会場:Silicon Valley Conference Center
GPUベンダのNVIDIAは、明日よりPlatform Conferenceが行なわれる米国カリフォルニア州のSilicon Valley Conference Centerにおいて、これまで「Crush17/18」のコードネームで呼ばれてきたAthlon XP/Duron向けチップセットをnForce2として発表した。
nForce2では、統合されているグラフィックスコアがGeForce2 MX相当からGeForce4 MX相当へと変更され、メインメモリも新たにDDR400に対応した。また、サウスブリッジのMCP(Media Communication Processor)にIEEE 1394コントローラ、さらには2つ目のイーサネットコントローラが追加されるなど意欲的な仕様となっている。
●メインメモリとしてDDR400の2チャネルをサポート
既に速報でもお伝えしたように、nForce2は単体版のnForce2-STと統合型版のnForce2-GTの2つの製品が用意される(正確にはそれぞれに2種類のMCPが存在するので、4製品と言ってもよい)。
2つのnForce2、単体版がnForce2-STで、統合版がnForce2-GT。サウスにはMCP-T(ないしはMCP)が利用される | SPPはデュアルチャネルのDDR400/333/266、AGP 8X、333MHzのシステムバスに対応する | nForce2のSPP、CR18(Crush18)はコードネーム |
従来のnForce 420Dの後継となるのが、nForce2-GTだ。nForce2-GTは、ノースブリッジのSPP(System Platform Processor)とMCP-TないしはMCPから構成されている。SPPのシステムバスは333/266/200MHzのEV6バスに対応している。ただ、この333MHzのシステムバスは、現在のAthlon XPではサポートされていないクロックとなる。この点について、NVIDIA プラットフォームビジネス シニアディレクターのドルー・ヘンリー氏は「現在では333MHzのシステムバスはオーバークロック向けにすぎない。ただ、将来AMDが333MHzのシステムバスに対応することがあれば、対応することができる」と、333MHzについてはオーバークロック向けであり実際にAthlon XPで使うことができるようになるかは、AMD次第であるという認識を明らかにしている。
今回の発表会にはAMDの社長兼CEOのヘクター・ルイーズ氏も同席していたが、筆者のシステムバス333MHzの可能性についてどう考えるのかという質問に対して「公式には将来の製品についての予定は公開していないが、NVIDIAのように多くの関係者がそうした技術を望んでいて、技術的には不可能ではない。現在ラボの中で評価を行なっている段階で、真剣に取り組んでいる」とコメントした。以前COMPUTEX TAIPEIにおいて、同社副社長のリチャード・ハイ氏は「バリデーションにはかなりリソースがかかるため、Hammerに注力するためにシステムバス333MHz化に関しては予定がない」と述べており、今回のヘクター氏の発言が、それよりもかなり前向きなコメントになってきていることは注目していいだろう。
SPPのもう1つの特徴は、メインメモリとして400MHzのDDR SDRAM、つまりDDR400に対応していることだろう。メモリコントローラの構成は初代nForceと同様に、2チャネルないしは1チャネル構成が可能で、DDR400/2チャネル時で6.4GB/Sec、DDR333/2チャネル時で5.4GB/Secの帯域幅が実現される。また、初代nForceでも採用されていた「Concurrent Simultaneous Access」機能もインプリメントされており、2つのチャネルに交互にアクセスすることにより、レイテンシを隠蔽し、高速なランダムアクセスを可能にする。
なお、DDR400を利用する場合の電圧は2.6Vないしは2.65Vに変更される。これまでのDDR333/266は2.5Vで駆動されていたので、それに比べるとやや電圧が上げられている。これについて、NVIDIA プロダクトマネージメント&ビジネスマネージメント担当ブライアン・ヒューン氏は「DRAMベンダと話し合った結果、2.6Vが最も安定させて動かすことができるという結論になった」と、DRAMベンダ側もDDR400に関しては2.6Vで駆動させていく方向で同意しているという。「現在、Samsung、Micron、Hynixの3社とDDR400の開発を進めている」とコメントし、2.6Vに対応したDDR400が、3社からリリースされるという見通しを明らかにした。メモリソケットは最大で3ソケットまでがサポートされ、1GBモジュールを利用して最大で3GBまで対応が可能となっている。
気になるパフォーマンスだが、NVIDIAが公開した資料によれば、DDR333/GeForce4 Ti 4600利用時にVIAのKT333と比較すると、QuakeIII Arenaで10%、SYSmark2002のOffice Productivityで7~8%程度の性能向上が認められるという。
nForce2とKT333のベンチマーク結果。いずれも5~10%程度のパフォーマンス向上がある |
●GeForce4 MXコアを統合し、より強力な3D描画能力を備える
nForce-GTのノースブリッジがIGP(Integrated Graphics Processor)だ。IGPの大きな特徴は、初代nForceではGeForce2 MX(NV11)相当だったグラフィックスコアが、GeForce4 MX(NV17)相当に変更されていることだ。内蔵されているGeForce4 MXコアは、コアクロックが250MHzで、ハードウェアT&Lエンジンを内蔵し、レンダリングエンジンの構成は2パイプライン+2テクスチャユニットで、1クロックあたり最大で4テクスチャの描画が可能になっている。DirectX 8でサポートされているプログラマブルバーテックスシェーダおよびピクセルシェーダへの対応だが、GeForce4 MXと同様にバーテックスシェーダに関してはCPUによるエミュレーション(バージョン1.1対応)、ピクセルシェーダに関しては未対応となっている。
GeForce4 MXコアを内蔵したnForce2のIGP | nForce2-GTのIGP | nForce2-GTを搭載したマザーボードのバックパネル。2つのCRT出力や2つのイーサネットポートが特徴的 |
nForce2のベンチマーク結果。他の統合型チップセットに比べて圧倒的に高い3D描画性能を実現し、GeForce4 MX420よりも高い描画性能を実現 |
3D周りで初代nForceとの大きな違いはマルチサンプリングのアンチエイリアシングに対応していること。NVIDIAがAccuview Antialiasingと呼ぶ機能だ。Accuview Antialiasingはスーパーサンプリングに比べてリソースの消費を押さえながら、高いクオリティの画面表示を実現する機能で、GeForce4 Ti/MXシリーズでサポートされている。これと同じ機能がnForce2にも搭載されている。
また、GeForce4 MXのもう1つの特徴である、動画再生支援やデュアルディスプレイの機能も充実している。nForce2のIGPはVPE(Video Processing Engine)を内蔵しており、HDTV用のテレビエンコーダ、MPEG-2再生支援機能などの機能を備えている。さらに、デュアルディスプレイ機能「nView」も用意されており、IGPに内蔵されている2つのRAMDACを利用して、標準でマルチディスプレイの機能が実現可能だ。
内蔵コアを利用しない場合には、外部AGPスロットが利用可能だ。AGPは、AGP Specification 3.0で規定される予定のAGP 8X(ピーク時帯域幅2.1GB/Sec)に対応しており、将来AGP 8Xに対応したGPUが発売されればAGP 8Xで利用できるようになる(SPPもAGP 8X対応)。
なお、内蔵コアを利用している場合には、AGPスロットにライザーカードを挿すことで、DVI対応とすることも可能だ。これはNVIDIAがDVI/TV Riser Cardと呼ぶアドオンカードで、AGPと同じ信号線を利用して実現される。チップセットからは1チャネル12bit、2チャネルで24bitの信号線で、RGB信号を送信し、DVIやTVトランスミッタチップを接続することで、nForce2のシステムにDVIやTV出力を追加することができる。IntelがIntel 845Gなどで実現しているDVO(Digital Video Output)などと同等の機能であると考えていいだろう。
気になるIGPのパフォーマンスだが、Athlon 2100+を利用したnForce2のシステムは、Pentium 4 2.53GHz+Intel 845Gに比べてQuakeIII Arenaで5倍以上、従来のnForce 420と比較して2倍以上の性能向上が認められるという。実際、同社のGeForce4 MX420と比較しても、nForce2-GTが上回り、1,024×768ドットで110フレーム近いパフォーマンスを発揮するという。こうしたことから考えても、nForce2は統合型としては、桁外れな3D描画性能を備えると考えていいだろう。
●DualNetなど新しい使い方を提案する新サウスのMCP-T
nForce2のMCP-T。IEEE 1394、USB 2.0、Ultra ATA/133、2つのイーサネットコントローラ、APUなど意欲的な仕様になっている |
サウスブリッジであるMCP(Media Communication Processor)も大きな変更が加えられている。
上位版となるMCP-Tには、従来のMCPの機能に加えて、IEEE 1394、USB 2.0、3ComのMAC、Ultra ATA/133などの機能が追加されている。内蔵されているIEEE 1394コントローラは、1394a(400Mbps)のOHCI(Open Host Controller Interface)コントローラで、PHYを追加することでIEEE 1394の機能をnForce2システムに追加できる。
USBコントローラはUSB 2.0に対応したEHCI(Enhanced Host Controller Interface)コントローラが1つ、USB 1.1に対応したOHCIが2コントローラとなっており、ポート数としては最大6ポートをサポートする。また、初代nForceではUltra ATA/100のみへの対応となっていたが、nForce2では、Ultra ATA/133への対応が追加されている。なお、SPP、IGPとのインターフェイスは、初代nForceと同じく、双方向8bitのHyperTransportで、800MB/Secの帯域幅が確保される。
MCP-Tの最も特徴的な部分と言えるのが、DualNet機能だ。MCP-Tには、初代nForceにも搭載されていたNVIDIAのMACに加えて、3ComのMACも内蔵されている。おのおのにPHYを接続することで、nForce2システムは標準でイーサネットを2ポート備えることができる。3ComのMACを内蔵したのは、企業ユーザーで3ComのMACを必要とするユーザーが多く、そうした要求に応えるためだ。また、これにより、nForce2を搭載したシステムは標準でPCをルーターなどに転用することができる。
内蔵された2つのMACにより、ルーターとして利用することも可能 | APUをアピールするための新しいブランドとなるSoundStorm |
また、初代nForceの特徴の1つであった、ドルビーデジタルのリアルタイムエンコードエンジンであるAPU(Audio Processing Unit)も引き続き搭載されている(機能については従来通り)。これにより、ユーザーは標準でDirectX 8の3Dサウンドに対応できるほか、DVDプレーヤーなどで5.1チャネルの音声出力などに対応できる。なお、NVIDIAでは、5.1チャネルドルビーデジタル出力のための、6アナログスピーカー出力、S/PDIFを備えたnForce2システムに「NVIDIA SoundStorm」というブランドネームを付け、ロゴやマーケティング上の支援を行なっていくプログラムを展開していくことをあわせて明らかにした。
廉価版のMCPはMCP-TからIEEE 1394コントローラ、3ComのMAC、APUを省略したもので、ローエンドマーケット向けのマザーボードで採用されることになる。
MCP-T | MCP | |
---|---|---|
IEEE 1394 | ○ | - |
USB 2.0 | ○ | ○ |
MAC | NVIDIA+3Com | NVIDIA |
APU | ○ | - |
IDE | Ultra ATA/133 | Ultra ATA/133 |
AC'97 | ○ | ○ |
●マザーボードメーカー各社から対応マザーが登場。キューブ型ケース用も
NVIDIA プラットフォームビジネス シニアディレクターのドルー・ヘンリー氏が手に持つのがShuttleのキューブ型ケースに同社のnForce2マザーボードを入れたPC |
発表会では、nForce2の利用モデルとして、「WORK(仕事)」、「PLAY(遊び)」、「Home(家庭)」の3つの使用例が紹介された。
WORKでは、nViewによるデュアルディスプレイ機能により仕事の能率があがるという説明が行なわれた。デモでは、片側のディスプレイで売りに出されている家屋の住所を表示させながら、もう片方のディスプレイでそこの住所の3Dデータを表示させていた。また、Homeの分野ではShuttle Computerのキューブ型ケースにnForceマザーボードを入れた様子が公開された。それには2つのCRT出力、IEEE 1394、AGPスロット、DVD-RWドライブなどが装備されており、そのままで動画の編集、DVDビデオの作成などに使える様子がデモされた。さらに、Playの分野では、IEEE 1394経由で取り込んだリアルタイムの動画に、様々な効果を加える様子などがデモされた。
なお、会場では、各マザーボードベンダによるマザーボードの展示が行なわれた。ASUSTeK Computer、ABIT Computer、EPoX、Chaintech、MSIなどによる展示が行なわれ、複数の製品で、2CRT出力があるマザーボードなどが公開された。標準で2CRT出力が用意されているマザーボードでは、そのままでデュアルディスプレイが実現される訳で、要注目と言えるだろう。
(2002年7月17日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]