プロカメラマン山田久美夫の
カシオ新型「EXILIM」ファーストインプレッション
~早くも200万画素になったEXILIMの実力は?


 人気のカードサイズモデル「EXILIM」が、早くも200万画素モデルとなって登場した。

 しかも、この薄さながら、CCDはクラス最大級のセルサイズを持つ、1/1.8インチ211万画素タイプを搭載するなど、かなり意欲的なモデルに仕上がっている。さらに、カシオが得意とする被写体別撮影モード「ベストショットモード」を搭載するなど、機能面での充実も図られている。




●200万画素でも変わらぬ薄さ

 EXILIMが今春のCeBITで発表されたとき、誰もが「これで200万画素だったら……」と思ったことだろう。もちろん私自身も、130万画素でもLサイズプリントやPCモニターでは十分だと頭では理解しながらも、「やっぱり、200万画素なら……」と思った一人だ。

 どんなに薄型でも、実売価格で3万円前後となると、130万画素モデルではやはり躊躇してしまうもの。しかも、初代モデルでは1/2.7インチという130万画素としては大きめのサイズのCCDを搭載していた。CCDを載せ代えれば、すぐに200万画素モデルになるのは、ちょっとデジタルカメラに詳しい人なら、十分に予想できただろう。

 その一方、EXILIMの最大の魅力は、わずか12mm前後という“薄さ”と、軽快な撮影感覚にあり、それがスポイルされるなら、別に200万画素モデルにならなくても……という人も多いことだろう。

 そのEXILIMが、今回、200万画素モデルとなって新登場した(もちろん、型番も「EX-S2」「EX-M2」となった)。しかも、ボディーサイズはそのままに、200万画素クラス最大の1/1.8インチという“贅沢”なCCDを搭載しての登場だ!

 さすがに、(ズームではないにしろ)この薄さのままで、1/1.8インチCCDが収まるとは思ってもみなかっただけに、この展開には、正直、驚いてしまった。

 もちろん、初代モデル発表からそれほど時間がかかっていないことを考えると、この展開はメーカー自身、当初から予定していたことであり、レンズ部がやや膨らんだデザインも、このサイズのCCDを搭載することを想定したものだったのかもしれない。

 さて、このCCDは、1画素あたりのサイズも4.4ミクロンピッチとクラス最大であり、実効感度やダイナミックレンジの面でも、より高密度なCCDと比較して有利であり、ノイズレベルもかなり軽減することができるポテンシャルを備えている、実に贅沢なもの。なにしろ、1/1.8インチCCDといえば、すでに海外では、1/1.8インチで500万画素のCCDを搭載したモデルまで発表されていることを考えると、その贅沢さを実感することができるだろう。

 また、このCCDの選択には、やや特殊な事情もある。もともと、EXILIMは電子シャッターをベースにすることで、この薄さを実現している。実際にはスミア軽減のために、遮光用の簡単なメカニカルシャッターも装備しているが、絞り機構を持たないため超高速シャッターが不可欠になることもあって、基本的には電子シャッターでの撮影になる。つまり、本機の構造上、全画素読み出し式のプログレッシブタイプのCCDを搭載する必要があるわけだ。

 そのため、現在多くのモデルが搭載している、ポピュラーなフレーム読み出し式CCDを搭載することができないため、CCDの選択肢がきわめて少ない。そんななかで200万画素化するにあたって、最有力候補としてあがったものが、今回の1/1.8インチ200万画素CCDだった可能性も高い。

 いずれにしても、このサイズで、1/1.8インチの200万画素CCDを搭載したことは、ユーザー側にとって大いに歓迎すべき点であり、多少価格が高めになることを除けば、画質や感度の面で、従来機よりも有利になることは確実だ。

 蛇足ながら、本機がこの薄さで1/1.8インチ200万画素CCDを搭載できたということは、このユニットを搭載することで、将来的には(現実的かどうかは別として)、携帯電話でさえも、1/1.8インチ200万画素CCDの搭載が可能になることを実証したわけだ。

■屋外撮影1


●サイズや基本機能は初代モデルを踏襲

 EXILIMの最大の特徴である本体サイズは、メーカー公称値では初代モデルとまったく同等。幅88mm、高さ55mm、厚さ11.3mmで、MP3対応の「EX-M2」は厚さが12.4mmとなる点も、初代モデルと同様。実際に重ねてみると、レンズ部の曲線的な出っ張り部分の形状まで同等だ。ただ、メーカー値はレンズ部の突起部を除いた値であり、実際には、CCDの大型化とレンズ焦点距離の関係で、初代の130万画素タイプよりも、約2mm程度、レンズ部が前に出っ張っているわけだが、横にならべて比較しなければ分からない程度。もちろん、携帯性をスポイルするようなことはない。

 もちろん、外寸は同じだが、CCDが大型化されたことで、レンズ周りのデザインが変わった(大きくなった)ため、パッとみた感じは、初代よりもやや大きく見えるかもしれない。

 ラインナップは、初代と同じく、MP3再生機能なしのスタンダードモデル「EX-S2」と、MP3対応の「EX-M2」の2モデルが用意される。

 基本機能は初代をほぼそのまま踏襲している。つまり、CCDとそれに伴ってレンズまわりが新設計になっているが、それ以外の基本部分はほとんど初代モデルのままだと思っていいだろう。

 レンズは、単焦点タイプ(35mmカメラ換算で36mmレンズ相当)。ピントは今回も固定式で、最短撮影距離が1mという点も変わりはない。マクロ撮影に対応していないのも初代モデルと同じだ。

 この点に不満を感じていた人にとっては残念だが、このあたりはカメラとしてのベースとなる部分だけに、そう簡単に追加や改良ができるわけでもないので、次世代モデルに期待するしかないだろう。

 追加された機能としては、カシオが従来から他の同社製モデルに搭載している「ベストショット」機能があげられる。これは撮影シーンに応じて、ホワイトバランスや彩度、輪郭強調などを最適化するもの。上級機では数十種のメニューがあるが、本機は代表的なものとして、「人物」「風景」「夜景」「レトロ」「トワイライト」「白黒」の6種類が搭載されている。

 これらは、カメラ内部で設定を変更することで、各シーンに最適な設定になるわけだが、本機はExif Print(Exif 2.2)に対応しているため、これらの被写体別モードに設定した情報は、画像データのヘッダ部分に別途記録される。Exif Print対応プリンタでは、プリント時にもそれに応じた処理がなされるため、印刷の仕上がり具合にも貢献する。積極的に活用したほうがいいだろう。

■屋外撮影2


●初代と同等の軽快感

 撮影感覚は初代EXILIMと同等の、実に軽快なもの。起動時間も約1秒と十分に高速であり、固定焦点式ならではの0.01秒というタイムラグの速さも、そのまま受け継がれている。そのため、200万画素化されても、使用感は何ら変わることはなく、ストレスのない撮影感覚を実現している。

 もちろん、日中の明るいシーンでも十分な視認性を実現している1.6型液晶モニターや、わかりやすい操作感、さらに挿しておくだけで充電とUSB転送ができるクレードルが付属する点も本機の大きな特徴であり、これら初代EXILIMの魅力もそのまま受け継がれている。

 また、初代モデルで個人的に気になっていた点として、撮影直後の自動再生機能がないことがあげられる。

 だが、今回のモデルでは簡易的ながらも、撮影画像を確認することができるようになった。これは、撮影後、そのままシャッターを押し続けることで、1秒弱だけ自動再生されるようになったもの。ささやかな改良点だが、実質的な使い勝手が大きく向上している。また、あらかじめ、撮影レビュー設定を「入」にしておくと、シャッターを押し続けなくても自動再生される。

【お詫びと訂正】初出時に撮影直後の自動再生機能は200万画素モデルのみとありましたが、130万画素モデルもファームウェアのアップデートにより、可能となっております。お詫びして訂正いたします。ご教示いただいた読者の皆様にお礼申し上げます。詳細につきましては、カシオのサポートページをご覧ください。

 このほか、使ってみて感じる点は、画像データが大きくなったため、同じ容量のカードでも撮影枚数がその分、少なくなっていること。当然といえば当然だが、本機のようにメモ的に撮影するモデルでは、残り枚数が意外に気になるもの。特に初代で内蔵メモリや小容量のメモリカードを使っていた人が本機に乗り換える場合には、やや大きめの容量のSDカードの購入を検討した方が安心だろう。


●向上した解像感

 200万画素モデルになって、もっとも期待されるのは、やはり解像感の向上だろう。

 実際に初代の130万画素モデルと比較してみると、画像の解像度は明らかにワンランク向上しており、200万画素化の恩恵をきちんと感じ取ることができる。

 特に絵柄が細かくなる遠景の描写については、一度200万画素の新モデルを使ってしまうと、初代モデルに戻れなくなるほどの魅力を備えている。

 また、CCDの大型化によって、ダイナミックレンジに多少の余裕が生まれたためか、明暗比の高いシーンでは、ハイライト側(明るい側)の描写力が向上しており、ハイライトが飛びにくくなっているようだ。

 さらに、色再現性についても、比較的彩度が抑え気味だった初代モデルに比べ、新型の方が若干、彩度が高く設定されている。特に青空や緑が初代よりも鮮やかになっているのが印象的だ。

 そのため、見た目の印象は新型モデルの方がやや派手目で見栄えのする仕上がりになっている。初代の、やや渋めの色調が好きな人もいるだろうが、今回のモデルの方がより一般に好まれるような色調になった感じだ。

 全体に画質については、ワンランクアップしているものの、通常のスナップや記念写真を、モニター上で縮小表示したり、Lサイズにプリントして楽しむのであれば、初代の130万画素モデルに比べて、驚くほどの差があるわけではないのも事実。

 そのため、現行の130万画素EXILIMを使っている人でも、200万画素機が意外に早く登場したからといって、落胆する必要はないし、実用性という点で考えれば、初代モデルでも十分なケースは多いだろう。

■屋内撮影


●200万画素版は高級EXILIM!?

 今回の200万画素版EXILIMは、初代のサイズと軽快感をそのまま備えながらも、より画質面で有利な1/1.8インチ200万画素CCDを搭載することで、画質面での不満点を解消した、なかなか完成度の高いモデルといえる。

 価格はオープンプライスだが、店頭での想定価格は、スタンダードな「EX-S2」が4万円前後、MP3再生機能付きの「EX-M2」が5万円前後といわれている。つまり、初代130万画素タイプに比べ、実売価格は約1万円も高くなっているわけだ。

 初代モデルの場合、スタンダードなEX-S1は実売価格29,800円程度と、比較的気軽に購入できる価格帯だ。しかも、ライバルと目されるモデルも、カテゴリーは少々違うものの、超小型130万画素機「Cyber-shot U」だけだったので、少々乱暴にいえば「UとEXILIM、どっちが好みか?」という選択肢しかなかったわけだ。

 しかし、これが1万円高くなると、同じ価格帯でのライバル機が、俄然増えてくる。

 なにしろ、スタンダードな「EX-S2」と同じ価格帯(39,800円前後)になると、いまや1/2.7型300万画素CCD搭載の3倍ズーム「オリンパス C-300Z」が買える時代なのだ。もちろん、カテゴリーが全然違うモデルとはいえ、機能や実用性という面で考えると、けっこうな隔たりがある。いずれにしても、今回の200万画素版は、初代の「EX-S1」ほど気軽に買える価格ではないわけだ。

 この価格差については、当然メーカー側も気にかけているだろうし、130万画素版の初代EXILIMも、国内市場では当面併売されるわけだ。そのため、今回の200万画素版は130万画素版の置き換えではなく、EXILIMシリーズの上級モデルという位置づけだと思った方がわかりやすいだろう。

 もちろん、200万画素版EXILIMの登場は素直に喜ぶべきことであり、予算に余裕がある人なら、今回の新型モデルと、予定よりワンランク大容量のSDメモリーカードを一緒に購入することをお勧めする。実際に、200万画素級モデルで、EXILIMほどコンパクトで携帯性がよく、質感の高いモデルは存在しないわけで、ズームやマクロが必要ない人にとって、なかなか魅力的な選択肢といえるだろう。

 一方、コストパフォーマンスにこだわると、EXILIMに200万画素版が加わったからといって、必ずしもこちらを選ぶ必要はない。130万画素でも十分なら、1万円も安い「EX-S1」か、「EX-S2」と同じ価格でMP3や音声付き動画が楽しめる「EX-M1」を選ぶという手もあるわけだ。

 正直なところ、200万画素モデルになり、CCDがやや高価になったとはいえ、せめて初代モデルとの価格差は5,000円程度に収めて欲しかったというのが本音だ。

 もちろんEXILIMは、他のポピュラーなデジタルカメラにはない、抜群の携帯性と軽快さがウリであり、液晶モニターの見やすさやわかりやすい操作性といった、隠れた美点も大きな魅力といえる。その意味で、200万画素版EXILIMにとって真のライバル機はいない。

 そのため、当面のライバルは、同じ外観と機能を備え、1万円も安い130万画素版の初代EXILIMといえそうだ。

実写画像
ベストショット機能
定点撮影

□カシオのホームページ
http://www.casio.co.jp/
□EXILIM製品情報
http://www.exilim.jp/
□関連記事
【8月29日】カシオ、薄型デジカメ「EXILIM」に200万画素モデル
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0829/casio.htm
【7月23日】【山田】「カシオ EXILIM」、「ソニー サイバーショットU」比較レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0723/yamada.htm


■注意■

(2002年9月4日)

[Reported by 山田久美夫]


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