11月1日、Microsoftはこれまでベータ版をリリースしてきたWindows Media 9シリーズのツールについて、リリース候補版(RC1)をリリースした。残念ながら、予告どおり今回のリリースも英語版のみ(日本語版OSでの動作は保証外)で日本語版のリリースは正式発表まで待たねばならないが、着々と開発が進められていることが実感できる。このRC1では、これまでのベータ版から性能面での改善、使い勝手の向上が図られているほか、今まで提供されていなかった機能の追加も行なわれた。追加された機能の中でも最も大きなものが、HighM.A.T.への対応だ。 ●HighM.A.T. CDを作ってみると HighM.A.T.は10月18日に松下電器産業とMicrosoftが共同発表した、圧縮データを記録したデジタルメディアへの、効率的なアクセス方法を定めた標準。この発表会で、Windows Media Player 9がHighM.A.T.をサポートすることが表明されていたものの、この時点でリリースされていたベータ版にこの機能はなかった。今回リリースされたRC1では、公約どおりこの機能が追加されたことになる。 画面1は、Windows Media Player 9で音楽ファイルをCD-Rに書き込むところ。記録するオプションとして、音楽ファイル(WMAファイルあるいはMP3ファイル)をRed Bookオーディオに変換して記録する「Audio CD」、音楽ファイルをそのままデータCD(CD-ROM互換)として記録する「Data CD」に加え、「HighM.A.T.」が追加されていることが分かる。 実際にHighM.A.T.を選んで書き込んでみると、音楽ファイル(Tag情報含む)がルートフォルダに書き込まれているのは、データCDと同じ(つまり、ルートフォルダに記録された音楽ファイルを再生可能なプレーヤーなら、HighM.A.T. CDの再生も可能)。楽曲データと別にプレイリストも記録されるが、プレイリストのフォーマットを既存のプレーヤーと互換性のあるM3Uファイルにするか、Windows Media Player 9標準のフォーマット(拡張子wpl)にするかは、プロパティ(画面2)で設定することができる。
HighM.A.T. CDが通常のデータCDと異なるのは、HIGHMATというサブフォルダが書き込まれていることだ。画面3は、このHIGHMATサブフォルダの中身だが、拡張子がXMLのファイルが1つと、拡張子がHMT(おそらくHighM.A.T.の意だろう)のファイルが3つある。HMTファイルはバイナリファイルで、そのフォーマット等に関する情報は公開されていないが、MENU、CONTNTS、TEXTというファイル名が用途を物語っているようだ。また、さらにIMAGES、PLAYLISTの2つのサブフォルダがあるが、IMAGESフォルダは空っぽ、PLAYLISTフォルダにはHMTファイルが3つ作成されていた(テストに作成したCD-Rには音楽データが4曲分あり、曲数とは一致しない)。
今回、各音楽ファイルには、Windows Media Player 9で加わったAdvanced Tag Editor(画面4)を用いて歌詞データ(テキスト)とトラックピクチャ(JPEGファイル)を加えておいたが、やはりこれらはTag情報として扱われ、IMAGESフォルダにトラックピクチャが格納されるということはなかった。まだ、あまり深く使い込んでいるわけではないのだが、今のところWindows Media Player 9を用いてIMAGESサブフォルダに画像を記録し、音楽再生と連動させる方法は見つけていない。 ちなみに、これまでのWindows Media PlayerでもTag情報の表示や編集は可能だったが、Windows Media Player 9では編集機能がAdvanced Tag Editorとして独立、はるかに強力な機能を備えるに至っている。 さて、こうした作成したHighM.A.T.フォーマットのCDだが、当然のことながらWindows Media Player 9で再生可能だ。しかし、もう1つの柱である民生機との連携という点は、HighM.A.T.互換の民生機が現時点で存在しないため、確認のしようがない。来年登場するPanasonicブランドのDVDプレーヤーが第1弾となる予定だから、それまでは分からないことになる(WPC EXPO 2002で聞いたところでは、来年春モデルのDVDプレーヤーから、DVD-RAM互換機能が低価格モデルにも加わるということだったから、HighM.A.T.とDVD-RAM再生の両方がフィーチャーされるのかもしれない)。 ●マルチチャネル再生にはUSB対応アンプが必要 今回のRC1のリリースノートにおいても、Windows Media 9 Professionalのマルチチャネル再生をサポートしたサウンドカードの対応は、これまでのベータ版と変わらない。つまり、リリースノートを信じる限り、民生用のカードとしてはSound Blaster Live! 5.1とSound Blaster Audigyに限られてしまう(プロ用のカードとしてEcho Audio Layla24、Echo Audio Mona、M-Auido Delta等も対応)。 だが、どうやらUSB経由でマルチチャネルサウンド再生をサポートした外付けアンプの中には、Windows Media 9 Professionalのマルチチャネル再生に対応可能なものがあるようだ。少なくとも、ヤマハのSoundSt@tion RP-U200とCTS-20USB(11月発売予定新製品)では、Windows Media 9 Professionalの6チャンネルサウンドの再生が実現できているという。 DirectSoundやWindows Media 9のマルチチャネル出力は、民生用の標準であるドルビーデジタルやDTSと違って、エンコードした状態でS/PDIFから出力することができない。仮にできたとしても、それをデコード可能な外部アンプが存在しないから意味がないし、わざわざS/PDIFで出力するくらいなら、USBやIEEE 1394で出力したいというのがPC業界の考えだろう(S/PDIFでは機能が低すぎる)。逆に、PCの標準であるUSBで出力する限り、現状では「特別な(PC対応の)」アンプが必要になるわけだが、果たして民生用オーディオ機器でUSBが標準的にサポートされる日は来るのだろうか。 □Windows Media 9シリーズのダウンロードページ(英文) (2002年11月8日)
[Text by 元麻布春男]
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