AMDがHammer、AMD-8000チップセットシリーズを初公開

ついに公開されたHammer。左がClawHammerで、右がSledgeHammer

2月26日(現地時間)発表



 AMDは、IDFの期間中にプレスブリーフィングを開催し、同社の次世代CPUとなるHammerファミリー、およびそのチップセットとなるAMD-8000チップセットを公開した。AMDが公開したHammerはA0ステップの初期サンプルだが、Windows XPや64bit Linuxなどの実動デモも行なわれた。本レポートではそうしたHammerの姿に迫っていきたい。


●40×40mmのヒートスプレッダ付きμPGAパッケージを採用

 今回AMDが公開したHammerは、ClawHammer、SledgeHammerの両製品で、それぞれ754ピンのSocket 754、940ピンのSocket 940で利用することができる。パッケージはμPGAパッケージで、Pentium 4と同じようにヒートスプレッダがついており、40×40mmという小型パッケージとなっている。

 両者の違いはピン数以外にも、ダイがはりつけられているインターポーザーがClawHammerがAthlon XPと似た茶色のパッケージであるのに対して、SledgeHammerは桃色になっており、SledgeHammerのほうがインターポーザーの厚さがややあるのが大きな違いと言える。

ClawHammer。754ピンで、Socket 754で利用することができる ClawHammer用ソケットのSocket 754

SledgeHammer。940ピンで、Socket 940で利用することができる SledgeHammerの裏側(左のCPU) ClawHammer(左)とSledgeHammer(右)の厚さの比較

 同時に、先日発表されたばかりのHammer用チップセット、「AMD-8000シリーズ」を搭載したマザーボードも公開された。公開されたのは、AMDのリファレンスマザーボードとなるSOLO 2で、ノースブリッジのAMD-8151、サウスブリッジのAMD-8111から構成されていた。CPUソケットはClawHammer用のSocket 754が搭載されており、メモリソケットはDIMM×2で、対応するモジュールはPC1600/2100/2700となっている。AMDのジョン・クランク氏は「このマザーボードのPCBは4層で、コストは非常に低コストである」であると述べ、構成部品も低コスト化できることを強調した。

 また、ClawHammerの実働デモも行なわれた。1つのシステムでは32bit OSであるWindows XPでOffice XPを動作させ、もう1つのシステムではx86-64の64bitコードで書かれた64bit Linuxを動作させ、そこで64bitネイティブのアプリケーションと32bitネイティブのアプリケーションを同時に実行させていた。

AMDのClawHammer用リファレンスマザーボードのSOLO 2 AMD-8000シリーズのAGPトンネルとなるAMD-8151。SOLO 2でノースブリッジとして採用されている AMD-8000シリーズでI/OハブとなるAMD-8111

電源コネクタはPentium 4マザーボードと同じ構成 実動デモの模様。手前では64bit Linuxの上で32bitと64bitのアプリケーションを同時に走らせているデモ、奧はWindows XPとOffice XPを実行しているデモ。なお、クロックなどは今回は明らかにはされなかった


●メインメモリはPC2700へ対応、ClawHammerは16bit HyperTransportをサポート

 今回は細かなHammerのスペックもいくつか明らかになった。メモリバスはDDR200/266/333をサポートし、それぞれを搭載したメモリモジュールであるPC1600/2100/2700を利用することができる。ClawHammerではメモリのチャネル数は1チャネルで、PC2700(DDR333搭載)を利用した場合にはピーク時帯域幅は2.7GB/Secとなる。利用できるメモリモジュールはUnbufferedで、最大で2DIMMをサポートすることになる。1Gbit DRAMを利用した2GBのメモリモジュールを利用することで、最大4GBまで増設できる。SledgeHammerは2チャネル構成になっており、PC2700(DDR333)を利用した場合には、ピーク時帯域幅は5.4GB/Secとなる。

 HyperTransportの構成だが、デスクトップPC向けClawHammerは16bit幅のHyperTransportをサポートし、1.6GHz(800MHzのDDR動作)のクロックで、上り下り併せて6.4GB/Secの帯域幅を実現する。SledgeHammerも、16bit幅、1.6GHzでピーク時帯域幅は6.4GB/Secというのは同等だが、最大で3つまでのHyperTransportをサポートしている。この3つのHyperTransportにより、例えば2つは他のSledgeHammerと接続し、もう1つでPCI-XトンネルやI/Oハブと接続することになる。

 また、エントリーサーバー向けにClawHammer-DP(ClawHammerのデュアルプロセッサ版)というCPUが用意されているが、このClawHammer-DPのHyperTransport構成はデスクトップ版とは異なっている。基本的にはClawHammer-DPは、デスクトップ版のClawHammerと同じピン数になっているのだが、ClawHammerのデスクトップ版が16bitのHyperTransportが1ポートとなっているのに対して、ClawHammer-DPでは8bitのHyperTransportが2ポートとなっている。これらの情報を基に作成したClawHammerのブロック図が、図1、図2だ。今回AMDが公開したSOLO 2は図1のブロック図に相当する。図2はデュアルプロセッサ構成時で、AGPトンネルの代わりに、PCI-Xトンネルを利用した場合のブロック図だ。

図1 ClawHammerのブロック図 図2 ClawHammerをデュアルプロセッサにした場合のブロック図


●課題はDRAMコントローラ統合によるデメリットをどうするのか?

 既に述べたように、今回HammerのDRAMコントローラが、DDR333、つまりメモリモジュールで言えば、PC2700をサポートしていることが明らかになった。クランク氏はHammerのリリース時期を「第4四半期だ」と述べており、それが正しいとすればDDR333が本格普及に近付く時期と言え、妥当な選択であるように思える。

 しかし、先週台北で行なわれたDDR333 Summit、さらには26日にIDFのセッションで行なわれたメモリトラックでもDRAMベンダが表明したように、2004年にはDDR IIをベースにしたDDR400やDDR533などが立ち上がる見込みだ。となると、いきなり1年少々で、HammerのDRAMコントローラは時代遅れとなってしまう可能性がある。

 IDFでのメモリトラック“PC Memory Development Challenges And Solutions”において、AMIのデジー・ローデン氏は「DRAMは2~3年ごとに世代が交替する。それに併せて製品を開発することが重要だ」と指摘している。通常、PCではDRAMの世代が替わっても、チップセットを変えるだけですむ。しかし、DRAMコントローラを統合しているHammerはCPUごと交換しなければいけない。そのため、チップセットだけを交換すればよい通常のアーキテクチャのCPUと異なり、CPU自体を設計し直す必要があり、その開発にかかるリソースはチップセットだけを交換する場合にくらべて大きいと言える。

 以前、IntelもDRAMコントローラをCPUに統合することにチャレンジしたことがある。Timnaだ。TimnaはDirect RDRAMのコントローラを統合していたのだが、Intelの思惑とは異なり、Direct RDRAMの価格は下がらず、結局Timnaがターゲットとしていたローエンド市場には合わない設計になってしまった。しかし、CPUの設計には非常に長い時間がかかり、DRAMコントローラだけを変更するというのは非常に難しい。つまりゼロから設計し直したほうがよいということになる。それならばということで、Timnaはキャンセルされてしまったのだ。

 Hammerの寿命が、ローデン氏のいう「2~3年の寿命」とシンクロしていれば大きな問題ではないが、仮にその寿命がずれたり、あるいはTimnaのように予測と異なり、予定していたメモリがメインストリームにならなかった場合、どんなによい設計であっても、そのCPUの成功は見こめない。つまり、Hammerの命運は、DRAMのトレンドがどうなっているかに左右されるといってもいいだろう。

 この点に関してクランク氏は「メモリ業界がそうした状況にあることは認識している。もちろん、将来のHammerでDDR IIをサポートする必要があり、検討はしている」と述べ、将来HammerがDDR IIに対応するという見通しを明らかにした。ただ、具体的にどのように、例えば現在のHammerを少し改良すれば済むのか、あるいは大幅な改良が必要なのかについては言及しなかった。このあたりがどうなるのかが今後の焦点と言えるだろう。

 確かにこうしたギャンブル的な要素はあるものの、DRAMコントローラを内蔵し、DRAMへの書き込みまでもパイプライン化することで、メモリのレイテンシが大幅に減少し、パフォーマンスの点では大きなメリットがあると言える。はたして、そのHammerのパフォーマンスはどの程度なのか? リリースの日まで楽しみにしたい。

□Intel Developer Forum Spring 2002のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/spr2002/index.htm
□関連記事
【2月21日】AMD、次世代CPU Hammer用チップセット「AMD-8000」の仕様を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0221/amd.htm

(2002年2月27日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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