一ヶ谷兼乃の |
何度も言うようであるが、筆者にとってインターネットは電気、ガス、水道などと同じように欠かせないインフラだ。
現在、筆者宅ではBフレッツ・ベーシックタイプ、フレッツ・ADSL 8Mの2つのサービスを受けている。今回は、筆者が実際に体験した、これら2つのブロードバンドインターネットサービスにまつわるトラブルについてレポートしてみたい。
筆者はルータさえ安定して動作していれば、Bフレッツというサービスは絶好調だと確信していた。気になっていた光ファイバーも、デリケートに扱わなければならないとはいってもほとんどの部分は十分に補強されていることがわかり、安心して利用できていた。
しかし、ある日帰宅してインターネットへアクセスしてみると、まったく通信できない状態になっていた。
最初はルータが不安定になっていたのかと思い、他の機種へ交換してみたものの、やはりプロバイダへ接続できないのだ。続いてフレッツ・スクエアへも接続できないことがわかり、Bフレッツの不具合と判断することができた。
バックアップ用として利用しているADSL回線経由でインターネットへアクセスし、NTT東日本のホームページで障害や工事などを確認したが、特に予定はなかった。不思議には感じたものの、一晩もすれば回復するだろうと楽観視していた。
しかし、次の日、仕事に出かけ、帰宅しても復旧しないために、NTTへ連絡を行なった。すると、簡単な検査をしてもらった結果、局側から筆者宅まで光ケールの信号が届いていないことが判明した。
筆者宅側の機器などはいじっておらず、メディアコンバータへの電源も正しく供給されているため、宅外からNTT収容局間の問題であることが考えられた。そのため、屋外の点検だけですむのではないかと主張したが、工事には必ず立会いが必要だということであった。
工事は平日の昼間しか行なっていないことと、すでに対応業者が別な用件で埋まっている場合には対応できない、ということで急遽入っていた予定をキャンセルし、工事に立ち会うことにした。その結果なんとか電話連絡した翌日の夕方に工事ができることになった。ちなみに、障害を報告してから24時間以上サービスが停止した場合には日割りで料金が割り戻されるということであった。
翌日、担当者が筆者宅を訪れ原因の調査が始まった。NTTの局舎と連絡をとりながら、調査を行なっていたが、筆者宅内の問題ではなさそうだということになり、戸外の光ファイバーを調査することになった。メディアコンバータから光ケーブルが外され、光ケーブルにペン型の機器を接続して、戸外の調査に出て行なった。しばらくしても出て行ったまま帰ってこない。
実はこの調査の日に担当者が筆者宅に訪れる前に、筆者もどこか変わったことがないかと、筆者宅から光ケーブルを引き出してある電柱までをチェックしてみた。すると、電柱のところにある光ケーブルを引き出してあるボックスの辺りに、垂れ下がっているケーブルを確認することができたのだ。しかし、それ以上のことはわからないので、そのまま工事担当者を待っていたのだ。
しばらく筆者も建物のまわりをうろうろしていると、調査をしている担当者を見つけた。調査の状況を聞いてみると、はっきり判らないということと、他の担当者の到着を待っているとのことであった。
そこで、気になっていた垂れ下がっているケーブルのことを伝え、部屋に戻って待っていると、後から到着した担当者が筆者宅に来て、指摘した部分でケーブルが切断されていたと報告を受けた。
すぐにケーブルを接続しなおし、筆者宅内で接続の確認が行なうと、フレッツ・スクエアの速度ページで40Mbps強と表示され、復旧されたことが確認された。
ケーブルが切断されていた電柱の近くでは、ここ数カ月の間、大規模な建物の工事が行なわれており、何度もどこかの業者が電柱で作業をしているのを見ている。修復に来てもらった担当者によると、どこかの業者が電柱での作業中に間違えて引きちぎってしまったのではないかということであった。
結果的に、NTTに連絡をした翌日には復旧したものの、復旧工事には必ずユーザーの立会いが必要であることには疑問が残る。土日や夜間でも対応してくれるのであれば問題ないが、平日の昼間しか対応してくれないとなると、筆者のように一人住まいの身には立ち会うことさえ難しい。
確かにユーザー宅内の設備が問題になる確率が高いのは理解できなくもないが、ユーザーや障害の状況によっては、最初に宅外の調査から行なうといった柔軟性のある対応ができないものだろうか。
筆者宅ではBフレッツのサービスを利用していることもあって、フレッツ・ADSLのほうはバックアップ的な利用方法が主である。
以前は1.5Mタイプを利用していたが、筆者宅の住所でも8Mタイプのサービスが開始されたことと、価格の差が月々200円しかないことから、8Mタイプに移行することにした。こちらのほうはプロバイダとして、NTT-MEのWAKWAKを利用しているが、1.5Mタイプでも8Mタイプでも月々の料金は変わらない。
1.5Mタイプから8Mタイプへの変更を電話で申し込むと、工事日が決定した。筆者が利用していたNTT東日本「ADSLモデム NII」では、8Mのサービスに対応できないために、新たにNTT東日本「ADSLモデム MN」を新宿の量販店で購入した。新たに購入した「ADSLモデム MN」はフレッツ・ADSL 1.5Mタイプでも利用できることから、8Mタイプへの移行日を待たずして、入れ替えを行なった。
8Mタイプへの移行の工事に関してはNTT側だけで行なわれるため、帰宅後に通信の確認を行なった。フレッツ・スクエアの通信速度の確認を行なったところ、1.2Mbps程度から4Mbps強になっていたため、無事に工事が行なわれたことが確認できた。このときは、これでフレッツ・ADSL 8Mタイプに問題なく移行できたと思っていた。
筆者宅のフレッツ・ADSLは、通話のできるアナログ回線と共用するTYPE1での利用をしている。
あるとき、たまたまADSLモデムの前にいたら、電話がかかってきた。すると、それと同時にADSLモデムのLINKランプが消灯した。筆者が電話に出てからLINKランプが点滅しはじめ、しばらくしてLINKランプが点灯するという現象が起こった。
これは電話が着信したときに、フレッツ・ADSLの通信が切断されたのちに、通信が回復した、ということに他ならない。フレッツ・ADSLをバックアップ的に利用していたことと、それほど頻繁に電話がかかってくることがないために、この現象に気がつかなかったのである。
電話が着信するたびにフレッツ・ADSLの通信が切断される現象は、何度か試してみると確実に発生することが判った。1.5Mタイプでは気がつかなかった現象なので、まずはスプリッタの故障を疑い、通信関係の掲示板で評判のいいメルコ「IGM-FSAC-SP」に交換してみた。しかし、それでも着信時のリンク切れは解消しなかった。
こうなると考えられる原因は、ADSLを利用している回線に接続されている保安機である。現在、NTTで利用されている保安器にはADSL通信に悪影響を及ぼすものがあり、その代表的なものに「6PT」と呼ばれる型番の保安器が存在する。
調べてみると全ての「6PT」で筆者宅で起こっている不具合が起こるわけでもないということだが、あるロットに関しては確実に同じ現象が確認されている。まずは、筆者宅のあるマンションにこの「6PT」が接続されいるかどうかを調べてみたが、そのときは型番までは確認できなかった。
とりあえず保安器に問題があると仮定しても、保安器はNTTの管轄のもので、筆者が直接交換するといったことはできないので、NTTへ電話をかけて相談してみた。
筆者宅はNTTの収容局からの距離が比較的近い(1km以内)であることと、ADSLのリンクが切れるのは電話着信時に限られることを伝えたが、原因はどこにあるのかは限定できないとの返答だった。筆者から保安器が原因ではないかと聞いてみたが、保安器が原因であるという可能性が高いものの、他にも原因があるのではないかと、はっきりしない答えしか返ってこなかった。
このとき筆者としては、まずは最も可能性が高い保安器を交換して、それでもダメであれば次の原因を調査するといった手順を想定していたのだが、NTT側の提案は回線調整であった。
回線調整の内容を具体的に説明してもらったが、ADSLモデム間のリンク速度を低くするということであった。これはフレッツ・ADSLを利用したときの実効速度を強制的に下げて、通信を安定させるということであり、着信時以外では問題が起きていない筆者宅でのトラブルでは、適切でない対処方法だと思えてしかたなかった。保安器が原因になっていると考えていた筆者は、保安器の交換を依頼したところ有料になるという。
保安器の交換により費用が発生することは知っていたが、それは通信速度が低いときの対処として行なう調整の場合だと解釈していた。今回はADSLでの通信が電話着信時に確実に切れるというまったく別の障害であるため、故障扱いで費用は発生しないと思っていたがそうではないらしい。
フレッツ・ADSLは、「ベストエフォート」のサービスであると言われている。NTTの担当者によると、特定の状況下で通信が確実に切れてしまう状態でも、このベストエフォートの範囲であり、故障ではないというのだ。この回答には、はっきりいって筆者は違和感を覚えた。NTTの収容局からユーザー宅までの間で起こるISDN回線やAM放送、様々な機器からのノイズなど、NTTが予測できないことが原因で、速度が遅くなったり切断されてしまう場合もあることは覚悟していたが、今回のようにNTTの管理下にある保安器が原因だったとしても、障害であって故障ではないということなのである。
例えば、通話していてノイズが聞こえる、といった障害なら、故障と判断され、保安器に原因があれば無償交換となる、という説明をされたが、それは当たり前のことである。
保安器が原因でも、通話とフレッツ・ADSLでは対応が異なることをはじめて知ることとなった。保安器自体、月々のアナログ電話の基本料金で保守されていると思っていたため、特定の状況下で確実かつ頻繁に起こるフレッツ・ADSLでの障害の場合には無償対応が適用されないとは思いもよらなかった。
まぁ、特定の状況下で確実かつ頻繁に起こるフレッツ・ADSLでの障害があったとしても、ベストエフォートの範囲であり、何がどうであれ通話に支障がなければ、保安器の交換は有料であるという決りであるのであれば、この障害を解決するための費用は負担するしかないと理解したので、保安器の交換を申し込んだ。
工事日が一週間後に決まり、筆者宅内のMDFに保安器があるため、工事には立会いが必要となった。やがて工事担当者が筆者宅に訪れ、早速工事を開始してもらった。
MDFの位置を教えると、即座にユニット型の保安器が交換された。工事自体は数十秒の作業である。交換前の保安器をみると、明らかに「6PT」と書かれていた。新しく交換された保安器には「6P」と書かれていた。
工事担当者がいうには「ISDN用からADSL用に変えました。」ということだった。早速、携帯電話からADSLを利用している回線に電話をかけてテストしてみたが、今度はADSLでの通信が切断されることは無くなった。やはり原因は保安器にあったといえるわけである。ちなみに、この実質数十秒間の工事の結果、税込み7,665円の費用が筆者に請求されることになった。
NTT側でユーザーがどの保安器を利用しているのかを把握しているのであれば、フレッツ・ADSLの申し込み時に、保安器に関する注意を促してくれてもよいのではないだろうか。
ところで、以前はこの件と同様な保安器の交換は、無料で行なわれることがあったようだ。しかし、NTT以外のADSLサービス業者が同様の工事をする場合、有料工事となっていたことから、昨年12月に公正取引委員会からNTTに対して警告( http://www.jftc.go.jp/pressrelease/01.december/01122501.pdf )が行なわれた。この警告以降はフレッツ・ADSLユーザーでも、ほとんどは有料工事となっているようだ。
少なくともTYPE1の場合、フレッツ・ADSLユーザーでなくとも通話のサービスに関してはNTTに対して月々基本料金を支払っているのであるのだから、保安器の無償交換を検討してもいいのではないかと思うのは、筆者だけであろうか。
このようなトラブルがあったフレッツ・ADSLの8Mタイプへの移行であるが、現在は安定して利用できている。この回線に接続されているのは、稼動3年目となるLINKSYS「BEFSR41」である。この機種も相変わらず安定動作しており、安心して利用できるルータとしては一押しの製品だ。
フレッツ・ADSL 8Mタイプでは、スループット性能も十分であり、UPnPへの対応ファームの更新も頻繁に行なわれている。ウィザード形式でのセットアッププログラムや初心者向けの資料が少ないために、全ての人にお勧めできるとはいえないが、ルータの簡単な設定ならできる程度の知識を持っているユーザであれば、問題なく利用できるだろう。
この先のことはわからないが、フレッツ・ADSLの回線ではハードウェアが壊れない限りこのLINKSYS「BEFSR41」を使っていくことになりそうだ。
このように、いくつかのトラブルはあったものの、全ては解決できており、快適なインターネット環境は維持されている。特に、ADSLサービスが安定しただけでも気分的な違いがあり満足している。とりあえず、現在は安定した環境を得ることができているが、次はUPnP環境を体験したいものである。
(2002年5月2日)
[Text by 一ヶ谷兼乃]