株式会社アイ・オー・データ機器は4日、東芝製のSATA 6Gbps対応SSD「SSDN-3T120B」を発表した。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は16,500円前後だ。4月中旬の製品発売に先立ち、借用することができたので、ベンチマークを交えながら本製品をレポートする。
●東芝刻印のコントローラを採用東芝製のSSDは、Trim非対応環境でも比較的速度低下しにくく、長期にわたり安定した書き込み性能を有すること、アライメントが揃っていない状態でも性能に影響がないこと、さらに独自のアルゴリズムにより長寿命を実現していることから、自作ユーザーの間でも「鉄板」と呼ばれる特に人気の高い製品だ。
しかし2009年にSATA 3Gbps対応製品をアイ・オー・データが発売して以来、採用NANDの変更やTrim対応など、小規模なマイナーチェンジのみに留まり、SATA 6Gbps対応が進んだ2011年以降、速度的な面でほかのメーカーにかなりの差を付けられたのも事実だ。
今回発表されたSSDN-3T120Bは、待望の6Gbpsへの対応が図られ、従来品と比較して速度の大幅向上を実現した。公称速度はシーケンシャルリードが約480MB/sec、シーケンシャルライトが約350MB/sec、ランダムリードが約440MB/sec、ランダムライトが約340MB/sec、 IOPSはランダムリードで約58,000IOPS、ランダムライトで約73,000IOPSとなっている。
今回借用したSSDN-3T120Bを見ていこう。形状は2.5インチドライブと同等なので、特筆すべき点はないが、アルミニウムケースの採用で重量を約52gに抑えているのが特徴だ。他社製のSSDと比較しても軽いのが印象的である。
パッケージ | パッケージ横の印刷、60GB/240GB/480GBの容量バリエーションが用意されていることがわかる | SSDN-3T120B本体 |
中身が気になったので、早速分解してみたところ、コントローラとNANDともに“TOSHIBA”の刻印があり、コントローラは「TC58NC5HJ8GSB-01」、NANDは「TH58TEG8D2HBASC」だった。いずれも未公開の型番のため詳細はわからないが、NANDは4枚で128GBを実現していることから、32GB(256Gbit)品ではないかと想像される。
なお、パッケージ側面には、60GB、240GB、480GBモデルの表記もあり、基板上にもNANDの空きパターンが4つ用意されていることから、240GBモデルでは同等の基板、480GBモデルでは別基板で実現されるのではないかと想像される(120GBモデルの基板は裏面実装できない)。
分解したところ。ケースはアルミ製のようで、非常に軽量だ | ケースを外しただけではチップが見えず、ネジを外して基板を取り外す必要がある | チップにはサーマルパッドが貼りつけられており、ケースに熱を逃がすような仕組みになっている |
コントローラはTC58NC5HJ8GSB-01、NANDはTH58TEG8D2HBASC |
●非常に高速なリード/ライト性能
それでは実際に「CrystalDiskMark 3.0.1」を使い、性能の実力を見ていこう。テスト環境はPhenom II X2 550BE(3.1GHz)、AMD 990FXチップセット(MSI 990FXA-GD80)、メモリ8GB(32bit制限により実質3GB強)、GeForce 9800 GTX+ビデオカード、750GB HDD、Windows 7 Ultimate(32bit)といった環境を用意した。SSDN-3T120BはチップセットSB950直のSATA 6Gbpsポートに接続した。
CrystalDiskMark 3.0.1のテストサイズ100MBの結果 |
テストサイズを100MBにした場合、シーケンシャルリードは494.9MB/sec、同ライトが381.4MB/secと、公称値以上の速度を達成した。512KBランダムリードでも433.6MB/sec、同ライトで370.5MB/secと高速だ。
一方4KBランダムリードは29.39MB/sec、同ライトは85.70MB/secで、4KB QD32のランダムリード/ライトはそれぞれ240.5MB/sec、215.1MB/secと高速であった。いずれもIntel 520など最新のSSDと肩を並べる速度であった。
テストサイズを1,000MBにした場合、4KBランダムアクセスと4KB QD32ランダムライトのスコアが向上し、それ以外はスコアが低下するが、それでも実用上問題となることはまずないだろう。
CrystalDiskMark 3.0.1のテストサイズ1,000MBの結果 |
【16時10分追記】読者から、CrystalDiskMarkで0Fillのテスト結果についての要望が寄せられたので追試してみた。
結果は、リード速度はほぼ変化がないものの、ライト速度がおおむね70~80MB/sec向上し、規則性があり圧縮が効きやすいデータパターンでは、さらに性能が出ることがわかった。圧縮アルゴリズムを採用するSSDコントローラといえば、SandForce製が有名だ。つまり本製品もそのSandForceのコントローラをベースに独自カスタマイズを施した可能性が高い。
とは言え、上記のテストでもわかるよう、圧縮が効きづらいデータにおいても、Intel 520シリーズやIntel 510シリーズの240GB/250GBモデルを超える性能を実現しており、東芝のカスタム化による書き込み性能向上の効果はかなり高いと言って良いだろう。
Fill0の結果(テストデータサイズ:100MB) |
Fill0の結果(テストデータサイズ:1,000MB) |
「AS SSD Benchmark 1.6.4237.30508」も実施してみたが、CrystalDiskMarkの結果よりやや劣るものの、ほぼ同等の結果が得られた。実使用でもかなり快適であろう。
AS SSD Benchmark 1.6.4237.30508の結果 |
●後発に恥じぬ性能を発揮
以上、簡単に本製品を見てきたが、「安定性重視の東芝がSATA 6Gbpsをサポートし、最新の6Gbps対応SSDと肩を並べられる性能となった」のが最大のトピックと言えるだろう。MarvellやSandForceコントローラ採用の一部製品では、アライメントを揃えないと性能を発揮できなかったり、またTrimコマンドに対応したOSや機器で利用しないと速度低下したりなどの問題がある。今回、時間が限られたためこれらに関してテストできていないが、おそらく従来の東芝製SSDと同様、多くの環境下でフルに性能が発揮できるよう設計されていると推測できる。
価格も特段高いわけではないため、万人におすすめできるSSDと言えるだろう。今後の大容量モデルにも期待したい。
【16時10分訂正】記事初出時、SandForceコントローラのカスタム品ではないとしておりましたが、追試結果に基づき、表現を訂正しました。
(2012年 4月 6日)
[Reported by 劉 尭]