第204回
データ同期再び



 まずは前回のお詫びから書き始めることにしたい。先週、ARコートで広範な光の反射を防ぐため、異なる特性を持つARコートを複数積層するが、積層するコートのレイヤが増えると透過率が低下すると書いた。

 しかし、ARコート開発者からメールをいただき、この点が違うという指摘を受けた。ARコートではカットする周波数帯の透過光は減衰せず、逆に増幅されるため、輝度に悪影響を与えることはない。したがって、より多く積層したARコートの方が透過率はむしろ高くなるとのことだ。お詫びして訂正したい。

●僕がOutlookを捨てるのを思いとどまってきた理由

 以前この連載の中で、モバイル環境で使うPCとデスクトップPCの情報を同期させるため、Outlook+Exchange、Windows 2000/XP Professionalのオフラインフォルダを利用していると書いたことがあった。また、過去の原稿や情報としてすべてのPCから利用したいデータに関しては、ジャストシステムのInternet Diskサービスを利用している。

 ところが、この使い方にはいくつかの問題がある。まず、Internet Diskはインターネット上のストレージを唯一の情報リポジトリとして、各PCのローカルHDDにその内容を複製させているが、その容量には限りがある。自分が作成したデータやちょっとしたインフォメーション、ホテルや飛行機チケットの予約票やオンラインで購入した製品の明細書、請求書などを置いておくには十分な容量がある。

 しかし、インターネットを通じて収集しているニュースや、各種ベンダーからを蓄積したり、各種カンファレンスで入手した資料まで詰め込んでおくには少々容量が少ない。そこで、短期的に試用するPCからも参照したいデータなど、もっとも参照する可能性が高いファイルやデータベースだけをInternet Diskに置いておき、残りはオフラインフォルダを用いている。

 ところがオフラインフォルダも万能ではない。以前にも書いたことがあるが、オフラインフォルダ機能はネットワークフォルダの複製をハードディスクに作成する機能ではなく、あくまでも一時的なキャッシュとして置いておくだけだからだ。キャッシュ容量はハードディスク容量全体の何%を利用するか、ダイアログであらかじめ設定しておかなければならない。

 十分に大きな容量をキャッシュで利用可能にしておけば、まず同期されているファイルがハードディスクに無かった、なんことは避けられるはずだ。しかし何年も使っていると、キャッシュ容量を知らないうちにオーバーしていることも数度経験した。不注意と言えばそれまでだが、同期したハズの情報が存在しない“可能性がある”というのは、どうも仕事のための機能として今ひとつ納得できないところがある。

 また、Outlook+Exchangeの組み合わせは、メールデータベースの同期以外にも、スケジュールの共有や他者への権限委譲(それにより他者に自分のスケジュール管理を依頼できる)など、現在の僕のユーゼージに非常にしっくりくるのだが、たかだか個人事業主の僕が使うシステムとしては大げさすぎる面もある。そのための専用サーバを用意しなければならないことに加え、決して使いやすくはないOutlookのメーラ、PIM管理機能を使い続けなければならない。

 しかし、もう一方ではOutlookの持つ複数タイムゾーン管理や各種アプリケーションとの互換性、メールアドレス指定のやりやすさ、Exchangeと組み合わせた時のグループスケジューリングなどなど、他の製品では決して代替できない部分も多い。そもそも、Outlook 97から5年以上使い続けてきたため、ショートカットをほぼ覚えきってしまい、仕様面での使いにくさが、慣れによる使いやすさで隠蔽されていることもある。

 もしMac OS用に提供されているiCalのようなスケジューラがあれば、メールデータベースの同期に関しては目を瞑って、きれいサッパリとOutlookを捨ててしまうのだが。

●次もOutlookをやめられそうにない?

 長い間、Outlookを使い続けてきたため、その欠点は熟知しているつもりだ。

 たとえば、PSTやOSTファイルといったローカルに作るメールデータベースのパフォーマンスが非常に低く、メールアイテムが増えると全文検索に5分以上もかかるようになる。しかもデータベースは最大2GBで、サイズが1GBを超えてくるとパフォーマンスの劣化がいきなり激しくなってくるなど、スケーラビリティにも問題がある。

 さらに連絡先管理の入力フォームで、所属部署が2つ目のページにあるため、所属を最初のページで一覧できない、POP3/SMTPサーバとの通信パフォーマンスが低い、POP3サーバからのダウンロード状況が全く解らない、検索パフォーマンスが低い、Officeの中で最も“重い”ソフトウェアであること……などなど。もっと言いたいことはたくさんある。それでも利用中止を選択しなかったのには理由がある。

 1つはWindows上で動作する専用ソフトをクライアントとした、Outlook+Exchangeに相当する組み合わせが他に無かったことがある。実はOutlook以前は、LotusのNotesを動かしていたこともあったが、NotesはR4.0以降、エンタープライズ向けの性格が強まりすぎ、さらにはクライアントの操作性やデザインという意味でも、進化が非常にゆっくりしたものになってきているため、Outlookの代替にはなり得ない。

 イロイロと文句は言っているが、いざ他に代替候補を考えてみても、なかなか良い選択肢がない。これだけWebサービスが増えてきたのだから、ひとつぐらいはWeb上のスケジューラ機能を、Windowsネイティブのクライアントから利用可能なものがあってもいいのだが……。代替案があれば、Outlookの利用はとっくの昔にやめていただろう。

 そして現在、今年9月のリリースが見込まれているOutlook 2003を試用している。新バージョンは、パフォーマンス向上、POP3クライアントとしての使いやすさ向上、ユーザーインターフェイスの改善、メッセージフォルダの検索性向上、オンライン/オフラインをシームレスに行き来できる点などなど、様々な改善点がある。まだβ版であるため、巨大なメッセージのデータベースをハンドリングするのに優れた能力を持てるところにまでは至っていないが、とりあえず「製品版に期待しよう」と思える程度の変化は見られる。

 とはいえ、自宅からExchangeサーバを廃止したいという希望には変わりはないため、その方策を模索しているところだ。我が家でのExchangeサーバは、データ同期を行なうためのリポジトリサーバとしての役割と、スケジュール管理や連絡先の管理を家族に任せるワークグループサーバとしての役割がある。

 グループスケジュールなどは別途代替案を検討するとして、まずはリポジトリサーバとしての役割を、他のツールでまかなう部分から始めてみることにした。

●筆者の問題解決にはならないが、将来性ある優れた同期ソフトACCUSYNC

 要はOutlookで管理しているメールメッセージ、アドレス帳、スケジューラが、複数PCで同期できればいい。データ量が少ない場合は、PDAを媒介役としてアドレスやスケジュールのデータを同期する手段もあるが、メールメッセージも同期しようと思うと、PDAのストレージサイズでは足りなくなってくる。そこでPC間のデータ同期を行なうツールを探してみた。

メガソフト「ACCUSYNC」

 ピックアップしたのは、メガソフトの「ACCUSYNC」。インターコムの「LAPLINK Gold 11」という製品も購入してみたが、フォルダやInternet Explorerのお気に入りの同期などは高速で、しかも外出先から自宅PCにアクセスするためのダイナミックDNSサービスも統合されているなど、非常に使い勝手が良い部分がある反面で、メールメッセージとアドレス帳の同期はOutlook Expressしかサポートしておらず、スケジューラの同期も行なえないため、候補から外した。

 一方のACCUSYNCはInternet Explorerのお気に入り、クッキーデータ、Outlookのデータベース、フォルダなどを一括で同期可能で、同期のパフォーマンスも良く、使い勝手も非常に良い。おそらく作者自身が「自分で使いたい」と思って設計したのではないだろうか。使い勝手の点で、おおよそ大きな不満はない。筆者の使い方にも、もっともよくマッチした同期ソフトである。

 だが、まったく不満がないわけではない。あらかじめ設定した2台のPC間でしか同期が行なえないのだ。別のPCを接続して同期を行なおうとすると、同期に関する情報がクリアされてしまう。これは中心となるサーバを置かず、ピアツーピアで情報の同期を実現するためだ。サーバが存在する利用モデルならば、サーバ上のデータをマスターデータとして、クライアントPCに対してはその複製を提供することでデータの整合性を保つことができる。

 しかしピアツーピアの場合は、複数台のPC間でデータの整合性を保つのが難しい。おそらく、操作や設定の簡便さを優先し、さらに個人向けということで、2台のみの同期に限定したのだろう。

 したがってACCUSYNCを使うことで、Exchangeサーバをリポジトリサーバの役目から解放することはできそうにない。だが、長期の取材旅行などでは威力を発揮してくれそうだ。長期取材では、ホテル内でゆっくり仕事をするために1台、フルサイズキー、高解像度ディスプレイの2スピンドル機を置き、ホテルの外では一眼レフカメラなどと一緒に持ち歩いても負担が少ないように、より小型軽量の1スピンドル機を使う。

 これまでは、この2台の同期をVPNで自宅LANにログオンし、インターネット経由で行なっていたのだが、ACCUSYNCを用いればそのような無駄なトラフィックを発生させる方法を使う必要がなくなる。

 バージョンアップを重ねつつ、なかなか期待に応えてくれなかったOutlookとは違い、ACCUSYNCはまだ最初のバージョンである。今後は同期を行なえるPCの台数を増やしたり、同期できるアプリケーションデータの種類を増やすことを計画しているという。近年は国内で開発されたオリジナルのソフトウェアがすっかり減ってしまったが、こうした有益かつ将来的に改善されそうなソフトはもっと評価されるべきだろう。個人的にも次バージョンの開発が楽しみな製品だ。

 ということで、個人的な問題の解決には至っていないが、パーソナルな用途でサイズが異なる2つのPC、あるいはデスクトップPCとノートPCを使い分けている人にとって、ACCUSYNCはとても便利な製品だ。15日間、フル機能の試用版を利用可能で、購入時も2台分のライセンス付きで5,800円(オンライン購入時の価格)という価格設定も良心的だと思う。すでにACCUSYNCをご存知の読者も多いだろうが、まだ試していないならばダウンロードして評価してみてはいかがだろうか。

□ACCUSYNCのホームページ
http://www.megasoft.co.jp/accusync/index.html
□関連記事
【2002年7月10日】【本田】実用指向のネットストレージ、InternetDiskに期待すること
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0710/mobile161.htm

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(2003年6月9日)

[Text by 本田雅一]


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