米Broadcomは、CESに先駆けて5日(米国時間)に、5世代目のWi-Fi規格となるIEEE 802.11acに対応するコントローラを発表。CES期間中に、記者説明会を行なった。
IEEE 802.11ac(以降11ac)は、IEEE 802.11、同a/b、同g、同nに続く第5世代目のWi-Fi規格で、「5G WiFi」の愛称でも呼ばれる。最大の特徴は、最高1.3Gbpsでの通信が可能な点で、コンシューマ向けのEthernetよりも速くなった。ちなみに、「ac」に特に意味はなく、コンソーシアムで規格化を進める中、バージョンがa/b/g/nと進んできて、zにたどり着く前に、aaになり、acの時点で規格化された。
11ac対応機器は、アンテナの数によって対応ストリーム数が1から3まであり、1のものは433Mbps、2は867Mbps、3は1.3Gbpsでの通信が可能となっている。Broadcomの製品では、BCM43516が1ストリーム、同4352/43526が2ストリーム、同4360が3ストリームに対応。現在、顧客にサンプル出荷を開始している。
11acは、周波数帯として5GHzを利用する(2.4GHzは非対応)。そのため、Bluetoothなどの他の無線機器の干渉を受けにくくなり、安定した通信が可能となる。当然、従来の11nなどと後方互換性を保つ。
また、電波の経路を最適化するビームフォーミングに対応し、利用可能エリアが広がった。ビームフォーミングは11nでも採用されているが、必須ではないため、実際の機器の多くは対応していない。11acは、ビームフォーミングにより、1台のアクセスポイントで1つの家全体をカバー可能にすることを目標としており、具体的には従来より利用可能エリアが3割から4割程度広がるという。また、電力効率も改善し、より省エネになっているという。
ちなみに、これは11acの機能ではないが、Windows 8では、アクセスポイントなしにWi-Fi機器同士で直接データ通信を行なう「Wi-Fi Direct」を標準サポートするため、同機能の利用が今後広がっていくことが予想される。
搭載機器は、ルーターやアクセスポイントが2012年第3四半期、ノートPCが2012年末、スマートフォンやタブレットは2013年から市場に投入される予定。
11acの説明を行なったBroadcom MWG担当上級副社長のMichael Hurlston氏 | 11acの概要と用途 | 11ac対応チップセット |
プレスなどの限定公開していた11acのデモ機 | デモに使われたボード | 通信システムの写真撮影は許可されなかったが、1Gbpsを超える数値が確認できた |
このBroadcomの発表に合わせ、CES開場では米Buffaloが11ac対応ルーターの通信デモを他社に先駆けて行なっている。
デモは、BCM4360を搭載したPCI Expressカードを装着した2台のLinux PCで行ない、実測で800Mbpsを超える速度を実現していた。なお、CES会場は電波の干渉が激しい場所であるため、PCI Expressカードのアンテナ同士を有線接続した仮想的な無線通信環境となっているが、まだ一切の最適化などを行なっていないため、製品版では、本当の無線通信であっても、これを超える速度を出せる可能性はあるという。
同社では「AirStation WZR-1750H」という名称で製品化の予定。米国では2012年中の出荷を目指し、価格は200~249ドル程度になる見込み。日本では、11acについてまだ総務省の認可が出ていないため、はっきりとした日程は不明だが、2013年にずれ込む見込み。
Buffaloブース | AirStation WZR-1750Hのモック。これまでにない形状 |
デモに使われたPCと11acの基板 | 常時800Mbpsを超える速度を確認 |
(2012年 1月 13日)
[Reported by 若杉 紀彦]