CeBIT 2003レポート

NVIDIAが初のノートPC用DirectX 9世代GPUを発表
~妖精ドーン、ついにノートPCへ


ノートPCに転生した妖精
会場:独ハノーバー市ハノーバーメッセ(Hannover Messe)
会期:3月12日~20日(現地時間)

 GPUメーカーのNVIDIAは13日(現地時間)、CeBIT会場において、モバイル向けGPUのGeForce FX 5600 GoとGeForce FX 5200 Goの2製品を発表した。

 これらの製品は、先週GDC(Game Developer Conference)で発表されたGeForce FX 5600 Ultra、GeForce FX 5200 Ultra/5200のモバイル版となる製品で、ノートPC用GPUとしては初のDirectX 9対応製品だ。


●ワイヤレスとなり解き放たれた妖精

妖精が踊るノートPCを持ち歩く

 最近のNVIDIAのデモでは、ドーンという名の妖精のデモが利用されることが多い。先週、サンノゼで行なわれたGDCにおける、次世代GPUのNV35と思われる製品のデモでは4人も妖精が登場した。この妖精は、GeForce FXでサポートされるピクセルシェーダ2.0+やバーテックスシェーダ2.0+という、DirectX 9で規定されている命令セットを超える部分を利用している。このため、GeForce FXの性能をアピールするデモとして利用されている。

 今回NVIDIAは、東芝のノートPCなどに内蔵されたGeForce FX 5600 Goを利用して、妖精をノートPCで動かして見せた。また、実際にその妖精を、バッテリー駆動の状態で動かして見せ、ノートPCを持った女性が歩き回るというデモを行なったのだ。そう、妖精はワイヤードの世界から、ワイヤレスの世界へ転生した、というわけだ。


●デスクトップPC用と全く同じ機能をサポートするGeForce FX Go

GeForce FX GoファミリーはGeForce FXの機能をすべてサポートする Electronic Artsと提携し、モバイル向けのゲームをNVIDIAが提供する

 今回発表されたGeForce FX Goは、デスクトップPC向けのGeForce FX 5600 Ultra(NV31)、GeForce FX 5200ファミリー(NV34)と同じダイを利用している。このため、機能はデスクトップPC向けの製品と全く同じとなっている。

 上位モデルとなるGeForce FX 5600 Go(NV31)は、4ピクセルパイプラインを備え、製造プロセスルールは0.13μmで、8,000万トランジスタから構成されている。バーテックスシェーダ、ピクセルシェーダともに2.0+となっており、DirectX 9に対応している。クロックは、エンジンが最高で350MHz、メモリも最高で700MHz(350MHz)で、利用できるメモリはDDR、メモリバス幅は128bitとなる。なお、エンジン/メモリのクロックはOEMベンダが自由に選択することができる。

 GeForce FX 5200 Go(NV34)も、同じく4ピクセルパイプラインを備えているが、製造プロセスルールは0.15μmで製造されており、6,000万トランジスタから構成されている。動作クロックはエンジンが最高で300MHz、メモリが最高で600MHz(300MHz、DDR1)、メモリバス幅は128bitとなる。

 両者とも、LVDSトランスミッタを内蔵しており、追加チップなしでノートPC用のLCDを接続することができる。

GeForce FX Goファミリー仕様一覧
GeForce FX 5600 GoGeForce FX 5200 Go
コアNV31NV34
製造プロセスルール0.13μm0.15μm
エンジンクロック最高350MHz最高300MHz
エンジン電圧1.25V~1.00V1.45V~1.2V
熱設計消費電力6W以上6W
平均消費電力1W以下1W以下
省電力機能PowerMizer3.0PowerMizer3.0
LVDSトランスミッタ内蔵内蔵
AGPインターフェイス8X8X
ビデオメモリDDR1/128bitDDR1/128bit
メモリクロック最高700MHz(350MHz)最高600MHz(300MHz)


●新しい省電力機能のPowerMizer 3.0をサポート

 デスクトップPC版とモバイル版の大きな違いは、モバイル版がより低電圧で動作しており、低消費電力であることと、PowerMizer(パワーマイザー)3.0と呼ばれる、省電力機能をサポートしていることだ。

 PowerMizer 2.0では、インテルのSpeedStepテクノロジのように、クロックと電圧をACアダプタ接続時とバッテリー駆動時で切り替えて利用する仕様になっていた。これに対して、PowerMizer 3.0では、ソフトウェアによりGPUの負荷を監視し、動的にクロックと電圧を切り替えることができる。さらに、GeForce FX 5600 GoやGeForce FX 5200 Goは、サーマルダイオード(温度計)を内蔵しており、動的にチップ温度などを検知して、熱設計の限界を超えるようであれば、クロックと電圧を落として動作させるインテリジェントな機能も新たに搭載された。

 なお、熱設計の仕様だが、NVIDIAのモバイルGPUプロダクトマネージャのビル・ヘンリー氏によれば「GeForce 5600 GoのTDPは6Wをやや超える程度、GeForce 5200 Goは6Wとなるが、OEMがどういうクロックを選択するかによりやや上下する」と説明しており、OEMメーカーが自社の熱設計の仕様に応じて、クロックや電圧を選択することができることを示唆した。たとえば、デスクトップリプレースメントのような大型のノートPCでは、熱設計に余裕があるため350MHzで動作させ、熱設計に余裕がないシン&ライトやサブノートなどでは、最初から上限のクロック350MHz以下に落として搭載することも可能であるということだ。

PowerMizer 3.0のプレゼンテーション


●東芝のSatelliteシリーズなどに搭載され、4月頃には市場へ投入

 なお、実際に搭載したノートPCが出荷される時期だが、発表会では「すでに出荷は開始されており、3月か4月には搭載したノートPCが出荷されるはずだ」と説明されており、発表会でもGeForce FX Goを搭載した東芝Satelliteシリーズが展示された。

 このように、GeForce FX Goの登場で、デスクトップPC向けのGeForce FXに遅れること1四半期程度で、モバイルもDirectX 9に対応することができるようになる。これまで、モバイルのグラフィックスと言えば、デスクトップPCに比べて2~3世代は遅れるのが通例だったが、今後は、同じような機能をモバイルでも利用することができる時代がくる。

 14日(現地時間)には、ATIも同様の発表会を行なうと見られているが、彼らの新しいモバイル用グラフィックスチップ“M10”は、DirectX 8.1世代であると見られている。それに対して、NVIDIAはGeForce FX GoというDirectX 9世代のチップで、技術面でのアドバンテージを持つことになる。これが、現在のモバイル市場のリーダーであるATIを追い越せる武器となるかが、次の焦点といえるだろう。

GeForce FX Goを搭載した東芝のSatellite。4月に出荷予定と説明された GeForce FX 5600 Goのサンプル

□NVIDIAのホームページ(英文)
http://www.nvidia.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.nvidia.com/view.asp?IO=IO_20030312_8791
□関連記事
【3月7日】【海外】NVIDIAが次世代GPU「NV35」のデモを初公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0307/kaigai01.htm

(2003年3月14日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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