NEW PRODUCTS TESTREPORT

	セイコーエプソン
	Colorio PM-850PT
	新エンジンを搭載したダイレクト印刷対応プリンタ
	TEXT:薮田織也　Oliya Yabuta

本体右上部の液晶ディスプレイで本機を直接操作可能。非常に簡易ではあるが、トリミングなどもできるようになった

　セイコーエプソンのインクジェットプリンタ、Colorioシリーズの中でも、メモリカードからダイレクトにプリントできるPM-790PTはデジタルカメラのビギナー層から多くの支持を得ている。今回紹介するPM-850PTはこのPM-790PTの後継機種だ。本製品はColorioシリーズの中級機PM-830Cと同等の印刷エンジンを持ち、最小ドットサイズは4plで3種類のドットサイズを打ち分けるMSDT(マルチサイズドットテクノロジー)を搭載した、解像度2,880dpiの写真画質プリンタだ。

　デジタルカメラが広く普及した今でも、撮影した写真を印刷するためだけにPCを購入しようという人はまれだろう。もっと手軽にPCなしで印刷できればと感じている人は多いはずだ。こうした需要を受けてPM-850PTは、本体に内蔵するメモリカードスロットに写真データが入ったメモリカードを直接装着するだけで、PCを介さずに印刷できる。標準で対応するメディアはコンパクトフラッシュおよびMicrodrive、メモリースティック、スマートメディアの3種類。しかもこのメモリカードスロットは、PC接続時には外部ドライブとして認識されるのでPCへのデータ転送も可能だ。また、PM-850PTではUSBポートを2つ設けることで、1つはPC接続用として、もう1つはMOドライブやSDメモリーカードリーダーの接続用として利用できる。これらの外部USB機器に本体内臓メモリカードリーダーから読み出したデータを保存したり、USB機器側の写真データをダイレクトに印刷することもできる。

USBホストコントローラを内蔵することにより、外部USB機器を直接接続し、そこからデータを読み出すことができるようになった	標準で、コンパクトフラッシュType2、メモリースティック、スマートメディアの3種類のメディアに対応

標準で付属するアダプタを使用することで、A4サイズまでのロール紙を使用することができる

　メモリカードなどからダイレクトプリントするには、プリンタ本体上部に装備された液晶ディスプレイとボタンで操作する。操作性は良好で、初めて本機を触ったときでもマニュアルを読まないで印刷できた。この液晶にはインクがなくなるなどのエラー発生時にも、対処方法が表示される。

　このほか、プリンタ本体にオプションのプレビューモニタを装着すると、メモリカードの画像やレイアウトをフルカラーモニタで確認できる。

　PCに接続して印刷する場合は、付属のEPSON PhotoQuicker3.1を使うことで、より高度な印刷が行なえる。そのほかの付属ソフトには、フレーム付き写真をプリントできるPRINT Image Framerがあるが、メモリカードにフレームレイアウトと写真データを入れておけば、PCを使わなくてもフレームを使った写真をプリントできる。写真フレームは、エプソンのWebサイトから無償でダウンロードできる。

PM写真用紙への印刷サンプル。この写真のようにハイライト部が多い場合は全体的に良好な印刷が期待できる。ただし、シャドー部の色のジャンプが気になる。プリンタドライバをマニュアルで設定しても、あまり変化はなかった。A4 高速設定で6分50秒、最高品質設定で17分25秒かかった

　印刷品質は、おおむね申し分のない美しさだ。とくにハイライト部の粒状感を感じさせないところなどは、エプソンが言うところの「どキレイ」がウソではないと思わせる。ただし、人物写真で髪の毛の生え際や、肌の陰影など、シャドー部の階調表現能力が多少乏しいのが気になった。これは、PMシリーズの上位機種にもある程度言えることだが、写真は黒が締まらないとほかがいくらきれいでも魅力が半減すると筆者は考えている。もともとエプソンの色の再現性が好きで、個人的にPMシリーズをずっと使い続けている者としては、エプソンに何としてでもこの問題をクリアしてほしいと願っている。

　そうは言っても、色表現力の点で従来のプリンタに比べれば断然進歩しているし、標準でロール紙が使える点や、PCなしで印刷できる簡便さなど、PM-850PTの道具としての便利さは他に類を見ない。デジタルカメラユーザーで、気軽に美しい印刷を行ないたい方にはお勧めの逸品だ。