世界最大級のデジタル関連の展示会International CESが、1月10日~13日(現地時間)にアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで開催される。毎年PC、携帯電話、AV製品などさまざまなデジタルガジェットなどが多数発表される場として知られている。それに先立つ、1月8日と9日は、CESの主催者であるCEA(Consumer Electronics Association)主催の記者会見、各ベンダーの記者会見などが開催される“プレスデー”となっている。
その初日となる8日には、CEA主催でCESでの注目製品を展示会に先立って紹介する“CES Unveiled”と呼ばれるイベントが開催され、先日発表されたLenovoのUltrabookやLinux OSとWindows OSを切り換えて利用できるノートPCなどが注目を集めた。
●詳細が明らかになった「ThinkPad T430u」PCメーカーのLenovoはCESに先立って発表された同社のビジネス向けノートブックPCの新製品、「ThinkPad T430u」と「ThinkPad X1 Hybrid」を展示した。
ThinkPad T430uはIntelのUltrabook構想に基づく製品で、14型液晶を備えたThinkPad T4x0シリーズの1ラインナップになる。現在のThinkPad T4x0シリーズは、薄型の「T420s」と、通常版の「T420」の2つ種類の製品が用意されているが、Lenovoの展示員によればThinkPad T430シリーズにもレギュラー版(T430)と薄型版(T430s)が用意されており、それらは別途リリースされることになるという。Ultrabook版のT430uはそれらに加えて追加される新しいラインナップになる。つまりT430世代では無印、s、uという3シリーズが登場することになる。なお、T430uの液晶の解像度は1,366x768ドットになり、T430/430sでは1,600x900ドットのパネルも用意される。
T430uの特徴は、従来のTシリーズに比較して薄型デザインだろう。この薄型を実現するため、キーボードはX1と同じアイソレート型のキートップで6列配列のキーボードが採用されている(なお、T430sとT430に7列配列が残るのかは現時点ではノーコメントであるとのこと)。Lenovoの説明員によれば「21mmと聞けばUltrabookとしてはあまり薄くない部類かもしれないが、T430uはビジネス用のPCとして、耐衝撃性などは従来のThinkPad同様に確保されている」とのことで、薄くしすぎるのではなく、ThinkPadとしての堅牢性を維持しつつ従来製品よりも薄くというのがコンセプトであるようだ。なお、重量はまだ最終的にはわかっていないが、1.8kg前後になるとのことだった。
もう1つユニークなのは底面の作りだ。従来のThinkPadシリーズでは、底面にはメモリやPCI Express Mini Cardのためのフタが開けられており、ネジを開けることでそれにアクセスすることができるようになっている。それに対して、このT430uでは底面のフタをラッチ1つで開けることが可能になり、メモリ、PCI Express Mini Card、ストレージ、バッテリなどに簡単にアクセスすることが可能になっているのだ。ただし、バッテリについてはあくまでメンテナンスレベルでの交換が可能ということであって、日常の使い方でバッテリが交換できるわけではないという。公称バッテリ駆動時間は8時間とのことだった。
驚きなのは、T420sよりも薄さを実現していながら、ストレージには標準的な2.5インチ/9.5mmのHDDも格納可能ということだ。このため、最大で1TBまでの選択肢が用意される可能性があるとのことだった(従来のT420sでは2.5インチ/7mm厚のストレージとなっていたの)。ただし、底面にドッキングステーション/ポートリプリケータ用のコネクタは用意されていないので、ポートリプリケータにケーブルをつないでおいて一挙に取り外しというT420/420sのような使い方はできない。
ポート類は、USB 3.0×2、Ethernet、音声入出力、HDMIとMini DisplayPortの出力が用意されている。なお、通信に関しては3G/Wi-Fiか、Wi-Fiのみから選択できるということだったので、おそらくPCI Express Mini Cardスロットは1スロットだけ用意されており、3G/Wi-Fiのコンボカードか、Wi-FiのみカードかをCTOで選べるようになっているのだろう。日本のユーザーにとって残念なニュースだが、WiMAXには対応していないということだった。
T430uのリリース時期は8月とすでにアナウンスされているが、これはIvy BridgeのUltrabook版のリリースがその頃になるからだ。Lenovoの関係者はT430uのプロセッサとしては、“次世代Intelプラットフォーム”とだけ言っているが、これはIvy Bridgeのことを指していることは明らかで、そのためリリースが8月だとされているのだろう。
なお、T430uではNVIDIAのGPUとのデュアルグラフィックスも選択することができるようになり、かなりハイスペックなUltrabookになる可能性が高く、UltrabookでもハイスペックなPCが欲しいというユーザーなら要注目ということになるだろう。
●“独自”Android 2.3との切り替え機能を持つX1 Hybrid
ThinkPad X1は13型液晶を搭載したモバイル版ThinkPadだが、今回発表された「ThinkPad X1 Hybrid」は、X1にLinux OSで動作する機能を追加した製品になる。Linux OSは内蔵されているQualcommのSnapdragonプロセッサ上で動作しており、OSをWindowsからLinuxに切り換えたときには、Windows OSが利用しているプロセッサやメモリなどはサスペンドしているのと同じ状態になり、消費電力は大幅に低下し、Windows OSが動いている時と比較して10分の1の消費電力で利用することができるという。
Linux OS側は主に、動画再生や音楽再生、メールチェックなどパーソナルユースでの利用が想定されているのだという。ビジネスパーソンが飛行機などで、仕事はWindows OSで行ない、仕事に疲れたらLinux OS側に切り換えて動画再生などをする、といった使い方が想定されている。なお、Linux OSといっても、実際のベース部分としては、GoogleのAndroidが利用されており、バージョンは2.3ベースだという。ただし、ユーザーインターフェイスはLenovo独自になっており、AndroidマーケットなどAndroidスマートフォンやタブレットなどでおなじみの機能は利用できない。
Lenovoの説明員によれば、ThinkPad X1 Hybirdのハードウェアはほとんど従来のX1と同じで、唯一の違いは内蔵されているPCI Express Mini Card上にQualcommのプロセッサ、メモリ、16GBのSSDなど、Android OSが動作している部分が格納されていることだという。つまり、このLinux OS向けの機能が1モジュールにすべて集約されているため、Hybridとそうでない製品の差はこのカードが入っているか、入っていないかだけの違いなのだという。また、X1でのPCI Express Mini Cardスロットの制限から、3Gの通信モジュールと排他的にしか選択できない。
なお、1モジュールからなっていることからもわかるように、この仕組みそのものは、他のThinkPadシリーズにも適用することが可能だ。このため、将来はX1だけでなく、TシリーズやXシリーズなど他のシリーズにも搭載される可能性はあるのだという。現時点ではどの製品に乗る予定であるのかなどをLenovoは明らかにしていないが、楽しみな展開だ。
●Idea製品は怒濤の新製品を公開、IdeaPadやIdeaCentreが多数展示
Lenovoのコンシューマ向けブランドである“Idea”製品に関しては、ノートPC、タブレット、スマートTVなど多数の新製品が展示された。
ノートPCの「IdeaPad」は、「U310」、「U410」、「S200」、「Z480」、「Y580」という5製品が展示された。U310/410はいわゆるUltrabookで、それぞれ13型液晶と14型液晶を搭載している。プロセッサは第2世代Intel Coreプロセッサ(開発コードネーム:Sandy Bridge)で、U310は内蔵GPUを、U410はNVIDIAのGeForce 610M/1GB VRAMを利用する。U310は重量が約1.7kgで厚さが18mm、U410は重量が約1.9kgで厚さ21mmというスペックになっている。Lenovoの説明員によれば、バッテリ駆動時間は8時間となる。発売は5月が予定されており米国での価格は699ドルからとなる予定だ。
S200はAtomプロセッサ(開発コードネームCedar Trail)を搭載するノートPCで、11.6型の液晶ディスプレイを搭載している。なお、今回は展示されていなかったが、S206というモデルも用意されており、そちらはAMDのEシリーズプロセッサを搭載した製品になるという。Atom搭載というとネットブックかと考えられるところだが、Lenovoの説明員によればノートPCと位置づけているということで、低価格なノートPCという位置づけだということだ。発売は6月が予定されており、米国での価格は399ドルからになっている。
Z480はIdeaPadのメインストリーム向け製品で、Intelの次世代プロセッサも選択可能になるというノートPCだ。Zシリーズにはこの他にもZ580(15型)、Z380(13型)のモデルが用意されており、販売開始は4月の予定。米国での販売価格は599ドルからとなっている。Y580は、Dolby Home Theatre V4に対応し、JBLのスピーカーを搭載するなどAV機能を重視したノートPCで、15型液晶を搭載している。今回は展示されていなかったが14型のY480も用意されており、どちらも販売開始は4月の予定で、米国での販売価格は899ドルからになっている。
「IdeaCentre B540」は、3D立体視に対応したタッチパネル液晶を搭載したオールインワンデスクトップPCだ。液晶パネルは23型で、GPUにはNVIDIAのGeForce GT 650Mを搭載しており、偏光方式の眼鏡を利用して3D立体視のコンテンツを楽しむことができる。今回は展示されていなかったが、21.5型液晶を搭載したB340も用意されており、販売は6月が予定されており、米国での価格は699ドルからが予定されている。
なお、いずれの製品も日本で販売されるかどうかは米国サイドではわからないという解答だった。
●キーボードドック付きのIdeaTab S2 10と55型のSmart TVはいずれもICS搭載
Lenovoは近年PCだけでなく、タブレットやSmart TVなどにも力を入れており、今回の展示でもそうしたソリューションを展示した。
「IdeaTab S2 10」は10型液晶(1,280x800ドット)のタブレット端末で、プロセッサには開発コードネームKraitで知られるQualcomm Snapdragon 8960(1.5GHz)を搭載し、重さは580g、厚さは8.67mmと薄型軽量になっている。最大の特徴は、オプションでキーボードと追加バッテリを搭載したドッキングステーションが用意されていることで、キーボードドックにドッキングすると、ノートPCのようにクラムシェル型として利用することが可能になることだ。ちょうどASUSTeK Computerが昨年発売したEee Pad Transformerのような形だと言えばわかりやすいだろうか。なお、OSはIce Cream Sandwich(ICS)ことAndroid 4.0が搭載されており、バッテリ駆動時間は本体だけで10時間、キーボードドック付きで20時間となっているという。
「K91」は55型のフルHD液晶を搭載した液晶TVなのだが、Qualcomm Snapdragon 8060をプロセッサとして搭載している。OSにはICSことAndroid 4.0が採用されており、インターネットにアクセスしてクラウドサービスを利用できる、いわゆるSmart TVになっている。Google TVと呼ばれるGoogleのSmart TV向けOSではなく、スマートフォンやタブレット向けのOSとして用意されているAndroid 4.0にLenovo独自のユーザーインターフェイスをかぶせた形になっており、VODなどを楽しむことができるということだった。
なお、IdeaTab、Smart TVに関しては現状では中国市場向けの製品として販売される予定だが、今年の終わりまでには他の市場でも販売される可能性があるということだった。ただし、日本市場に展開されるかどうかは解らないという解答だった。
●OSを仮想化したスマートフォンやiPhoneと連携できる赤ちゃん用体重計なども展示
この他、展示会場では、PCやサーバー向け仮想化ソフトウェアで知られるVMWareの技術を利用して、携帯電話上で2つのOSを切り換えて利用する機能を実現したLG電子のスマートフォン、赤ちゃんの体重を測り、それをiPhoneに転送して記録する赤ちゃん用体重計、Kindle用太陽光発電ライトなどが展示されており、来場者の注目を集めていた。
(2012年 1月 10日)
[Reported by 笠原 一輝]