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●IntelがJEDECでDDR II策定に協力
ついにIntelが正式に「DDR II」メモリへのコミットメントを明らかにした。
Intelは25日(現地時間)から開催されている開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」で、2002年とそれ以降のメモリプランを発表。その中で、DDR IIを2004年のタイムフレームで立ち上げるプランを発表。また、JEDEC(米国の電子工業会EIAの下部組織で、半導体の標準化団体)で進行中の、DDR IIの規格策定にも協力していることを明らかにした。これで、昨秋以来このコラムでレポートしてきた、IntelがDDR IIを採用するという計画が、公式のものとなった。
Intelが今回明らかにしたのは、DDR IIをデスクトップ、モバイル、サーバーのそれぞれに適用することを考えていること。そのためにJEDECと協力して、DDR IIのスペック変更を行なってきたこと。Intelによると、同社の働きかけによって行なわれたスペックの変更は以下の通りだ。
【システムの堅牢性を高める追加機能/変更】
・DIMMピンアウト
・On Die Termination(終端抵抗のDRAMチップへの搭載)
【性能/サーマルを向上させる追加機能/変更】
・Fast 400MT/sec 3-3-3タイミングスペック
・512Mbit品のページを1Kに(従来は2K)
【デスクトップ向け追加機能】
・バースト長を4と8の両対応に(従来は4のみ)
【サーバー向け追加機能】
・1Gbitまたはそれ以上の容量へのアドレッシング
【モバイル向けの追加機能】
・ローパワーモード
●仕様変更と熱がDDR IIを遅らせた
Intelは、当初2003年中盤までにDDR IIを立ち上げる予定だったが、今回、2004年立ち上げにずれたことが正式に明らかになった。その理由は、上記のようなスペック変更を9月頃からIntelが提案したことと、消費電力(発熱)問題だった、とある関係者は伝える。スペック変更は、実際に昨年9月からこれまでかかっており、DDR IIのオリジナルプランより約半年以上のずれが生じてしまっている。
消費電力は、DRAMチップの電圧に関係している。Intelの当初のスケジュール通りのDDR II立ち上げの場合、当初登場するDDR IIチップの電源電圧(Vdd)は2.5Vになってしまう。ところが、2.5Vコアの場合は、Intelの予想より消費電力が高くなり過ぎてしまうため、Intelは1.8Vコアでの立ち上げに変更したという。1.8Vで立ち上げる場合は、プロセス技術の関係から、どうしても時期は2003年後半以降にずれ込んでしまう。Intelは、今回のメモリのセッションで、DRAMテクノロジの重要事項として、「Thermal Envelop(熱範囲)」を下げることを挙げており、熱と消費電力が問題になったことを伺わせている。
ただし、あるDRAMベンダーによると、Intelは可能ならDDR IIの予定をもう少し前へスライドさせたいと考えているという。そのため、遅くとも来年秋までには、JEDEC規格完全準拠のDDR IIチップ(DDR IIa)のサンプルを、Intel社内の検証用に出して欲しいと要請しているという。
●DDR333サポートは公式には発表せず
IDFで公開されたメモリロードマップ |
また、Intelは全体的なメモリ戦略として、メインストリームデスクトップとサーバーがSDRAMからDDRメモリへと移行し、モバイルとワークステーションもそれに続くという流れを示した。今回Intelが示したメモリテクノロジロードマップでは、RDRAMも依然としてロードマップ上に存在するが、その役割は大幅に縮小した。また、SDRAMは縮小に向かい、最終的に消えるという見通しも示された。
ただし、DDR266の発展規格であるDDR333に関しては、今回、採用は明確にされていない。Intelは、公式にはDDR333プラットフォームの堅牢性とDRAMベンダー側の歩留まり、そして価格に依存すると説明するに止まった。だが、今回のIDFでは、DDR333について、様々なソースから、ニュアンスの異なる情報が入っている。これについては別途レポートしたい。
●さらに後退したRDRAMの位置
今回のIntelの説明では、RDRAMは、デスクトップのハイパフォーマンスセグメントと、ネットワークセグメントで辛うじて残るに過ぎないことになった。また、1年前のIDFで、RDRAM普及の切り札として示された低コスト版RDRAM規格「4i(4インディペンデントバンク構成)」についても、大きく態度を後退させた。IntelのAbid Ahmadディレクタ(Platform Memory Operations)によると、Intel 850は4iをサポートする計画を持たないという。では、4iはというと、ネットワークプロセッサでサポートするため、ネットワーク機器分野で使われるだろうという。
しかし、これは言い訳だと見られる。というのは、4iはPC市場でこそ受け入れられる規格であり、ネットワーク市場向けではないからだ。
ネットワーク機器では、少ピンカウントでハイパフォーマンスのメモリを必要とするため、RDRAMが採用されている。そのため、ユーザーの多くは現行の32d(32ディペンデントバンク構成)で性能の高いRDRAMを求めていると言われる。実際に、RDRAMがネットワークエリアに絞り込まれたため、RDRAMを製造するDRAMベンダーはハイパフォーマンス品へのシフトを急いでいる。そうした市場で、性能が落ちる4iがそれほど受け入れられるとは思えない。
だが、DRAMベンダーでは、Samsung Electronicsがすでに4i RDRAMの256Mbit品を製造してしまっている。Intelの発言は、Intelの路線に乗って4iを開発したSamsungへの配慮と考えられる。Intelは、当初今年中盤に4iサポートのチップセット「Tulloch(タラク)」を出す予定だったが、取りやめている。つまり、Samsungはハシゴを外されてしまった格好になっている。ちなみに、もう一方のRDRAMベンダーであるエルピーダメモリは、4i開発をストップしたことを明らかにした。
(2002年2月27日)
[Reported by 後藤 弘茂]