インクジェットとレーザー、どちらが自分たちの業務に最適か

 ペーパーレス化が進んだところもあるとはいえ、それでもプリンターや複合機はビジネスに不可欠なアイテムの1つ。個人事務所、SOHO環境、店舗のほか、中小企業から大企業まで、事業規模にかかわらず必要だ。しかし、実はあなたが日々こなしている業務内容に、今使っているそのプリンターや複合機が最適、とは言い切れないかもしれない。

 ひと口にビジネス向けのプリンター・複合機といっても、インクジェット方式とレーザー方式の2種類があり、そこがどちらを選ぶべきか迷いやすい一番大きなポイント。また、それぞれに機能や性能の異なるモデルが用意されていて、自分たちにとって必要十分なモデルがどれかを判断するのもなかなか難しい。方式ごとのメリットを改めてチェックして、適切なオフィスのプリンター・複合機がどういうものか、考え直すきっかけにしてみよう。

「ビジネス」プリンター・複合機は、家庭向けとどこが違う?

 そもそも「ビジネス」プリンター・複合機というのはどういったものなのか、家庭向けのプリンターなどとどう違うのか、というところから解説したいと思う。

 ビジネス向けのプリンターの特徴は、ざっくり言うと「印刷が高速」であること、「給紙枚数が多い」こと、「A3などの大きい用紙に対応」していること、「耐久性能が高い」こと、といった点が挙げられる。複合機はそのプリンターに加えて、スキャナー、コピー機能、FAXなどビジネス用途でよく使われる機能が一体となったものだ。

複合機はプリンター、スキャナー、FAXなどの機能が一体化されている

 印刷速度については、インクジェットかレーザーかによっても変わってくるところではあるけれど、家庭向けプリンターが一般的に1分あたり数枚〜10枚程度印刷できるところ、ビジネス向けは20〜30枚以上と数倍の違いがある。打合せや会議などで、一度に大人数分の資料を印刷する必要が出てくるビジネスでは、印刷速度の差がそのまま仕事の効率に直結してしまう。印刷が速ければ速いほどいい、というのは誰もが想像のつくところだと思う。

 それと関連して、一度に給紙可能な枚数も多いに越したことはない。家庭向けでは用紙トレイにセットしておける枚数が数十枚程度だったりするが、ビジネス向けは数百枚が当たり前。高速に、大量の印刷をこなす際、途中で何度も用紙を補充し直す手間がかかるのはナンセンスだからだ。500枚給紙できるモデルなら、もし20人が参加する会議に20ページの資料を配布するとしても、一発で手間なく出力できる計算になる。

大容量の給紙トレイはビジネス用途に不可欠

 用紙サイズについては、ビジネスでもほとんどのシーンでA4を扱うことができれば十分に思える。ただ、例えば店舗などでチラシを作る時、A4サイズではカラー印刷したとしてもインパクトは薄い。見やすさも考えると、A3サイズの方がはるかにメリットが大きいことは言うまでもないだろう。細い線で緻密に描かれた図面などを取り扱う建築や不動産関連の業種でも、A3という大きなサイズで印刷できることは重要だ。

 また、パンフレットをきちんと印刷所に依頼して作る場合、A4サイズであっても、データ自体は紙の断裁の位置合わせなどに利用される“トンボ”と呼ばれる罫線などが周辺に配置され、実質A4以上のサイズだったりする。これを無理矢理A4サイズで印刷すれば、微妙に実サイズとは異なる縮小されたイメージになってしまう。やはり1回り大きいA3サイズをプリントできる必要があるだろう。

 したがって、A3サイズが必要な業種や仕事というのは、意外に多い。日常業務でA4資料の見開き2ページ分をA3サイズでプリントし、資料閲覧時の見通しをよくするといった使い方もできるはず。A3サイズを直接扱う頻度が多くなくても、A3プリントを活用すると都合の良い場面はビジネスではたくさんあるのではないだろうか。

A4パンフレットのDTPデータをプリント。A3対応なら実サイズで出力できる

 そして耐久性も、頻繁に印刷するビジネス向けだけに、家庭向けより高いことが多い。インクジェットなら10万枚、レーザーなら通常5万枚、高耐久モデルで20万枚以上と、プリンターが世代交代するであろう数年間は必要最小限の消耗品の交換で使い続けられるレベルになっている。

インクジェットとモノクロレーザー、それぞれのメリットとデメリット

 このようにビジネスプリンター・複合機は、速度、枚数、サイズ、耐久性の面で家庭向けとは根本的な性能差があることがおわかりいただけたと思う。次に、オフィスへの導入時に最も大きなポイントとなるであろうインクジェットとレーザーという方式の違いについて、おそらく大まかには理解している人も多いだろうけれど、ここで改めて説明しておこう。

 インクジェット方式のプリンターは、数種類のインクカートリッジから供給されるインクを用紙に吹き付け、印刷する方式であることはご存じの通り。シアン、イエロー、マゼンタ、ブラックの4色構成としているモデルが多い。家庭向けではフォトプリントのためにさらに多くのインクを用いているパターンもあるけれど、ビジネスインクジェットはだいたいが4色だ。対してレーザー方式のモノクロプリンターは、トナーというインク代わりになる粉末を用紙に転写する仕組みとなっている。

 従来は「ビジネスといえばレーザー」といったイメージが強かった。文書(モノクロ)印刷でインクジェットより高速、高品質、低コストだから、と考えられてきたこともあるからだろう。しかし、最近では「ビジネスならレーザー」とは一概に言えなくなってきている。なぜだろうか。

 インクジェットとモノクロレーザーを比較したとき、真っ先に比較されがちなのが印刷速度だろう。先述の通り、ビジネス向けプリンターは1分間に20〜30枚以上を印刷できるとしたが、インクジェットは通常20枚前後、モノクロレーザーは30枚以上。しかもレーザーは、印刷内容によって速度が変わることがないため、安定した速度で出力が可能だ。ただし、最初の1枚のプリント速度、いわゆる「ファーストプリントアウトタイム」だけを比較すればインクジェットの方が高速な場合もある。少部数・少ページ数を扱うことが多いなら、「ビジネスならインクジェット」と言うこともできるのだ。

 印刷品質については、モノクロ文書に限ればやはりレーザーの方が強いと言えるだろう。とはいえインクジェットも昨今の技術向上により、にじみの少ないクリアな印字が可能になってきており、しかも写真やチラシのようなカラーデータを鮮やかに出力できる点でもメリットは大きい。

左がインクジェット、右がレーザーで印字したもの。その差はわずか

 そしてランニングコストは、レーザーが安価という昔のイメージが今や完全に逆転している。消耗品であるインクとトナーの金額、消費量をベースにしたランニングコストを比較した場合、モノクロ印刷だとインクジェットは1枚あたり1円台半ば、レーザーなら1枚あたり2~3円程度と最大で2倍もの差になっている。

 もちろん導入時にはプリンター・複合機自体の価格や、耐久性(インクジェットは10万枚程度、レーザーは高耐久モデルで20万枚以上)を考慮に入れる必要もあり、ランニングコストだけを見てインクジェットにすべきか、レーザーにすべきかを決めるのは難しい。他の要素も合わせて総合的に決めたいところだ。というわけで、インクジェットとレーザーの主だった違いを改めて表にまとめたので参考にしてほしい。

インクジェット方式
(参考:MFC-J6973CDW)
モノクロレーザー方式
(参考:MFC-2740DW)
モノクロプリント速度 約22枚/分 約30枚/分
1枚目モノクロプリント速度
(ファーストプリントアウトタイム)
約9秒 約10秒
得意なプリント内容 少部数印刷 大量印刷
モノクロプリント
ランニングコスト
約1.4円/枚 約3円/枚
消耗品 インクカートリッジ トナー、ドラム
メンテナンス(消耗品交換) サイクル 短い 長い
消費電力
耐久性能(プリント枚数) 約10万枚 約5万枚
(高耐久モデルは約20万枚)
【表】ビジネスインクジェット複合機とビジネスモノクロレーザー複合機の違い

インクジェットとレーザーを両輪で回すブラザーの充実ラインアップ

 そんなビジネスインクジェットプリンター・複合機と、ビジネスレーザープリンター・複合機の両方式を、どちらも主力製品として展開しているのがブラザーだ。つまり、あらゆる業種に最適なモデルを提供できるよう、幅広い選択肢を用意しているというわけ。ここではそれらのラインアップのなかでも特に機能面、性能面で充実しているインクジェット方式とモノクロレーザー方式の代表機種に絞って紹介しよう。

 ビジネスインクジェット複合機のフラッグシップとして君臨するのが、WORKSシリーズの「MFC-J6973CDW」と「MFC-J6573CDW」の2モデルだ。A3サイズのプリント、コピー、スキャン、FAXが行え、両面同時プリントが可能。J6973CDWはスキャンまでもが両面同時に処理可能だ。

 プリント速度は1分間にカラーが20ページ、モノクロが22ページで、250枚または500枚の給紙トレイを備える。もちろん無線LANと有線LANを装備しており、ネットワーク内の複数のPCから共有して利用できる。J6973CDWは、タッチ操作可能な3.7インチのカラーディスプレイで各機能を簡単に扱えるようになっているのも特徴だ。

タッチ可能な3.7インチディスプレイで操作する

 WORKSシリーズとは別にNEOというシリーズも展開しており、なかでも「MFC-J5820DN」というモデルは、電話とFAXを無線転送できる面白い機能を備えている。電話線をつなぐ壁面コネクタに専用のコンパクトな親機を接続し、そこから離れた場所にワイヤレスで複合機本体と電話機子機を設置しておけるのだ。

 オフィスや店舗のレイアウトによっては、壁面コネクタのすぐ近くに、コンパクトとはいえそれなりにサイズのある複合機本体は置きにくい場合もあるだろう。J5820DNなら例えばバックヤードの使いやすいところに本体を設置し、接客スペースに電話機子機を置いてすぐに手に取れるようにしておくのもOK。スペースが限られるような場所でも高性能な複合機を活用できる。

 もしくは、無線ファクスや電話機子機は不要で、設置スペースにある程度余裕があり、プリント量が多い用途であれば、J5820DNと同じようなシンプルデザインで、最大581枚もの給紙が可能な「MFC-J5720CDW」という機種も用意されている。

 一方、モノクロレーザー複合機は、一般用途向けのモノクロコンパクトモデルとして「MFC-L2740DW」や「MFC-L2720DN」などがラインアップされている。どちらもA4サイズに対応したプリント、コピー、スキャン、ファクス機能を利用でき、こちらも自動両面プリントが可能。印刷速度は1分あたり約30枚で、ランニングコストは1枚およそ3円となっている。インクジェットモデルと同様、無線または有線LAN、タッチディスプレイを搭載し、スマートフォンと連携したクラウドプリントなど機能は盛りだくさんだ。

 とりわけL2720DNは、以上のようなタッチディスプレイやスマホ連携機能に加え、高速なプリント、省スペースによる高いユーザビリティを実現しながら、ランニングコストが低いだけでなく、本体価格も実勢売価3万円前後(編集部調べ)で、コストパフォーマンスに優れた1台となっている。モノクロレーザー複合機の導入を検討しているなら有力な選択肢になるのではないだろうか。

 また、複合機は必要ないが、同じく自動両面プリントなどで高速に印刷できるプリンターが欲しい、という用途もあるだろう。その場合はMFC-L2720DNの“プリンターのみバージョン”と言える「HL-L2365DW」を検討したいところだ。

用途、業種ごとの最適なプリンター・複合機を考える

 では、実際のところ特定の用途、業種にはどの方式・モデルが適しているのだろうか。参考までにいくつか例を挙げてみた。

医療

 病院、クリニックなどの医療機関の受付では、問診票や会計伝票など実務的な書類を扱うことが多く、モノクロ印刷がメインとなる。受付は設置スペースがあまり取れず、コンパクトであることが必須。そう考えると、プリント、コピー、スキャン、さらにファクスまでこなせるコンパクトなモノクロレーザー複合機「MFC-L2720DN」が活躍するだろう。

学校・教育

 学校や学習塾では、生徒にモノクロプリントの資料を大量配布する使い方や、保護者に対してはカラープリントしたお知らせ資料を渡すことが多いため、やはりカラープリントが可能なA3サイズ対応のインクジェット複合機「MFC-J6973CDW」がおすすめ。A3サイズの練習問題を手早く両面スキャンしたり、A4サイズの冊子であっても見開き状態にして、A3サイズでスキャン、コピーすることもできる。

 一方で、大学の研究室では、研究論文などページ数の多いものをA4モノクロで大量印刷するシーンが考えられる。研究室は研究用の機材、設備も多く、設置場所を取らないコンパクトな機種が欲しい。そのため、省スペースな「MFC-L2720DN」などのビジネスモノクロレーザー複合機が適しているだろう。

建築、不動産

 緻密で情報量の多い設計図などを扱う建築関連の業務では、見やすさの面から、必然的にA3プリント対応のビジネスインクジェット複合機が必要になる。また、不動産においても間取り図はA4のような小さなサイズだと見にくくなるため、A3サイズを扱えた方が便利だ。A3サイズのままファクスをやりとりすることも多いため、「MFC-J6973CDW」のようなA3フル対応のビジネスインクジェット複合機が重宝されるはず。

会計、法律事務所

 とにかく膨大な量の書類を扱う会計士、行政書士、司法書士の仕事では、ビジネスモノクロレーザープリンターが適している。大量のモノクロ印刷に特化したプリンター「HL-L2365DW」であれば、ヘビーなプリント用途にも耐えられるだろう。申請書類作成などの業務においてスキャンも必要になる場合は、両面同時スキャンも可能なビジネスモノクロレーザー複合機「MFC-L2740DW」をチョイスしたい。

飲食店、小売

 飲食店や小売店舗においては、メニュー、にぎやかなPOP、ポスターまで、多彩な印刷物を扱うことになる。そのため、カラープリントが可能で目に付きやすいA3サイズにも対応するビジネスインクジェット複合機が最適。「MFC-J5820DN」なら、電話とファクスを無線転送できる親機と電話機子機がセットになっていて、大きなものを置けないレジカウンターなどに電話機子機を、バックヤードに複合機本体と親機を、それぞれ分けて設置してスペースを有効活用できる。電話機子機が必要ないのであれば、大量印刷にも向いた「MFC-J5720CDW」を選択するのも良いだろう。

キャッシュバックキャンペーンで、さらに安価に手に入れるチャンス

 以上のように、同じビジネス向けでもインクジェットにするかモノクロレーザーにするかは用途や業種によって判断が細かく分かれる。ぜひともじっくり考えて自分たちに最適なビジネス複合機を選んで欲しい。

 なおブラザーでは、4月24日までの予定で、対象となる機種を購入した場合に、最大で5,000円をキャッシュバックするキャンペーンも行っている。

 今回紹介したなかでは、ビジネスインクジェット複合機のMFC-J6973CDW、MFC-J6573CDW、MFC-J5720CDW、レーザー複合機のMFC-L2720DN、レーザープリンターのHL-L2365DWの合計5機種が最大5,000円のキャッシュバック対象機種で、よりコストを抑えて入手できるチャンスだ。

 次回は、筆者のオフィスでもビジネスインクジェット複合機のフラッグシップであるMFC-J6973CDWを実際に導入して、社員数名という小規模オフィスのライター業務においてどんな活用方法があるのか、具体的にどういった機能が便利に使えるのか、詳しく紹介していきたい。

関連情報

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