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●IntelがモバイルでPentium 4で攻勢
Intel モバイルCPU 最新移行図 |
Intel モバイルチップセット 最新移行図 |
Intelの今年のモバイル攻勢がいよいよ始まる。同社は、Pentium 4アーキテクチャをモバイルにも一気に浸透させるつもりだ。そのため、Northwood(ノースウッド)コアの「モバイルPentium 4-M」をかなり安めの価格で投入する。CPU単体の価格で見るなら、同じ価格でPentium III-Mより約500MHzも高クロックのPentium 4-Mが手に入る。バッテリ駆動時間やノートPC本体の薄さなどを気にしないなら、モバイルPentium 4-Mには相当なお買い得感がある。
業界関係者によると、Intelはまず3月の早い時期に、Pentium 4-Mの1.7/1.6GHzを、Intel 845MPチップセットと一緒に発表、続けてすぐにPentium 4-M 1.5/1.4GHzとIntel 845MZチップセットも投入するという。IntelがOEMに示したロードマップでは、A4フルサイズノート(Intelはパフォーマンスモビリティと呼ぶ)セグメントは、一気にPentium III-MからPentium 4-Mへ置き換わることになっているという。つまり、従来のように、徐々にハイエンドからPentium 4-Mを導入するというプロセスは取らない。
もっともIntelは、昨年中盤までもう少し大人しいPentium 4-M導入プランを計画していた。ところが、昨秋にプランを変更、Pentium 4-Mを一気に普及させることにした。といっても、Pentium 4-MのTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)は25~30Wと高いため、薄型A4ノートPC(Intelは「バランスドモビリティ」と呼ぶ)セグメントには入らない。TDPが22W以下のPentium III-Mとは棲み分け、両者は平行して供給される。
しかし、Pentium III-Mのポジションは昨年前半の計画からは大きく後退した。例えば、昨夏の時点では、Intelは今頃Pentium III-M 1.26GHzをリリースし、第2四半期には1.33GHzを出す予定だった。ところが、現在は1.26GHzすら今年後半になってしまっている。つまり、Pentium 4-Mが立ち上がる今年前半は、Pentium III-Mは進展がない。明らかにPentium 4-Mの立ち上げを重視した戦略変更だ。
●Pentium 4-Mに同価格で500MHzの差をつけられるPentium III-M
Pentium 4-M重視の姿勢はCPU価格にも反映されている。従来、IntelのモバイルCPUのハイエンドは600ドル以上で登場してきた。ところが、今回Intelはかなりの低プライスでPentium 4-Mをデビューさせる。1.7GHzは500ドル程度、1.6GHzは400ドル程度、1.5GHzは260ドル程度、1.4GHzは200ドル程度の設定だ。IntelのCPU価格は、クロックが1段上がると約33%価格が上がる法則となっている。この法則に従った価格セグメントで、Pentium 4-MとPentium III-M価格を比べると次のようになる。
セグメント | Pentium III-M | Pentium 4-M |
---|---|---|
600ドル前後 | -- | -- |
440ドル前後 | 1.2GHz | 1.7GHz |
330ドル前後 | 1.13GHz | 1.6GHz |
250ドル前後 | 1/1.06GHz | 1.5GHz |
190ドル前後 | 933MHz | 1.4GHz |
見ての通りの価格設定だ。このメッセージは明快で、パフォーマンスを求めているのならPentium 4-Mのフルサイズノートを、パフォーマンスよりバッテリ駆動時間や薄さ軽さを求めているのならPentium III-Mの薄型ノートをというわけだ。また、この戦略には、Pentium 4-Mの普及加速だけでなく、モバイルのセグメント分けを明快にするという意図もある。
●Pentium 4-M登場で明確になるIntelのモバイルセグメント分け
これまで、Intelのフルサイズノートと薄型ノートのセグメント分けはあまり明瞭ではなかった。しかし、Pentium 4-M発表以降はセグメント分けがはっきりする。つまり、パフォーマンスかモビリティかという、特徴づけだ。例えば、今の時点で同じクロックのPentium III-MとCeleronを比べると、次のようにPentium III-Mの方がはるかに高い。
クロック | Pentium III-M | Celeron |
---|---|---|
1.2GHz | 508ドル | 170ドル |
1.13GHz | 401ドル | 134ドル |
1/1.06GHz | 241ドル | 107ドル |
933MHz | 198ドル | 107ドル |
明確に、パフォーマンスだけなら、薄型Pentium III-Mノートより、フルサイズのCeleronノートを買った方がいいということになる。では、Pentium III-Mのアドバンテージは何かというと、SpeedStepと低いTDPということになる。TDPを比べると次のようになる。
クロック | Pentium III-M | Celeron |
---|---|---|
1.33GHz | 22W/1.4V | 25.6W/1.45V |
1.2GHz | 22W/1.4V | 24.4W/1.45V |
1.13GHz | 21.8W/1.4V | 23.8W/1.45V |
1.06GHz | 21W/1.4V | 23.2W/1.45V |
1GHz | 19.5W/1.4V | 22W/1.45V |
TDPはかなりの差が開く。Pentium III-Mの高クロック品は、低電流チップを選別したものだと思われる。プラス、SpeedStepがあるわけで、同じクロックならPentium III-Mの方が平均消費電力もTDPも低く、モバイル利用に向いている。つまりクロック以外のところでPentium III-Mに、付加価値をつけるという方向がより鮮明になってきたわけだ。
Intel モバイルCPU 低電圧版&超低電圧版 推定ロードマップ |
さらに、今年第2四半期以降を見ると、Pentium III-Mはクロックがあまり上がらないのに、A4フルサイズ向けの高TDPのCeleronはどんどんクロックが上がってゆく。パフォーマンスでは、完全にPentium III-Mが風下になってしまう。ますます、セグメントごとの性格付けがはっきりしてくるわけだ。もちろん、市場がIntelの勝手なセグメンテーションにどう応えるかは、また別な問題になる。
(2002年2月1日)
[Reported by 後藤 弘茂]