場開拓に向けた新規事業の創出」の4本を柱とした展開をあげた。 中でも、Kodakのドメインであるインフォイメージングは3,850億ドル市場であり、その中での注目すべき動きとしてカメラ付き携帯電話の台頭をあげた。現在この市場は、全世界で1,800万台、そのうちの1,300万台が日本で販売され、ごく近い時期に全世界3,700万台という予測もあるという。 このカメラ付き携帯電話によって、写真が山のように撮影され、それをプリントに結びつけるのが、Kodakの役割であると語り、この市場への期待の高さを伺わせた。 一方、米国を始め、日本国内でも当初の予測ほど延びていないオンラインプリント分野については、日本国内でも積極的に展開してゆくという。この分野は、店頭プリントのように既存の系列店舗数などのインフラに左右されにくい分野だけに、国内フィルムメーカーやラボが席巻している日本のプリント市場でも、オンラインプリントという新しい切り口での展開により、さらなる市場の広がりを期待しているようだ。 また、PMAの調査によると、デジタルカメラの場合、1カットのプリント枚数が銀塩フィルムの2倍もあることを紹介し、デジタル化によりプリント需要が大きく落ち込むという世評を牽制した。 もちろん、デジタルカメラからのプリントについても積極展開し、インクジェットプリンターでのホームプリントには専用紙を供給し、店頭プリントもオンラインプリントもKodakがすべてカバー。さらに今後は、携帯電話用のセルフ端末をカメラ店だけでなく、カラオケやコンビニ、携帯電話販売店などにも設置するなど、プリント全般を網羅する事業展開を図っていくという。 また、先だって国内発売されたデジタル一眼レフ「DCS 14n」を始めとしたハイエンドデジタルカメラ市場については「日本のプロ写真家は最高のモノを要求し、それ以外を受け付けないと有名である」と語り、この分野で長い歴史と実績を持つ同社ならではの自信を伺わせた。 一方、Kodakが得意とする高品質なプリント需要は、今後も、ポートレートとコマーシャルの世界で要求され、今後はネットワークとソフトウエアによって、デジタルでもフィルムでもプリントできる環境を構築するという。 ●有機ELへの期待も
近況報告会では、新規事業の大きな柱として、有機ELディスプレイの今後の展開についてのロードマップも示された。 まず、今春、三洋電機との合弁会社により、他社に先駆けてアクティブマトリックス型有機ELディスプレイを商用量産出荷し、同社のデジタルカメラに搭載したことを紹介。 今後は、2004~2005年を目処にDVDやハンディーテレビ用として5~7型タイプ、2005~2006年には9.5~15型のフルカラーディスプレイを、2007~2008年には15型を超えるテレビ用のフルカラーディスプレイの商用化を予定しているという。 今回の近況報告会のトップニュースは、なんといっても元オリンパスの小島氏の就任ということになる。Kodakにとって今回の人事は、オリンパスでの実績が高く評価されての大抜擢になるわけで、その注目度はきわめて高い。再参入は1年後の来夏になると思われるが、 Kodakのデジタルカメラは、その独特な絵づくりと使い勝手の良さで、今もユーザーの評価は高い。その特徴を活かし、しかも他社に迎合することなく、Kodakらしさを保ったまま、日本人が好むようなスタイルで導入されることを大いに期待したい。 □Kodakのホームページ (2003年6月16日) ■注意■
[Reported by 山田久美夫]
【PC Watchホームページ】
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