IDF Spring 2002レポート 3GIO編

PCのフォームファクタを劇的に変える3GIO
~デスクトップPCでのサポートは2004年

会場:Moscone Center
会期:2月25日~28日(現地時間)



 Intelは、昨年の8月末に開催されたIDF Fall 2001において、PCIバスの次世代のバスとなる3GIO(3rd Generation I/O)の概要を発表した。それから、半年たち、今回のIDF Spring 2002では3GIOの1.0ドラフトの候補版がリリースされ、PCI-SIGにて検討中であることが明らかになった。

 Intel副社長兼デスクトッププラットフォームグループジェネラルマネージャのルイス・バーンズ氏は「3GIOのプランは順調に進行中で、2003年の後半には最初の3GIOをサポートしたチップが登場する」と述べ、進行が順調であることを強調した。また、同時に3GIOを利用してPCのフォームファクタを劇的に変更させる計画があることも明らかにし、3GIOを利用した新フォームファクタの“Big Water”の計画について語った。


●2003年の後半にサーバー向けチップへ、2004年にデスクトップPCへ

ルイス・バーンズ氏。手に持つのは“Big Water”のコンセプトモデル 公開された3GIOのスケジュール。第2四半期にはスペックが確定

 バーンズ氏は3GIOの現在の状況を次のように語った。「現在PCI-SIGのAWG(Arapahoe Work Group、3GIOの規格策定を担当している)により最終的な規格の1.0に向けて1.0ドラフトの候補版を検討している段階だ」と述べ、間もなく最終的なスペックが確定される予定であることを明らかにした。

 基調講演後に行なわれたプレスセッションでは、PCI-SIGエグゼクティブディレクターのリチャード・ベック氏は「1.0のドラフト版はWW13(第13週、3月の終わり)にPCI-SIGに送られ、第2四半期にPCI-SIGのメンバーによってレビューされる。スペックが最終的に確定されリリースされるのは第2四半期の終わりになるだろう」と述べ、第2四半期には3GIOの正式なスペックがリリースされる見通しであると説明している。実際に製品が登場する見通しだが、ベック氏は「2002年~2003年のタイムフレームに複数のセグメントに各社が製品を投入する」と述べた。

2003年の後半よりIntelが対応したシリコンの出荷を開始 Intel 82450EMを搭載したGigabit Etherカード。第2四半期に市場に投入される

 気になるIntel自身の3GIOに対応した製品の投入だが、バーンズ氏は「Intelは2003年後半に、最初のシリコンチップで広いレンジのセグメントで3GIOをサポートする」と述べた。気になるデスクトップPCで3GIOがサポートされるタイミングについては特に説明はなかった。

 そこで筆者がIDF期間中にさまざまな情報筋に確認したところ、おおまかに言うとIntelは2003年の後半にサーバー向けチップセットで3GIOのサポートを始め、2004年の前半にデスクトップPCでサポートすると計画していることが明らかになった。

 IntelはIDF Spring 2002の初日に“Kenai 32”のコードネームで知られている32bit PCIバスで利用可能なGigabit EtherコントローラチップのIntel 82540EMを投入している。Intel 82450EMはMACとPHYを非常に小さな1チップに統合したGigabit Etherチップで、第2四半期にも搭載したGigabit Ethernetカードが投入される。

 Intelがこの後継として3GIOに対応したチップとして計画しているのがコードネーム“Northway”で、2004年前半に投入されるという。つまり、これは3GIOのデスクトップPCでのサポートがこのタイミングになるとIntelが考えているなによりの証だ。

 また同時に複数のソースは、Intelがサーバー向け10Gigabit EtherやGigabit Etherのチップは2003年の後半になると説明していると明らかにしていることからも、サーバーが先行するというのもほぼ間違いないだろう。

 既に2003年に登場するSpringdaleでは3GIOはサポートされない可能性が高いことが判っており、実際バーンズ氏が語った2003年の後半のコンセプトPCプラットフォームという仕様の中でも、3GIOについては何も語られていない。2004年にリリースされると見られるSpringdaleの次の世代のチップセットで3GIOがサポートされると考えるのが妥当だろう。


●PCのフォームファクタを劇的に変化させる3GIO

 また、IntelとOEMメーカーは3GIOを利用して現在のPCフォームファクタを劇的に変えることを検討している。バーンズ氏は基調講演において「3GIOの技術を利用した新しいフォームファクタを提案していく。これを“Big Water”とよび、今年の秋のIDFでより詳細を明らかにし、スペックは2003年に、実際の製品は2004年に登場させたい」と述べた(このこともデスクトップPCにおける3GIOのサポートが2004年になるという1つの証拠と言える)。

展示されたモックアップ。左側がCPUユニット、右側がデバイスユニットでHDDや指紋認証用3GIOカートリッジなどを内蔵する 3GIOカートリッジのモックアップ。下にあるのが3x、上段の左が2x、右が1xのモジュールとなる。手前に見えるのがコネクタ 3GIOカートリッジの前面。これはUSBポートで、EtherモジュールであればRJ-45がついている

 さて、その“Big Water”自体は特におどろくべきものではないが、そこに使われている技術は、PCのフォームファクタを大きく変える可能性があるものだ。

 1つは、3GIOで規格化が予定されている外部ケーブルを利用し、CPUとデバイスなどを分離して設置する手法。Intelは自社の3GIOのブースにおいて、DELLのロゴが入ったモックアップを公開していた。

 このモックアップでは、CPUユニットとデバイスのベイが分離しており、その間が3GIOの外部ケーブルで接続されていた。イメージとしては、ノースブリッジより上がCPUユニットに内蔵され、3GIOの外部ケーブルでデバイス側のユニットに接続され、デバイス側のユニットにサウスブリッジにつながるデバイス(例えばHDDなど)が接続されるという形となるだろう。ちょうど、何年か前にIBMが製品化したディスプレイにCD-ROMドライブやキーボード、マウスなどが接続される形になっていた“黒いAptiva”のようだ。

 これは何もデスクトップPCに限った話ではなく、例えば3GIOをサポートしたノートPCでは、3GIOの外部ボックスを3GIOの外部ケーブルで接続すれば、ドッキングステーションは不要になる。さらには、デスクトップPCとその外部ボックスを共有するということだって不可能ではない。

□関連記事
【'96年10月30日】日本IBM、本体を2つに分離した、新「Aptiva Sシリーズ」を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/961030/aptiva.htm


“Big Water”を説明するスライド 3GIOのセッションで示された3GIOモジュールを説明するスライド 3GIOの外部ケーブルによる分離システムを説明するスライド

 さらに、3GIOデバイスのカートリッジ化の提案も行なわれている。これまでの拡張カードを、3GIOのコネクタを持ったカートリッジに入れることが検討されており、例えばベースカートリッジでは1x(2.5Gbps)の3GIOコネクタがサポートされる。このベースカートリッジを倍の大きさにすると、コネクタは2つ付くことになるので、3GIOは2x(2.5Gbps×2=5Gbps)の帯域をサポートする。さらには、3x、4x……とカートリッジの大きさを変更していくことで、帯域幅も増やすことができる仕様になっているという。

 今回はあくまで提案用のモックアップだが、実際にドラフトの規格ではこうしたカートリッジも計画されているようだ。展示されていたモックアップでは、Ether、USBポートなどの利用例が提案されていた。見た感じは、まさに昔Compaqが提案していた“デバイスベイ”のコンセプトによく似ている。それもそのハズで、このカートリッジの仕様を提案しているのは、デバイスベイを担当していた元Compaqのエンジニアであるという。

 これらが実現すれば、2004年のコンピュータは大きく変動することになる。本体は足元において、必要なデバイスベイだけを机の上に置く。さらにそのベイにはモジュール上の拡張カードを気軽に抜き差しして機能の拡張を行なう、そんな日がくることになるのかもしれない。

□関連記事
【'97年11月20日】COMDEX Fall '97会場レポート
~デバイスベイなどIEEE1394関連の展示が目立つ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971120/ieee1394.htm


●PCI-Xを続けたいサーバーベンダとの思惑の違いも

 既に述べたように、Intelは2003年の後半にはサーバーにおいても3GIOを導入したいと考えている。ところが、どうもサーバーメーカー側はそうは考えていないようだ。PCI-SIGのリチャード・ベック氏は「3GIOはまずデスクトップPCやモバイルPCで立ち上がり、それからサーバーへと上がっていくことになる」と述べ、サーバーに先に導入し、それからデスクトップPC、モバイルPCと下りていくというIntelとは若干考え方が異なっている。

 ベック氏がそうした発言を行なう理由は、PCI-SIG、さらに言えばその背後にいるサーバーベンダが、PCI-Xを立ち上げたばかりだからだ。実際に、各サーバーベンダや周辺機器メーカーはPCI-Xに対応した拡張カードを発売しており、実際に購入している顧客はすくなくない。

 その顧客に対して、「来年から3GIOになるので、PCI-Xにはあまり投資しないで欲しい」とは言えないし、そんなことになれば買い控えを引きおこしかねない。したがって、サーバーベンダはもう少し長くPCI-Xをやっていきたいと考えているところが多いのだ。

 これにたいし、デスクトップPCではPCIバスは10年間使ってきたバスで、帯域幅も十分ではなくなりつつある。このため、かつてのISAバスからPCIバスのように移行が行なわれるということに対しては合意ができており、こちらに関してはIntelの思惑どおり進むことことに異を唱える関係者は少ない。これがベック氏が「まずはデスクトップやモバイルで、サーバーは後まわし」という発言につながっている原因だと考えていいだろう。このあたりをどう調整するかも3GIOの課題と言えるだろう。


□Intel Developer Forum Spring 2002のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/spr2002/index.htm

(2002年3月1日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 impress corporation All rights reserved.