Intel 845GLチップセットにPC133 SDRAMを組み合わせたD845GLLY。PS/2キーボード/マウスコネクタとパラレルポートコネクタの間に、Intel 845E/Gチップセットならば用意されるUSBコネクタの空きパターンが見える |
ここで比較の対象にするのは、すべてIntel純正のマザーボード。その理由は、価格を比較するという観点でベンダを揃えたいこと、現時点で上記3種類のチップセットすべてのラインナップをmicroATXで揃えられるのがIntel純正に限られること、の2点だ。フォームファクタをmicroATXで揃えるのは、Intel 845GLチップセットのマザーボードがmicroATXのみであるから。どうも市場での価格は、フォームファクタの原則(小さいmicroATXの方が安い)に必ずしも従っていない(アキバ的には流通量の豊富なATXの方が割安)ようだが、今回の比較はmicroATXで揃えてみることにした。
以上の条件によりエントリーされるのは、D845EPT2、D845GRG、D845GLAD、D845GLLYの4種。実際には、この4種類にLAN付きとLAN無しの2タイプがあるため、計8種類ということになる。Intel 845GLチップセットが2枚エントリーされているのは、D845GLADがDDR SDRAM、D845GLLYがSDR SDRAM(PC133 SDRAM)をベースにしているためだ。データシート的にはIntel 845GチップセットもPC133 SDRAMをサポートしていることになっているが、Intelを含め今のところこの構成のマザーボードを出荷しているベンダはないようだ。
この4種類のマザーボードの主な仕様について表1にまとめておいた。Intel 845GLベースのマザーボードは、AGPスロットがないだけでなく、USBポートも2つ少ないことがわかる。AC'97 CODECについては、ハードウェア的な差はそれほどない(強いていえば、CNRスロットを用いたアップグレーダビリティだが、あまり実用的ではない)ものの、AD1981Aの方がソフトウェア的なオマケ(SoundMAX)が充実している。
D845EPT2 | D845GRG | D845GLAD | D845GLLY | |
チップセット | Intel 845E | Intel 845G | Intel 845GL | |
FSB | 400/533MHz | 400MHz | ||
メモリ | DDR SDRAM | SDR SDRAM | ||
内蔵グラフィックス | なし | Intel Extreme Graphics | ||
AGPスロット | 1 | なし | ||
PCIスロット | 3 | 4 | ||
USBポート(※) | リア4/フロント2 | リア2/フロント2 | ||
AC'97 CODEC | AD1981A | STAC9766T | ||
CNRスロットオプション | LAN無しモデルのみ | なし |
LAN付き | LAN無し | 差額 | 備考 | |
D845EPT2 (Intel 845E/DDR) |
16,980円 | 15,480円 | 1,500円 | オンボードLAN代? |
D845GRG (Intel 845G/DDR) |
17,800円 | 16,700円 | 1,100円 | |
D845GLAD (Intel 845GL/DDR) |
15,900円 | 13,800円 | 2,100円 | |
D845GLLY (Intel 845GL/SDR) |
14,500円 | 13,780円 | 720円 | |
Intel 845GL/SDRとIntel 845GL/DDRの差額 | 1,400円 | 20円 | - | DDR/SDRのソケット代差額? |
Intel 845GLとIntel 845Gの差額 | 1,900円 | 2,900円 | - | AGPスロット/FSB533代? |
Intel 845GとIntel 845Eの差額 | 820円 | 1,220円 | - | 内蔵グラフィックス代? |
次に考えたいのは、もしDDR SDRAMを購入する場合、D845GLADとD845GRGのどちらを購入すべきか、ということだ。表2からいくと、Intel 845GLとIntel 845Gの差額は1,900~2,900円。つまり1,900~2,900円で、4本あるPCIスロットのうち1本をAGPスロットに交換でき、背面のI/Oパネル部にUSB 2.0コネクタを2個追加、なおかつ将来的なFSB 533MHzへのアップグレーダビリティを買うことができることになる。2,900円という金額の重みは、人それぞれで違うだろうが、筆者はこの差額なら、D845GRG(Intel 845G)を買った方が得だと思う。
逆に言えば現状の価格では、少なくとも秋葉原などでマザーボードを1枚買いする個人ユーザーにとって、Intel 845GLチップセット+DDR SDRAMの組合せは、あまり存在価値がないことになる(大手PCベンダが採用する場合は、また話が変わるが)。個人ユーザーにとってIntel 845GLチップセットの存在価値は、PC133 SDRAMと組み合わせることで、手持ちのメモリを流用可能、ということに絞られるように思う(この組合せで性能がどうか、というのはまた別の話)。Intel 845GLベースのマザーボードの価格は、もう少し引き下げられるべきではないだろうか。
もう1つ気になるのは、Intel 845GとIntel 845Eの価格差だ。Socket 370ベースのシステムを現在使っているユーザーの中には、Pentium 4世代のチップセットで使えないAGPビデオカード(1.5V対応ではない)のユーザーもいることと思うが、GeForce2 MXクラスのカードを使っているユーザーも少なくないと思われる。ハッキリ言って、Intel 845G/GLの内蔵グラフィックスは、性能、表示品質共にGeForce2 MXに及ばない。手元に使えるAGPカードがあるのなら、使った方がベターだ。という観点からD845GRGとD845EPT2の価格差を見ると、その差は820~1,220円ということになった。
【図1】買い物ロジック |
以上のロジックをまとめたのが図1だ。ここではとりあえず、スタートラインとして、現時点で最も安価なmPGA478対応プロセッサであるCeleron 1.70GHzを選んでみた。ビデオカードを流用しているにもかかわらず、それを必要としないD845GLLYよりアップグレードコストが高くつくD845WN(無印Intel 845)は、できれば選びたくない気がする。差額が4,000~5,000円生じるが、DDR DIMMを1枚買ってD845EPT2にするか、価格を重視してD845GLLYにした方が良いかもしれない。
だが、それにも増して気になるのは、D845GLLYの性能だ。PC133 SDRAMを流用できるのは良いのだが、性能差がDDR DIMMの購入費を上回るようでは、魅力がなくなってしまう。というわけで、ここではIntel 845GLとIntel 845Gの性能を比べて見ることにした。Intel 845GLのマザーボードは、これしかないのでD845GLLYを使用。Intel 845GのマザーボードはD845GRGにしたかったところだが、手元にあったATX版のD845GBVで代用した。D845GRGとD845GBVはBIOSアップデートのファイルも共通で、基本性能には大差はないハズである。
表3は、CPUにCeleron 1.70GHzを用いた場合の、D845GLLYとD845GVBのベンチマークテスト結果だ(基本的にはCPUの性能が向上するほど、両者の性能差は開くものと考えられる)。PCMark 2002によるとPC133メモリとDDR266メモリの性能差は約1.8倍。これが、3Dグラフィックス性能(3DMark 2001 SE)や、インターネットコンテンツ制作(SYSMark 2002 Internet Content Creation)に強く影響しており、この2つの分野での性能差は40%を超える。一方、Office Productivityでの差は約20%と、上の2つに比べれば小さくなっている。
D845GLLY (PC133 CL2) |
D845GBV (DDR266 CL2) |
性能差 (※D845GLLYを100とする) |
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PCMark 2002 - CPU | 3,673 | 3,886 | 105.8% |
PCMark 2002 - Memory | 1,804 | 3,280 | 181.8% |
3DMark 2001 SE | 791 | 1,164 | 147.2% |
SYSMark 2002 Rating | 102 | 135 | 132.4% |
SYSMark 2002 - ICC | 128 | 181 | 141.4% |
SYSMark 2002 - OP | 82 | 100 | 122.0% |
最後に、もう1つ比較をしてみた。それは、1世代前のグラフィックス統合チップセットであるIntel 815との比較だ。Intel 815の内蔵グラフィックスに比べIntel 845Gの内蔵グラフィックスは、3Dグラフィックス機能的にはテクスチャ圧縮のサポートなど強化されている部分もあるが、3Dグラフィックスを目当てに買うほどではない。3DMark 2001 SEのスコアでGeForce2 MXの半分程度、というところだ。しかし、それ以上に、対応可能な解像度の制限が大幅に緩和されたこと、ハードウェアオーバーレイ可能な解像度の制限が事実上なくなったことなど、改善された部分は決して少なくない。もちろん、プラットフォームとしての性能の底上げも果たされており、全般に基礎体力が向上している。それを確かめたのが表4だ。
D815EEA (Intel 815E) |
D845GLLY (Intel 845GL) |
性能差 (※Celeron 700MHzを100とする) |
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搭載CPU | Celeron 700MHz (FSB 66MHz) |
Pentium III 1B GHz (FSB 133MHz) |
Celeron 1.70GHz | - |
PCMark 2002 - CPU | 1,644 | 2,560 | 3,886 | 236.4% |
PCMark 2002 - Memory | 802 | 1,387 | 2,145 | 267.5% |
3DMark 2001 SE | 472 | 608 | 834 | 176.7% |
SYSMark 2002 Rating | N/A | N/A | 116 | N/A |
SYSMark 2002 - ICC | 93 | 95 | 150 | 161.3% |
SYSMark 2002 - OP | N/A | N/A | 90 | N/A |
(2002年5月29日)
[Text by 元麻布春男]