P4ベースの新Celeron初登場!
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NetBurstマイクロアーキテクチャに対応したCeleronプロセッサ |
Intelは昨日Intel Celeronプロセッサ(以下Celeron)の最新クロックグレードとなるCeleron 1.70GHzと1.40GHzの2製品を発表し、即日出荷を開始した。
1.40GHzは従来のTualatin-256KコアのPGA370に対応したP6マイクロアーキテクチャの高クロック版だが、1.70GHzはコードネーム“Willamette-128K”で呼ばれてきたmPGA478ソケット(いわゆるSocket 478)に対応した、NetBurstマイクロアーキテクチャベースに変更され、内部構造やシステムバスなどが従来のCeleronと大幅に変わっている。AKIBA PC Hotline!による速報( http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20020518/cel17box.html )の通り、秋葉原などで流通が開始されたばかりのCeleron 1.70GHzを取り上げていきたい。
●0.18μmのPentium 4のハーフL2キャッシュ版となるCeleron 1.70GHz
Celeron 1.70GHzの外箱(左)。Celeron 1.30GHz(右)と比べて大きくなっているのは、ファンが大きくなっているため |
今回発表されたCeleron 1.70GHzは、“Willamette-128K”というコードネームが指し示すように、Willametteのコードネームで知られる0.18μmのPentium 4プロセッサ(以下Pentium 4)の256KBのL2キャッシュを半分に制限し、128KBとしたもので、それ以外の点では0.18μmのPentium 4と同等の機能を持っている。400MHzのシステムバスに対応し、12KのμOpsによるトレースキャッシュ、8KBのL1データキャッシュ、20ステージに及ぶパイプライン構成、ストリーミングSIMD拡張命令2(SSE2に対応)など、NetBurstマイクロアーキテクチャの機能をそのまま受け継いでいる。
対応ソケットはmPGA478で、基本的にはmPGA478ソケットを搭載しているマザーボードでは使えるはずだが、BIOSのアップデートは必要になる。というのも、古いBIOSではL2キャッシュの容量が256KBに設定されてしまうため、実際の容量である128KBと矛盾しエラーが起きてしまう場合があるからだ。だが、これはBIOSアップデートでカバーできる範囲であり、基本的にはBIOSアップデートを行なうことで問題なく利用できる(はずだ。実際に自分のマザーボードで使えるかは、マザーボードメーカーのWebサイトなどでチェックしてほしい)。
ただし、BIOSアップデートを行なうには、そのマザーボードが正常に動作している環境が必要になる。つまり、とりあえずPentium 4が必要となる場合があるということだ。既にPentium 4を持っているユーザーであれば問題ないが、Celeronを購入するユーザーのほとんどはPentium 4を持っていないことが多いだろうから、これからCeleronとmPGA478マザーボードを購入しようというユーザーは注意が必要になる。
既にショップ側で、Celeronが動作するマザーボードをチェックしているだろうから、Pentium 4を持っていないユーザーがCeleron 1.70GHzを購入する場合には、ショップ側が動作すると確認しているマザーボードを同時に購入するようにしたほうがいいだろう。
なお、あまりいないと思うが、CPUをPentium 4からCeleronに差し替えた場合、できればWindowsを再インストールしたほうがよい。特にWindows XPだが、ハードウェアの仕様を細かく見ているため、一見動いているように見えても、何かの拍子に不安定になったりすることがある。このように、クロックがあがっただけの場合(例えばPentium 4 1.5GHzからPentium 4 1.7GHz)に比べて、異なるCPUに交換した場合にはできるだけWindowsを再インストールしたほうがいいだろう。
●サポートチップセットはIntel 845ファミリー
さて、mPGA478ソケットを搭載したマザーボードなら、と述べたが、実は正確にはサポートしないマザーボードもある。それがIntel 850を搭載したマザーボードだ。
IntelはOEMメーカーに対して、CeleronをサポートするチップセットはIntel 845ファミリー(つまりIntel 845、そしてまだ未発表だが、既にCeleronのデータシートなどに名前が見られるIntel 845E、Intel 845G、Intel 845GL)だけであると説明している。つまり、Intel 850ファミリー(Intel 850とIntel 850E)は含まれていない。技術的には動かないということはないと思われるが、Intel 850ファミリーとのバリデーション(動作検証)が行なわれていないということだろう。
わざわざIntel 850マザーボードとCeleronを組み合わせて使うユーザーが多いとは思えないが、一応Intel 850ファミリーとの組み合わせはIntel的には保証される使い方ではないことは覚えておこう。
●パフォーマンスはPentium 4 1.4GHzを下回り、Celeron 1.3GHzは上回る
それでは、実際のベンチマークなどを利用してパフォーマンスをチェックしていこう。今回はCeleron 1.40GHzが入手できなかったので、比較対象としてCeleron 1.30GHzと1.20GHz、Duron 1.3GHzと1.2GHz、さらにはWillametteコアのPentium 4 1.70GHz~1.40GHzを用意し、L2キャッシュの減少がどれだけの性能低下につながっているのかをチェックした。
利用したベンチマークはBAPCoのSYSmark2002に含まれるOffice ProductivityとInternet Contents Creation、MadOnion.comの3DMark2001 Second Edition、id SoftwareのQuake III Arena、BAPCoのWebMark2001、さらにMadOnion.comのPCMark2002に含まれるCPU Testの6つで、結果はそれぞれグラフ1~グラフ6、環境は表の通りだ。Pentium 4はDirect RDRAMをサポートしたIntel 850を利用し、CeleronはIntel 845を利用したのは、前述の通りCeleronがIntel 850を公式にはサポートしていないためだ。
なお、3DMark2001 SEではCeleron 1.30GHzとCeleron 1.20GHzが、WebMark2001ではDuron 1.3GHzとDuron 1.2GHzが動作しなかったので、グラフ中では「0」と表示している。
【テスト環境】CPU | Pentium 4 | Celeron 1.7GHz | Celeron 1.3~1.2GHz | Athlon XP |
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チップセット | Intel 850 | Intel 845 | Intel 815E | VIA Apollo KT266A |
マザーボード | Intel D850MDL | Intel D845BG | Intel D815EEA2 | EPoX EP-8KHA+ |
チップセットドライバ | 3.10.1008(2001/10/8) | 3.10.1008(2001/10/8) | 3.10.1008(2001/10/8) | 4in1 v4.38 |
メモリ | Direct RDRAM | DDR SDRAM | SDRAM | DDR SDRAM |
メモリモジュール | PC800-45 | PC2100(2-2-2) | PC133 SDRAM(3-3-3) | PC2100(2-2-2) |
容量 | 256MB | |||
ビデオチップ | NVIDIA GeForce3(64MB、DDR SDRAM) | |||
ビデオドライバ | NVIDIA Detonator XP(v28.32) | |||
ハードディスク | IBM DTLA-307030 | |||
フォーマット | NTFS | |||
OS | Windows XP Professional |
グラフ1 | グラフ2 | グラフ3 |
グラフ4 | グラフ5 | グラフ6 |
結論から言えば、多くのテストで、Celeron 1.70GHzはCeleron 1.30GHzは上回ったが、逆にPentium 4 1.40GHzに対しては下回った。
詳しく見ていこう。ビジネスアプリケーションでの性能を示すOffice Productivity(グラフ1)では前述の通りの結果となった。Internet Contents Creation(グラフ2)ではPentium 4 1.40GHzを上回っている。これはInternet Contents CreationのスコアがL2キャッシュに左右される割合が、Office Productivityに比べて小さいためだろう。Internet Contents Creationはどちらかというと、メモリやシステムバスの帯域幅などの影響が大きいテストなのだ。
3Dのテスト(3DMark2001 SE=グラフ3、Quake III Arena=グラフ4)では、やはりCeleron 1.30GHz以上、Pentium 4 1.40GHz以下という結果になっている。インターネットアプリケーションを利用する場合の性能を示すWebMark2001(グラフ5)に関してはPentium 4 1.40GHzを上回っている。こちらもInternet Contents Creationと理由は同じで、やはりキャッシュ容量の差があまり影響されないテストといえる。
PCMark2002(グラフ6)のCPU Testsではあまり性能が低下していないことになっているが、これはCPU Testsに含まれるText Searchという、L2キャッシュがあまり効かないテストでよいスコアをたたき出してしまうからだ。そういう意味では、L2キャッシュがあまり関係ないような作業をさせるのであれば、CeleronのPentium 4に対する性能低下は低そうだ。
●コスト重視ユーザーのmPGA478へのエントリー製品として有望
以上のように、Celeron 1.70GHzは従来のPGA370(いわゆるSocket370)ベースのCeleronに比べては高いパフォーマンスを発揮するが、Pentium 4に比べてパフォーマンスダウンは著しいといえる。Celeron 1.70GHzは1万2千円前後で購入できるとはいえ、現在Pentium 4 1.70GHzが2万円弱で買えることを考えると、コストパフォーマンスは結構微妙なところだろう。費用対効果という意味や、当初はBIOSアップデートという問題を抱えていることを考えると、値段が下がってきたWillametteコアのPentium 4という選択肢もありなのではないだろうか。
だが、絶対価格という意味では明らかに安価なのは事実で、サードパーティ製チップセットの登場で安価になってきたmPGA478マザーボードと組み合わせて、ローコストにmPGA478環境を構築したい、というユーザーであれば選択しても損はないだろう。
□関連記事
【5月16日】Intel、WillametteコアのCeleron 1.70GHzを正式発表
~従来コアのCeleron 1.40GHzも同時発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0516/intel.htm
【5月18日】【AKIBA】Socket 478版のCeleron 1.70GHzリテールパッケージ発売
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20020518/cel17box.html
(2002年5月17日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]