Apollo KT400搭載のGIGABYTE「GA-7VAXP」を試す
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Apollo KT400 |
GIGABYTEからチップセットにVIA TechnologiesのApollo KT400を採用したマザーボード“GA-7VAXP”が発売された。
Apollo KT400は本来DDR400をサポートするチップセットになるはずだったが、直前にその計画が変更され、DDR333サポートチップセットとなったチップセットだ。GA-7VAXPはGIGABYTEが独自でDDR400動作保証をつけて出荷したことで大きな注目を浴びていいる。
特にAthlon XPユーザーであれば、Athlonプラットフォームの事実上のスタンダードといえるApollo KT333の後継だけに要注目の製品と言えるだろう。今回は、このApollo KT400を搭載したGA-7VAXPの魅力に迫っていきたい。
【編集部注】今回のマザーボードはサンプル版のため実際の製品とは一部仕様の異なる場合があります
●DDR400をサポートしないのにKT400なのはなぜ?
今回取り上げたGA-7VAXPに搭載されているチップセットは、VIA TechnologiesのApollo KT400(以下KT400)だ。KT400の最も大きな特徴は、AGP 8Xをサポートしていることと、サウスブリッジが従来のApollo KT333(以下KT333)で採用されていたVT8233に代わり、VT8235へと変更され、V-Link 8Xと呼ばれる533MB/secのノース・サウス間帯域幅を実現し、さらにはUSB 2.0に対応していることだ。「あれ? DDR400への対応はどうした?」という読者も少なくないと思うが、実はDDR400には対応していない。なんだか変な感じだが、7月にサンノゼで開催されたPlatform Conferenceにおいて、やはり来場者から同様の質問に対してVIAは「KT400の“400”は、DDR400を意味していない」(VIA Technologies マーケティングディレクタ アラン・ユエン氏)と説明しており、実際VIAのWebサイトでもDDR400に関する記述はされていない。
以前、元々KT400は、そもそもKT333Aとして計画されていた製品だった。位置づけとしては、KT333にAGP 8XとV-Link 8Xへの対応を追加した製品で、基本的にはKT333の改良版というものだった。だが、その状況が大きく変わってきたのは、今年に入ってからだ。SiSがSiS645でいち早くDDR333を導入したこと(そして実際にはVIAがIntelからライセンスを入手するのを失敗したこと)で成功を収め、チャネル市場においてVIAから市場を奪っていたということがあり、VIAのチップセット市場における“テクノロジーリーダー”というポジションを守るため、最新メモリ技術をいち早くチップセットに投入するという方針に変更された。そこで、KT333Aは、KT400に変更されDDR400対応版へと位置づけが変更されたのだ。
だが、実際にはDDR400自体がまだ立ち上がっている状況とは言えないまま、KT400(そして以前このコラムでも取り上げたP4X400のリリースを迎えてしまい、バリデーション(動作検証)などが十分行なえない状況でリリースせざるを得ない状況になってしまった。このため、VIAではP4X400とKT400のDDR400サポート機能を削らざるをえなくなってしまったというわけだ。
【編集部注】GIGABYTEの製品ページではV-Link 8Xへの対応に関して明記されていないが、国内販売元である株式会社バーテックスリンクによってV-Link 8Xへの対応が確認されている
●GIGABYTEが独自にDDR400をサポートするなど、機能満載のGA-7VAXP
さて、そうしたKT400を搭載したGA-7VAXPだが、実はGIGABYTE独自でDDR400サポートを行なっている。実際、日本GIGABYTEのホームページには、GA-7VAXPで利用可能なDDR400のメモリモジュール(PC3200)のリストが掲載されているし、付属のマニュアルにもPC3200のサポートリストというのが掲載されている。今回筆者はマニュアルのリストに掲載されていたサムスン電子の「KOREA 0226 PC3200U-30440-A1」のPC3200モジュールを2枚さして利用してみたが、Windowsのインストールが完了し、ベンチマークも一通り走らすことが可能だった(パフォーマンスに関しては後述)。
また、GA-7VAXPでは、現時点のKT400は標準でサポートされていないシステムバス333MHzの機能がサポートされている。GA-7VAXPはマザーボード上のDIPスイッチでシステムバスの設定を行なうが、100MHz(DDRで200MHz)、133MHz(DDRで266MHz)という現行のAthlon XP用の設定以外に、166MHz(DDRで333MHz)という設定が用意されており、実際に設定することも可能だ。もちろん、実際に動作するかは保証の限りではないが、将来システムバス333MHzのAthlon XPがリリースされれば、設定することも可能だろう(なお、333MHz設定時にはメモリも333MHzに設定されるとマニュアルに記述されている)。
このほかにも、IEEE 1394コントローラやRAIDコントローラがオンボードで搭載されており、サウスブリッジのVT8235に内蔵されているUSB 2.0コントローラと併せて、実に機能が満載だ。また、S/PDIF入出力、5.1チャネル出力の標準サポートの機能も備えている。
実際、DDR400が使えなかったとしても、AGP 8X、USB 2.0、IEEE 1394、RAIDコントローラ、S/PDIF入出力、5.1チャネル出力といった最新の機能を一通り搭載しており、そうしたマザーボードとして評価してGA-7VAXPを買うという選択肢もありだろう。
●DDR400時には改善の余地ありだが、DDR333では高いパフォーマンスを発揮
それでは、実際のベンチマークを利用して、KT400の持つパフォーマンスに迫っていこう。利用したベンチマークは、前回のPentium 4 2.80GHzのレビューで利用したSYSmark2002、3DMark2001 SE、Quake III Arena、Viewperf、Comanche 4、TMPGEnc、WebMark2001から、ViewperfとWebMark2001を省略し、メモリの帯域幅を計測するStream for DOS(StreamD)を追加した。比較対象として用意したのは、KT333とnForce 420Dで、nForce 420Dは2枚のメモリをバンク1とバンク3に挿して128bit動作で利用している。環境は以下の通りで、結果はグラフ1~グラフ6の通りだ。
【テスト環境】チップセット | Apollo KT400(DDR400) | Apollo KT400(DDR333) | Apollo KT333 | nForce 420D |
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CPU | Athlon XP 2000+ | |||
マザーボード | GIGA-BYTE GA-7VAXP | GIGA-BYTE GA-7VAXP | GIGABYTE GA-7VRX | MSI K7N420D |
BIOSバージョン | F1 | F1 | F6 | v2.6 |
チップセットドライバ | VIA 4in1 V4.42 | VIA 4in1 V4.42 | VIA 4in1 V4.42 | NVIDIA Unified Driver V1.05 |
メモリ | DDR400 | DDR333 | DDR333 | DDR266 |
メモリモジュール | PC3200(3-4-4) | PC2700(2.5-3-3) | PC2700(2-3-3) | PC2100(2-3-3) |
容量 | 512MB | |||
ビデオチップ | NVIDIA GeForce3 | |||
ビデオメモリ | 64MB DDR SDRAM | |||
ビデオドライバ | NVIDIA Detonator XP V30.82 | |||
標準解像度 | 1,024x768ドット/32bitカラー/85Hz | |||
サウンド | YMF-754R | |||
Ethernet | Intel PRO/1000 MT Desktop Adapter | |||
ハードディスク | IBM IC35L040AVVN07-0(40GB) | |||
フォーマット | NTFS | |||
OS | Windows XP Professional |
【グラフ1:StreamD】 | 【グラフ2:SYSmark2002】 |
【グラフ3:3DMark2001 Second Edition(Build330)】 | 【グラフ4:Quake III Arena】 |
【グラフ5:Comanche 4】 | 【グラフ6:TMPGEnc Plus 2.5(17,989フレーム)】 |
グラフ1はメモリの帯域幅を計測するStreamDの結果だが、みてわかるようにKT400+DDR400はKT400+DDR333やKT333+DDR333などに比べて低い結果しかでていないことがわかる。DDR400を利用した場合には、メモリの帯域幅は3.2GB/secという帯域幅になっており、DDR333の2.7GB/secを上回っているはずなのだが、そのDDR333を下回る結果しかでないということは、動作しているようには見えるが実際には本来の性能を発揮していない状態でしか動いていないことと言えるだろう。他のベンチマーク結果(グラフ2~6)も同様で、KT400+DDR400は、いずれも低い性能しか発揮できていない。そうした意味では、パフォーマンスの観点からはかなりチューニングの余地があるということができるだろう。
なお、KT400+DDR333は、KT333+DDR333にやや劣っているが、これはGA-7VAXPのBIOSセットアップにCASレイテンシの設定などメモリ周りの設定項目が全くないためだ。KT333のGA-7VRXにはCASレイテンシの設定項目が用意されており、CASレイテンシを“2”に設定できているが、KT400の方はその項目が用意されておらず、どの設定になっているかわからなかった。今回の結果のようにやや低いパフォーマンスをみると、CASレイテンシが2.5に設定されているのかもしれないと推測される。
●DDR400はしばらく様子見だがKT333の新バージョンとしての価値はあり
このように、DDR333で利用した場合には従来のKT333とあまり変わらないパフォーマンスを実現しており、ひとまずDDR333をサポートしたAthlon XP用マザーボードとしては十分合格点を与えることができるだろう。正直なところ、DDR400に関しては、現時点ではDDR333にも劣るパフォーマンスになっているなど、実用的ではないと思う。
しかし、今回筆者が購入したGA-7VAXPのBIOSはF1とかなり初期のバージョンで、今後BIOSアップデートなどが公開されれば、解消される可能性もある。そうした意味では、DDR400に関しては、今後に期待ということにしたい。
以上のように、KT400を搭載したGA-7VAXPは、DDR400に関しては実用というわけにはいかないが、DDR333のマザーボードとしては妥当なパフォーマンスを発揮しており、USB 2.0コントローラを内蔵した新サウスブリッジ、今後続々登場する対応グラフィックスチップで利用可能なAGP 8X、IEEE 1394コントローラ、RAIDコントローラ、S/PDIFなどのリッチな機能を持っていることは評価に値する。価格も1万円台の半ばと比較的安価で、KT333を購入しようと考えていたAthlon XPユーザーであれば、より高機能な“KT333A”搭載マザーボードと考えて購入するとよいだろう。
□バックナンバー(2002年9月2日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]