槻ノ木隆のPC実験室

ファンレスマザーボード「EPIA-E533」活用記
~ファイルサーバー兼ルーター構築/Windows XP編



 前回の記事では、EPIA-E533を使って手頃なデスクトップPCを作ってみたが、性能を考えるとむしろホームサーバーとかファイアウォール兼ルーターの方が向いているし、実際これを狙って購入を考えている人もおられよう。こうした用途にどこまで利用できるか、を今回はちょっと検証してみたい。

 前回すでにWindows XPをインストールしてのテストを行なっているが、デスクトップ向けではなくサーバー用途として利用すると、どの程度の実力を発揮するかをまず確認してみた。


●ファイルサーバーにしてみる

写真はCube-ZEROにEPIA-E533を組み込んだ様子
 まずは順当にファイルサーバーである。家庭内ネットワークが当たり前となった昨今では、自宅に複数台をPCを設置してそのうちの1台をファイルサーバーとして24時間稼動しているユーザーも少なくないはず。通常だと、余ったパーツを組み合わせて自作する事が多いと思うが、ここで普通のケースを使うと設置場所に難があるし、24時間稼動であれば騒音が気になるという人も多いはずだ。こうしたシチュエーションでは、Eden&Cube-ZEROのような小型で騒音を抑えられる組み合わせが役に立つと思われる。

 そこで、ハードウェア構成は前回のままとして、ディレクトリに共有フォルダの設定をして、クライアントマシン側でその共有フォルダをマウントしてアクセスしてみた。テスト方法は

・単純なファイルのコピー
・HDBench 3.30のDisk Access Test
・Ziff-Davis Media WinBench99のDisk WinBench

の3種類だ。

【写真1】回線は100Base-TXだから、どんなに高速でも10MB/secを越えることはありえない。更にサーバーの内部では、HDD→Memory→LANカードという複雑な経路を通ってデータが送られるので、ここのオーバーヘッドもある。それを考えると、8MBというのはかなり高速な方である
 まずファイルのコピーだが、サーバー上に約700MB(730,062,848バイト)のファイルを置き、これをコマンドプロンプトのCOPYコマンドを使ってクライアント側のHDDにコピーする所要時間を手動で測定した。結果はというと109秒でコピーが完了しており、速度は約6.5MB/secという計算になる。リモートのHDDとしてはかなり高速な方である。

 次に、HDBENCH Ver3.30(EP82改/かず氏)のDisk Accessテストを実施した。ファイルサイズを500MBに設定し、Read/Write/Copyを実施するものだ。結果はというとご覧のとおり(写真1)。Readで8MB/sec、Writeで5.7MB/secだから、この結果もなかなかに優秀である。

 最後はZiff-Davis MediaのWinBench99 Version 2.0に含まれるDisk WinBenchである。実際のアプリケーションのDisk Accessパターンをエミュレーションして、その際の実転送レートを求めるというテストだ。内容は2パターンあり、Microsoft OfficeやNetscapeなどのビジネスアプリケーションをメインとしたBusiness Disk WinMark99と、マルチメディア系コンテンツ作成をメインとしたHigh-End Disk WinMark99である。High-End Disk WinMark99に関しては、テストしたアプリケーション毎の平均転送速度も示されることになっている。

 さて、結果は以下のとおりだ。

テスト項目 転送速度(KB/Sec)
Business Disk WinMark99 2,980
High-End Disk WinMark99 6,390


 また、High-End Disk WinMark99の各アプリケーションでの結果は、こんな具合だ。

High-End Disk WinMark
テストアプリケーション
転送速度(KB/Sec)
AVS/Express 3.4 12,600
FrontPage 98 13,200
MicroStation SE 6,630
Photoshop 4.0 5,580
Premiere 4.2 4,140
Sound Forge 4.0 6,520
Visual C++ 5.0 4,650


 アプリケーションによってバラつきはあるが、概ね十分な成績と言って差し支えない。ちなみにBusiness Disk WinMarkの数値が低いのは、小さなデータを煩雑に読み書きする上、ランダムアクセスが多いからで、またHigh-End Disk WinMarkで10MB/Secを越える事があるのは、OSのディスクキャッシュが有効に働いているためである。

 ざっと使った感想では、かなり実用的になりそうな結果である。OSのインストールが終わればCD-ROMドライブも要らないから、これを取り外して空いた5インチベイにHDDを増設して大容量ファイルサーバーにする、なんていうのもなかなか良さげに思える。


●ルーターにしてみる。

 次に、Windows XPを使ったルーターを構成してみた。最近ではかなり高速なブロードバンドルーターでも安価に購入できるので、ルーター単品として見るとメリットはない。ただ通常のPCに近い構成でルーターを作るので、例えばファイルサーバーを兼務させるなど、幅広い活用が考えられる。またWindows XPだとUPnPの対応がなされているから、例えばWindows Messengerのビデオカンファレンスをファイアウォール越しに行なうなんて事をしたい場合にも応用できる。

 そこでPCIスロットにIntel 21143チップ搭載のLANカードを装着し、ルータを構築してみた。ちなみにこのカードだとWindows XPのインボックスドライバが使えるから、単に装着して電源を入れるだけで利用できる。また、Windows XPでルーティングを行うためのサーバー側の設定は比較的簡単で、管理ツールのサービスから「Routing and Remote Access」サービスを開始するだけだ(写真2)。あとは、クライアントのゲートウェイにサーバー(ここではEPIA-E533)のIPアドレスを指定すればOKだ。

 今回最初に構築した環境はEPIA-E533の両LANカードからそれぞれスイッチングHub経由で2台のPCを接続し(図1)、この環境でのスループットを計測した。PC1上ではIIS(Internet Information Services)を起動、先ほどの約700MBのファイルを置き、PC2からIria(Wolfy氏)を使ってhttpプロトコルでダウンロードして転送速度を測定した(写真3)。結果は約3.1MB/secとなり、bps換算では約25Mbps程となる。Bフレッツでは(条件が揃えば)30Mbps強のスループットが得られる事を考えるとちょっと物足りないが、ADSLやCATVには十分なスループットだ。

【写真2】「Routing and Remote Access」サービスを開始すれば、IPルーティングが行われる。ちなみに、「スタートアップの種類」を自動に設定しておけば、PCを再起動してもこのサービスが自動的に開始される 【写真3】PC1のIISサーバーから、Iriaでダウンロードしている画面。この画面は測定途中のものであるが、おおよそ3.1MB/secのスピードであることがお分かりいただけると思う(Iriaの画面上はバイト/Sec表記。 【図1】スループットを計測するために構築した環境のモデル。二つのLAN間をEPIA-E533でルーティングし、PC1ではIISを起動。PC2でPC1上のファイルをHTTP経由でダウンロードした。ちなみにPC1はWindows 2000 Server、PC2はWindows XP Professionalである。マシンのスペックは、PC1がPentium4 1.7GHz、256MBメモリ、40GB HDD、PC2はDuron 1GHz、256MBメモリ、30GB HDDとなっている。ハイエンドではないが、まぁまぁのスペックのマシンだ

 次に、UPnP対応のルーターの動作確認をしてみた。今回は回線の関係で、ISDN用のダイヤルアップルーターを作成したが、他の環境でも応用は簡単なはずだ。

 まず、EPIA-E533とTAをUSB接続し、Windows XP上からダイヤルアップの設定を行なう。ついで、ネットワーク接続の設定からダイヤルアップ接続のプロパティを開き、インターネット接続共有の設定を行えば準備完了だ。これにより、LAN側のクライアントがEPIA-E533を通じてインターネット接続を共有できる。(写真4、写真5)また、Windows XPのファイアウォール機能を利用することで、通過可能なポートを指定することも可能だ。(写真6)。

【写真4】ダイヤルアップ接続の設定からインターネット接続共有の設定を行う。ちなみに後述のファイアウォール機能の設定もここで行い、ファイアウォールの詳細な設定は、右下の[設定]ボタンより行える 【写真5】インターネット接続共有を行うと、ダイヤルアップ接続のアイコンの横に「共有」が表示される。ファイアウォールの設定も同様に表示される 【写真6】ファイアウォールの詳細設定画面。ファイアウォール機能を有効にすると、すべて遮断(DROP)されてしまうので、透過(PASS)したいポートを設定する必要がある。画面上の項目はデフォルトで用意されている設定項目だが、[追加]ボタンから特定のポートを手動で指定することもできる

 上でも触れたが、このWindows XPのファイアウォール機能を使うメリットの一つにWindows Messengerへの対応が挙げられる( http://www.microsoft.com/japan/windowsxp/pro/techinfo/deployment/natfw/default.asp )。これは、Windows XPのファイアウォール機能がUPnP(Universal Plug & Play)に対応しているからである。最近は市販のルーターでも「Windows Messenger対応」と銘打たれた物があるが、きちんと対応した製品の場合はやはりUPnP対応になっている。(*1)

 この動作を検証するため、PC1をEPIA-E533経由でダイヤルアップ接続、PC2をモデムを用いて図2のようにダイヤルアップ接続してWindows Messengerでビデオ&音声チャットを行ってみたところ、写真7のように正しく映像が正しく送られる事が確認できた。

 勿論、EPIA-E533と回線の間にUPnPに対応していないルーターが挟まれていると、そこでNATが動いてしまうためにWindows Messengerのビデオチャットなどは利用できない。だから、ルータータイプのADSLモデムなどを利用していて、ブリッジモードに変更できない場合はこのサーバーを立てても意味が無いので注意してほしい。

(*1)Windows Messenger対応といいながら、UPnPを使ってない製品もある。この場合、Windows Messengerで確かにメッセージは送れるのだが、ビデオチャットは不可能だったりする。こうした製品を購入の場合、ちゃんとビデオチャットが出来るかどうかを確認した方がいいだろう。

【図2】Windows Messengerの動作テストを行うために構築した環境のモデル。ルーターとなるEden搭載マシンで、Windows XPのファイアウォール機能を起動している 【写真7】の設定を施したあとで、Windows Messengerのビデオ&音声チャットを利用した状態。ファイアウォールを挟んでもWindows Messengerのビデオチャットなどが利用できるのは大きなメリットだ

(Linux編に続く)

□VIAのホームページ(英文)
http://www.via.com.tw/
□製品情報(英文)
http://www.viavpsd.com/products/epia_mini_itx_spec.jsp
□関連記事
【5月2日】ファンレスマザーボード「EPIA-E533」活用記
~DVD再生で静音デスクトップPCとしての実力を見る
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0502/eden.htm

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(2002年5月9日)

[Reported by 槻ノ木隆]


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