プロカメラマン山田久美夫の
「カシオ EXILIM」、「ソニー サイバーショットU」比較レポート
~大人気超小型デジタルカメラ対決


●魅力的な2台の小さなカメラ

 さほど高画素でも多機能でなくてもいいから、デジタルカメラをいつでも気軽に持ち歩き、軽快に使いたい。そんな要望に応えられる、新カテゴリーともいえる超小型デジタルカメラが、カシオとソニーから相次いで登場した。

 「カシオ EXILIM」は、今年3月のCeBITで公開された、名刺サイズで薄さ11mmを実現したモデル。MP3対応モデルである「EX-M1」と、スタンダードな「EX-S1」があり、6月下旬から発売されている。大手販売店では現在も品薄状態で入手が困難な状況にある、なかなかの人気モデルだ。

 一方、「ソニー サイバーショットU」(dsc-U10)は、さる6月27日に、Cyber-shotシリーズの新ラインナップとして、満を持して登場した超小型モデル。掌にスッポリ収まってしまうほどのコンパクトさで、しかも、最短10cmのマクロ撮影が可能なオートフォーカス機能を装備するなど、なかなか本格的なモデルだ。20日に発売されたばかりだが、一部量販店ではすでに品切れとなっている。

 この両機の共通点は、これまでの液晶付きデジタルカメラの常識から考えると、桁違いにコンパクトな点。しかも、1/2.7型(インチ)という比較的大きなサイズの130万画素CCDを採用しており、レンズもズームではなく単焦点レンズを搭載するなど、比較的割り切った仕様にすることで、このコンパクトさを実現している。

 価格的にはEXILIMのスタンダードタイプである「EX-S1」で実販29,800円前後、MP3対応の「EX-M1」で39,800円前後。「サイバーショットU」は、店頭での実販価格が24,800円前後となった。そのため、「EX-S1」と「U」は5,000円違いと、比較的近い価格帯になる。

 高画素で多機能なモデルが市場にあふれている現在、これらのモデルは、機能的には比較的シンプルな製品だ。だが、軽量かつコンパクトで、しかもボディが高品位なこともあって、いつでも気軽に持ち歩く“常用機”として魅力的なもの。また、モニター上での利用やLサイズ程度のプリントであれば、十分な実力であり、単にコンパクトなだけでなく、かなり実用的なモデルといえる。

 こうなると、すでに本格的なデジタルカメラを持っている人でも、「一台欲しいなあ~」と思ってしまうのが人情(?)。そこで今回は、この両機種を実用的な場面で使い、その使い勝手や画質などの違いをレポートしよう。

●どんなカメラ?

 この両モデル、カテゴリー的には同じようなものに感じられるかもしれないが、その成り立ちは、正反対といってもいいほど、大きく異なっている。

 まず、「カシオ EXILIM」は、液晶付きデジタルカメラの元祖といえる名機「QV-10」の再来のような、いかにもカシオらしい独創的なモデルだ。

 大きさはまさしく名刺サイズそのもの。厚さは、MP3なしのS1で11.3mm、MP3対応のM1でもわずか12.4mmとかなり薄い。これなら、ごく普通の名刺入れにも収納できるほど。

 しかも、このサイズのボディながら、比較的大きな1.6型TFT液晶モニターや光学ファインダーをきちんと装備。さらに、露出補正やホワイトバランスもマニュアル設定できるなど、上級機に匹敵する基本機能を備えている。

CEATECで展示された試作機
 一方、「サイバーショットU」は、これまでのCyber-shot系モデルにはない、斬新なもの。ソニーでは本機を「常時携帯し、日常を画像でメモする“ビジュアル ブックマーク”スタイルを提案」したものと位置づけている。

 もちろん、液晶モニター搭載機では世界最小級。しかも、このサイズでも記録媒体は、DUOではなく、フルサイズのメモリースティックを採用している。

 ソニーは数年前に、メモリースティックDUO採用の超小型デジタルカメラをCEATECで公開し話題となったことがあるが、本機はある意味で、そのモデルを正常進化させたものといえるだろう。

 機能はかなりシンプルなもの。レンズはオートフォーカス式でマクロ撮影にも対応しているが、液晶モニターは1.0型と小さな反射式を採用しており、光学ファインダーはない。また、基本的にフルオート指向のもので、露出補正やホワイトバランスを始めとした詳細設定機能も、その大半が省かれているなど、結構割り切った仕様のモデルといえる。

●どっちがより小さい?

EXILIM

 いずれのモデルも、通常のデジタルカメラに比べ、かなりコンパクトだ。

 まず、容積という点で見ると、Uは約96.2cc、EXILIMは約54.7cc(いずれもカタログ数値から算出)と、Uのほうが約2倍近く大きい。

 だが、実際に現物を見ると、Uのほうが圧倒的に小さく見える。これは、パッと見た目では、薄さよりも、ボディの低さのほうがより強く感じられるためだ。

 もちろん、EXILIMも単体で見るとかなりコンパクトで、「DiMAGE X」や「FinePix F401」に比べると、その小ささに感心するほど。とはいえ、Uの小ささは、そうとうなもので、もはや“別格”という印象だ。

 ただ、この印象は、手にしてみると、若干違ってくる。手にすると、やはりEXILIMの薄さはかなりのインパクトがあり、ちょっと感動的なものがある。この薄さなら、名刺入れに名刺をため込んでしまう人なら、そのスペースを使って、このカメラを持ち歩くことさえできるほどだ。

 質感は、いずれもなかなか良好。なかでも、ステンレス外装を採用したEXILIMは、どことなく“高級コンパクト機”のような雰囲気もあり、その造りの良さには感心してしまう。これは大人が常時持ち歩き、フォーマルな場所でも使うことを考えると、とても重要なポイントといえる。

 一方、サイバーショットU の質感もなかなか良好で、実販25,000円前後のモデルとは思えないほど。それほど高級感があるわけではないが、チープシックなよさがある感じだ。また、メインスイッチ兼用のレンズバリアの動きが滑らかな点も、この高級感の演出に一役買っている。

 そして、この手のモデルの場合、いつでも持ち歩くものであるだけに、一種のアクセサリー的な側面も持っている。そのため、やはり“格好良さ”というのは、大きなポイントになるだろう。その点では、どちらの機種も十分にカッコイイ。ただ、EXILIMの格好良さは、どちらかというと男性的な力強さを感じさせるものがあり、サイバーショットU は女性的でしなやかな印象がある。

●異なるコンパクト化の方向性

サイバーショットU

 さて、両機はいずれもとてもコンパクトなモデルだが、その方向性はそれぞれ異なっている。まず、EXILIMは、常時気軽に持ち歩けるサイズの、一つの目安として、名刺サイズを選択。そのなかで極限まで“薄さ”を追求したモデルといえる。

 だが、その薄さを実現する時点で、カシオのデジタルカメラのキーとなる液晶モニターのサイズや、カメラとしての操作性については、極力妥協せずに開発されている点が大きな特徴といえる。もちろん、この薄さを実現するために、CCDとレンズ光学系を一体としユニット化。バッテリも専用形状のものを採用。内部のLSIを新規開発するといった、専用パーツの開発を中心とした努力により、この薄さを成立させている。

 一方、Uは、薄さよりもコンパクトさを重視したモデルといえる。

 しかも、このサイズを実現するにあたって、バッテリは汎用の単四型ニッケル水素電池を採用。さらに、メモリカードも、現行のメモリースティックをあえて採用している。これら汎用の現行パーツを利用しても、このサイズを実現している点には感心するし、当然のことながら、製造コストを抑えることもできるわけだ。さらに、将来的にはバッテリやメモリカードを変更することで、さらなるコンパクト化(おもに薄型化)ができる可能性も残している。

 しかし、このボディサイズを実現するために、光学ファインダーを省き、液晶モニターも1.0型と小さく、操作部も簡略化するといった、明確な割り切りが感じられる。

●どっちが携帯に便利?

 携帯性は、どちらも良好で、優劣の付けようがない。もちろん、スタイリングがかなり異なるので、自ずと持ち歩き方も多少、異なってくる。

 まず、EXILIMは、その薄さが大きな魅力であり、胸ポケットはもちろん、ズボンのポケットにさえ、楽に収納できる。また、薄型なので、バッグのポケットに収納してもかさばらない点もいい。もっとも、あまりに薄すぎて、持っていることを忘れてしまうことさえあった。

 ただ、少々残念なのは、付属しているストラップがリストストラップ(手首に引っかけるタイプ)のため、そのまま首から提げて持ち歩きにくい。できれば、ネックストラップも同梱してくれると、より持ち歩きやすくなりそうだ。

 実際に持ち歩いてみて気になるのが、レンズバリアがない点。そのため、ポケットやバッグから取り出すときに、レンズに触ってしまい、レンズが汚れることがある。本機の場合、レンズが小さいため、指紋が付くだけで、コントラストが低下し、ぼんやりとした写りになることもあるので、注意が必要だ。

 一方、サイバーショットUは、ほとんど携帯電話感覚。デザインもそうだが、標準でボディカラーにあわせた白い丸紐タイプのネックストラップ(首から提げるタイプ)が付属している点もいい。このあたりのセンスの良さは、いかにもソニーらしいところ。もちろん、胸ポケットに入れて終日持ち歩いても、なんら苦にならない。

 また、Uは、スライド式のレンズバリアを装備しており、これがメインスイッチになっている。そのため、EXILIMに比べると、レンズを汚してしまう心配は少ない。だが、ちょっと指が触れたくらいでも、レンズカバーが簡単に開いてしまうので、ポケットやケースから出し入れするときに、不用意にメインスイッチが入ってしまうケースが意外なほど多かった。もちろん、一定時間でオートパワーオフが働くので、思ったほど電池は消耗しないが、それでもやっぱり、若干の不安感が残る。

 また、実際に持ち歩いて、意外に気になるのが、バッテリとメモリだ。

 バッテリは、EXILIMが専用形状の充電式、Uは単4型ニッケル水素電池2本となっている。充電方法は異なり、EXILIMは付属のクレードルに挿しておくだけでOK。しかも、わずか2時間でフル充電できるので、充電し忘れても、すぐに挿しておけば、意外に短時間に実用レベルまで充電できる。

 Uは、単4型だが本体充電ができず、電池を取り外し、付属の充電器(2本用)を利用することになる。しかも、この充電器はフル充電に13時間(!)もかかるという、のんびりとしたコスト優先タイプ。さらに、単4形状でもアルカリ電池での利用は推奨されていない(多少は撮れるが )。そのため、充電しておいて、電池を入れ忘れて出かけてしまうという危険性もある(私も一回、やってしまった)。

 バッテリの持ちは、いずれも十分なもの。なかでも、EXILIMはかなりバッテリの持ちがよく、ストロボを多用しなければ、ほぼ250枚前後の撮影ができる。

 Uも悪くはなく、ストロボをあまり使わなければ、150枚くらいの撮影を楽にこなすこともできる。だが、ストロボを多用すると、意外なほど速くバッテリが消耗する傾向があるので、屋内での撮影が多い人は予備電池を用意していた方がいいだろう。

 メモリは、EXILIMが12MBの内蔵メモリとSDメモリーカード(MMCも可)。Uはもちろん、標準サイズのメモリースティックで、アダプター併用でDUOも利用できる。なお、購入時、EXILIMはメモリーカードが付属していないが、Uは8MBのメモリースティックが付属する。いずれも、付属のUSBケーブルでPCへの転送が可能で、付属ソフトによるデータの自動転送もサポートしている。

 また、EXILIMは内蔵メモリを利用して、撮った写真をいつでもアルバム感覚で持ち歩けるように、「お気に入り」という機能があり、大切な写真を液晶表示用にリサイズし、内蔵メモリに残しておくことができる。拡大表示はできないが、メモリカードを交換しても、その画像が残っているので、意外に便利だ。

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EXILIM EX-M1

露出は的確で、色調も自然。さすがに絵柄が細かいので、細部を見ると、130万画素の限界が感じられるが、普通のスナップなら、これでも十分な画質といえる。
サイバーショットU dsc-U10

同じ位置から撮影しても、Uのほうがレンズがややワイド気味なので、一回り広い範囲が写る。旅先や屋内撮影ではなかなか便利だ。ただ、液晶が小さく、見にくいため、正確なフレーミングをするのは難しい。

●どっちが使いやすい?

明るく大きなEXILIMの液晶は魅力だ
 さて、実際の使い勝手だが、正直なところ、どちらかが圧倒的に勝るということはなく、慣れでカバーできるレベルの違いといえる。

 起動時間はいずれも約1秒(標準メモリ時)と高速なもの。しかし、軽快感という意味では、レンズバリアがメインスイッチを兼ねているサイバーショットUのほうが、撮影動作として、より自然で心地いい。

 また、この手のスナップ用カメラで重要なポイントとなる、シャッタータイムラグは、両機ともにかなり短い。

 まず、EXILIMは開発時からタイムラグを短くする工夫がなされており、メーカー公称では0.01秒(1/100秒)となっている。実際に使ってみても、タイムラグの短さは十分に体感できる。特に本機は、固定焦点式のため、ピント合わせという動作がないので、撮影感覚はレンズ付きフィルムのような感じであり、まさにシャッターを押した瞬間が写るといっても過言ではない。

 そのため、タイムラグの大きな普通のデジタルカメラに慣れていると、写そうと思った瞬間よりも早くシャッターが切れてしまうほどだ。

 ただ、本機の仕様上、撮影直後の自動再生機能がないため、どのように写ったのかを知るためには、一度再生モードに切り替える必要がある。記録から再生への切り替えはほとんど瞬時にできるが、それでもやはり面倒なことに変わりはない。

 サイバーショットU は、タイムラグの短さをカタログなどで謳っていないが、これが想像以上に短く、なかなか軽快。実際に使ってみると、シャッター半押しでAFロックした状態から押し切ったときのタイムラグが、気になることはほとんどない。もちろん、AF機なので、AFロックをせずに、一気にシャッターを押し切ると、その時点からAF動作が始まるので、それなりの時間がかかるのは、致し方ないところだろう。

 また、使ってみて、両機の違いを一番痛感するのが、液晶モニターだ。まず、EXILIMは1.6型のTFT液晶を搭載しており、明るくクリアで色調もきれい。さらに、表示レスポンスや斜め方向からの視認性も実に良好なもの。このあたりは、“液晶デジタルカメラ”の元祖であるカシオの意地を感じさせる。もちろん、日中炎天下での視認性もよく、光学ファインダーの必要性をほとんど感じることはないほどの仕上がりだ。

 一方、サイバーショットU の液晶モニターは、ボディサイズの関係で、1.0型という小さなもの。しかも、日中の視認性と消費電力を考慮し、フロントライト式の反射型液晶を採用している。このサイズのボディでは、致し方ないとはいえ、さすがにこれだけ小さな液晶モニターでは、実質的に、大まかな構図を決める程度のことしかできない。また、表示品質もバックライト式液晶モニターに比べると、視認性、再現性ともにワンランク劣る印象があり、カメラで撮影画像を再生しても、なにが写っているかを確認できる程度で、明るさや色調を把握することなどできない。もちろん、拡大表示機能もないため、ピントの確認もできないのが不満だ。

 つまり、少々乱暴にいってしまうと、本機の液晶モニターについては、“再生ができる光学ファインダー”だと思うとわかりやすい(あきらめがつく?)かもしれない。

●大きく異なる操作性

 操作性は、両機で全く異なっている。

 EXILIMは、ボディが薄いものの、操作性という点では、これまでのカシオのデジタルカメラの延長上にあり、ごく普通の感覚で操作できる。また、液晶モニターが大きくて、視認性がいいため、操作性はなかなか良好だ。

 さらに、撮影モードの場合、背面のジョイスティック部を左右に動かすことで、簡単に機能を切り替えることができる。これはカスタム設定で、「撮影モード」「ホワイトバランス」「露出補正」「ストロボモード」の4種を選択することができ、自分の撮影スタイルで、もっとも使用頻度が高いものを割り当てることができる点は実に便利。

 その意味で本機は、デジタルカメラを使い慣れたユーザーのサブカメラ的な使い方にも十分に耐える操作性を備えている印象だ。 

 一方、サイバーショットUの操作性は、少ない操作部に機能を盛り込んだこともあって、ちょっと慣れが必要な部分がある。まず、ストロボモードとピクチャーセレクト機能は、液晶下の中央にあるレバーで設定する。ストロボモードの場合にはレバーを上方に、ピクチャーセレクトの場合には、レバーを下方に一回操作するたびに巡回してモードが変わってゆく。確かによく考えられているが、実際に使ってみると、操作ミスをすることが多い。

 さらに、詳細設定は、液晶モニターが小さいなかに、より多くの設定メニューを盛り込むため、2階層にわたっている。ただ、その階層ごとの切り替え操作が、やや分かりにくい点は少々残念だ。

 もっとも、サイバーショットU は細かな設定をするよりも、カメラ任せのフルオートで撮影することが前提になっているモデルなので、このように、ある程度割り切った操作性でも、実際にはさほど困ることはない。

●どっちがよく写る?

 両機ともに、撮像素子は1/2.7型の130万画素クラスのCCDを搭載している。いまや、130万画素クラスは1/3.2~1/3.6型という超小型CCDが主流だが、今回のモデルでは、あえて、余裕のある1/2.7型を採用しているわけだ。これは、画質面から見ると、実効感度の高さや階調の豊かさといった点でのメリットがある。それと同時に、将来的に、200万画素や300万画素といった高画素CCDを搭載する場合でも、同じ光学系を利用できるので、乱暴にいえば、CCDを載せ替えるだけで高画素化できるというメリットもあるわけだ。

 レンズは前記の通り、いずれも単焦点タイプを採用しているが、ピントはEXILIMが固定式で、Uはオートフォーカス式というという点が大きな違いといえる。

 画質は、いずれもなかなか良好。いまやトイカメラ系を除けば、ローエンドクラスになってしまった130万画素クラスだが、両機の写りを見ると、まだまだ捨てたものではなく、十分に実用になることを体感できる。

 これらのモデルは、いわゆるスナップ用モデルとして使われるのがメイン。そのため、PCモニター上での表示や、想定されるプリントサイズも、LサイズからA6サイズ(はがきサイズ)程度をカバーできれば、実用レベルといえる。その点では、いずれのモデルも十分な画質を実現しているだろう。

 詳しくは実写比較をご参照いただきたいが、両機の絵づくりは、正反対といっていいほど、異なった方向性を備えている。シーンによっては、同時に撮影したとは思えないほど、印象の違った写りになっている。

 まず、EXILIMは比較的見た目に近いもので、輪郭強調処理も控えめ。そのため、見栄えの点ではサイバーショットU に一歩譲るが、とても立体感のある自然な写りが魅力だ。

 それに対して、サイバーショットUは、見栄えの良さを重視した絵づくりになっており、色調も明快で、輪郭強調処理もかなり強めの設定になっている。

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EXILIM EX-M1

小雨に煙る、山間の静かな渓流の雰囲気がよく再現されている。現場の天候や雰囲気を知っていれば、こんな感じに写るのがごく自然だ。
サイバーショットU dsc-U10

Cyber-shot系はグリーン系を極端に明るくするのが絵づくりの特徴。そのため、小雨にけむる竹藪が、驚くほど鮮やかに写った。この写真だけを見ると、違和感はないかもしれないが、EXILIMと比べると、その違いの大きさにビックリするだろう。

 また、オートホワイトバランスの設定も、EXILIMはその場の雰囲気が感じられるような、比較的控えめな補正になるケースが多い。それに対して、サイバーショットUは、まさにビデオカメラ的な完全補正タイプだ。もちろん本機は、オートホワイトバランス専用機なので、ユーザーがホワイトバランスの設定を変えることはできない。

 解像感は、サイバーショットU のほうが勝る。これはAFによる正確なピント合わせと強めの輪郭強調処理の相乗効果であり、はがきサイズくらいにプリントするには十分すぎるほどのシャープネスを備えている。

 その点、EXILIMは、もともと固定焦点式であり、厳密に細部を見ると、1m付近では若干ピントが怪しく見えるケースもある。また、本機は構造上、絞りの調整機能を備えていないため、どんなに明るいシーンでも、絞りは開放のF2.5のままになっており、絞り込みによる被写界深度(ピントの合う範囲)を期待することはできない。そのため、実際の写りは、十分な解像感とはいえ、ピントの芯はあまり明確ではなく、モニター上で等倍表示すると、やや曖昧な印象だ。

 しかし、両機の画像をLサイズにプリントすると、サイバーショットU のほうがシャープには見えるが、画像が平板な感じで、ややデジタル臭い不自然な雰囲気が感じられる。EXILIMのほうはごく自然なシャープさがあり、適度な立体感が感じられ、比較的、銀塩カメラからのプリントに近い仕上がりが得られる。

●どっちがオススメ?

 EXILIMとサイバーショットU、どちらかオススメか? それぞれ、コンセプトや機能が異なるモデルだけに、その人の使用目的によって、向き不向きがでてしまうもの。

 そこで少々乱暴だが、それぞれのモデルに向くユーザーを想定してみよう。

 まず、わかりやすいところから行くと、ビジネス用途などでマクロ撮影は必須! という人は、迷わずサイバーショットUを選ぶべきだ。また、とにかく、ちっちゃくてカワイイカメラが欲しい! という人も、Uになるだろう。

 一方、液晶モニターはきれいで見やすくなければ、使う気がしないという人には断然EXILIMがオススメ。さらに、露出補正やホワイトバランスを操作して、自分の意図にあった写真を撮りたい人はEXILIMを選ぶしかない。また、EXILIMには、MP3付きの「EX-M1」と、通常の「EX-S1」があるわけだが、もちろん、MP3もという人はM1になる。

 両機種とも動画撮影ができるが、動画のきれいさでは、圧倒的にEXILIM。しかも、音声付きで撮影したいのであれば、マイクを内蔵しているM1を選ぶことになる。

 また、少々乱暴な言い方だが、性格的に面倒なことが嫌いな人には、フルオート指向のサイバーショットU。比較的マメで工夫好きな人には、EXILIMがオススメだ。

 まあ、一般論としては、上記のような感じだが、では、私自身使ってみて、具体的に、どちらか一台だけを持ち歩くとしたら、どちらを選ぶかというと、やはり、マクロ撮影ができて、レンズカバーのある、サイバーショットU のほうが、“当初は”出番が多かった。実際に、メモ用として使うなら、マクロ機能は便利な機能であり、その理由だけでUを選ぶ人も多いことだろう。

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EXILIM EX-M1

ストロボをONにして撮影したもの。露出も肌色の感じも悪くない。これなら安心してストロボ撮影ができそうだ。
サイバーショットU dsc-U10

ストロボをONにすると、この程度の距離でも露出オーバー気味になってしまう。肌が飛び気味になってしまうが、女性を撮るなら、これくらいのほうが喜ばれることが、ないでもないが……。

 しかし、いくつかの理由から、最近はEXILIMのほうがより多くなっている。特に、家族のスナップは、EXILIMのほうが断然多い。その理由は、比較的単純なものだが、結構致命的な部分がある。

 単純にいってしまうと、サイバーショットU は、マクロ撮影ができるのは便利だが、マクロ切り替え機能がないこともあって、AF測距する際に無限遠からマクロ域までスキャンしている。これはこれで、とても便利なのだが、これには大きな落とし穴があった。

 つまり、屋内撮影でストロボを使って記念写真を撮影をするような暗いシーンはもとより、日中、ごく普通に記念写真を撮っても、AF測距がうまく働かず、大幅なピンぼけになるケースがあり、それが結構な確率で発生することが、撮影していくうちにわかってきた。

 その確率は、大雑把にいうと、50枚に1枚くらいなのだが、日中の屋外で、同じシーンを数枚撮影しても、すべてピントを逃していて、一枚も使えないという最悪のケースも発生した(当然、一枚ごとにAF測距し直しているので、一枚くらいは救えてもいいはずなのだが)。

 しかも、液晶モニターが小さく、液晶再生時の拡大機能がないため、カメラ本体でピントのチェックができない。その場では、ピンぼけに気が付かず、PCで表示して初めてそれに気が付くので、何とも始末に悪く、大切な写真でピンぼけを起こしてしまうことがあるのには閉口する。

 もちろん、本機には簡易的なマニュアルフォーカス機能もあるが、ピンぼけを起こしそうなシーンというは、なかなか予想が付かず、その都度、マニュアルに切り替えるのは現実的ではない。

 その点、EXILIMでは、AF機構自体がなく、固定焦点式のため、一般的な撮影距離でピントを逃すことがない。また、1m前後の近距離でのストロボ制御も、EXILIMのほうがよく、7月12日に公開された新しいファームウエア(Ver.1.01)では、さらに調光精度が向上しているようなので、その点でも安心だ。

 また、これまでも、駅の時刻表や病院の医師予定表など、頻繁に利用するものを撮影しておき、液晶モニター上で拡大表示して、ビジュアルメモ的に利用していたわけだが、このような使い方はEXILIMでしか対応できないこともあって、一時期は「サイバーショットU」になっていた常時携帯機は、いまやその前に愛用していた「EXILIM」に戻りつつある。

 さらに、EXILIMは動画サイズも320×240ピクセルと大きくて画質も良好な上、「EX-M1」なら音声付き動画が撮れるため、家族の記録は主に「EX-M1」がメインになりつつある。

 このほか、同機はMP3再生機能も備えている。実際に使ってみると、これが予想外に音質がよく、単なる“おまけ”レベルではなく、MP3専用プレイヤーとして使ってもいいと思わせるほどだ。

 ただし、「FinePix 50i」のように、MP3データを、カメラ本体で削除することはできない。そのため、出先で撮影中、メモリ容量が足りなくなっても、MP3データだけを削除することができないのは難点。この点はぜひ、次期モデルで曲ごとに削除できる機能を搭載して欲しいところだ。

●未完成だが楽しめるモデル

 今回、EXILIMやサイバーショットUを使って、久しぶりに、デジタルカメラ本来の楽しさを再発見した感じがした。

 デジタルカメラが進化するにつれて、高画素で高機能になり、ズームが必須という時代になって、コンパクトなモデルでさえ、どこか、気軽に持ち歩くという雰囲気から遠ざかりつつあった。

 だが、この両機には、液晶付きデジタルカメラが本来備えている楽しさに加え、いつでも持ち歩けて、気軽にパッと撮影できるという、初代「カシオ QV-10」が示したような軽快さを堪能できるモデルに仕上がっている。

 特に、日頃、ヘビーなデジタルカメラを使っている人にとっては、“目から鱗”というくらいのインパクトがあり、デジタルカメラ本来の、ライトな感覚で撮影できるという楽しさを存分に味わうことができるだろう。

 その意味で、この両機は、すでにデジタルカメラを持っている人にとっても、とても魅力的な存在であり、とにかく一度、購入を検討してみるだけの価値は、十二分にある。そして、これだけ個性が異なる2機種が登場したので、あとは自分の性格や撮影スタイルにあった、いずれかのモデルを選べばいいだろう。

 そして、たぶん、セカンドカメラのつもりで購入しても、いつのまにかファーストカメラとして愛用し、つねに手放せない存在になること請け合いだ。

 とはいえ、結局のところ、EXILIMも、サイバーショットU も、いわば初物であり、まだまだ未完成な部分が多々ある。

 EXILIMはレンズカバーの装備やマクロ撮影への対応が今後の課題であり、サイバーショットUは測距精度やオートホワイトバランスの向上、液晶モニターでの拡大機能の装備などを期待したい。

 さらに、いずれの機種も、130万画素機ながら、1/2.7型のCCDを搭載していることから見ても、そう遠くない時期に200万画素化される可能性が大きい。さらに、可能性という点だけでいえば、今夏以降登場する1/2.7型の300万画素CCDを搭載すれば、“技術的には”このサイズで300万画素機だって実現できるわけだ。もちろん、高画素になることがいいこととは限らないが、やっぱり200万画素あれば安心というのも本音ではある。

 いずれも、素敵なコンセプトのカメラであり、今後も、この軽快さを保ちながら、より使いやすく、楽しいモデルに発展してゆくことを心から期待したい。

実写画像
人物撮影
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マクロ撮影
定点撮影
EXILIM動画
サイバーショット動画
 
実写画像インデックス

□カシオのホームページ
http://www.casio.co.jp/
□EXILIM製品情報
http://www.exilim.jp/
□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□サイバーショットU製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/dsc/dsc-U10/index.html
□関連記事
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm


■注意■

(2002年7月23日)

[Reported by 山田久美夫]


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