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10月にAthlon XP 333MHz FSBとIntelのDDR333チップセットが登場


●10月の合い言葉は“333”

 10月のキーワードは“333”だ。AMDとIntelの両プラットフォームで、333MHzがポイントとなるからだ。

 AMDはAthlon XPの333MHz FSB(フロントサイドバス)版を、年末商戦時期に間に合うスケジュールでリリースする予定らしい。一方のIntelは、DDR333に対応したチップセット群のリリースを10月第2週に予定している。さらに、同じタイミングでIntelは、PC1066のサポートも正式にスタートする。しかし、デュアルDDRサポートのIntel E7205(Granite Bay)のリリースはややずれ込む。

●ようやくAthlon XPがFSB333MHzへ

 AMDは10月頃までに333MHz FSBをサポートするAthlon XP 2700+を投入すると見られている。おそらく、CPU実クロックは2.167GHz(166MHz×13)程度だと推測される。また、それ以降のAthlon XPは333MHzへと移行して行くようだ。FSBの333MHz化により、ようやくAthlon XPのFSB帯域は、DDR333サポートチップセット側のメモリ帯域とつりあうようになった。これまでは、DDR333メモリであっても、そのメモリ帯域は論理的にはAthlon XPが使い切ることができなかった。

 AMDの333MHz FSBサポートについては、予兆はあった。例えば、NVIDIAは7月15日にサンノゼで開催した新チップセット「nForce 2」ファミリの発表会で、Athlon XPの333MHz版に対応すると発表している。この場ではAMDも、333MHz FSBに積極的に取り組む姿勢を明らかにした。nForce2発表会にはAMDのHector Ruiz社長兼CEO自身が出席「333MHzバス製品のスケジュールは発表していない。しかし、現在ラボで評価を行なっており、前向きに取り組んでいる」と発言した。

 また、SiS(Silicon Integrated Systems)も、顧客向けのチップセットロードマップを改訂。新たにAthlon XP向けに、266MHz以上のFSBに対応する「SiS 746FX」チップセットを第4四半期からサンプル出荷すると通知している。おそらく、VIA Technologiesも同様の動きに出ると見られる。

 実際には、チップセットベンダー側は、すでに333MHz FSBに対応する準備を終えている。例えば、VIAのChe-Wei Lin(シー・ウェイ・リン)シニアディレクタ(Senior Director of Product Marketing)は「333MHz FSBサポートに必要なチップセット側の設計は、すでにKT333の段階で、終わっている。AMDがチップさえ出せばテストができる」と説明する。そもそも、チップセットベンダー側はDDR333サポートの時点で、みな333MHz FSBを求めたが、AMDがイエスと言わなかったというのが実状だ。

 AMDのRichard Heye(リチャード・ハイ)副社長(Platform Engineering & Infrastructure)はその理由について「Hammerへのフォーカスを弱めるからだ。FSBを改良しようとすると、まず社内のエンジニアリングリソースが必要となる。また、AMDだけでなく、インフラ(マザーボード)にも変更が必要となる。その分、Hammerへ向かう勢いを削ぐことになる」と説明していた。

 とすると、Athlon XP 333MHz FSBの登場は、AMDがもう一度振り子をややAthlon XP寄りに振り戻したことを意味することになる。しかし、これは現実解としては正解だろう。AMDプラットフォームは今春以降は新味のある要素がなかったため、チップセットもマザーボードも低調になっていた。そして、AMDはまだしばらくはAthlon XPで食べていかなければならない。

●Intel 845GE/PEは10月第2週にスタート

 Intelが10月第2週に正式発表するのはDDR333サポートのIntel 845GEとIntel 845PE、Intel 850EでのPC1066サポート、そして内蔵グラフィックスオンリーの廉価版SDRAM/DDR266メモリチップセットIntel 845GVだ。4チップセットが出てくる。

 グラフィックス内蔵の845GEはDDR333サポートに加えて、性能も845Gから引き上げられる。グラフィックスコアの周波数が200MHzから266MHzに上がり、DDR333でメモリ帯域も上がるためだ。845PEは機能的には845PのDDR333版だが、ピン配置が845Eとは異なり、845Gとピン互換になっている。実体は845GEのグラフィックスコアを殺したダイ(半導体本体)のようだ。845GE/PEはどちらもFSB(フロントサイドバス)で400MHzと533MHzの両方をサポートする。ただし、DDR333は533MHz FSBとの組み合わせでのみのサポートとなる。

 PC1066サポートの850Eは、実質的に従来の850Eと何も変わっていない。同じステップの石だ。また、サポートできるPC1066はやはりPC1066-32だけで、DRAMベンダーが製造しやすいPC1066-35はサポートされない。単にIntelがDRAMベンダー側とPC1066のスペックのすりあわせを終えたというだけの話だ。

●復活の兆しのRDRAMだが

 Intelの今回のプランは、DDR333とPC1066をセットでもたらすように見える。つまり、DDRプラットフォームとRDRAMプラットフォームの性能向上のタイミングを合わせたように見える。だが、Intelのこの2つのメモリサポートについての姿勢と戦略は大きく異なる。

 IntelがDDR333を積極的に推進するのは、PCベンダー側からの要請というより、マザーボードベンダーやチャネル市場のデマンドが強い。ここでは、すでにDDR333はチェックボックス(必須項目)になりつつある。Intelは、ここでチップセットベンダーを抑えるためにはDDR333サポートが必要と判断したようだ。Intelが、DDR400サポートを検討しているのも、まったく同じ理由だろう。つまり、チップセットでも市場を取るという戦略に転じたIntelが、積極的に推進している。

 一方、PC1066については、Intelの“やる気”は不鮮明だ。Intelは、すでにRDRAMのポジションは中期的にはデュアルチャネルDDRに引き継がせる決定をしており、850Eでのデバッグ(PC1066-35とFSB533MHz時PC800-45のサポート)も拒むなど、開発リソースもできるだけかけないようにしているからだ。あくまでも、RDRAMを主軸に戻すつもりはなく、デュアルチャネルDDRが成熟するまでの一時的な措置に過ぎないようだ。

 ところが、PC1066へのデマンドはというと意外と強い。IntelのPC1066が明確になったことで、RDRAM採用のPCベンダーも、少なくとも来年春モデルまではRDRAMを続ける見込みだ。ユーザー側でも、ハイエンドモデルとしての期待感は強い。さらに、SiSもRDRAMサポートのチップセットR658を発表、来年頭にはPC1333サポートのR658DX(旧659)も計画しており、プラットフォームの低価格化と高速化も期待できる。

 一方、RDRAMの対抗馬であるデュアルチャネルDDRに関しては、Intelはややトーンダウンしている。E7205(Granite Bay)は、現在まだA2サンプルで、製品発表はB0サンプル後の、10月最終週から11月中のどこかの時点になる予定だという。また、Intelも本来ワークステーション用チップセットであるGranite Bayに、積極的な価格設定をしてデスクトップに浸透させるというアプローチは取らないようだ。となると、デュアルチャネルDDRが本格的にPC市場で立ち上がるのは、やはり来年のチップセット「Springdale(スプリングデール)」待ちになるのかもしれない。

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【7月26日】【海外】Intelが新チップセット845GVとPC1066サポートを正式にOEMに通知
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0726/kaigai01.htm

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(2002年8月21日)

[Reported by 後藤 弘茂]

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