ハンファジャパンが取り扱う「UMA-ISO」は、一見すると2.5インチSATA HDD用のUSB/eSATA外付けケースだが、HDDに保存したISOファイルをマウントし、光学ドライブとして利用できる機能がついている。早速購入して試してみることにした。
発売されたのは11月16日で、当日に直販サイトで購入した。価格は9,980円だ。ちなみに、19日現在、直販サイトを見てみると、「初回入荷分は一瞬で完売し、次回入荷予定は12月上旬から中旬予定」となっている。
製品の外箱を見てみると、メーカー名はCNS、製品名は「iodd」と記載されており、日本語化はされていない。これは、内容物についても同じで、マニュアル(といってもペラ紙1枚だが)も英語のみだ。英文はいかにも非ネイティブが書いたものだが、それ以上に情報は必要最低限のことすらかかれていない。具体的なことは後述するが、こういった点から、あまり自作などに詳しくないユーザーにはハードルが高そうだ。内容物は、本体と、携帯用ポーチ、USB Y字ケーブル、eSATAケーブルとなっている。
対応HDDは2.5インチ9.5mm厚のSATAタイプ。本製品は、上側のカバーと下側のカバーが、前方あるいは後方いずれかの方向に引っ張ると開くようになっている。HDDは内部の基板にあるSATAコネクタにそのまま挿すだけだが、プラスチックでできた枠の部分を思い切って曲げながらでないと入らない。
基板上の片面は1つ大きなチップがある。表面はシールで覆われているが、はがしてみるとOxford Semiconductor(現PLX Technologyの)の「OXU931SF」というチップであることが分かった。これはUSB 2.0をSATAに変換するコントローラである。このほか、Silicon Storage TechnologyのFLASH「SST39VF020」も載っている。この裏面には、情報を表示するための小さな有機ELディスプレイがある。
HDDを入れたら、先に外したカバーを元通りはめるだけだが、ハンファジャパンの説明によると、このカバーは基本的に一度はめると、もう外せないらしいので、はめる前に動作検証を行なった方がいい。ただし、編集部で試した限りでは、ケースを開けるための穴に細い棒を突っ込みながら、少し強めの力でずらしたら、特に無理なく開けることができた。
本製品はUSBかeSATAでPCに接続する。eSATAについては、USBより高速だが、電源供給ができないため、USBケーブルも繋ぐ必要がある。付属のUSBケーブルは先が二股になっている。この内、先の方のUSBコネクタにはデータ用の信号線は届いておらず、電源供給専用なので、eSATA利用時はこちらだけを繋ぐ。逆にUSB接続の時は、内側のコネクタを繋ぐ。ちなみに、この点も説明書には記載がない。
PCに繋ぐと、デフォルト状態では、HDDと光学ドライブ(BD-ROMとして認識)が追加される。先に、本製品の対応HDDについて書いたが、もう1つ条件があり、FAT32フォーマットしか利用できない。OSがWindows Vistaの場合、FAT32でのフォーマットができないので、手持ちのHDDがFAT32以外でフォーマットされていると行き詰まってしまう。そこで、メーカーサイトではWindows Vistaに対応したフォーマットツールを配布している。しかし、このツールはこのメーカーが開発したものではなく、日本の個人が開発したフリーウェアだ。その利用規程には、営利目的での再配布は禁止と書かれている。しかも、メーカーではこの規程のテキストファイルを添付せず、実行ファイルだけを配布している。このツールを個人が無償で利用すること自体は問題ないが、このメーカーの提供形態は即時見直してもらいたい。
本製品の特徴である、ISOファイルをマウントする方法だが、やり方は至って簡単。HDD内に「_ISO」という名前のフォルダを作成し、後はここにISOファイルをコピーする。ファイルの数に上限があるのかは分からないが、ひとまず複数のファイルを入れておいて構わない。あとは、本体にあるセレクターを上下に動かすと、本体の有機ELディスプレイに、順にISOファイルの名前が表示される。目的のファイルを選んだら、セレクターを内側に押し込むと、ロードされ、仮想光学ドライブにマウントされる。これだけだ。あとは、通常の光学ドライブと同じように扱うことができる。
UMA-ISOを繋ぐ前のマイコンピュータ | UMA-ISOを繋ぐと、HDDとBD-ROMドライブが追加される | HDDに_ISOフォルダを作成し |
ISOファイルを保存する | あとは、本体のセレクターでファイルを選んで、押し込むと | このようにマウントされる |
ちなみに、セレクターを押し込むには割と力が必要で、先端がとがっていることもあり、慣れるまでは押し込んだつもりが、上下に動かしてしまうこともある。
仮想といっても、BIOSからも光学ドライブとして認識されるので、OSのインストールにも使える。この点は、「Daemon Tools」などの仮想ドライブソフトに対する優位点となる。
どのISOファイルをロードしたかは、電源を落としたあとも記憶されている。しかし、動作中であっても、セレクターを動かしてしまうと、即座にアンマウントされるので、使用中は注意が必要だ。
このほか、本製品には書き込みをロックして、リードオンリーにするスイッチや、HDDモード/CDモード/Dualモードの切り替え(方法はマニュアルに書かれていないが、セレクターで“Begin of List”を選び、押し込むと切り替えられる)、内蔵HDDやファームウェアの確認(セレクターで“End of List”を選び、押し込むと切り替えられる)、省電力モード(オンになると液晶上にZzと表示される)といった機能もある。
なお、標準では日本語ファイル名に対応しないが、メーカーが配布しているファームウェアにアップデートすると利用できるようになる。このファームもISOファイルで提供されており、HDDの_ISOフォルダに入れて、本体でロードすると、その瞬間にファームのアップデートが開始される。
出荷時の状態では日本語ファイル名は表示できないが | ファームウェアのアップデートで対応できる |
HDDだけあるいは光学ドライブだけという設定もできる | スイッチで書き込みロックもできる |
性能は利用するHDDに依存するが、参考までに簡単に測定してみた。利用したHDDはWestern Digitalの「WD5000BEVT」(500GB)。まず、HDDとしての性能はUSB接続時でFDBENCHの読み込みが27MB/sec、光学ドライブはOpti Drive Controlの読み込みが19.2MB/secとなった。光学ドライブ化による若干のオーバーヘッドが見られるが、気になるほどではないだろう。
ちなみに、この19.2MB/secというのは、DVDで約15倍速に相当する。最近売れている、ネットブックやCULVノートでは光学ドライブが無いものが多い。こういった機種でOSのインストールをするには、ポータブルタイプの外付け光学ドライブを利用するのが一般的だろう。この手のドライブは最大読み込み速度が8倍速程度だ。手元にあったものは6倍速だったので、Windows 7のインストール時間にどれくらい差が出るかも測ってみた。
結果としては6倍速DVDドライブが23分9秒に対して、本製品では18分52秒と4分以上も短縮された。コンテンツ系の読み出しにおいては、CDやDVDドライブの読み込み速度は基本的に重要ではないが、OSのインストールにおいては、本製品の光学ドライブに対する明確な性能的メリットが見られる。
以上の通り、本製品は上級者をターゲットとしており、利用環境にもかなり雑な部分が見受けられる。ただし、本製品の用途である、ISOファイルをマウントするという点においては、非常に簡単に操作できる。これは便利だ。実際、どのように活用するかはユーザー次第だが、光学ドライブを買う、あるいはHDDケースを買うといったときに、選択肢に入れてみるのも悪くないだろう。
【お詫びと訂正】初出時にISOファイルを光学ドライブとしてマウントできる製品は初と記載しておりましたが、誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。
(2009年 11月 20日)
[Reported by 若杉 紀彦]