Transmetaの創業者であるDavid R. Ditzel(デビッド・ディッツェル)氏(Vice-Chairman, CTO and Vice President of Marketing)と、CPUコアの開発を担当するGodfrey Paul D'Souza副社長(Vice President of VLSI Design)に、Transmeta本社でTM8000の秘密をうかがった。 ●デスクトップ市場をにらんでDDR400をサポート
[Ditzel氏] そうだ。CPUだけでなく、周辺インターフェイスも向上した。AGP 4X、HyperTransport、DDR400メモリ。Centrinoがどんなメモリを使うのかは知らないが、多分われわれの方が優れている。 [Q] CentrinoはDDR266メモリでスタートして、一部は将来、DDR333へ移行していく。 [Ditzel氏] それなら、我々は彼らより高速なメモリ、高速なI/Oバスを備え、グラフィックスは同じAGP 4Xベースのものが使えるわけだ。TM8000は、非常に競争力があると思う。しかも、TM8000は8命令/サイクルなのに、彼らはたった4命令しか1サイクルに実行できない。 [Q] しかし、DDR400メモリは消費電力が高い。DDR400がモバイルなどにも浸透すると考えているのか。 [Ditzel氏] 多分、デスクトップなどの分野が中心だと考えている。また、当面はDDR400はまだ早すぎるだろう。DDR333でスタートして、DDR400へと移行すると見ている。 [Q] 次世代メモリDDR2は消費電力が低い。TM8000にはDDR2メモリの方が向いているのではないのか。なぜDDR2をサポートしなかったのか。それとも、DDR2メモリも実際にはサポートしているのか。
[Ditzel氏] DDR2メモリは立ち上げが遅れた。デスクトップPCの主流はDDR400へ向かいつつある。それはDRAMベンダの製品計画がそうなっているからだ。われわれはDRAM業界に従う。もちろん、DDR2が適切な時期になったら、我々もDDR2を使うだろう。しかし、まだ早すぎる。最初にCrusoeにDDRインターフェイスを実装した時は、実際にDDRメモリが使われるまで非常に時間がかかった。それは、最初は高価だから誰も使いたがらないからだ。 ●インターフェイスの拡張はデスクトップやサーバーのため [Q] HyperTransportで接続するサウスブリッジチップは自社で開発するのか、それとも他社の製品を使うのか。 [Ditzel氏] 我々はパートナーを持っている。HyperTransportのコンソーシアムには多くのチップベンダーが名前を連ねており、彼らは様々な製品を作っている。TM8000はHyperTransportを備えるために、どの製品も利用できる。HyperTransportでは、PC向けのサウスブリッジだけでなくPCI-Xインターフェイスの製品もある。サーバーでは、これは重要だ。 [Q] TM8000は従来のTransmetaの市場以上のところ、例えば、デスクトップやサーバーも本気で狙っているように見える。 [Ditzel氏] そうだ。インターフェイスの改良も、性能を引き上げるだけでなく、TM8000の市場を広げることが目的だ。例えば、デスクトップPCでAGP 4Xがチェックマーク(顧客の要求事項)だったら、"シュッ(チェックマークを入れる身振り)"、TM8000ならチェックできる。DDR400メモリがチェックマークなら、"シュッ"、できる。 [Q] デスクトップではIntel CPUは100Wへ向かっている。こうしたIntelの方向性は、TM8000にチャンスをもたらすと思うか。 [D'Souza氏] Intelは間違った方向へ向かっている。性能のために消費電力を増やしても構わないという考え方には同意できない。我々は、逆にどんどん消費電力を減らしながら性能を高める方向へ向かっている。Intelの戦略のために、我々にもチャンスがあると思う。 ●TM8000でターゲット市場を広げるTransmeta [Q] TM8000で狙っている市場の全体像を教えて欲しい。 [Ditzel氏] Transmetaの製品ラインTM5000シリーズは、まず薄型軽量ノートから採用が始まった。そして、これまでに、ピクチャーブックのような携帯機器から、NECの静音デスクトップまで多くの機器を実現した。だが、TM8000ではさらに多くの新カテゴリの製品が生まれてくるだろう。 まず、TM8000は性能がTM5000よりずっと高いため、より大きなノートやデスクトップ、サーバーにも浸透していくだろう。だから、TM8000ではそれに合わせて、AGPやDDR400などの機能拡張をした。サーバーではECCメモリが重要となるため、それも加えた。また、TM8000は小型の携帯機器もターゲットにする。TM8000なら、ハイパフォーマンスを小さなデバイスにももたらすことができる。例えば、Windows XPをハンドヘルドサイズの機器に搭載できるだろう。一方、TM5000シリーズは、今後価格を下げ、STB(セットトップボックス)やSmartDisplay(Mira:ミラ)、シンクライアント、組み込み用途などに広げていく。 このようにTM8000登場後は、当社はより幅広い製品カテゴリをカバーできるようになる。これが我々の新戦略だ。これにはもちろん時間がかかる。しかし、我々はノートPCでいい出発ができた。ノートPCで経験を積むことで、品質や互換性や信頼性を増すことができた。次は、その経験を活かして、市場を広げる時だ。 [Q] とはいえ、TM8000の目前の敵はIntelのCentrino/Pentium MノートPCだ。これにはどう対抗するのか。 [D'Souza氏] Transmetaの提供するもうひとつのキーは柔軟性だ。競争相手は、バンドル戦略(CPUに自社のチップセットや無線LANチップを組み合わせることを推奨する)を取る。しかし、この戦略だと、どのPCも同じ機能になり、PCメーカーは差別化ができない。 [Ditzel氏] どのマシンも同じ機能を持つなら、価格だけが違いとなる。そうしたら、Centrino搭載製品は価格競争となり、誰も利益を出すことができない。それに対して、TM8000ではバンドル戦略は採らないため、どのメーカーも自社の製品を差別化できる。もちろん、TM8000を搭載する製品は、Centrinoを搭載する製品ほど多くはないだろう。しかし、TM8000を使った企業は、差別化ができるし、価格もより高くつけることで、利益を上げられる。 当社はTM8000を、いい価格設定で提供する。多分、競合製品より低い価格になるだろうと思う。 ●将来プロセッサはソフトウェアベースに向かう
[Ditzel氏] ソフトウェア側の準備が整う時期に向けて用意はしている。我々にとっては、CPU自体の64bit化はそれほど難しくはない。というのは、当社の開発チームは、Sun Microsystemsで最初の64bit CPUを設計した経験があるからだ。とはいえ、まだ長いことかかるだろう。 [Q] AMDはコヒーレントプロトコルを持たせたHyperTransportでCPU同士を相互接続することで、メモリ共有型のマルチプロセッサを実現する。TM8000ではマルチプロセッサの構想はないのか。 [Ditzel氏] 多くのプロセッサを搭載した時に、どうやって相互に通信をさせるかが問題となる。そこで、共有メモリ方式かメッセージパス方式のどちらかを取るわけだ。どちらも業界で使われているが、我々はメッセージパス方式の方が共有メモリより低コストになると考えている。共有メモリ方式では限界は2~4プロセッサで、あまり意味がない。メッセージパス方式のマルチプロッサならTM8000でももちろん可能だ。 [Q] CMSでは、頻繁に使うOSのプログラムを先にコンパイルしてディスク上にキャッシュする「Persistent Translation Technology(PTT)」を導入した。 [Ditzel氏] その通り。トランンスレートしたコードをディスクにセーブすることで、さらに高速化した。また、このフィーチャは、現在Hewlett PackardのWebサイトから、同社のTabletPC用のCMSのアップグレードとしてダウンロードできる。以前あなたに話した、CMSのアップグレードをダウンロードすることで、PCを買った後も性能を上げるというフィーチャが、今提供され始めたわけだ。 [Q] Intelも、CPUに組み合わせるランタイムソフトの研究をしている。
[D'Souza氏] この(機能をハードウェアからソフトウェアに移していく)流れは、業界の歴史を考えれば、文字通り必然だと思う。我々は、長期的には、プロセッサというのは、我々がやっているようなソフトウェアベースの設計になっていくというビジョンを持っている。我々は、その先頭を走っている。
□関連記事 (2003年3月11日) [Reported by 後藤 弘茂]
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